RSS | ATOM | SEARCH
ライブ評 ポール・マッカートニー@サンパウロ・アリアンツ・パルケ(2017.10.15)昔、ビートルズでロックと時代の象徴。今、前人未到の最強長寿ロックンローラー!

どうも。

 

 

行ってきましたよ。

 

 

 

ポール・マッカートニー!!

 

 もう、日本では今年の4月にやったので、「もう、今さら」な人も多いかもしれませんが、そう言わないでください。僕だって、地球の裏で体験したいんですから。半年遅れてやってきましたよ。

 

 

 僕にとってはポールを見るのが、これが3回目でした。1回目はソロ初公演の1990年。2回目は2002年。ブラジルに来てから実は2回見るチャンスがあったんです。一つは2010年。その時はブラジルでのチケットの買い方が今ひとつ分かってなくて断念。そして次が2014年。今回の会場のこけら落としでもあったんですが、「行こうかな。どうしようかな」と迷っていたらソールドアウトになってしまいました。

 

 ・・というのが、表向きな「いけなかった理由」でもあったんですが、実を言うと

 

 過去の公演を美しいものとして取っておきたかった。

 

 実のところ、これが本当の行かなかった理由です。

 

 というのも

 

 2002年に見たライブがあまりにも素晴らしかったから!

 

 この時は、ポールは還暦になった年の公演だったんですけど、この時のポールの若々しさがとにかく驚異的だったんですよね。声の張りと伸びなんて30代くらいな感じだったし、加えて選曲もすごく現在進行形な感じだったんですよ。1曲目が「ハロー・グッバイ」でその次が「ゲッティング・ベター」で。あの当時の若いバンドにリスペクトされて再評価されたようなテイストがライブの全編を支配しててね。「うわっ。60代突入でこの盛り返しは、ちょっと尋常じゃないぞ」と思ったんですね。で、この時のツアーがライヴ盤にもなりまして、これもよく聞きました。

 

 ただ、僕の中では「でも、さすがにこれ以上進むと、さすがに”このまま”ってわけにはいかないよな」と思って、イメージが壊れるのが嫌だったんですね。「美しい思い出は、その絶頂の奇跡的瞬間のままで止めておきたい」。そういう気持ちがどこかにあったんですね。

 

 しかしですね。今回、75歳でのツアーで、僕の友人たちの、あまりに尋常じゃない見た後の興奮が凄まじかったんですね。いずれも僕が音楽ファンとして尊敬してるような友人ばかりで、「彼らがあそこまで騒ぐのは、やっぱきっと訳があるに違いない」と思ったんですね。で、やっぱり、もう75じゃないですか。さすがに「今後はもう、見れるチャンスはそう簡単にはない」感じにもなってくるじゃないですか。なので、思い立って、行くことにした次第でした。

 

 

 ただ、やっぱり気分は高まりましたよ。やはり、「最高のライブの思い出」と言ってももう15年前になってましたからね。そろそろちゃんと記憶のアップデイトをしたいというのがあったし、そこに加えて、絶賛の数々でしょ。「どんなことになっているんだろう」と思いましたね。だから会場にも40分くらい早く着いて、サッカー・スタジアムのグラウンドの一角で、ビートルズとポールにちなんだDJ聞きながら銅像を膨らませていました。ライブの始まる前のソワソワ感というのは僕は昔から好きで「これを忘れちゃいけない」とも思ってもいるんですが、久々に強い感じがしましたね。

 

 そしてライブは午後9時、定刻通りにスタートしました。

 

 ここからは、日本公演のセットリストとさほど変わらないので、経過で何を考えていたかを曲目とともに書くことにしましょう。

 

 

1.A Hard Days Night 2.Juniors Farm 3.Cant Buy Me Love4.Jet 5.Drive My Car6.Let Me Roll It7.I've Got A Feeling

 

  とにかくですね、

 

 序盤からいきなり飛ばすので、ビックリしました!

 

 声の方は、2007年のアルバム「Memories Almost Full」あたりから、声に震えが入るように感じられ始めていたこともあったんで覚悟はしてたんですけど、「ああ。やっぱり15年前の水準は求められないなあ」とは思いました。でも、そういう声の状態なのに、前半から高音歌い上げのシャウトも兼ねた曲を連発。「これで最後まで声、持つのかなあ」と実はちょっと心配になりました。

 

 4局目の「Jet」はポールが前半部に必ず持ってくる曲で、僕はこの曲の「♪Ah Mater want Jet to always love me」の2回目の時の2フレーズ目で「オールウェイズ・ラヴ・ミー!」とキメのシャウトを必ずやるのが好きなんですが、この日は強引になんとか出してた感じでしたね。

 

 でも、そのあとに「Drive My Car」みたいなのっけからシャウトの曲とか、「Let Me Roll It」みたいな徐々にキーが高く上がっていく曲とか、明らかに喉への負担が強い曲ばかり歌ってるんだけど、大丈夫なのかな、とハラハラしてました。ただ、そうでありながら、一旦ベースをギターに持ち替えたりすると、スムースにソロを決めたりするから、こういうところはもう、なんというか、本能が永遠のロッカーなんだな、と思ってみましたね。でも、こんなメンテナンスがなかなかに難しい曲調の曲をこの年までやり続けてることって改めてすごいことだったんだな、と改めて感心しましたね。

 

 

8.My Valentine9.Ninteen Hundred And Eighty Nine10.Maybe I'm Amazed

 

 ここはピアノの3曲。今の奥さんのナンシーに捧げた「My Valentine」でしっとり行くかなと思っていたら、そのあと2曲はまた元気に歌い上げちゃっています。すごいなあ。

 

 「Maybe I'm Amazed」もポールのライブでは絶対やる定番で、僕は2Kオーラス目のサビの「♪Maybe I'm A man and Maybe you are the only woman」の後に「who could ever help me!!」という、激烈に難しいシャウトがあるんですが、小さい声になりながらも、ちゃんとやってはいました。キーも全く下げないし。なんか、すごいな、と思い始めました。

 

 

11.We Can Work It Out 12,In Spite Of All The Danger13.Love Me Do 14.And I Love Her 15.Blackbird16.Here Today

 

 

 そして次はビートルズにちなんだ楽曲をアコースティック・ギターで。序盤がロックのアップテンポで、次がピアノで今度がアコギ。ポールの音楽の多面性を見せるにうまい進行だと思いましたね。

 

 そして、ここくらいからトークがガンガンに増えますね。元々、客とのやりとりが大好きなポールですが、用意してきた紙を見ながらポルトガル語で曲目紹介しようとして、ブラジル人の心を掴んでましたね。各国でも同じような感じでやってるみたいですけど、ブラジルにはポールが家の一つを買ったという事情がありまして、2011〜13年は、ブラジルの地方都市ばかりを交代でいくという不規則なツアーもしてたほど。ブラジルには気心も打ち解けてる感じもありましたね。パフォーマンスでは「And I Love Her」でお尻をカメラに向けて振る、なんてサービスもありました。「Blackbird」の曲紹介なんて、「公民権運動に触発されて」なんて、ポルトガル語で言いにくいものまでちゃんと律儀に紹介もしていましたね。

 

 

 そして、ここくらいから、ビートルズ色が俄然強くなりますね。ビートルズ前のクォリーメンの曲(In Spite..)、プロデューサー、ジョージ・マーティンとの思い出の曲(Love Me Do)、そしてジョンの死後に捧げた曲(Gere Today)・・。オーディエンスのセンチメンタルな気分が上がってきました。

 

 

17.Queenie Eye 18.New 19.Lady Madonna 20.Four Give Seconds

 

 ここからは「最近のポール」ですね。2002年との比較で言った場合、確実に言えることは「その時点での最新曲のレベルがずっと高い」ということですね。そこは、前に見たときより、黄金期の曲との落差を感じることなく楽しむことができました。

 

 前見たときも、最新曲、決して悪くはなかったんですけど、でも、やっぱり、ポールが「こういう曲、書いて欲しい」と言いタイプの曲がまたポンポンと書け出したのは2005年の「Chaos And The Creation In The Backyard」からだと思うんですね。その意味で、「いまのポール」がしっかり表現できているのはいいなと思いましたね。返す返すも「NEW」ってアルバムは良かったですからね。

 

 「Four Five Seconds」も、かつてスティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンと共演した人の現在地、みたいな感じで良かったですね。

 

 

21.Eleanor Rigby 22.Iwanna Be Your Man 23.Being For The Benefit For Mr.Kite 24.Something 25.A Day In The Life  26,Obladi Oblada

 

 

 そして、いちばんグッときたのが、このビートルズ・コーナーの第2弾でしたね。今年で50周年のサージェント・ペパーズのこと、ジョージやリンゴとの思い出も交えながらビートルズの持ってた多面性を紡いでいく感じがね。

 

 ここでのポールからは「もう、直接ビートルズのレガシーを伝えられるのは自分しかいないんだ」という強い意志と責任感を感じましたね。僕も聞いてて「これがこうやって、当事者から直接聞ける時間も、もうかなり貴重だよな」と思って、身の引き締まる思いがしました。

 

 いつまで経っても不死身のポールを堪能すると同時に、「ビートルズの最終継承者」としての意地とプライドも感じられて、ここは何度もグッときましたね。

 

 

27. Band On The Run 28.Back In The USSR 29.Let It Be 30.Live And let Die 31.Hey Jude

 

 ・・と、そんな感傷的な気分になりかけた時に、間髪入れずに「Badn On The Run」ですよ。なんか、そこには「ビートルズを伝えたらそこで終わり、ってワケでもないんだよ」という、現役のバンドで走り続けポールの意地を感じましたね。そのあともロックンロールの「Back In The USSR」がそこに続いてね。

 

 そして「なすがままに(Let It Be)」、さらに「殺るか、殺られるか(Live And Let Die)」と言うのも、ポールのバンド人生のステートメントみたいでカッコ良かったですね。そして、「Live And Let Die」のおきまりの爆破演出の煙と爆音を耳を塞いで煙たがるユーモアも見せながら、アンコール前の最後はおなじみの「Hey Jude」。30曲を過ぎて、このころには、声のことなんて、すっかり忘れていました(笑)。だって、もう、ここまでしっかり歌いきってるんだもん。これ以上、何を気にすることがあろうか、という感じになっていましたね。

 

32.Yesterday 33Sgt Peppers Lonely Hearts Club Band(Reprise) 34.Helter Skelter 35.Birthday

 

 そしてアンコールはしっとりと「Yesterday」の弾き語りで始まりました。

 

 ポールがこれで下がろうとすると、ベースを渡しに来たローディが「もっと、やろうよ」と盛り立てる演出。それに押されて、最後のビートルズ・ナンバーたちを披露です。

 

 圧巻は、やっぱ、「Helter Skelter」でしたね!なんで、もうライブ始まって140分も経ってるのに、よりによって一番ハードな曲をここでやる!?ただ、もうこの段階になると。声もすっかりこなれてきて、曲の激しさなど、何事もないかのように歌い切るポールがこのころには崇高にさえ見えるようになりましたね。そしてそのまま「Birthday」とロックンロールは続きます。

 

 

36.Golden Slumer 37.Carry That Weight 38.The End

 

 

 そしてポールのライブはこれやらないと終われません。おなじみのアビー・ロード・メドレー。もちろん、大団円で終わるわけですけど、この時点でもうライブの時間も3時間近くなっていましたね。ここまで実に38曲!しかも、このセットをポール、「2日に一度のスケジュール(移動日含めて!)」でこなしているわけですからね。75歳で、なんと恐ろしい体力か!

 

 

 そして、最後に放った一言が「アテ・プロッシモ」。ポルトガル語で「またね」。ここにも「死ぬまでやるだけだよ」と、何事もなさそうな(そこが買えってすごい)ポールの屈強さを感じて「恐れ入りました」という感じでしたね。

 

 

 ビートルズはもちろん。ロックで時代を切り開いたバンDおですけれど、その中心人物は同時に、「最強不屈の最長寿ロックンローラー」としても超一流なのだなと、15年ぶりの再会で思いを改めた次第でした。

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 10:50
comments(0), trackbacks(0), - -
ロラパルーザ・ブラジル2017感想  その1 

どうも。

 

見て来ましたよ。

 

 

 

 

僕の生活には欠かせないものです。ロラパルーザ・ブラジル。今年もこれをレポートしましょう。

 

 

今年で6回目で年々、サンパウロ市内での注目度も非常に高くなってきているんですが、今年遂に動員が19万人に達しました!これまで16万とかだったはずですが、一気に伸びましたね。やっぱ、メタリカ、ストロークスとヘッドライナーが大きかったからだと思います。

 

 

 ただ、今年は運営側にとって大きな年にしたいとするあまり、かなりトラブルもありました。それがチケットの売り方や、リストバンドのモダン化に伴う大混乱で,実は僕も巻き込まれています。

 

 

 今年一番驚いたのは、過去5回、当日の券だけ持って行って、入り口でリストバンド交換をするというのが習慣でしたが、今年から急に「リストバンドの方式を変えたから、引き換えるには両日のチケットが必要」ということに急になったんですね。困ったことに僕は1日分しか持っていませんでした。そして、受付で言われたまさかの言葉。

 

 

「取りに帰ってください」

 

 

ガーン!

 

 

 正直、おまけしてもらえると思っただけにものすごいショックでしたね。しかも午後2時半で、これからステージが活発しはじめるときだったのに。

 

 

 幸いにして、僕のアパートは会場のインテルラゴス・サーキットから車で30分程度の距離だったのでなんとかなりましたが、それでもウーベルの往復と、リストバンド交換で食った時間は3時間近く。あやうく、僕がその日最も見たいと思っていたThe 1975のライブを見そこねるとこでした。ただ、まだマシな方です。これが市外の人とか、別の州から来た人に同じことが起こったとしたらゾッとします。

 

 

 そのリストバンドなんですけど、すごくモダンなものでして、リストバンドに課金して、中の飲食がバーコード読み取るみたいに機械でピッとこすれば買えるシステムなんですね。まあ、たしかに使い慣れると便利なんですが、導入して間もない場合は、非常にやっかいでしたね、これは。

 

 

 そうこうしているうちにロスが3時間。リストバンドが交換し終わったのは5時30分でした。そのせいで、グラス・アニマルズを完全に見れず、ケイジ・ジ・エレファントは外で音聴いて、最後の曲だけ生で通りかかりましたが、これで3回目の出演の彼ら、第1ステージでものすごい動員になってましたね。あ〜あ、見たかったよ。

 

 

<17:30 The 1975 第2ステージ>

 

 そして第2ステージへ。ここがゲートから一番遠くにあるステージなので、たどり着くのに一苦労。着いたときにはもう1975ははじまっていて、オープニングの「Love Me」が半分くらい聴けませんでした。くやしかったけど、ウーベルで帰ったのでこの程度の被害で済んだことにはむしろ感謝しましたが。

 

 

 で、1975、僕、今回初めて見たんですが、彼ら自身,初のブラジルでした。ただ、正直、お客さんの入れはもうひとつだったかな.ブラジルの新聞は「いっぱい入ってた」と書いてははったんだけど、3年前に同じ場所での同じ時間帯で、イマジン・ドラゴンズのすさまじい人の入りを覚えている感じからは、それの6割ほどでしたね。彼らはイマジン・ドラゴンズと違って、サンパウロのFM局のサポートを余り受けなかったんですが、そういうとこでの差でしたね、これは。

 

 ただ、女の子を中心に噂にはなっていたのか、黄色い歓声でキャーキャー言って騒がれてましたね。フロントマンのマット・ヒーリー、モニターで大写しになると、確かに男前でしたね。ブランドものっぽいロング・スリーヴのシャツをあけて歌ってましたけど、大写しになった顔を見るや、僕の大学のサークルのときの友人にそっくりだったことを思い出してハッとしました(笑)。目とか鼻筋とか、体型とかがソックリで。「ああ、あいつ、やっぱイケメンだったんだな」と思ったのに加え、「マット、やっぱりそういうセンスでも80sっぽいのかな」と思ったりもしましたね。

 

 ライブそのものは、ほぼ音源通りを忠実にやってる感じでしたね。サポートにサックスがいるとこまで、ちゃんと再現出来ててね。彼らの場合、サックスと、あのカッティング・ギターとシンセでの80sっぽさって肝ですからね。あと、地味ながらギターとシンセを1人2役でやってるアダム・ハンにミュージシャンとしての才能を感じましたね。

 

 彼らのソングライティングの、80sから現在のエレクトロ、R&Bも拾えるレンジの広さは僕もかねてからこのブログで絶賛していることで、その点に関しては楽しめました。ただ、マット、体調よくなかったのかな?あれだけ華のあるセクシーなフロントマンの割にはそこまで客を掴みにいってはいなかったし、煽りが少なかった。そこはまあ、そこまで問題ではないのですが、気になったのは歌唱ですね。前から映像での姿を拝見した際も、「シンガーとしてはちょっと線が細い感じがあるかな」と思っていたのですが、この日は曲が進めば進むほどに声が出なくなってましたね。終盤のハイライトにしないといけなかった「The Sound」で声枯れも起こしてましたが、ちょっとこのあたりは今後に課題を残したのかな、という感じでしたね。

 

 

<19:30 The XX 第2ステージ>

 

 The 1975が終わって、1時間ほど休憩して、次のThe XXへ。その間、第1ステージでは、意外にもブラジル初上陸だったランシドが結構盛り上がったライブをやってましたね。ご飯食べながら横目で聴いてて「Ruby Soho」とかをなつかしいなと思いながら聴いていました。

 

 で、The XXですが、今回の準ヘッドライナーです。「第2ステージ」といってもバカにしてはいけません。実は、人の収容の数で言えば、第1よりも大きいんです。ここはステージが谷底になっていて、そこの収容人数こそは多くないんですけど、斜面がやたら広くて、そこに数万人規模、多分全部で5万人くらいの人が入れそうなんですよね。そういうとこでのシメを彼らがつとめる訳ですが、駆け出しの頃を覚えているだけに、「大きくなったなあ」の感慨には浸りましたね。

 

 ただ、実はブラジルでも結構人気があることはわかってました。2013年に彼ら、サンパウロの3000人くらいのホールでライブやってるんですが、そのとき数日で売り切ってましたからね。僕もたかくくってたら、発売日に「もう半分以上売れた」と聞いてあわてて買いに行ったくらいでしたから。

 

 で、開演前から人がゾロゾロ集まるのなんの。やっぱり人気は本物だったんだな、と改めて思いましたね。そしてXXの3人が登場すると、その時点でもう割れんばかりの大歓声。スタジアム・ライブ級の興奮になっていましたね。

 

 

 

 

 ロミー、オリー、ジェイミーの3人が定位置について、新作「I See You」からの「Say Something Loving」でスタートすると、そこからは大合唱の嵐でしたね。「Crystalized」「Islands」と定番人気曲を立て続けたこともあって、それが加速された感じでしたね。

 

 ジェエイミーは相変わらずDJ、ドラム、鍵盤で、ロミーとオリーの紡ぐストーリーの音の演出家として息を飲むような芸達者ぶりを発揮していましたが、この日の主役はロミーとオリーでしたね。2人のシンガーソングライターとしての説得力が上がってるのなんの!前は2人して本当に暗く内向的なイメージだったけど、観衆に心開いて訴えられるようになってきたというかね。2人とも声が前に出てくるようになったし、特にロミーはよく動くようになってギターのフレージングもよくなりましたね。

 

 

 そしていつも仏頂面だったオリーが笑うようにもなって。彼、2013年にサンパウロのホールでライブやったときに、終始無愛想のままだったのに、最後になって「僕たち初めてここに来たのに、こんなにも熱い歓声飛ばしてくれるなんて・・」と感極まって涙声になったんですね。それが今回は、さらに倍加した熱狂的歓声に驚きながら笑顔で返せるようになった。「変わったな。そして大きくなったな」と思いましたね。

 

 

 ただ、どんなに今作でサウンド的に多用となり、開かれて行こうと、心の奥底の孤独に語りかけるようなスタイルも変わらないですね。ロミーの、地声っぽいんだけど、つややかで響きの良い声でこれをやられるとやっぱり強いですね。

 

 

 選曲的には今回の3枚目と、今のモードで進化したデビュー作、そしてたまに2枚目の曲を挟む感じでしたけど、後半のクライマックスは「Loud Places」で来ましたね。ジェイミーのソロ作でロミーをフィーチャリングしたアッパーな曲ですけど、ここで客が大団円になりましたね。これ見て、「ああ、このお客さんはクラブ界隈でつかんだんだ」としっくり来ましたね。あと、お客さんに黒人が多かったんですけど、R&B/ヒップホップのファン層の受けも良さそうですね。

 

 

 このあとにライブは「Om Hold」でもうひとあがりあったあとに「Angels」でしっとりとシメました。

 

 

<21:30 メタリカ 第1ステージ>

 

 

 そして、この日のヘッドライナーはメタリカでした。彼らはブラジルには最低でも2年に1回、来るときは毎年来てる人たちで、そのたびにチケットも売れるので、今回のロラもまずは集客的には安全パイと言われて来ました。実際、この日だけで10万人集客しましたから。

 

 

 ただ、その場に居合わせた実感からしたら、そんなに会場、メタルヘッドが集まってた印象はなかったし、むしろ古株のメタル・ファン、少なかったんですよ。彼らのうちの頑なメタルファンはむしろ来てなかったですね。あと、50近くの彼らのファンは、第1ステージの縁のところで体操座りして見てました。だから入場の時、入るの大変でした(笑)。このステージはフロア部分が非常に広くて、たとえるなら幕張メッセの野外版みたいな感じなんですけど、そのフロア部分の後ろはモッシュが出来そうなくらいに開いてたし、実際にやってた人、いました(笑)。

 

 

 どっちかというと、メタリカと同じ時間に裏でやってたチェインスモーカーズの客と相乗効果になって多かったんじゃないかと思います。例年EDM系の客はものすごく多いので。ブラジルのメディアの報道、そこを見落としちゃうんですけどね、いつも。

 

 

 僕はここで何度も言っているようにチェインスモーカーズってすっごく嫌いなので(笑)、それで腹決めて「今日はメタリカ、全部見よう!」と決めて来ました。彼らのライブは2003年に「セイント・アンガー」のときに代々木体育館で見ただけだったんですが、正直、その時の印象が良くなかったのでためらったんですけど、今回改めて、新作と、リアルタイムでそこまで熱心に聞いてなかった1枚目と2枚めを重点的に聴いてライブに備えました。そしたら、それが見事に功を奏しました、

 

 

 

 ライブは最新作の「Hardwired」から「Atlas Rise」へ立て続けて流れる展開ではじまりましたが、これがまず良かった。前に代々木で見た際に「随分丁寧な演奏するんだな」と思った僕の印象を吹き飛ばすように、良い意味で不規則で雑な演奏を、年齢お超越したスピードで展開。「ああ、これよ、聴きたかったの!」と思い、引き込まれました。「セイント・アンガー」の時期って、後にドキュメンタリーになったくらい、彼ら的には最悪な時期だったわけですけど、これが本来の姿だったんだなと思いました。

 

 

 そして、事前にチェックしていたセットリスト通り、やはり初期の曲、多くてですね。まあ、大ファンの方からすれば「それは昔からよくやってるよ」という「For Whom The Bell Tolls」「Fade To Black」「Whiplash」「Seek And Destroy」といったあたりなんですけど、今回の「Hardwired To Self Destruct」がその頃のエナジーを意識した作品なので、食い合わせが良かったんですよね。新作からのプレイが、彼らほどの大ベテランにしては多い5曲。そこにプラス、その4曲ですから、セットリストのほぼ半分が高速ナンバー。もちろん、おなじみの「マスター・オブ・パペッツ」や「ブラック・アルバム」からの曲もやったわけですけど、印象としては、やっぱ速さで攻めてる曲の方が目立つ。そう思わせただけで、彼らの勝ちな感じがしましたね。

 

 

 そうした彼らのプレイぶりもさることながら、今回僕がいたく気に入ったのはジェイムス・ヘットフィールドのMCでしたね。この人のMC、噺家みたいですごく面白いのね(笑)。「キミたちがどこから来たか知らないが、ここに集まったからには、(ここから絶叫)キミたちは家族も同然だ!!」、「ノッてるか(Are you alive),、サンパウロ!!」「Do you like heavy? Do you want heavy? (ここから、ゆっくりと絶叫)DO YOU NEED,,HEAVY!!!」とか、こういうやりとりで(笑)。このテンションの高さで、会場、結構、メタルと無関係そうな若い人も多かったのに、これで一気につかんでましたね。これ見て、こういうショーマンシップ、必要だなあと思いましたね。昨今のロックに足りないことだとは確かに思います。

 

 

 この日は彼らもゴキゲンだったのか、2時間の予定だったステージが、制限時間の11時になっても終わったのがやっとアンコールの前。普通、この時間過ぎたら音鳴らしちゃいけない契約のはずなんですけど、そんなこと無視して最後の「Enter Sandman」まで、アンコールは3曲もしっかり長いヴァージョンでやってました(笑)。おかげで家路に着くの、結構大変だったんですけどね(笑)。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 00:12
comments(0), trackbacks(0), - -
ライブ評 コートニー・バーネット@サンパウロ・オーディオ・クラブ(2016.11.16)

どうも。

 

 

では、話をしていた

 

 

 

 

コートニー・バーネットのライブ評に行きましょう。

 

 

サンパウロは公演時間が遅いので、この日、対バン形式の最初ながらコートニーが出るのは9時過ぎ。ということで、ゆっくり時間を取って夕ご飯を食べていたら、その後、会場まで行く手順を間違えて9時に間に合わなくなりました(汗)。ただ、「絶対、開演時間どおりになんて、はじまるわけがない」という自信もあったので(笑)、問題はなく、15分到着が遅れても、まだはじまっていませんでした。

 

 

コートニと彼女のべーシストとドラマーが登場したのは9時30分。コートニーが向かって左にアームの長い、左利きの人用の黒いギターを抱えて構えますが、これが絵になります。無造作な肩越しの髪型と黒いTシャツもいつもながらの感じです。

 

 

ライブは初期のシングルの「Hisory Eraser」ではじまりました。男性2人との3ピース・パフォーマンスは、ラウド過ぎず、タイトすぎず。適度に緩い感じもありましたが、これぞロックンロール・スタイル。これぐらいルースな方が、元々オルタナ・カントリー系のバンドでギターを弾いていた彼女にはあう気もしました。また、「男を従えたロックンロールのバンマス感」も見ていて、プリテンダーズのクリッシー・ハインズを思い出させましたね。

 

 

 また、クリッシーもそうなんですけど、彼女を見ていると、特に男の中に混ざることに対し、「それが自然」というか、特に違和感もなにもないし、本人もさほど気にしてないかのような感じが見ていてカッコいいですね。なんか、良い意味で「トンボイな女の子がそのまま立派になった」みたいな感じで。

 

 

 そして数ある女性ロッカーの中でも彼女をワン&オンリーの存在にしているのは、そのトーキング・スタイルのヴォーカルなんだなと改めて思いましたね。なんか「女ルー・リード」的なストリート・ポエットみたいな感じがあるというかね。このスタイルの女性ロッカーははじめてみたというか。これがある限り、彼女、今後も強いでしょうね。これ、真似しようと思っても、性に関係なく、なかなか後継者がいないスタイルでもあるので。本人的には自然なことなんだろうとは思うんですが、

 

 

 そしてギター・ソロになると、ひときわ盛り上がります。彼女、フレーズもしっかりちゃんとしてるんですが、ノイズのまぶせ方のセンスも絶妙ですね。こういうとこもうまい。こういうことできるおかげで、アルバムの中では地味に聞こえていた「Small Poppies」みたいな曲が違う聞こえ方をしてたのも興味深いことでしたね。

 

 

 こういうプレイをしていると、後半になればなるほどオーディエンスの盛り上がりにも拍車がかかってきます。終盤は「Pedestrian At Best」「Avant Gardner」、そしてラストの「Nobody Really Cares If You Dont Go To The Party」と、合唱好きのブラジル人オーディエンスの支えもあり、大団円で終わりました。そして、僕自身も、このライブが終わって1時間くらいたってもなかなか次がはじまらないので、対バン相手のエドワード・シャープ&ザ・マグネティック・ゼロズは結局見ないで帰りました(笑)。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 18:20
comments(0), trackbacks(0), - -
ライブ評「ポップロード・フェスティバル(というかウィルコとザ・リバティーンズ)」@サンパウロ・アーバン・ステージ

どうも。

 

 

では、土曜日に行って来ました、ポップロード・フェスティバル、というより、これ、ウィルコとリバティーンズだけでいいような気がしますけど、それのレヴューに行きましょう。

 

 

 僕は去年もこのフェスに行ってるんですけど、音楽ジャーナリストのルシオ・ヒベイロ氏が個人でやってるこのインディのイベントは、昨年は2日開催で初日のゲッドライナーがイギー・ポップ、2日目がスプーンがあり、ベル&セバスチャンがトリという、それはそれは豪華なものでした。

 

 

 今年はそれが1日開催です。その理由は、ルシオが今年、11月にエール呼んだり、コートニー・バーネット呼んだりで、大きなアクトが分散してしまったからなのでしょう。そのかわり、今年は初の野外会場開催。去年まではダンスフロアとライブ会場の2つついyたおしゃれなライブハウスでの開催だったんですが、今年は野外とは大きく出たな、と思ったんですが、いざ会場についてみたら、まあ、これがショボいのなんの(苦笑)。場所は寂れた工場跡地みたいなとこで、客席後方には、工場跡をしっかり残す、2本のデカい煙突が!見た目がこれじゃ、ピンク・フロイドの「アニマルズ」のジャケ写みたいです(笑)。そういうとこに、洒落たフードトラックやソフィスティケイトされたバーを設置するアンビバレントな感じはなかなか不思議でした。

 

 

 僕はこういうイベントに早めに着いて全体のイベントの会場の空気を楽しむのが好きで、今年も同様に昼の4時には着いたのですが、そんな僕でも今年は早い時間はすごく退屈でしたね。

 

 

 

 そもそも、出演予定だったバトルズがドタキャンして、穴埋めをサンパウロの無名のインスト・バンドがやったのがケチのつけはじめでしたけど、そのあとのブラジル期待の女性シンガーソングライター、アヴァ・ロシャ。そして、ニューヨークのラタタッタと続きましたけど、面白さはなかったですね。アヴァは、昨年のブラジル国内のアワードの新人賞を総ナメした人でしたけど、思った以上にロックでしたね、しかも、体を絞らない、大柄な体型だけに迫力はありましたね。ただ、ガラガラ声があんまり好きじゃないのと、華がなかったのがね。この人の父親は、ブラジル版のヌーヴェルヴァーグと称される60年代の「シネマ・ノーヴォ」のムーヴメントの中心監督のグラウベル・ロシャだったりもするんですけどね。ラタタッタは、昔からピンと来たことがなかったんですけど、今回もそうですね。なんか「弱いダフト・パンク、もしくはジャスティス」みたいな印象はそのまんまだったかな。

 

 

 これを待っていよいよ20時30分よりウィルコのはじまりです。

 

 

<ウィルコ>

 

 

 今回の僕は、とにかくウィルコが目当てでした。これまでずっと見そこねて来続けてましたから。僕が日本に住んでるときにたしか1回だけ来日があるんですけど、そのときは僕が海外に行ってるときにやって来て見れず。これ悔しかったんだよなあ。最高傑作説のある「ヤンキー・ホテル・フォックストロット」のときだったから。そして、僕がブラジルに渡った2010年くらいから、ウィルコは日本に頻繁に行くようになります。こういうパターンってあんまりなかったんですよね。ブラジルに越したことによって見ることが出来たものの方がむしろ多かったのに、ウィルコはそれが逆になっていた数少ない例でしたからね。それも、ライブの評判はいろんな人たちから熱い絶賛続きだったので、「今回のこれは絶対に逃すわけにはいかない」と思っていたのです。

 

 

 だから、この2週間、みっちり予習もしましたよ。「最高のライブ」を、雰囲気だけの理解に終わらさずに、ちゃんとしっかり根本的に理解したかったので、「ライブでやりそう」と予想される曲をしっかり覚えて行きましたよ。彼らの場合、初期から現在までまんべんなく、しかも25〜30曲を、しかも固定セットを設けずに自由にやるのでそれに対応するためにも、1日2作品をフルで聞き続ける毎日を送っていたほどです。

 

 

 その甲斐あって、選曲的には全く苦になりませんでした。そして、予想もいきなり的中です。オープニングの2曲を飾ったのは、前作「スターウォーズ」からの「Random Name Generator」から「The Joke Explained」へと流れるパターンでしたね。この直前まで、オープニングは新作「シュミルコ」からの楽曲になっていたんですが、景気付けにグラムロックっぽいこの2曲がオープニングでした。ただ、新作のような静かな感じより、ライブをはじめるならグッとノリノリで行って欲しくもあったので、この意外なはじまりは僕には歓迎でした。

 

 

 会場ですが、3曲目の「I'm Trying To Break Your Heart」から合唱に継ぐ合唱でしたね。ブラジルでのライブは10年ぶりくらいで、彼らの曲がラジオで流れる感じもないんですけど、かなりの数のコア・ファンがいる感じでしたね。はじまる30分くらい前から前方にいましたけど、すぐに後ろがいっぱいになって身動き取れなくなってバー・カウンターに行けなくなりましたからね。「Misunderstood」「Via Chicago」あたりも大合唱でしたね。

 

 

 そして、噂に聞きしのウィルコの演奏も見事なものでしたね。基本、軸のしっかりしたドッシリと構えた演奏なんだけど、ロングジャムも、フリーキーで実験的な展開も、リフ主体のロックンロールも出来る。ある意味、この世代のグレイトフル・デッドの雰囲気も持ちつつ、デッドでは表現しえなかった、ポール・マッカートニー的な甘美な美メロ・センスもあるし。ジェフ・トゥウィーディーのハイトーン・ヴォイスが甘いのも地味にひかります。

 

 

 あと、ネルス・クライン、パット・サンソン、トウィーディーと,3人がそれぞれソロが取れるギター陣も多彩ですね。特にネルスの「Impossible Germany」のソロは圧巻でしたね。あそこでサンパウロの観客、「タララッ、タララッ、タララーラ、ララー」って、ソロのフレーズまで歌いはじめて(笑)。ブラジル人って、ライブで合唱するのが本当に好きな国民なんですけど、ギター・ソロまで歌うのを聞いたのは今回初めてでしたね。

 

 

 選曲もいつも全く違うウィルコのライブ。毎度「ヤンキー・ホテル〜」と「ゴースト・イズ・ボーン」の2枚は必ずメインなんですけど、後が読めない仕組みになっているんですが、今回は僕的には非常にうれしく「ビーイング・ゼア」から多めにやりましたね。しかもアンコールの直前に立て続けて「Red Eyed And Blue」「I Got You」「Outtasite」と。ウィルコの中でも痛快なロックンロール度の高いこの1996年のセカンド・アルバムは大好きなのでうれしかったですね。

 

 

 そして熱いアンコールのあとは「Spiders」「Late Great」の「ゴースト〜」の2曲でシメました。

 

 

 個人的には「Theological」「California Stars」「A Shot In The Arm」も聞きたくは合ったんですが、大満足ですね。彼らほどのライブバンドがフェスでのヘッドライナーを迎えていない状況と言うのが不思議にさえ思えましたね。本人たちの立ち姿の地味さはあるかもしれませんが、ブルース・スプリングスティーン、パール・ジャム,ジャック・ホワイト,アーケイド・ファイアと並んで「一度は見ないといけないアメリカのバンド」のリストには文句なく入る人たちであることには間違いないです。

 

 

リバティーンズ  

 

 ウィルコは結局、2時間、27曲の大熱演だったわけですが、これが終わって僕には一抹の不安がよぎりました。それは「リバティーンズ、大丈夫かな」と。だって、あれだけプロフェッショナルの塊みたいなライブに、ぎっしり客が詰め掛けたあとに、アレだけ飛びぬけて演奏が下手な(笑)リバティーンズが、ここにギッシリ詰め掛けた人のハートを満足させられるとは思えないから。ただでさえ、ブラジル人、歌とか演奏うまい人のほうが好きですからね。ちょっと組み合わせとして、同じ客層がかぶるとはあまり思えませんでしたね。

 

 

 そして時計の報も23時になっていたので、終電気にして帰り始める人もいて。そんなこともあって、リバティーンズ、後ろの方、ガラガラでしたね。前のほうに、レザー・ジャケット着たおねえちゃんたちが集まっていましたが、彼女たちコア・ファンのみのバックアップで、仮に合唱が起こっても、これじゃ響かないくらいの人の数でしたね。そして、これ、日本じゃ考えられないかもしれませんが、これがブラジルでのUKロックの現実でもあります。ブラジル人が好むUKロックって、コールドプレイは万国共通ですけど、それ除けばオアシスがダントツで、あと人気があるのってスノー・パトロール、キーンとか、そういうメロディックで歌に安定感のある人を好む傾向があるんですね。それ以外の日本で人気のあるタイプのギターバンドがそれほどではありません。そういう意味ではアウェー感はありましたね。

 

 

 加えて、リバティーンズって、「10年一昔前のクール」のわけじゃないですか。流行のサイクルで言ったら、今、一番きつい時期のはずなんです。あのイースト・ロンドンとか、北部のカムデンのスキニージーンズのインディ気取りの人たちがクールな最前線の時代ってとっくに過ぎ去ったわけで。そういう状況での逆風もないか、心配ではありました。

 

 

 ただ、いざはじまってしまえば、そんな杞憂はすぐに吹き飛びました!

 

 

 やっぱりですね、なんだかんだ言って、ピート・ドハーティがリバティーンズのステージにただ立っている、健康な姿で立っているというだけで、なんかこうグッと来るものがあるんですよね。それがカールとマイクの奪い合いする姿なんか見るとなおさら。その意味で彼ら、「ミック&キース」の21世紀版みたいなケミストリー、これはやっぱ、あるんですよね。

 

 

 それはもしかしたら「ノスタルジー」というヤツなのかもしれない。でも、序盤に演奏された復活作の曲を聴く限り、彼らって、メロディ・メイカーとしてはやはり秀逸と言うか。「Heart Of The Matter」とか「Gunga Din」とかって、普通に今のシーンの基準で聞いても新線だし、他に彼らみたいなことをやれてる人もいないしね。なんか「キンクスのよき後継者」的な歌心は全然今に通用するし、前半あえて「Anthems For Doomed Youth」中心に組み立てたのは正解だと思いましたね。ここでだいぶノスタルジーっぽさが緩和されたのはたしかです。

 

 

 で、曲を薦めていくうちに「What Katy Did」とか「Cant Stand Me Now」といったセカンドの曲をやると、「ああ、このときピーター来なかったからちゃんとやれなかったんだよなあ」と思って、さすがにここはグッと来ましたね。10数年たってやっとライブで実現したか。このあたりは、もう聴けないものだとも思っていたのでうれしかったですね。

 

 

 そして後半はファーストの曲でグイグイ攻めましたけど、あがりましたね。「Time For Heroes」「Death On The Stairs」あたりは自然と体が動きました。合唱が起こっても声が小さかったのはさびしかったですが、僕には関係なかったですね。アンコール前はこれで押し切りました。

 

 

 そしてアンコールでは、「Albion」「Music WhenThe Lights Go Out」とピーターをフィーチャーするコーナーではじまりました。客ともちゃんとコミュニケートできてて健康そうだったし、本当に良かったです。そして最後は「Up The Bracket」「What A Waster」という、初期の来日公演でもすでに大人気だったアンセムでいって、最後は「Dont Look Back Into The Sun」でシメ。欲をいえば「I Get Along」もやってほしかったですが、しっかり彼ららしいライブを、くたびれた感じなく、ポジティヴにやってくれたのはうれしかったですね。そして、何年経とうが適当すぎる演奏もグッドです(笑)。

 

 

 数年前に見た、ちょうど同じ時期に全盛だったフランツ・フェルディナンドのライブがなんか精細なく、元気がなかったのに比べると、旬ではないものの状態の良さと先行きのよさを感じましたね。次もアルバム出れば良いな。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 12:37
comments(0), trackbacks(0), - -
ストーンズのサンパウロ公演を見て改めて感じたこと
どうも。


明日はオスカーですが、その前日、僕はこれを見に行っていました。




サンパウロのモルンビ・スタジアムで行なわれたローリング・ストーンズのライブです。


 以前ここで、「なんか、ファンになるのに迷いがあって、なかなか夢中になれなかった」みたいなこともここで書きましたけど、今回に関して言えば、ようやくストーンズのサウンドが理屈じゃなく感覚的にいいなと思えるようになって来ていることや、「もう、ここらで本腰入れてみないと先がない」とも思ったのか、いつも「まあ次の機会に」と思い続けていた僕が、チケット発売当日にチケットを買うほど、今回のライブは楽しみにしていました。「ようやくストーンズにハマるチャンスがこれで出来るかも」と自分の変化も楽しみにしていました。


 で、見に行った感想ですが


 すごく良かったと思います。


が!


 我を忘れて没入するほど夢中になれなかった!


 というのが、本音ですかね。


「一度、18年前に見ている」ということで、改めてビックリすることがなかった」というのも、もちろんあると思います。その意味で、12月に見て衝撃を受けたデヴィッド・ギルモアほど衝撃を受けなかったことはあるでしょう。


 今回僕が再認識したのは、「ミック・ジャガーって、ものすごいフロントマンだったんだな」ということです。以前は、シンガーとしてそこまでうまいというわけでもないから、「どうして、この人がそこまで」と思っていたとこもあったんですけど、いや〜、すごいですよね、あの脚!72歳になって、あの細さ!!しかも、すごい弾力性ですよね。身のこなしのあれは衝撃でしたね。もちろん、今までもさんざん見て来た光景ではあるんですけど、前人未到レベルの年齢になっても改めてやられるとやっぱ驚愕だよな、と。


 しかも、あの動き、その後のシーンにおいて、後継者全くいないものですよね!ロックにはもちろんいないし、R&B/ヒップホップでも、集団ダンスであれよりも激しい動きそのものはあるんだけど、それって、あまりにもダンスに特化しすぎて、リップ・シンクとかを必要とするものになるでしょ?そう考えると、「ちゃんと歌えながらでの動き」を考えると、全く後継者がいないですよね、あれ。しかも、声も、昔と全く同じレベルのものを提供できてますしね。


 ただ


 結局のところ、キース・リチャーズという人があんまり得意じゃないのかもしれないなあ、と思いましたね。もちろん、ロック史における功績の大きさは言うまでもないし、あのリフがなければロックのある部分が形成されなかったのも事実。彼が防波堤となることで、フロントマンとしての才能にあふれすぎたミックがロックンロールから脱線せずに食い止める役割を担っていて、そこにケミストリーを生み続けているという、バンド内の物語性もあることも十分理解出来ます。


 ただなあ〜。僕、あの


アニキ感


 あれが結局のところ、得意じゃなかったんだなあ、とハッキリわかりました。


 誤解しないでほしいのは「嫌い」というのではありません。僕には古くから「3大苦手バンド」というのが数10年前から存在するし、それとは別にニュー・メタルであったり、昨今の一部の2線、3線級の共感型女性シンガーとかEDMとかの方が比べ物にならないほど嫌悪感情があるので、そういうのとも全く比較することもありませんよ。


 ただ、これはキースに限ったことじゃなく、客席から「アニキ〜」という野郎の野太い声援が飛ぶことが容易に想像される全ての男性アーティストに言えるんですけど、ちょっと、というか、だいぶ生理的に苦手なんです(汗)。そういうこともあったのかなあ、キースのソロ・コーナーが2曲あるんですけど、本音で言ってしまうと「1曲でいいんだけど・・」と思ってしまいましたからねえ・・。あのコーナーで、ちょっと、あくまで個人的な感覚上の問題なんですけど、集中力が切れてしまったところがあります。


 ただ、そんな風に思ったのは、こういう状況もありました。


「そういえば、ブラジルだと、キースのアニキ的な盛り上がり、ないな」


 そこのコントラストに日本との違いを強く感じ、「日本でのあのアニキ感は一体何なんだ」という思いが脳裏に強くよぎってしまったことが直接的な原因でしたね。

 
 今の日本でのストーンズのオーディエンスのことは知りませんが、ストーンズ・ブームのあった90sの頃って、いわゆる「キース・ウォナビー」みたいなタイプの人がライブに多かったですもん。そういう人で若い部類になるとエアロスミスとかガンズのライブにもいたので、なおさらそんな風に思えたのかな。そうじゃなくてもストーンズって、「野郎が、野郎に憧れる」みたいな印象がなんか、日本にいた頃に僕は感じられたものです。


 ただ、この日のサンパウロでのショウを見る限り、そんなことは全然なかったですね。むしろ多かったのは、そんな「男としてのいきがり」みたいなものを全身から醸し出す人ではなく、むしろ「普通の人」がほとんどだったし、驚くことに、女性比率がすごく高かったんですね。しかも、20〜30代の女性。このイメージはストーンズのライブに僕が抱いていなかったものです。

 
 で、改めて思ったんですが、「欧米圏で、ミック・ジャガーというのはかなりのセックス・シンボルなんだな」ということです。そこはさすがに「Moves Like A Jagger」なんて曲まで生まれてしまっているくらいですからね。60sの頃にはストーンズもビ=トルズ同様にアイドルだったわけですけど、欧米圏ではそのノリがまだ一部、代を変えて存在し続けているんだな、というのを、会場の半分近くいた女性客を見るにつけ思いましたね。日本だと、「ブルースに求道的な男の音楽」って感じがどこかあったと思うんですけど、単純に「セクシーでカッコいいじゃん」というのがフランクに許容されている感じがありましたね。そういうノリの方が僕は好きだけどなあ。


 ライブそのものの方ですが、「ベスト・オブ」の内容で、聴きたい曲はひととおりやりましたよ。「She's A Rainbow」とか、このところセットから外れていた僕の大好きな「Miss You」までやってくれたのは嬉しかった。あと、ここのところオープニングでずっと来ていた「Start Me Up」を、後半のキメ曲だった「Jumpin' Jack Flash 」とサプライズ入れ替えをしたのも良かった。リクエスト曲は「All Down The Line」。大好きなロックンロールだったのでうれしかったです。



 ギルモアのライブ同様、「これも未来に受け継ぐべき遺産だよなあ」とは強く感じられたのは事実です。ただ、「良い、悪いでの評価」ではなく、「あくまで一個人との相性」という意味では、僕はザ・フーやボウイやフロイドほどにはストーンズ向きではないのかなあ、と感じてしまいましたねえ。
 
author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 13:15
comments(0), trackbacks(0), - -
ライブ評「デヴィッド・ギルモア」2015.12.11@サンパウロ・アリアンツ・パルケ〜伝説級の衝撃!
どうも。


ここ数日言ってたように、これに行ってきました。





デヴィッド・ギルモアです。これはなんだか前々からすごく楽しみでした。彼が今絶好調であることは、出たばかりの新作「Rattle That Lock」がイギリスを含むヨーロッパ全土で軒並み1位を取ったこと。それに伴うヨーロッパ・ツアーでの絶賛ぶりの話題を聞いていたこと。そして、そんな彼のライブがスタジアムで体験できる貴重な機会であること。これが決め手でした。


会場となるのは、サンパウロ三大サッカー・チームのひとつ、パルメイラスの去年できたばかりの新しいサッカー・スタジアム。ここはポール・マッカートニーがこけら落としをやって以来、ケイティ・ペリーとかMUSEとか、来年はマルーン5やコールドプレイもここでやりますが、すごく評判のいいとこです。僕は今回が初めてだったんですけど、地下鉄の駅を降りたとたん、種々のピンク・フロイドのTシャツを来た集団が現れたので道に迷わずにすみました。群れの中にいるのは、リアルタイムのフロイドじいさんはもちろんいたんですが、想像以上に年齢が若い感じがしましたね。30〜40代がメインで、しかも女性客の比率やカップルが意外と多いんですよね。プログレって、ブラジルでもナードなイメージが強いロックなんですけど、それよりはもっと開かれた、大衆的な感じがしましたね。


で、会場につくと、非常にモダンでいい感じでしたね。ちょうどスタンドの観客席の頭上にだけ屋根があって、真ん中を縦長の円で屋根なしの状態なんですね。なので客席からは空も見えるし、風も感じるし、それでいて雨には濡れないと、なかなか合理的な作りでした。そしてステージには、ピンク・フロイドの後期のライブの映像で見かけた巨大な円形鏡風のモニターが設置され、アリーナの観客席のところに、その受像に関係あると思しき巨大な送風機みたいなものが2台建っていました。僕の席はスタンドでしたが、幸いにもアリーナに一番近いとこで、ステージもそこそこ見えるし、スタジアムの全体像を俯瞰もして見える、かなりベストな名書でした。


こちらのライブの時間は、いつも9時頃で遅いんですが、9時15分頃、会場の照明が全て消え、4万人の凄まじい大歓声があがりました。


<第1部>

Setlist

1.5AM
2.Rattle That Lock
3.Faces Of Stone
4.Wish You Were Here
5.A Boat Lies Waiting
6.The Blue
7.Money
8.Us And Them
9.In Any Tongue
10.High Hopes


今回のツアーは、ステージ2部制で行われていますが、これが前半で、ここでは新作「Rattle That Lock」が1〜3、5、9、前作「On An Island」から6と、主にソロになってからの楽曲が中心でした。


 こういう展開だと、「ただ単にフロイドの曲だけを聴きに来た」タイプのリスナーには退屈だったかもしれません。ただ、ギルモアが素晴らしいのは、これらの新曲を、観客に対して決して退屈させることなく、説得力を持って聴かせていたことです。と、言うのも彼、シンガーソングライターとして一流です!僕は今回のセットリストを事前にしっかり予習して行ってたから選曲的には一切困らなかったのですが、これ、仮にほとんど知らない状況で行っていたにしても、それなりに楽しめたような気はしましたね。というのも、ギルモアの書くメロディのわかりやすく、かつ、飽きないように似たメロディがないことが大きいですね。この点に関しては、近年の若手のシンガーソングライターにも全然負けていない力量だと思います。


 加えて、70に近い年齢だというのに、声の張りが全く衰えていないこと、そしてそして、どの曲にも非常に流麗でスケールの大きな、いかにも彼らしいギター・ソロがあること。これが大きいですね。あのギター・ソロの妙技を曲ごとに堪能するだけで、これだけで十分意識が持っていかれますね。彼って、1〜3弦の高い音を弾くときの音の強さと響きがとにかく気持ちいいんですよ!そして、ソロをただ速く弾くとかじゃなくて、一音一音にしっかり意味を持って弾いてるから、あたかもそれが物語のように雄弁なんですね。なんか、彼の心の中にあるエモーションをすごくて丁寧に語りかけてくるような、そんな生きた感じがするんですよね。最近のロックシーンでは、こうしたギター・ソロを持ち味にするような人や機会が圧倒的に減りましたけど、こういう優れた芸当、ぜひ誰かに継承して欲しいですね。これは語り継がれるべきロックの財産だと、聴きながらほれぼれしました。


 そして、そのあいまあいまにフロイドの代表曲を挟むんですけど、これが実に効果的でね。ブラジルにも熱心なフロイド・ファンって多いんですけど、もう、どこのタイミングで、どの音が入るか、十分承知なんですよね。たとえば「Wish You Were Here」のアコースティック・ギターでのメインリフを繰り返したあと、2回目のメインリフの最初の小説のあとに入ってくるリスポンスのフレーズ、これが鳴っただけで会場は「ウォーッ」の大歓声が置き、ギルモアの歌いはじめとともにサビまで一字一句、大合唱でした。あのリスポンスの、アコースティックを強くはじいたあの音だけで、しっかり空気を変えれる力が彼にはあります。


 ただ、今回、大きな失敗がありました。それは、この日つめかけた人が待ちに待ってた曲のひとつ「マネー」で、キャッシング・マシーンのイントロが終わった後の、あの有名なベースのリフがなるところで、接触不良かなんかが起きたのか、音が出なくなっちゃったんですよね。で、そのあと、イントロからやりなおしても、それでもダメで。3回目でなんとかなったんですけど、このとき、観客はちょっと弛緩したのは非常に惜しかったです。それでも、その次の、同じく「狂気」の代表曲「Us And Them」や、ギルモア主導期のフロイドでおそらく一番人気で、この日も歓声が大きかった「High Hopes」をやる頃には、観客も忘れてましたけどね。


<第2部>

11.Astronomy Domine
12.Shine On You Crazy Diamond
13.Fat Old Sun
14.On An Island
15.The Girl On The Yellow Dress
16.Today
17.Sorrow
18.Run Like Hell


 20分ほどの休憩をはさみました。ここまでの感想は、「ギルモアの個人のパフォーマーの力量はすごいんだな」と感心しきりでしたが、ただ、「あくまでもソロの中の一環で、フロイドの代表曲を混ぜてる感じだな」という印象でした。これに関しては、最近のロバート・プラントの「ソロ曲メインに、効果的にツェッペリン」を思い出させるパターンのように思いましたね。あくまで現役感をアピールしながら、そこに往年の代表曲を効果的に混ぜる。彼くらいのレジェンドなら尊敬すべきやり方です。ただ、こと、「フロイドの楽曲を楽しむなら、ロジャー・ウォーターズの方がもっとベストヒット的な感じで、それはそっちの方が楽しかったかな」と、2001年くらいに東京国際フォーラムでやったときのことを思い出しながら考えていました。





 ただ、そんな印象が一変したのは、2部の前半です。ここはフロイド・ナンバーが立て続きましたが、ここで示したギルモアの存在感は、10数年前に見たウォーターズのバンドのフロイド再現にはなかった、圧倒的なカリスマ感とド迫力を感じましたね。最初に披露したのは、彼の曲ではなく、シド・バレットの書いた「天の支配」でしたけど、もう、デビュー・アルバム「夜明けの口笛ふき」に入ってるまんまの、目のくらむようなどサイケ感覚をしっかり再現してました。そして、ここから、ギルモアの頭上にそびえていた大型円形ミラーが極彩色に目まぐるしく変化を遂げ、それにあわせて目に痛い原色のレーザー光線の乱射が激しくなり、さらに円形ミラーがくるくる回りはじめ、その周囲についてた電球がまぶしく乱反射!この照明に関しては、さすがに「ライトショーの先駆、かつ、大家」ですね!これは他のアーティストのライブでは決して体験しえないような芸術表現です。


 そして続いて、同じくシドつながりの「狂ったダイアモンド」。かつての親友に対し、彼自身の代表曲にそのオマージュでしっかり返します。ここでも、あの混沌としたイントロの中でゆっくり浮かび上がる「♩チャンラ、ラ、ラ〜」のフレーズを、それが鳴る前から叫ぶ観客もいたし、鳴ったとたんに狂喜乱舞した人はもっといたし。やはり、ワン・フレーズやひとつの音だけで彼はしっかり空間を操ることができます。さらに続いては、ギルモア加入後の最初期の代表曲、「Fat Old Sun」。「デブでぶくぶくの太陽」という、「確かに訳はそれでいいんだけどさあ」な邦題に似合わない牧歌的なカントリー・チューンから鮮やかで骨太なダイナミックなソロへのダイナミズムの分け方もさすが。こうした、フレーズの妙や、ソロでの圧倒的なカリスマ性と力強さというのは、ウォーターズのバンドが束になっても表現できてはいませんでしたね。個人の力がバンドにおいていかに大きかったことか。フロイドがウォーターズという絶対的なリーダーが抜けたのに人気を落とさず、逆にウォーターズがソロで成功しなかったのは、「メイン・パフォーマーとしてのギルモア」がしっかりバンドに残り、主にライブで観衆が魅了され、満足していたからではないか。そんな風に思いましたね。


 この辺りでメンバー紹介がありましたが、今回のツアー、サイド・ギタリストがロキシー・ミュージックのフィル・マンザネラなんですね。このガッチリとした組み合わせも、しっかりケミストリーを生んで光ってましたね。


 ライブはこの後はまたソロ期に戻りました。ここも1部同様、楽しめましたが、唯一注文をつけるなら「The Girl In The Yellow Dress」はいらなかったかな。スタンダード・ジャズ調で覚えやすい曲ではあるんだけど、ちょっとアダルトな方向に楽曲を振りすぎな気も。現にこの曲のあいだに、アリーナ席の人たちが、通路にドリンク買いに行ってる姿が目に入りました。


 ただ、ファンキーな新曲「Today」から、ファンク・ベースが印象的な、87年の「鬱」収録の「Sorrow」といった渋いチョイスの隠れ名曲に流れたつながりは面白かったですね。やや過小評価気味なギルモア主導の後期フロイドの再評価を促す意味でも、こういう選曲はうれしいところ。そして、重低音のスライドから「ザ・ウォール」のアッパー・チューン「Run Like Hell」で観客はまたも大団円。2部の終わりをしっかりアゲて終わりました。


アンコール
19.Time
20.Breathe(Reprise)
21.Comfortably Numb


 そして興奮した大観衆が南米流に「オーレ、オレ、オレー、ギルモー、ギルモー」と歌う中、「ゴーン、ゴーン」と懐中時計の音が鳴り、ここで更に大歓声。もちろん「タイム」です。歌いはじめはかなり強めにシャウトなんですが、40数年前と全く変わらぬ力強さと、幻覚的なグルーヴとメロディ。この空間支配力はお見事です。そして最後は、ギルモアといえばやっぱり、これ!「Comfortably Numb」! 僕はウォーターズのライブで聴いたこの曲の印象が非常に強く、「今回はぜひ、本家ギルモアのヴァージョンで聴きたい!」と思ったのが、今回見に行こうと思った強いモチベーションとなっていましたけど、いやあ、本家はやっぱり違う! Aメロの歌い出しがウォーターズじゃなかった(歌ったのはキーボードのジョン・ケイン)のが少し残念ではありましたが、それでも、ウォーターズでのライブ時に「Bメロを歌うのがギルモアじゃないのか」の残念さよりは断然いい(だって、ギルモアの声の方が圧倒的に良いから)し、そして何より、「ロック史上最高のギター・ソロ」にも何度も選ばれてきた、あの最後の怒濤の泣きソロ!あれはいろんな人がやりたがる名フレーズで、ウォーターズのライブでももちろんうまい人が弾いてるわけですけど、あの高音のフレーズの力強さと、流麗な哀愁、ここに関しては、勝てるギタリストはやっぱいないですね。そこはやっぱり、「誰が歌おうが、ロバート・プラントやフレディ・マーキュリーのようには誰もなれない」というのと同じことを、僕はギルモアに感じました。


 最後は、「Comfortably〜」のソロの余韻にひたりながら、興奮のまま家路につきました。そして、今まで、今日のこの瞬間まで、僕はフロイドの本当のすごさがよくわかっていなかったんだな、と痛感しました。これほど有能でカリスマ性に溢れるフロント役がバンド内にいたとは!日本だといきおい、「ウォーターズのコンセプト・メイキングが・・」みたいな方ばかりが注目されがちなところもあったフロイドですが、そうしたコンセプトと同じくらいにライブでの表現力って大事だったのではないのかな。欧米での神格化されたフロイドの評価は、こうしたライブ・パフォーマンスを含めた上での再評価だったんだな、と改めて思った次第です。そう考えると、日本でフロイドが最初に人気のあったのが、70s初頭の実験要素が強い時期で、逆に欧米で大カリスマとなった「狂気」から「ザ・ウォール」の時期に来日公演が行われなかったアンラッキーさは、やっぱ日本のロック史的には不幸だったのかな、とも思いました。


 そう考えるともちろん、70sの黄金期のフロイドのライブを体験していたら、もっとワクワクできたのに、と悔しくもあったんですけど、でも、こうしたことに遅まきながら今気づき、稀代のライブ・パフォーマーの妙技を体験できた意味ではすごく有意義なライブでした。


 
author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 10:20
comments(0), trackbacks(0), - -