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最近、活字批評媒体よりBBCラジオの方が気になる理由

どうも。

 

 

今日と明日に関して書くことは、昨日書いた「7月から9月の10枚のベスト」というのに密接につながることでもあるので、改めて見返してもらえると嬉しいです。

 

 

 僕の最近の音楽の日常ですが、もう、もっぱらストリーミングですね。ここのところはもっぱらDEEZERとTIDALの併用で、Apple Musicの頻度が激減しています。解約してSpotifyを第3のサービスとして使おうかな、などとも考え始めています。

 

 

 ただ、それに加えて今回大きいのは

 

 

 オンラインでBBCラジオの放送を聴き始めたことなんですね。

 

 

「もうCDの時代でもなく、ストリーミングの時代なのに、ラジオなんて聞いてるのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに昨今、ラジオの熱心のリスナーが洋楽のマニアックなファンというイメージは日本ではちょっと考えにくいシチュエーションですよね。

 

 

 でも、欧米圏って、ラジオの影響力が強いんです。それは僕の住んでるサンパウロでもそうだし、他の国でもそう。ロックの専門局なんて、主要な市にはだいたいありますからね。アメリカなんて、ここ最近、影響力のあるロック局が亡くなったことがロックの失速招いているくらいですからね。

 

 そこに行くと、なんだかんだでロックのヒットが出続けているイギリスというのはすごいです。なんせ、BBCだけで6局ラジオがありますからね!

 

 

 その内訳を言うと、BBCのラジオ1が一般の流行り物、2が大人向け。この2局先日、創立50周年を迎えました。そして3がジャズ、4がコメディとかドラマとか声ですね。5がニュース。そして6がインディです。

 

 

 特に6なら。

 

 

 このスティーヴ・ラマックの番組がやっぱり有名というか、人気ですよね。僕のブログをHard To Explain経由で聴いてる人なら、間違いなく好きなんじゃないかと思います。

 

 彼の番組は月曜から金曜の午後4時から7時までの3時間の帯でやってるんですけど、選曲がですね、もうインディ・ロック好きの見本というかですね、「ああ、こういう音楽の趣味した大人になりたい」と思わせるようなものです。ここ最近のセットリストだったら、ホラーズ、ベル&セバスチャン、ビヨーク、フー・ファイターズ、ウルフ・アリス、LCDサウンドシステム、ザ・ナショナルあたりは毎日のようにかかってましたね。これでいいのは、アルバムの発売タイミングの前から推し曲をバンバンかけてくれるから期待が高まるんですよね。そして、まだ一般的な存在じゃないアーティストでも、早いうちから推しのものはかかるから、すごく物知りになったような気分にもなれる。

 

 彼が最近、よくかけてるものの中には

 

 

 

 

 こういうニューカマーもあります。このバンド、ヴォーカルの女の子、日本の大学生ですけどね。しかもアメリカの東海岸だったかな。そちらの在住の人です。これが今のドミノ・レコーズの推しですね。これに限らず、「これから」という存在のものが、こうした番組ではかかります。

 

そうかと思えば

 

 

 こうしたスパークスみたいな大ベテランの曲もかかったりね。こうしたベテランは大人向けのラジオ2でもかかるんですけど、こうしたプロモーションもあるかtら、最近、ベテランのチャート・アクションがすごくいいんです。スパークスも43年ぶりの全英トップ10だったし、ゲイリー・ニューマンとか元ソフト・セルのマーク・アーモンドも、アルバム・タイミングの直前にBBCのゲストに出て、それが結果的にいいチャート・アクションを引き出したりもしています。

 

 

 こうした情報って、例えばピッチフォークとか、そういう音楽サイトを覗いているだけじゃなかなか入らないじゃないですか。しかも、放送というフィルター通して他の曲との比較で聴けるから、客観的な立ち位置もわかるしね。それがサイトだけだと、そういうことができないから、ちょっと聞きにくいタイプの曲でもなんとなく良く聞こえてしまう。そういうのが好きじゃないから、僕はあんまりそのテのサイトの推しって聞かなかったんですよね。サウンドクラウドあたりだと、ゴミみたいな曲も多いから時間が無駄になるような気もしてたし。やっぱ、信頼の置ける誰かのフィルターを通して、客観的な比較ができた上で新しいもの聴けるのはいいですよね。

 

 

 あと、ピッチでもいいし、コンシークエンス・オブ・サウンドとかステレオガムとか、そういうレヴュー系のサイト、確かに良いアルバム、紹介してはいるんですけど、レヴュワーの趣味が地味にマニアックすぎるからなのか、推奨されているものの何割かは「とは言っても、こんなの売れるわけないじゃん」みたいなものが結構多いんですよね。でも、やっぱり気になるから、一回はストリーミングをダウンロードして通して聴いては「ああ、やっぱり長く聴くとツラいね」みたいなアルバムも少なくない。ラマックの番組を習慣的に聴いてると、こうした手間が省けます。

 

 

 僕の場合、どうしても、80sのまだ日本のFMがバンバン洋楽を流していた時代に育ってるし、キャリアの初めがラジオの番組制作だし、後、ライブ番組とか、自分のライブ・イベントの主催とかやってきてますから、どうしても「より広いオーシエンスに聞かせてみてどうか」というのはどうしても考えちゃうんですね。それにはやっぱり、ある程度、曲はちゃんとしてて欲しいとか、そういう感覚がどうしてもあるというか。だから、こういうこと言うんですけどね。

 

 

ただ!

 

僕がBBCに今惹かれている一番の理由はラマックではありません!

 

 

むしろ、この人の番組です。

 

 

 

アニー・マック!

 

アニーは現在、月曜から金曜のBBCラジオ1の午後7時から9時まで、つまりBBCラジオ全体での最も聞かれるゴールデンの時間帯の担当なんですが、いや〜、彼女の番組、ストリーミング時代におけるラジオ番組の理想ですね!

 

 

 彼女の番組の何がすごいかって、かかる曲が完全なるノン・ジャンルなんですよ。インディもエレクトロもかかるし、そうかと思えばいきなりメタルコアに飛ぶ(何気に毎日かかってる)は、ヒップホップもかかる(というか結構比重として多い)はR&Bもかかるは。それを、彼女はプロの回す方のエレクトロのDJでもあるんですが、そうした本来ジャンルがバラバラな曲を絶妙にうまい具合につなげるんですよね。いや、これ、衝撃ですよ!

 

 

 彼女の番組、毎日聴いてたりすると、ちょっとした音楽の物知りになったような気分になります。かけてるものが本当に多岐にわたってるし、そこでの代表的なアーティスト覚えるのにすごく役に立ちます。こういうのって、ストリーミング・サービス聞くだけだと、どうしても自分の趣味の枠内だけでやるからプレイリストで聞こうったってジャンルの幅にどうしても限界があるんですけど、彼女の番組はそういうのを飛び越えてくれているから聞いてて楽しいし、つなぎがカッコいい。

 

 

 あと、ロシアン・ルーレット的な楽しみもあるんですよね。ラマックの番組だと、センス良すぎてそつがなさすぎて、逆にそれが聞いててつまんなくなる瞬間でもあるんですけど、アニーの場合、かける曲に外しも結構少なくない(笑)。およそ僕自身の趣味じゃない曲もやっっぱりかかりますしね。でも、そのリスクと引き換えに、今まで知らなかったものに対しての発見も多い。だからなんかすごくそそるんですよね。

 

 あと、やっぱり、ゲストのトークとか、さらにスタジオ生ライブ、そういうのはストリーミングじゃ体験できないじゃないですか!そういうのを売りにできるのもラジオ局の強みです。

 

 そこに行くと、アニーの番組での生ライブとゲストのセンスがいいんです。

 

 

 

 そもそも僕が何でBBCのアニ−の番組に行き着いたのかというと、「PVRISってなんで全英初登場でいきなり4位になったんだよ」と思って調べたら、直前にアニーの番組でスタジオ生パフォーマンスやってたからなんですね。それと同じタイミングでレディング&リーズのフェス出演してウケたのも大きかったようなんですけど、こういうのって、批評メディアとか雑誌だけ見てても絶対つかめないじゃないですか。

 

 

 それから

 

 

 全英初登場2位になったナッシング・バット・シーヴスも同じように直前にアニーの番組で生パフォーマンスやってます。そして、これが僕的には度肝でね!これ、ジェフ・バックリーの伝説の名作「グレース」に入ってる人気曲の一つのカバーなんですけど、これ、見事ですよ!ヴォーカル的に非常に難易度の高い曲目白押しのジェフ・バックリーの中でも、この曲は特に難しい曲なんですけど、ここのヴォーカルのコナー・メイソンはほぼ完コピですよ!これ聞いて、すごい実力の持ち主だなと思って、それが僕の高評価にもつながりました。

 

 こういう、ここでしか聞けない発見をさせている意味で、この番組、相当貴重ですよ!

 

 

 だから、ここ最近、ずっとベタに張り付いて聴いてるわけじゃないですけど、極力、この番組を聴くか、悪くてもセットリストを後からチェックするようにしています。昨日のトップ10に入れたジュネイ・アイコもこの番組聴いて「こんなに良かったんだ!」と発見して入れたものでもあるのでね。

 

 

 あと、BBCだったら6のローレン・ラバーン、2のジョー・ワイリーと、2人とも女性のDJですけど、彼女たちのも選曲いいですね。ローレンはブリットポップの時にケニッキーてバンドのヴォーカルやってた可愛い人ですけどね。

 

 

 BBCの番組、生で聞けなくても、後日ストリーミングが、確かオンエアの1ヶ月後まではできるので、ぜひ試しに聞いてみてください。

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 12:28
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2017年7〜9月のマイTop10アルバム(順不同)

どうも。

 

 

今日はこれをやりましょう。

 

 

今年になって、3ヶ月ごとにやっています、10枚の個人ベストを10枚選ぶ企画。7月から9月をやりますけど、この3ヶ月は今年に入ってから間違いなくベストですね。では、早速行きましょう。今回も例によって順不同です。

 

 

 

Lust For Life/Lana Del Rey

 

 まずは7月リリースのラナ・デル・レイのこの4枚目から始まりましたね。彼女はゴシックなバロック・ポップ路線は最初からすでにしっかりと確立されているため変化は難しいところがあるんですけど、今回はウィーケンド、スティーヴィー・ニックス、ASAPロッキー、ショーン・レノンとの積極的なコラボで、R&B方面だったりフォーク方面に曲の幅を広げて、さらにトランプ政権下で感じる不安や憂鬱から、メッセージがポジティヴな生への希望に転じて曲の生命力が強まった。今、最も首尾一貫したオリジナリティを持つ多作家アーティストの彼女がワン・ステップ確実に進化したのを僕はすごく評価しています。

 

 

 

Science Fiction/Brand New

 

 この3ヶ月は、この前の半年とガラリと違って、ロックを聴くのが本当に楽しかったものですが、その口火を切ったのが8月18日にリリースされた、ブラン・ニューのこのアルバムですね。彼ら、今もファンベースはポップ・パンク〜エモ系なんですけど、2作目のアルバムからとにかく暗く、今回はSEに精神病棟でのクリニックの様子が組み込まれていて、曲調もほとんどピンク・フロイドとか、アリス・イン・チェインズとか、そういう淀んだ出口の見えにくい、緊迫した暗さが漂っています。半分くらいアコースティックなんですけどね。その張り詰めた心情を表現するのに、ギターのメロディとフレージングが絶妙な役割を果たしてるんだよね。ギター・ロックであることにすごく意味がある作品だとも思いました。

 

 

 

American Dream/LCD Soundsystem

 

 引退宣言撤回のジェイムス・マーフィーのLCDサウンドシステム7年ぶりのアルバムでしたけど、いやあ、全くブレない!さすがですね。彼とか、エイフェックス・ツインのアルバムを聴くという作業って、もう、その一音一音の音の高級素材を聴くこと自体がすでに一つの”体験”だったりするんですけど、その最高のエレクトロのグルーヴに乗る、切れ味鋭いポスト・パンク・ギターに、トランプ政権下の社会の保守化に警鐘を鳴らすブラック・ユーモアに溢れたポリティカルなリリック。なんか、25年くらい前にU2が「アクトン・ベイビー」でやってたようなことを今。ジェイムス・マーフィがやってる感じですね。こういうのが出てくると、ロックもまだまだ安心できるんですけどね。

 

 

 

Sleep Well Beast/The National

 

そしてLCD の翌週にはこのザ・ナショナルですよ。彼らは本当に遅咲きのインディ・バンドだったんですけど、それを逆手にとるように、中年男性の色気とダンディズム、セクシーさを表現できるバンドになってますね。そういうのが表現できた人って、歴史的に見てもそんなに多くないですよね。ブライアン・フェリーとか、ニック・ケイヴとか、そんなもんじゃないかな。それでいて、昔からのポスト・パンク的なキレの良さも健在で、そういう曲では、もうキングス・オブ・レオンとかインターポールみたいなバンドが初期に持っていたキレをまだ表現できてもいるしね。この2週前に出たウォー・オン・ドラッグスの新作があまりにもエイティーズ風のAORでちょっと拍子抜けしちゃったとこがあったんですが、やっぱ、「尖ると尖ってセクシー」ってことで言えば、やっぱ断然こっちですね。あと、相変わらずメロディとヴォーカルの説得力が素晴らしいです。それから、猫も杓子もエレクトロな昨今で、自分たちにふさわしい形でカッコよく電子音をキメてるのもカッコいいです。

 

 

 

Concrete&Gold/Foo Fighters

 

 そして、ザ・ナショナルが出た翌週がこのフー・ファイターズ。今回、フー・ファイターズは、弟分のジョッシュ・ホーミ匹いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとリリースが3週しか違わなかったんですね。最近、もっぱら批評的にはQOTSAの方がフー・ファイターズよりは圧倒的に良い印象があったのでデイヴ、キツいかなと正直思っていたんですが、フタを開けてみたら、僕はこっちの方が圧倒的に好きですね。これ、ビックリしました!というのもQOTSAの場合、行き着いた方向性自体はすごく良くて、2007年の「Era Vulgaris」っていう、XTCがハードロックやったみたいな路線で良かったんですけど、曲そのもののキレがなんかもう一つかな、と思ったんですよね、今回。あとマーク・ロンソンがプロデュースでかんだ割にはその面白さがあんまり発揮されている感じがしなかったというか。逆にデイブの方が、アデルのプロデューサーとして名を馳せたグレッグ・カースティン使って、サビでハモッタリとか、エフェクトを多用してギターやベースをゆがめたりとか、いじりたい放題で、デイヴもそれを楽しんでるのが感じられて痛快でしたね。それでいて「The Sky Is A Neighborhood」とか「The Line」みたいな、歌い出しとサビがものすごくハッキリした彼ららしいアンセムもちゃんとあるしね。あ、カースティンのギターのアレンジが良くて、何げにスプーンみたいな、後期ビートルズ的な渋さも出てたりもして。なんか、これから後の彼らのターニング・ポイントにもなりそうな気がしてそこも好きなんですよね。

 

 

 

Vision Of A Life/Wolf Alice

 

 あと、出たばかりのウルフ・アリスのセカンド・アルバムですね。ここ最近、イギリスからビッグ・ムーンとか、マリカ・ハックマンとかいい女性ロッカー出てきてますけど、ここの紅一点のエリー・ロズウェルの方が一枚上だし、やっぱ華がありますね。生真面目な音楽性を難しく見せない技があるというかね。彼女、一本気でストレートなロックンロールができて、それが一つの売りにもできるタイプでもあるんですが、それと同時に、そこだけに凝り固まるでなしに、エレクトロを使った曲も十分にポップにこなすこともできる。なんか見てて、初期のPJハーヴィーが持ってた柔軟性を思い出すんですよね。今のご時世、どっちかに絞って才能発揮できる子ならいくらでもいるんだけど、それだけじゃやっぱり見てて限界感じるし、面白くないじゃないですか。エリーを見ていると、この先もまだまだ面白い方向に才能を広げていくことができそうな気がして楽しみなんですよね。

 

 

 

All We Know Of Heaven, All We Know Of Hell/PVRIS

 

 次の2枚はあんまり選んでる人いないと思うし選んだ僕自身が驚いています(笑)。まずはPVRIS(パリス)。この人たちは、メタルコアのバンド出してるレーベルの、ゴス系のエレクトロ・バンドなんですけど、本国のアメリカではそんなでもなかったのに。イギリスで2枚目のこのアルバムで4位のヒットになって注目されています。僕、これ、なんかすごくツボついてきたというか、なんか「ホールジー+ガービッジ+エヴァネッセンス」みたいな、なんかいびつなミクスチャーぶりがなんか気になるんですよね(笑)。後、ヴォーカルで曲も作ってるリン・ガンって女の子のヴォーカリストの歌いっぷりと、アンセミックなメロディメイカーぶりもすごく光るものがあってですね。なんか、スマパンの「アドア」あたりにありそうな曲を歌ってくるというか。そういう点ですごくスターになれる逸材だと思うんですけど、これがラウドロック界隈だけでしかまだレヴューされてないのはなんか解せないです。割と絶賛されてるんですけどね。

 

 

 

Broken Machine/Nothing But Thieves

 

 あと、前衛初登場で2位になったこのナッシング・バット・シーヴスも僕、面白いと思ったんですね。この人たち、デビューの時はなんかすごくMUSEのバッタモノっぽく感じてたんですけど、今回聞いてみると、最近の本家より全然いい曲かけてるし、そういう次元を超えたオリジナリティ出せてきてますよ。彼らの場合、やっぱりウリはヴォーカルのコナー・メイソンで、彼のヴォーカル・レンジとパワー活かせる曲が書けたらそれなりにかなり武器になるし、実際にそれができてるからかなり聞き応えのあるアルバムになってるのにね。「Amsterdam」とか「Sorry」「Soda」とアンセミックな曲もゴロゴロしてるしね。PVRISもそうなんだけど、「ポップで売れ線」とか判断してレヴューの対象から外されているような印象を覚えるんですけど、でも、たかだかこの程度のポップさで過剰に売れ筋意識して相手にしない、今のロックの批評媒体もどうかと思いますけどね。いい時代だった90sですら、売れて批評にも上るロックでこういう感じのもの普通にたくさんあったのにね。イマジン・ドラゴンズがロック代表として売れてる現状考えたら、それより全然健全ですらあると思うんですけどね。

 

 

 

Aromanticism/Moses Sumney

 

 ただ、最後はR&B2枚でシメましょう。今回はヒップホップは考えたんですけど外しました。ただ、歌もので外せないものはあって、その一つがカリフォルニアから出てきたモーゼス・サムニーという新人ですね。彼のサウンドはいわゆる「フランク・オーシャン、ソランジュ以降」と呼べるもので、凝ったコード進行のもと、時間軸をぶった切って、古めかしいホーンやストリングスもエレクトロも全部つぎ込んだようなケイオティックな美しさが、この新世代のR&Bのウリかなと思っているんですけど、このモーゼスに関してはそれがもはや当たり前で、彼の場合すごいのは、その次元すら超越して、シガーロスとかジェフ・バックリーの域までチンじゃってる事ですね。ここまで複雑かつ雄大な事ができるニューカマーというのもそうはいません。今年のサプライズ・リリースだし、このまま成長したらどうするんだろう、と思ってゾクゾクします。

 

 

 

Trip/Jhene Aiko

 

 そしてラスト、タイラー・ザ・クリエイターにしようか、これにしようか、散々迷ったんですが、日系人女性R&Bシンガー、ジュネイ・アイコのこのアルバムでシメようかと思います。彼女、名前自体は5年くらい前から知ってて、その頃からアルバムが全米トップ10に入るくらい売れてはいたんですけど、今回も全米で5位、イギリスで50位台のヒットですね。これも、サウンド的には「フランク・オーシャン以降」な感じの曲が今回すごく目立っていてですね、とりわけフィストカフスっていうソングライターが絡んだ曲がすごく幻想的でいい曲です。印象派、って感じでね。「これ、なんでもっと注目されないんだろう」と思っていたら、彼女、ラナ・デル・レイの今度の全米ツアーのオープニング・アクトに決まってますね。彼女と、カリ・ウチスっていう、これも来年、かなり力入れて押されそうなラテン系の女性シンガーがいるんですが、この2人がラナの前座っていうとこで、ラナのセンスの良さを改めて感じてるとこでもあります。

 

 

 でも、今回、自分で選んでみて、結構意外なものが選外になって自分でも驚いてます。だってこの3ヶ月って、アーケイド・ファイアもあったし、HAIMもあったし、QOTSA、ウォー・オン・ドラッグス、ザ・キラーズと目玉続出だったのにですよ!でも、正直、今、名前を挙げたものならば、ちょっと入らなかったかな。ぶっちゃけ、アーケイド・ファイアとHAIMに関してはガッカリしてます。

グリズリー・ベアとかエヴリシング・エヴリシングとかもそうかな。ホラーズはわりに良かったけど、トップ10まではいかなかったかなあ。

 

 

 あと選外だったものの、候補に考えたものとしてじゃ

 

 

Flower Boy/Tyler The Creator

Mura Masa/Mura Masa

To The Bone/Steve Wilson

Hippopotamus/Sparks

Antisocilites/Alvvays

 

 

 このあたりもよく聞きましたね。

 

 

 次はもう、年間ベストを具体的に考えないとけないですね。10、11月のも加わるから選ぶの大変そうですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 13:27
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マーク・ボランも没後40年

どうも。

 

 

今日、9月14日は

 

 

グラムロックのパイオニア、Tレックスのマーク・ボランの命日でもあります。この日に29歳で自動車事故で亡くなっています。

 

奇しくも、こないだここで書いたエルヴィスと没年が同じなんですよね。共に1977年です。エルヴィスの場合は、親が反応したのでリアルタイムで覚えてますけど、さすがに彼の場合は当時は知らなかったですね。

 

 ただ、幸いにして、その3年後には地元のラジオ番組の影響で知ることになりましたけどね。聴いた曲はこれでした。

 

 

 

やっぱ、これでしたね。1980年に1972年の曲を聴いたわけでしたけど、流行のサイクルの早い時代でしたけど、スンナリ入ったというか、当時から、小学生でしたけど、このストリングスといい、痙攣声といい、なんか不思議な魅力のある曲だなと思いましたね。

 

 僕の住んでた福岡県って、Tレックスが伝説化してたんですよ。おそらく、地元でライブしに来たのが大きかったと思うんですけど、珍しく僕の住んでた北九州市にやってきたこともあって、年の離れたロック好きの人と話すと「見に行ったんだよ」なんて話も聞かされたりもしましたね

 

 

 

あと、僕の当時買ってたミュージック・ライフでも、振り返りの特集をよくやってくれたおかげで、マークの妖艶な魅力もよく目にしてたんですよ。「ああ、こういうのがアダム・アントとか、ボーイ・ジョージの元祖だったんだな」と思いながら見てました。「化粧をする男性」というか「女装する」とか、この当時だと目にしないわけではなかったんですけど、「歴史的にそういうのの走りだったんだな」というのは、なんとなくわかりましたね。

 

あと、

 

 

 

 85年にこういうカバー・ヒットもありましたね。これも愛しのデュラン・ネタなんですけど、今冷静に聞くと、あんまりいいカバーじゃないなあ(苦笑)。

 

 

 ただ、音楽をまとめて聞くのはもう少し時間を要しましたね。僕がじっくりカタログを聞くキッカケになったのは1989年くらいですね。ちょうどCDでTレックスの作品がまとめて廉価になった時で、この頃に

 

 

この「テレグラム・サム」を聴いて、文字通りに電撃サムなショックを受けるわけです。この生々しい、ジージー、ガンガンにかかったエレキのファズに、タメの効いたうねりのあるリフに、簡略的な短い楽曲。当時、メタルがすごく人気で、そっちの方面も全く聞かなかったわけではないんですが、やっぱり、僕のロックの趣味を割に決定的にしたところはあったような気がします。同じ頃にレッド・ツェッペリンとかザ・フー、ハードロックでも、エアロスミスとかAC/DCみたいなリフ主体のロックンロールが好きになりましたからね。この頃、邦楽でビートパンク流行ってましたけど、音に厚みのあって腰から踊れる分、こういうタイプの方が好きでしたね。

 

 

 

あとTレックスの場合、呪文みたいな不思議な英語の語感とか、低い声で「イエーッ!」とか「ルアアアアア」とかいう不思議な呻き声とか、ああいう無駄な尾鰭の部分にも惹かれましたね。ああいう感覚、今でさえも他では体験できないものですからね。

 

 

これ、僕の持論なんですけど、彼のこういう感覚が

 

 

やっぱプリンスなんですよね。「Cream」なんて曲も「Get It On」の言ってしまえばパクリでしたからね(笑)。

 

プリンス、公言してませんけど、歌い方なんてほとんど同じだったし、あの呻きと「ウアアアア」なヴィヴラートとかもソックリで。あと、このあとに「Peach」っていう、曲そのものがグラム・ロックの曲もあるんですけど、あれが93年だったんですけど、その当時から「プリンス、マーク・ボラン説」は僕、ずっと言ってましたね。そのあと、プリンスが昨年亡くなったあとに、「黒人版ジギー・スターダストだった」なんて称する英米のジャーナリストも結構いたんですけど、その時に「ね?やっぱり、そうだったでしょ?」と思いましたもん。で、さらに「ボウイじゃなくて、ボランだったと思うけど」とも思いましたけどね。

 

 

で、ボウイとボランに関しては、入りやすいのがボランだったんですけど、時間かけて聴いていけば、ボウイの曲の方が単調さがなく楽曲そのものに奥行きがあるし、後、そのあとの多岐にわたる音楽的な拡張とドラマ性がある分、長く魅了されましたね。僕のボウイ好きはここでもかなり強調して書かれてますけど、やっぱりグラムってデカいんです、僕の場合。

 

 

 

その2人の共演がマークの死の直前に実現してたんですよね。当時、彼は自分のショーをテレビでもってたんですけど、そこでね。収録が死の直前でオンエアが死後になってますけどね。今はユーチューブがあって、こういうのが簡単に見れるようになって本当にいい時代です。昔、この話を聞いたときは、もう見たくてしょうがなかったものですが。

 

 

それから、僕が2000年代にやってた「Club Hard To Explain」で、この曲かけると、とにかく盛り上がってね。ホワイト・ストライプスと続けてかけたら、もう、効果的でしたね、大団円になって。あと、オアシスの「シガレット&アルコホール」も続けてかけるといいんですよ、これ。そういう後のロックの定番と相性も抜群なほど、普遍性もありましたね。

 

 

 

そして、本当につい最近ですけど、「ベイビー・ドライバー」でも、Tレックスの「デボラ」が効果的に使われました。こういう風にして、確実に残って行っているものなのです。

 

 

今回はとにかく曲を聞いて欲しかったので、こういう感じで行きましたが、FromワーストToベストも出来る準備はしてます。ただ、タイミング悪いことにマーキュリー・プライズの発表があるんですよね。どうしようかな。

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 14:01
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40代の大健闘は嬉しいけれど・・求むロックの20代の逸材!

どうも。

 

今日も先々週に似た話をします。

 

 

 

LCDサウンドシステムの新作「American Dream」が明日発表のビルボードのアルバム・チャートの1位を獲得します!やった!!

 

僕、LCDは前からすごく好きでですね。彼らの場合、音選びの感覚の時点で抜群に好きなんですけど、僕的にはジェイムス・マーフィーその人なんですね。彼、僕と同い年なんです。しかも、30代半ばまでは裏方仕事でエレクトロの最高のプロデューサーやってたのに、30代校半からバンドのフロントになり、40代でいい意味でスターになろうとしてインディの界隈で目立って、今やフェスのヘッドライナーも有り得るくらいの位置まで来ましたからね。なんかこう、もともとスターとかそういうのに縁のなかったタイプの人が、「やっぱ、そういうのじゃダメだ。引っ張って行かないと」と自覚出した結果、牽引力を発揮する姿が見てて痛快というかですね。もっと増えてほしいタイプです

 

 

 そして次の週だと

 

 

ザ・ナショナルですよ。彼らの新作も素晴らしいですね!ゴシックなダークさとアメリカンなアーシーさが両立する稀有なバンドでしたけど、アルバムを追うごとに大人の色気が濃く出てくるバンドになったというかね。ロマンティックでセクシーで。それでいて、陳腐なアダルト・コンテンポラリーには陥らず、時折すごく鋭角的なところも見せたり。ヴォーカルのマット・バーニンガーって、なんとなく「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンの醸し出すようなクセのある中年男の悲哀があるというかね。彼も僕の一つ下で、ブレイク・ポイントも40過ぎだったんですけどね。

 

そして2週前と今週末には

 

 

クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジにフー・ファイターズですよ。彼らの新作も出た、あるいはもうすぐ出ます。彼らも「自分らがロック引っ張らないと」という自覚の非常に強いひとたちですね。ジョッシュ・ホーミが僕の3つ下、そしてデイヴ・グロールが僕の一つ上。渋いとこだけを突くでなしに大衆的に人気引っ張れてるのは立派の一言です。

 

 

こんな風にして、今年のロック、40代がなんかすごく元気です!作品の評価も高い上にセールスでも、世界的にチャート実績もいいしね。彼らを見てると頼もしいし、僕自身も頑張らないと、という気になる・・のです

 

が!!

 

でも、もうちょっと20代からのロックでドキドキしたいぞ!!

 

 

 やっぱり、本来、ロックって、若いアーティストの音楽だし、聞く人もその昔は若い人がほとんどの音楽だったわけですからね。最近は、リスナーの方もロックを卒業したりしないし、アーティストの側も、年上には年上がいる状況でもあるので変に老け込みもしなくなったし、それはそれで自然になったとは思うんですけど

 

 

若い人が台頭してきた方が、やっぱりロックの将来が安心できる!

 

 

だって、そうでしょ。30歳くらいでフェスのヘッドライナーになれてたら、向こう、うまくいけば30年くらい安泰にもなりやすいわけじゃないですか。ロックのフェス文化を絶やさないためにも、若くてしっかりした人たちを育てなければなりません。

 

 

 でも、とはいえ、現状見てみるとですね、例えばキラーズとかミューズあたりがもう30代後半ですよ。コールドプレイももう40に手が届いたかな?アークティック・モンキーズとかラナ・デル・レイだって、30に乗ったばかりくらいです。ヴァンパイア・ウィークエンド、フリート・フォクシーズ、フォールズあたりもこの世代です。

 

 

 今のロックの20代で実績がある人だと、フローレンスとか、アラバマ・シェイクス、The 1975、The XX、ロイヤル・ブラッド。こういったあたりが20代後半。20代の前半あたりだと、もうほとんどいない。計算できるのLordeくらいのもので。その世代でEDMのDJとかヒップホップのラッパーとかはゴロゴロ若い人がいるのに。そう考えると、少し心配なんですよね。

 

 

 で、今、誰がその候補かな?と考えた時に思い浮かぶのはこのくらいかな。

 

 

 

インディだと、この辺りはいい素材ですけどね。Alvvays(オールウェイズ)とウルフ・アリス。カナダの前者はすごくトゥイーポップとかシューゲイザーとか、インディの様式美に激しく訴えるタイプですけど、その純度と完成度がすごく高いですね。イギリスの後者はギター・ロックにすごく訴えかけるタイプですけど、曲調の予測を全くさせてくれないところが面白いですね。フロントの女の子もすごく華があるし。

 

・・って、やっぱり女の子になるんだよなあ。というか、最近、インディ男子がモジモジした状況が続きすぎでホント問題です。女の子の方が、普段から、ポップ・ディーヴァの世の独占ぶりが強いから、「私の価値観はああいう人たちによっては表されてはいない」の意識が強いでしょうから、まだ反動で良いものが出てきやすいんじゃないかな。

 

 

期待の男だと

 

 

 

レモン・トゥウィッグスとかグレタ・ヴァン・フリートとか、彼らはまだ20歳前後の若さですけどね。両方とも期待値はかなり高いんですけど、前者はアヴァンなセンスは抜群でライブも評価高いですけど、大きく当たるにはもう少し曲の練り込みが必要だし、「レッド・ツェッペリンの再来」みたいなことも言われている後者は逆にライブの映像見るからにまだ不慣れな感じがして堂々としてない点が課題ですね。まだ、彼らだと”素材”なんですが、両方ともアメリカのバンドというのも「今、どうかな?」と思うところです。というのも

 

アメリカのキッズで「EDMとかヒップホップの方が機械を使ってるから進歩的だ」と信じてるタイプの子が多いから!

 

 

 これ、今のサイトの掲示板とか見てると結構ハッキリわかります。例えば、ビルボードのフェイスブックの掲示板とか。若い子が結構ソレに近いことを平気で書き込みますね。プロフィール調べてみたら、バリバリのEDMキッズだったり。顕著だったのはワン・ダイレクションがソロに転じた時ですね。ハリーがロックの路線でアルバム出した時に「ハリーのやってることは古臭い。ザインやリアムの方がモダンで新しいことをやってる」とかいう子が結構いたりね。ハリーのがもう少し工夫が欲しかったのは正直に言えばあるんですが(苦笑)、だけど、「生演奏=古い、電子音=最新式」という図式的考えはハッキリ言って危ないし、この先、絶対、落とし穴、来ます!その主張、80年代の後半にハウスとかヒップホップが出てきて、アメリカがオーヴァー・プロデュースのメタル、イギリスがインディ・ダンスで沸いてる時に全く同じようなこと言う人いましたから。で、その直後がグランジに代表される60、70年代の回帰だったわけでしょ?絶対、どこかでつまづくと思うんですけど、だけど、そういう気づきがあるのに、あと少なくとも4年くらいはかかりそうな気がします。今はまだキッズは音楽聴く方ではストリーミング・サービスも使ってるし、モダン・テクノロジーでイケイケな状態なので、なかなか気がつかないかもしれません。あと、ヒップホップに関しては、良い素材の台頭は僕も大いに認めるし、今が久々の良い時代なのは確かなんですが、早くもきな臭い空気も漂ってきています。これに関してはまた別の機会に書こうかと思います。

 

 

 そんなこともあるのと、ここ数ヶ月、別の投稿でも書いたお寒い状況もあり、アメリカでの、特に若いとこでのロック、今、本当にお寒い状況なんですが、実はイギリスのアルバム・チャートを見てると、毎週何かしらロックがトップ10に入ってて賑わっています。

 

 

 しかし、それは今や必ずしも、日本のUKロックのファンが喜びそうなタイプのものばかりではありません。むしろ、そういうNMEが主体のインディ・ロックのタイプはイギリスでさえも占める割合が落ちてきています。今やかの国のロックでも

 

 

 

この「クラシック・ロック・マガジン」とか「ロック・サウンド・マガジン」の層の台頭が目立ちますね。

 

 厳密に言うと、クラシック・ロック・マガジンだけじゃなく、アルティメット・クラシック・ロックとかモジョ、アンカットも足したクラシック・ロックの勢力と、ケラング!とロック・サウンドを足したラウド・ロックの勢力、と呼んだ方が正確かもしれませんが、今、イギリスで根強いファンを掴んでるのはこの2媒体だと思います。

 

 特に僕が台頭を気にし始めてるのは後者ですね。ここが今、イギリスのロック聴きたい若年層の取り込みに走っています!イギリスでラウド系だと伝統的にケラング!なんですが、今、そっちの方が対象アーティストと読者の年齢層をあげに走っているところを、ロック・サウンドの方は徹底して若いバンド狙いなんですね。その甲斐もあってか、最近、ブリング・ミー・ザ・ホライゾンとかネック・ディープみたいな、ここの押しのバンドで文化圏がこの国で出来つつありますが、試みとしては、それ、本来ロック・メディアがやることだったんだと思ってます。

 

 ここのジャンルの音楽、僕が真正面から聴くのは、まだ少し抵抗がないわけではないんですが、ただ、気になるのは出始めてきています。

 

 

 

 

このPVRISなんて、かなり好きなんですよ。こないだイギリスで4位まで上がってましたけどね。なんか、ホールジーとガービッジとエヴァネッセンスを足して3で割った妙な感じがね。あと、スマパンの「アドア」に入ってるような曲を真正面からやってる感じというか。僕、パラモアのインディ・ロックへの突然変異化も以前から評価してるんですが、ここのジャンルから、いい意味でちょっと普通じゃない方向に行くバンドが出てきたら結構面白いことが起こるような気がしてます。まあ、今はストリーミングでゴッチャに聞ける世の中になってるので、その辺りのことは今後活発に起こりそうな気もしてますけど

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 13:15
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ロックをインディ・ロックだけに頼るのには限界があるのかもしれない

どうも。

 

今日はこういう話をしましょう。

 

 

毎年、8月というのは、リリースがちょっと小休止になるタイミングなので、本来なら大きなトピックがないはずのタイミングです。

 

が!

 

今年は違いました。僕にとっては

 

 

ロックの見方の目からウロコが落ちる1週間になりました!

 

 

ちょっと、今週の世界のヒットチャートにおけるロックでそれぞれ驚くようなことが次々と起きたんですよ。

 

 

まず、これ、明日もう1回改めて発表しますが、アルバムで1位になったの、これだったんですよ。

 

 

 

 

 

このブラン・ニューってバンドですね。彼らはエモ/ポップ・パンク系のバンドとそもそもは解釈されてるバンドなんですけど、上の曲を聴いてもおわかりのように、エラく暗いでしょ?これ、彼らの8年ぶりの新作だったわけですけど、それにしても僕はビックリしましたね。だって、彼らのアルバム、2003年だったかな、駆け出しの頃、批評的にほめられていたから買ったことあったんですよ。そのときはまだ典型的なポップなエモって感じだったのに、今回のアルバム、なんかもう、ピンク・フロイドみたいっていうか、レディオヘッドの90年代みたいというか。僕が一番近いと思うのは、アリス・イン・チェインズがアコースティックな曲調やるときから、猟奇的な感じを差し引いた感じというかね。そういうのに一番近いなと思ったんですよね。

 

 このアルバム、ちょっとした話題性もあったんですよ。それは、このアルバムの中で合間合間に聴かれるSEがサイコセラピーを受けている人のインタビューで。で、上の動画がジャケ写なんですけど、「えっ、それって、どこから逃げてるの?」という感じもなかなか想像すると怖くて。そんな雰囲気の中、大半がアコースティックで、気持ちが高ぶったときにエレキのファズがかぶったり、ブルージーになったり。すごく、ギターの表現力が意味のある作品というか、ここ数年で一番良いんじゃないかと思えるくらいのギター・アルバム(もちろん内省的な歌詞も見事なんですが)だと思いましたね。

 

 これ、やっぱり内容的にこれだけ濃密だったこともあって、批評媒体の絶賛もすさまじいんですよ。一番縁遠く見えるピッチフォークまでもがBEST NEW MUSICっていう、いわゆるオススメ作品にピックアップしましたしね。僕もこれ、今年の自分の年間ベストのトップ10に入れることはもう決定済です。本当に素晴らしいですよ。

 

 

 

 あと、今週はこのブラン・ニューだけじゃなくて、もうひとつパンクバンドがなんと、イギリス、アメリカ、オーストラリアの3つのチャートで一気にトップ10入りしてるのがあったんですね!ブラン・ニューでもアメリカとオーストラリアだけだったんですけどね。それがウェールズのネック・ディープというバンドです。このバンド、デビューが2010年代の若いバンドで、フロントマンがまだ23歳と言う若さです。

 

 サウンドは、まあ、まだいかにも典型的なフォーマット通りのポップ・パンクという感じなので、まだ僕個人的にはそこまで強くは推せないのですが、ただ、その若さで、そんな英米豪のチャート全てでトップ10入ると言うのは並のことではありませんからね。それは客観的に認めるのと、あと、これですね。

 

 

 

シングルにもなったこの曲のレベルの曲がアルバムの半分くらい埋められるようになると、もう一皮むけると思います。これは素直に良い曲だと思うし、これだけアルバムの初週で売れるんだったら、これをプッシュ曲にしてロック系のラジオ局でかけてもらうと良いんですけどね。このバンドの場合良いのは、ドラマーがかなりうまくて、その分、立体的な曲が作れるとこなので、面白い存在だと思います。

 

 

 そして、イギリスのチャートですが、今週、これも驚きましたね。

 

 

 

 

 

 こないだの全英チャートでも紹介しましたけど、このスティーヴン・ウィルソンですね。この上のジャケ写の「To The Bones」という作品がですね、こないだのイギリスのチャートで初登場3位だったんですね。彼、現在、49歳なんですが、その年にして、ヒットの自己最高を大幅に更新しました。それまでがこの前のアルバムの13位でしたから。

 

 いや、それだけじゃありません。なにせ、このアルバム

 

 ドイツだと初登場2位です!

 

 さらに

 

 フィンランドだと1位です!

 

 もっと言うと、イタリア、フランス、スウェーデン。オーストラリアと、トップ30にも入っています。

 

 なぜ、こんなにヨーロッパで結果が良いのかというとですね、彼はもともと

 

 

 このポーキュパイン・トゥリーというバンドのフロントマンだったんですね。このバンドは、プログレ・マニアの中では、「90年代以降の若手バンドの筆頭格」みたいな評価を得ていたバンドで、2000年代に入ったくらいからジワジワ売れはじめてきて、2008年に発表した「Fear Of A Blank Planet」という、ラッシュのアレックス・ライフスンやキング・クリムゾンのロバート・フリップも参加したアルバムがあったんですが、これがヨーロッパ全土で大ヒットしたんですね。大ヒットといっても、イギリスで31位、アメリカで59位とかだったので地味ではあったんですけど、その代わり、どこの國でもチャート・インしたんですね。

 

 このバンドは2010年に活動休止になって、スティーヴンはソロに転じて、そこから5枚アルバムを出すんですけど、出すたびにチャート実績良くなってて、前作の時点でポーランドでは2位まで上がるヒットにもなっていました。

 

 ただ、上の曲を聴く分には、そんなにプログレっぽい感じはしないでしょ?それはスティーヴン本人も言ってることで、「父親がプログレ好きで、母親がアバとかカーペンターズが好きで、僕は両方好きだったんだよ」と普通に受け答えしているインタビューもあるし、基本はポップ・ソングです。ただ、本人いわく「プログレとは物語を語る音楽で、そんもストーリーがときに長くなることもあるんだよ」と、アルバム内の10分を超える長尺曲の説明をしてたりします。

 

 

 僕、プログレは強くないんですけど、彼の場合は世代もすごく近いし、「テャイーズ・フォー・フィアーズとかケイト・ブッシュも好きだった」と語ってるくらいに変に「プログレ史上主義」的なところもなく親しみ易いですね。上のアルバムも、年間トップ10に入れたいとまでは思わなかったですが、もう2回通しで聴いたくらいに愛聴はしはじめているし、ソロとポーキュパイン・トゥリーのアルバムはひととおり聴いてみようかな、とは思っています。結構、枚数、多いんですけどね。ちなみにポーキュパイン・トゥリーの¥キーボードは、なんとあの元ジャパンのリチャード・バルビエリですよ!上の写真の左はじです。

 

・・なんてことを知ったのは、つい最近なんですけどね(笑)。ポーキュパイン・トゥリー自体は、昨年の今頃に、ポーランドのitunesのチャートに入っていたのを見て、「これ、現地のバンド?えっ、イギリス?」と思って知ってウィキペディアで調べて興味を持ったのが最初でしたね。

 

 

 でも、それにしても、今週のこの結果は意外だったなあ〜。

 

 

 だって予想では

 

 

 

グリズリー・ベアのこの新作が注目を浴びるだろうと思われていましたからね。あと。イギリスだとエヴリシング・エヴリシングも出ていました。インディ・ロックの目線だと、この2枚が注目盤であり、一般評価も決して悪い感じはしませんでした。ただ、ゴメンナサイ、僕には本っ当につまんなかったんです!

 

 なんかですね、もう、「インディのバンドがエレクトロの要素取り入れてみました」みたいのに、そろそろ本格的に飽きて来てるというか。あと、ロウファイ系ギターのバンドとか。どっちもアメリカに多いタイプですけど、なんかいかにもmyspaceのときからかわらない、メガネ面でファッションに気を使わないタイプのバンドがちょっと様式化してるのがなんか嫌になって来たというかね。プログレがプログレッシヴじゃ全然なくなったように、インディも、鳴らしてる音楽の存在自体がもはやインディペンデントなんかじゃ全然なくなってる。誰かの人まねに終始してる感じがしてきてるんですよね。

 

 

 すると、どうやら僕みたいに飽きて来てる人が実際に少なくなかったからなのか、グリズリー・ベアは2枚続けてトップ10に入った全米でさえそこまでウケず、ここまでトップ10入りした国がゼロ。エヴリシング・エヴリシングも、イギリスで5位に入っただけで、他の国、かけらも入ってません。

 

 

 上にあげた人たちと比べて、結果が随分さみしいと思いません?でも、これが現実なんだと思います。

 

 

 なんで、こんなことが起こっているのか。これ、別に「インディ・ロックのファンが減って、エモやプログレのファンが増えた」とか、そういう単純なことではないと思います。これ、むしろロックファンの中に

 

 

 ジャンルや世代の違うアーティストを、ストリーミングと検索で見つけやすくなっているから

 

  

 僕はそういうことなんじゃないかなと思っています。

 

 

 たとえば、今週はたまたまそういうことが起こっていないんですけど

 

 

 

 

この3週前には、なんと元祖ショック・ロッカー、アリス・クーパーのニュー・アルバムがですね、イギリス、オーストラリア、ドイツ、スウェーデンでトップ10に入る事態が起きています!

 

 

 これに限らず、昨今、クラシック・ロック系の復活、すごいんです。そして、それは2000年代の半ばからはじまってることでもあります。

 

 

 何からなんでしょうね。ハッキリとはわからないんですが、たとえばアイアン・メイデンなんかは40代後半になったくらいからセールスが自己最高を記録しはじめ、ここ数作はもう全世界的にナンバーワンになるような事態が続いてます。あと、彼らに比較的世代が近いとこだとスレイヤーとかドリーム・シアターにも同様の現象があるし、ベテランだと、ジューダス・プリースト、KISS、そしてディープ・パープルね!パープルの今年出たアルバムも、ドイツで1位でイギリス、イタリア、フランスでトップ10に入ってましたからね。彼らが昨年に遅れてロックの殿堂入りしたのは、最近のこの活躍が後押ししたからでしょう。あとモーターヘッドも。レミーがなくなった際、結構大きな話題になったのも、ここ最近のアルバムが自己最高に近いチャート・アクションをヨーロッパ各地で記録していたからです。

 

 

 あと、別ジャンルだと、デペッシュ・モードの今年のアルバムはフランス、イタリア、ドイツで1位だったし、デュラン・デュランも英米トップ10のイタリア1位とかですし、ペットショップ・ボーイズあたりも国際的に売れますからね。それからソロシンガーだと、レナード・コーエンは昨年に亡くなる前からここ数作はヨーロッパでは軒並みヒットしていたし、トム・ウェイツ、ヴァン・モリソンも出せば国際的に必ず売れますね。

 

 

 こうしたことからもわかるように、最近では、年齢に関係なく、充実した作品を作り続けていたら再評価がついてくる世の中になっています。もう、今頃は何歳でロックしてようが関係ありませんから、面白いとさえ思えば、若い人だって手を伸ばします。そして、今やそれが、「いくら聴いても料金が同じ」なストリーミング・サーヴィスの発達で手を伸ばして聴きやすいようになった!

 

 

 これが大きいんですよね。たとえば、10年くらい前だったら、もう、Hard To Explainもやってる状況だったし、インディ・ロックを決め打たないことには、どうしようもなかったんですよね。ほかのジャンルも、欧米の批評メディアが話題にするもの。こういうものを買うのに予算が手一杯になってしまって、たとえば今回みたいなエモとかプログレとか、ひと昔前のベテランなんて、聴きたくても金と時間と機会が全くなかった。それが今や、情報をえ次第、ストリーミングの検索のとこで調べてすぐにアルバム1枚単位でフルで聴くことができるし、そのアルバムの詳細なデータ関係も、英語版のウィキペディアを読めばしっかり出てくる。僕がさっきから言っているチャート資料もそうですけど、そういう細かい有益なデータもしっかり織り込まれるんですよね。

 

 

 世の人みんなが僕のようなリサーチをかけているわけではないともちろん思うんですけど、その何%とかでも情報って今だったら耳に入りやすいし、「検索してみて興味を持つ」という機会が増えるわけじゃないですか?そうした、「ふとした情報から湧く興味」が、「ジャンルの決めうち」より面白くなったりする時代なのかな、とも思うわけです。

 

 

 となると、「画一化した特定ジャンル」より、「聞いたことないけど、なんか違う個性は確実にあるもの」の方に流れて行くのも自然だと思うんですけどね。

 

 

 今回、長くなっていますが、これでシメではありません。もうひとつ紹介してシメに行きたいと思います。

 

 

 ここまでは、「ジャンルや世代を超えて面白いロック」の発見の話をしてみましたけれども、とは言え、なんだかんだで若くて勢いがあって、将来大物化しそうなバンドやアーティストを見つけた方が、それはやっぱりワクワクしますよね。

 

 

今週、オーストラリアで初登場1位になったバンドに僕はそういう逸材を見つけました。

 

 

まあ、これはれっきとしたインディ的なバンドではありますが、これです!

 

 

 

 

 いや〜、これはカッコいいですね。言うなれば、ザ・ナショナルがU2の曲をやったような雄大さ。そこに部分的にスプリングスティーンのエッセンスが加わる感じ。文学性と熱い誠実さのあるパワフルなロックという感じじゃないですか。

 

このバンドはですね

 

 

 

ギャング・オブ・ユースといってですね、これが2枚目のアルバムになるんですが、それが発売の時点でオーストラリアのローリング・ストーンでは表紙になっています。このバンド、左から2人目のフロントマン、デイヴ・ルオーペペというカリスマのワンマン・バンドみたいなんですけど、一昨年にデビュー作が出た時点から既に大型新人と話題で、その年のオーストラリアの音楽賞をテイム・インパーラとコートニー・バーネットと堂々と並んで争った、という話まであります。

 

 

 彼らライブも良さそうだし、これ、本国だけにとどめず、インターナショナルでちゃんと勝負しないかな。サウンドの持つ広がりと包容力なら、最近のアメリカのインディのバンドの何倍もありますからね。フロントマンはまだ25歳と若いバンドですけど、このサウンドなら上の世代にも訴求は十分可能でもありますしね。若いヘッドライナー候補が全体的に不足している現状なら、マイペース型のバンドより、カリスマ性のあるバンドを育てるのは急務でもありますからね。これは気がつかれて欲しいバンドですね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 12:59
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グレン・キャンベルもランクイン 沢田太陽が選ぶ60sポップ裏名曲10選

どうも。

 

この話もしないといけなかったんですよね。

 

 

 

 

アメリカの偉大なカントリー・シンガーで、かつ、60年代の西海岸ポップスの重要セッション・ミュージシャンでもあったグレン・キャンベルが亡くなってしまいました。彼の名はカントリーを知らなくても、ビーチボーイズ絡みで知っていたり、ちょっと年齢の上の方だと、コカコーラの日本のみのCMソング(実は僕、これは知らなかったのですが・・)でご存知の方もいらっしゃると思います。¥¥

 

 

僕は、このグレン・キャンベルと言う人はですね、彼が60年代の末に発表したある1曲が、自分的な琴線に刺しまくって、それでもうすごく好きになった経緯のあるアーティストです。なので、彼の追悼特集で代表曲を紹介するということも考えたのです

 

が!

 

 

実は僕にはそういう60年代の裏的存在のアーティストや曲で好きなのがたくさんあるじゃないか!

 

 

ということに気がついたんですね。ビートルズとかディランとかストーンズとかみたいなビッグネームじゃない、ちょっとマニアじゃないと知らないタイプのものだけど、でも、実はすごくシクスティーズらしいアーティストや曲って多いんだよな。そういうのが、ちゃんと紹介出来なくてもどかしいな、と思ってもいたんですね。

 

ということで、今回は

 

 

僕の選ぶ「60sポップの裏名曲のプレイリスト」、その10曲を紹介したいと思います!

 

 

では、早速行かさせていただきます。

 

Wichita Lineman/Glen Campbell(1968)

 

 

1曲目はやっぱこれですね。グレン・ギャンベルの「ウィチタ・ラインマン」。

 

 

これは1968年に全米3位まで上がる大ヒット曲なんですけど、僕がどうしてこれを知ったかというと、90年代の前半にですね、なんかで読んだ本で「60年代の後半に、ジミー・ウェッブという優れたソングライターがいた」ということで紹介されてて、そこで代表作としてこの曲があったんですね。それで、NHKの資料室で調べたらちゃんとあって、聞いてみて、まず、このストリングスとホーンのアレジにまず圧倒されたんですね!そしてグレン自身が物語るように遠距離恋愛の先にいる彼女に語りかける物語性。あいだに、信号音と郷愁をイメージしたような、あれ何の楽器で出してるのかわからないサビ終わりのリフ、そして2コーラス目が終わった後にグレンが弾く、ひずんだ音で単音で弾くAメロ繰り返しのギター・ソロ。そして曲が終わりに近づけば近づくほど、ストリングスのアレンジに緊迫感と幻想感が加わっていくんですよね。「ああ、なんてカッコいいんだ」と思って、20年以上大好きな曲です。

 

 グレンはこの頃、この他にも同じくジミー・ウェッブ楽曲の「By The Time I Get To Phoenix」「Galveston」「Where's The Playground Susie」や他の人の曲でも、「Gentle On My Mind」もすごく良い曲だし、あと、ブライアン・ウイルソンが提供した、山下達郎のフェイバリット曲でもある「Guess I'm Dumb」ね!こういう曲がことごとく大好きです。この頃の彼の作品は、アル・デ・ローリーという、60年代の前半にフィル・スペクターのプロデュース作品でキーボードやってた人がアレンジャーやってて、彼のストリングスとホーンのアレンジは本当に見事なんですね。グレンも優れたギタリスとかつ、見事なハイトーンを持つシンガーなんですが、ウェッブの曲もあいまって、1971年くらいまで強いケミストリーを持ちます。ただ、ローリーとウェブが離れちゃってから、あんまりカッコよくない曲で全米1位2曲出して、そっちはあんまり好きじゃないんですけどね。

 

 

Walk On By/Dionne Warwick(1963)

 

 

 続いては、若きディオンヌ・ワーウィックによるこの曲です。これは別に裏じゃなくても有名ですけどね。

 

 ただ、ディオンヌというよりはやっぱり曲を書いたバート・バカラックです。60年代前半は、ロック史的には、「フィル・スペクターがプロデュースしたアイドルの時代」という定義のされ方をされがちなんですが、僕、フィル・スペクターより、同じ時期に大活躍したバカラックの方が圧倒的に好きなんですね(苦笑)。なんかスペクターって、まず殺人犯だったり、スタジオでピストルちらつかせたとかの逸話も嫌だし、歌詞が露骨に男尊女卑だし・・っていうのもあるんですが、分厚い音の壁はともかく、その骨格となってる曲の部分で面白いと思ったことがあまりないんですね。

 

 その点、バカラックの方が、洒落てかつ意外性のあるコード進行があるし、合いの手で入れるストリングスやホーン、女性コーラスが効果的だし(この曲の2コーラス目の出だしなんて、その典型!)、あと、どことなくヨーロピアンな影のあるテイストがあるというか。そこに、上手いんだけど、なんか「ソウルフル」と呼ぶには線の細い感もあったディオンヌの声って絶妙に合ったんですね。彼女がバカラックにとってのミューズに60年代の終わりまで結局なったのもよくわかります。

 

 あと、ヨーロピアン・テイストが強く感じられたせいなのか、ディオンヌがバカラックと、この曲とか「Anyone Who Had A Heart」(こっちにしようか、散々迷った)みたいな曲で築いた路線って、イギリスの「女の子版ブリティッシュ・ビート」、具体名を上げるとダスティ・スプリングフィールドやサンディ・ショー、シラ・ブラック、ルル、マリアンヌ・フェイスフルといったガール・ビートシンガーたちの楽曲のお手本フォーマットとしても機能しました。その影響もあって、これ、大好きなんです。

 

 

Wedding Bell Blues/Fifthe Dimension(1969)

 

 

 

 続いてフィフス・ディメンション。この人たちは黒人のヴォーカル・グループですが、「黒人版ママス&パパス」とも呼ばれたようにソウル・ミュージックの括りで語られたことはなく、歌ってたのも白人のソングライターが多かったですね。それがいみじくも、ジミー・ウェッブでもあり、バカラックでもあり・・って、うまくつなげてるでしょ(笑)。

 

 そして、彼ら最大のヒット曲だった、これは聞いたことある人も少なくないでしょう、ミュージカル「ヘアー」の中の「輝く星座(アクエリアス)」の次に出た曲で、これも全米1位を当時獲得している「ウェディング・ベル・ブルース」。僕は、洒落たコード進行でゆっくり跳ねるピアノとコール&レスポンスのハーモニーが大好きなんですけど、これを作ったのがローラ・ニーロ。まだ、この当時、年齢的に大学生くらいだった白人の天才少女です。これは彼女の代表曲としてもすごく有名ですね。

 

 

Eli's Coming/Laura Nyro(1968)

 

 

 

 その、「ウェディング・ベル・ブルース」を書いたローラ・ニーロですね。彼女はこの当時、ソングライターとして売れっ子だったんですが、同時にシンガーとしてもアルバムを出していました。その、シンガーとして出していた曲を、フィフィス・ディメンションなりがカバーしてヒットに到らしていたものです。この曲も、この当時の「いいソングライターのカバー専門バンド」、スリー・ドッグ・ナイトが後にヒットさせて有名になっています。

 

 彼女の曲の場合、基本的にソウル・ミュージックとゴスペルの影響が強いので、黒人アーティストが歌うとそのニュアンスが出るんですが、彼女自身が甲高い声で歌うとソウル臭がしなくなる上に、歌に没入するとかなりしつこく耽美的な方向に走るので、緊迫感と怖さが一気に高まります。かなり呪術的で、そこのところをいやがる音楽ファンも結構います。特に同時代のキャロル・キングやジョニ・ミッチェルが好き、みたいなタイプの人でも、彼女は苦手だと言った意見は割と耳にします。

 

 でも、それ、正しいと思います。だって彼女、イメージとしてどちらかというと、そうしたあの当時の「フォーキーでナチュラルなシンガーソングライター」というよりは、後のケイト・ブッシュ、フィオナ・アップル、Lordeの先駆、といった方がニュアンス近いですもん。いわゆる「髪の長い天才少女の系譜」ですね。面白いことに全員そうですもんね(笑)。今回聞き返して思ったんですけど、ケイト・ブッシュは思った以上に似てましたね。

 

 

How Can I Be Sure/Young Rascals(1967)

 

 

 

 

 続いてヤング・ラスカルズ。その後のラスカルズですね。

 

 彼らの場合もローラと同じ、ニューヨーク内のイタリアン・コミュニティの出身です。この当時のニューヨークやニュージャージーのイタロ系は伝統的にドゥワップとかソウル・ミュージックの影響が非常に強いんです。フォー・シーズンズとか、ディオンとかの例もあるようにですね。ただ、「自分たちが実際には黒人ではない」ことがわかっているから、その分、開き直ってというか、白人のテイストも同時に活かしたユニークなものも作り得たんですね。この当時のローラなりラスカルズなりの「ブルー・アイド・ソウル」のはしりみたいなアーティストにはそうした自由さが感じられて僕はすごく好きですね。この流れはその後にホール&オーツなりトッド・ラングレンなりにもつながって行きます。

 

 

 この曲ですが、彼らの最大のヒット・アルバムの「グルーヴィン」に入っている3曲目のヒットで、アコーディオンを使った、ちょっとシャンソン風なおフレンチな感じもあって、そこが変化球になって面白いニュアンスが出せていますね。これ、ヴォーカルがリードシンガーのフェリックス・キャヴァリエーリ(この映像でキーボード弾いてます)ではなく、もうひとりのエディ・ブリガッティでもあります。フェリックスの方が本格的なソウルシンガー然としてて上手いわけですけどね。

 

 

Wear Your Love Like Heaven/Donovan(1967)

 

 

 

  続いて、この人も僕は大好きですね。ドノヴァン。

 

 もともとは「イギリスのディラン」と言われた人ではあるんですけど、彼はインド哲学にすごく走っちゃったとこでも垣間みれるようにすごく実験精神が旺盛な人で、フォークの垣根を超えて何でもやっちゃうとこが魅力でしたね。最初は「サンシャイン・スーパーマン」みたいなインド楽器のシタールを使ったところからはじまって、「メロー・イエロー」なんて名前からしていかにもおクスリ関係なことをサイケに歪ましたサウンドで表現したりしてるうちにそれが幻想的な方向に走ったり、60年代のおしまいの方だとジェフ・ベックとかデビュー前のツェッペリンと組んだり、振れ幅も非常に激しい人でしたね。

 

 この曲はそんな最中、1967年の後半に出た、幻想路線の曲ですね。曲名からしていかにもフラワー・ムーヴメントっぽかったりしますけど、この人のホーンやストリングス、チェンバロ、シロフォンといったアレンジの仕方って、どこか、彼の故郷でもあるスコットランドの雰囲気に合うというかな。この感じが30年後に郷里の後輩のベル&セバスチャンにもつながって行くのはすごく自然な気もしてます。

 

 

Blackberry Way/The Move(1968)

 

 

続いてこれもイギリスはバーミンガムの誇るバンドですね。ザ・ムーヴ。

 

僕は無類のブリティッシュ・ビート・バンド好きで、今回はそこからはあえて選ばないようにしたんですけど、ザ・ムーヴに関してはギター・バンドの枠を超えたポップさがあるので選んでみました。その観点だとゾンビーズとか,アメリカですけど、モンキーズの中期以降も捨てがたいんですけどね。

 

 この曲はそんな彼ら最大のヒット曲で1968年に全英1位になっています。こないだ出た、チープ・トリックのアルバムでもカバーされてましたね。お聞きのように、思いっきり中期ビートルズなんですけど、中心人物のロイ・ウッドのすごいところって、瞬間的に「本家以上かも」と思わせる瞬間があることです。残念ながら、ジョージ・マーティン的存在がいなかったからなのか、アルバム単位でそれが持続しなかったのが難点ではあるんですけどね。

 

 このバンドにはこの後ジェフ・リンと言う人が入りまして、それがそのままエレクトリック・ライト・オーケストラ、つまりELOに発展します。ただ、そこでもロイ・ウッドは一枚で辞めて、カルト・アーティストとして生きて行きました。

 

 

andmoreagain/Love(1967)

 

 

 続いては,またアメリカに戻りますが、ロサンゼルスのLoveですね。

 

彼らは「悲劇のバンド」とも言われてますよね。もともと、当時新進気鋭だったエレクトラ・レコーズがイチオシする予定だったのが、レーベルの後輩のドアーズが想定外に売れてしまったために押されなくなって、なかば「幻のバンド」化してたんですけど、この3枚目の「フォーエヴァー・チェンジズ」というアルバムは伝説化していて。現在でも、欧米圏のオールタイム・ロック・アルバムのランキングで、今やもう、あの当時のスターだったジェファーソン・エアプレインとかよりは確実に上位に入るし、ドアーズより上のものも見かけるときもあります。

 

 このバンドはアーサー・リーという、「裏ジミヘン」とも称される黒人アーティストがフロントマンのバンドなんですが。やってることは実に多彩で。かなり濃いめのガレージロックやサイケから、ソウルもあ利、そして一番得意なのは、この曲に代表されるストリングスを多用したバロック・ポップですね。これか、今日までカバーの非常に多い「Alone Again Or」にしようかか迷ったんですけど、よりファンタジックな分、こっちにしました。

 

 このバンドは、かのロバート・プラントが熱烈なファンで有名なのをはじめ信奉者多いんですけど。アーサー・リーが正当な評価をされきらずに亡くなったのが残念です。

 

 

The Seventh Seal/Scott Walker(1969)

 

 

 続いて、彼も今や本当にすごいカルト・アーティストですね、スコット・ウォーカー。

 

 もともと、ウォーカー・ブラザーズといって、ソウルやバカラックみたいな曲を、すごく低音の魅力のバリトン・ヴォイスで歌ってそれでロックの時代になったのに異色の人気があって、圧倒的なルックスの良さも手伝って60年代後半に日本でものすごいアイドルになって、こういうCM(クリック)にも出てたほどです。

 

 その後もソロになってから、彼は、ジャズやシャンソン.フラメンコみたいな非ロックの音楽を、ちょっとしたリズムの使い方や、このキレの鋭いカッコいい美声で独自にロックする路線を歩んだんですけど、この「スコット4」というアルバムは中でもサイケ色が濃くなって、よりその独自性が高まって、今やカルト名盤ですね。中でも、この曲は人気です。最初の闘牛士みたいなイントロから、REMの「Losing My Religion」みたいな緊迫感溢れるフォーキー・サウンドになって、不気味なエコーのかかったハーモニーに包まれる。この曲はイングマル・ベルイマンの名作映画「第七の封印」を歌にした、神と人間の死を扱ったヘヴィな曲でもあります。

 

 スコットは、デヴィッド・ボウイやパルプのジャーヴィス・コッカーをはじめ、熱烈なファンがトップ・アーティストにいたおかげで今日でもイギリスでは伝説化されていて、たまにアルバムが出ては話題(今や実験音楽!)になり、ドキュメンタリーの題材にもなってますね。

 

 

Way To Blue/Nick Drake(1969)

 

 

 

 そしてシメはこれです。ニック・ドレイク。没後40数年経っても、というかむしろその後に大物カルト・アーティスト化してますね、ブリティッシュ・フォークシンガーです。

 

 僕も長年いろんな音楽聴いてますけど、彼ほどウェットで、かつ美しいフォーク・ミュージックというのは、生まれてこのかた、聞いたことないですね。その吐息のようにささやく、悲しげな歌声とメロディ。その存在だけで十分に神経が一点に集中されてしまいます。

 

 生前に出た3枚のアルバム、どれも素晴らしいんですけど、あえて1枚選ぶなら、これです。デビュー作の「Five Leaves Left」。彼の場合、とりわけ、変則チューニングの曲か、ストリングスをまじえた美しい曲か、そのどちらかのときに輝きがフルに発揮されるんですが、それでいくとやっぱこれか、カバーも多い「River Man」か、どちらかかなあ。この次元に近いアーティストって、後でもエリオット・スミスとか、気持ちが内省モードに入ったときのベックか、そういうとこでしか聴けないものですね。

 

 

ボーナス・トラック Initials BB/Serge Gainsbourgh(1968)

 

 

 

 で、終わろうかと思ったんですけど、プレイリストらしく(?)ボートラをつけましょう(笑)。

 

 シメのシメはセルジュ・ゲンズブールです。ここまで選んでみて思ったんですけど、やっぱ僕の場合、ソウルとバロック・ポップが組み合わさって。そこにフォーク的な物語性が加わると目がないですね(笑)。だとしたら、このゲンズブールなんて、思いっきりソレでしかありません。ヨーロッパの黒人音楽好きで、しかも退廃的な文学の香りもする感じとかね。

 

 彼の場合、やっぱこのタイトルの元にもなったBBことブリジット・バルドーとの関係にあったときにこうした路線が一気に開花してますね。その前のジャズ路線も良いんですけど。あと、ジェーン・バーキンとの「ジュテーム」以降、「メロディ・ネルソンの物語」とか、あの辺りが絶頂でしょうね。

 

 あと、この映像、50年ほども前とは思えないくらいにカッコいい!やっぱこの当時の、ヌーヴェルヴァーグ系の関連者の映像美って、アート的にも、ファッション的にも最強ですね。

 

 

・・といった感じでしょうかね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 11:45
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