- 映画「ミッション・インポッシブル フォールアウト」感想 傑作!「最新作が最高傑作」を更新し続ける稀有なシリーズに!
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2018.07.31 Tuesday
どうも。
では、今日はこの映画のレヴューをしましょう。これです!
現在、世界で大ヒット中ですね。トム・クルーズのアクション映画の定番「ミッション・インポッシブル」の第6弾、「フォールアウト」、こちらのレヴューです。これ、今、本当にどこでも話題にされてるくらいにホットな存在だったりしますが、どんな感じなのでしょうか。
早速、あらすじから行きましょう。
アメリカのスパイ組織、IMFのイーサン・ハント(トム・クルーズ)の今回のミッションは、彼が2年前に逮捕した凶悪テロリスト、ソロモン・レインの残党たちからなるテロリスト集団が、3つのプルトニウムを使った原子力テロを起こさないよう妨害をかけることでした。イーサンはベンジーとルーサーのおなじみのチームでミッションにあたり、成功したかのように見えましたが、イーサンはあることが理由で、プルトニウムを奪い損ねてしまいます。
イーサンはプルトニウムを奪い返すべくミッションを自らに課しますが、CIAディレクターのエリカ・スローン(アンジェラ・バセット)はイーサンの監視役として凄腕エージェントのオーガスト・ウォーカーをつけることを条件としてそれを認めます。
ただ、今回のミッションは謎の多いものでした。わかっているのは、テロ集団がプルトニウムをジョン・ラークなる人物の仲介でパリの武器密輸組織の女ボス、ホワイト・ウィドー(ヴァネッサ・カービー)に渡す、というだけでした。
イーサンとウォーカーは、テロ集団が送り込んだプルトニウムの運び屋を追いますが、この男がかなり手ごわい男でした。彼らは苦戦しますが、その時、
向こうから、前作でイーサンとかなりいい間になりながらも一緒にはなれなかったイギリスのスパイ、イルサ(レベッカ・ファーグソン)と再開します。彼女のミッションは、イーサンが2年前に逮捕した時に殺さなかったソロモン・レインを仕留めることにありました。
イーサンはレインをなんとか刑務所から移送させることに成功し、さらにラークに扮してホワイト・ウィドーに接近します。これを
IMFの長官、アラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)は反対しますが、ハントは聞き入れません。
すると、「本物のラーク」をめぐり、事件は意外な方向に展開します。
そして、その先には、長いこと行方が分からなかったイーサンの元妻ジュリア(ミッシェル・モナハン)の存在までありました・・。
と、ここまでにしておきましょう。
いやあ、これ
素晴らしいです!!
いい理由、いくつかあるんですが、まず一つは
やっぱ、トム・クルーズの生アクションですね。これ、ここ数作、ずっと言われてますけど。やっぱり50代の男が、ちゃんと体張って、嘘くさくなく演じているので引き込まれますよ。必ずしも完璧な動きではないんだけれど、その人間臭さが愛おしいというか。「この精一杯頑張ってるんだけど、でも人間の範囲内」というヒーロー感が、イーサン・ハントを魅力的にしてると思いますね。もう、すっかり「60年代の人気シリーズのキャラクター」じゃなくて、「トム・クルーズの代表作」ですよ。まちがいなく、彼の演じた中でのベスト・キャラクターになってきてますよね。
もちろん、それもいいんですけど、一番最高なのは
やっぱ、この4人のケミストリーですよ!
すごく不思議ですよね。だって、このメンツ、最初からいたの、イーサンとルーサーだけで、ル−サーだって、場合によってはいない時もあった。それが、20数年かかって、6作目で一番ベストのケミストリーを生み出すチームが出来上がった。普通、「シリーズ6作目」なんて言ったら「もう4作目から無理やり引き伸ばしてるよね」って感じで飽きられて打ち切りが考慮されるような、そんな時期ですよ。それがジワジワと成長していくことによって、「最新作が最高傑作」になっている。こんなシリーズ、ちょっと記憶にないですね。
中でも、ルーサーのバイプレイヤー感は光りますね。「縁の下の力もち」でしたけど、渋い人間味が出るようになってきて。今作だと、黒澤明の映画の志村喬みたいな味わいまであって。彼のセリフの一言一言が妙にしみるというか。そういう立場ですね。
ベンジーも相変わらず良いです。もともと、エドガー・ライトのカルト・コメディ出身だった彼がこのシリーズに加わったことで、作風にユーモアでてきましたけど、イーサンとのあうんのコンビネーションも、戦うヒーローとしてのアイデンティティもしっかり育ってきました。ミスの仕方のお茶目な感じも相変わらず面白いです。
そして
イルサが本当に不可欠な存在になってきました。前作での登場から彼女、このシリーズの女性の歴代キャラでも圧倒的な存在感でしたけど、演技、かなりいいです。彼女の場合、スパイという立場上、表情をあまり顔に出せないんですけど、それでもイーサンへの思いが情熱で隠せない、その複雑な女心の表し方が見事です。今回とりわけジュリアを出してきてることによって、その気持ちがよりはっきり出ているのがそそります。
それから
ヘンリー・カヴィルとアンジェラ・バセットも良かった。カヴィルはスーパーマン演じてる時より、全然表情が生き生きしてました。申し訳ない話、「こんなに演技、上手い人だったんだ」って思いましたからね。今回の役で需要増えると思います。そしてアンジェラ・バセット!彼女、90sの時は黒人のトップ女優で僕もすごく好きだったんですね。しばらく、ちょっと消えてるなあと思ってたんですが、今年、「ブラック・パンサー」のお母さん役で復活して、そして今回、CIAの女ボスですからね。年齢的にも、ヴァイオラ・デイヴィスよりもだいぶ上で、もう「大御所黒人女優」の風格ありますから、これからそうした役どころでの出番、増えるんじゃないですか。確かにある時期は「男はデンゼル、女はアンジェラ」の時期、ありましたから、それに見合う今後の活躍に期待ですね。
そして
最後の30分は、アクション映画史に残りそう!
これ、圧巻ですよ。なんか、いい時のジェイムス・キャメロンみたいな感じ、ありますもん。あの、妙に敵がしつこい感じ(笑)。あのピンチが長く、長く続くあの感じ。あれはみごとです。一瞬たりとも目が離せません。
そう考えると
監督のクリストファー・マッコーリーの手腕が大きいですね。彼、もともとが脚本家で、今作も全部自分でシナリオ書いてるんですけど、そういう人が、今作みたいな大きな絵も撮れてるところが驚きですね。彼、トム・クルーズの他の映画の監督、脚本もここ最近ずっと書いてるんですけど、トムから離れて、自分で作りたいもの作れるようになったら、いきなりオスカー狙えるような作品、作れるんじゃないか。そんな気さえさせます。
いずれにせよ、これ、見て絶対損はありません。成長してヒットを続けているのにはしっかり理由があります。
- 最新全米映画興行成績
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2018.07.30 Monday
どうも。
では、全米映画興行成績、行きましょう。
1(-)Mission Impossible Fallout
2(2)Mama Mia! He We Go Again!
3(1)The Equalizer 2
4(3)Hotel Transylvania 3 Summer Vacation
5(-)Teen Titans Go! to The Movie
6(4)Ant Man And The WASP
7(5)Incredibles 2
8(7)Jurassic World Fallen Kingdom
9(6)Skyscraper
10(8)The First Purge
初登場で1位は「ミッション・インポッシブル」の第6弾、「フォールアウト」です。
このシリーズ、面白いもので、シリーズが始まった当初よりも今の方が人気も評判も断然上でして、今回、これが最初の週末で6000万ドルという、同作史上最高のヒットになっています。
で、評判がこれ、凄まじいんです。Metacriticで86点、Rottentomatoesで97点ですよ!これ、僕ももう見てます。早ければ、この次の投稿でレヴューしようかと思っています。
5位の「Teen Titans Go! To The Movie」は、これはですね、カートゥーン・ネットワークという子供向けのチャンネルがありまして、そこで今、すっごい人気のアニメがこれです。それの映画版です。うちのトムが毎日のように見てて、当然、これも「連れてけ」と言われています(笑)。
そして、この映画版、評判がかなりいいんです!Metacriticで70点、Rottentomatoesで90点!こちらでは8月下旬の公開です。こういう映画知れるのは、子供持ってる親の強みでもあります(笑)。
- フジロック、ブラジルからでもyoutubeで生中継、見れます!
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2018.07.29 Sunday
どうも。
毎年、このブログで起こる現象なんですけど、フジロックの開催の週末、僕のブログのアクセスが必ずと言っていいほど落ちます。どういうタイプの人が閲覧してるか、毎年思い知らされます(笑)。
僕もフジjは2006年に行ったのが最後なのでなんかすごく懐かしいんですけど、「縁がないよなあ」と思って諦めていたら、なんと、youtubeでの生中継、ブラジルでも見れますよ!よかった〜。youtubeだと、海外だと、ブロックするのが可能だったりするのでどうかなと思っていたんですけど、見れますね。さっき、ベンジーが歌ってたの見たし、今、ハインズやってますね。
そうかあ。もっと早く知ってたら、昨日の朝は土曜だけど頑張って早起きしてケンドリック、見たなあ。いや、起きてはいたか。子供に朝食を作って一緒に食べてるくらいの時ですね。食事の時間に一人でパソコンに張り付いたりするの、ワイフがものすごく嫌うのでなかなか難しいんですけどね(笑)。
でも、今から寝て、起きてディランは見てみようかな。本当にフジロックにとっては世紀の瞬間でもあるから。なんかディランが苗場のホテルに泊っている姿がなかなか想像できないんですけどねえ。
では、フジに行かれていらっしゃる方、最後まで楽しんでください!
- 最新全英チャート
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2018.07.28 Saturday
SINGLES
1(1)In My Feelings/Drake
2(2)Shotgun/George Ezra
3(6)Rise/Jonas Blue feat Jack&Jack
4(8)Youngblood/5 Seconds Of Summer
5(9)Jackie Chan/Tiesto feat Dzeko&Post Malone
6(10)If You're Over Me/Years&Years
7(5)Don't Matter To Me/Drake feat Michael Jackson
8(11)I Like It/Cardi B feat Bad Bunny&J Balvin
9(7)Girls Like You/Maroon 5 feat Cardi B
10(4)God Is A Woman/Ariana Grande
ALBUMS
1(4)Mamma Mia Here We Go Again/Soundtrack
2(3)The Greatest Showman/Soundtrack
3(1)Scorpion/Drake
4(5)Staying At Tamara's/George Ezra
5(13)Mamma Mia/Soundtrack
6(7)Beerbongs&Bentleys/Post Malone
7(19)Gold/ABBA
8(8)÷/Ed Sheeran
9(6)Beautiful Life/Rick Astley
10(11)?/XXX Tentacion
- 全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第15回)ジェスロ・タル その2 10-1位
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2018.07.27 Friday
どうも。
では、昨日の続き、行きましょう。
全オリジナル・アルバム「FromワーストToベスト」、ジェスロ・タルの第2回。今回はいよいよトップ10の発表です。どんな感じになったでしょうか。早速10位から見ていきましょう。
10.Too Old To Rock Roll To Young To Die(1976 UK#25 US#14)
10位は1976年に発表した邦題「ロックンロールにゃ老だけど、死ぬにはちょいと若すぎる」。中学生の時に、「昔、こんな邦題のアルバムがあったんだ」というインパクトでまず覚えましたね。タルの場合、ルックスは昔から老けたイメージだったのでピッタリな感じではあったんですが、これ発表したの、彼らがまだ20代後半だったんですよね。それで、このタイトルのセンスというのは、この当時のロックの社会的イメージを表してて興味深いですね。今なんて20代後半なんて言ったらロックの世界だと下っ端ですからね(苦笑)。
このアルバムですが、ライブの定番でもあるタイトル曲がまず強烈ですね。佗しいんだけどユーモアもある、いかにも英国人気質が現れた曲で微笑ましいんですが、この曲のフレーズがアルバムを通して繰り返されもするので、どうしてもこの曲のイメージが先行してしまう作品でもあります。ただ、全体的にフォーク色が強く、それが次のアルバムから築かれる次の黄金時代の前段階のようにも聞こえて興味深いんですよね。タルは70s後半、復活を遂げます。
9.The Broadsword And The Beast(1982 UK27 US#19)
9位は1982年発表のこのアルバム。上の分割写真だと3段目の真ん中です。
1982年といえば、元イエスやEL&P、キング・クリムゾンのメンバーらが集まったエイジアが大ヒットしたもののポップになって「産業ロック」などと揶揄された時代ですが、それだけプログレ・バンドが生き残りに苦労した時期です。70s後半に盛り返したタルも80sに差し掛かる頃にはまた没落していたんですが、このアルバムでまたしても持ち直します。
このアルバムは、これまでのブルーズやフォーク、ジャズの傾向を弱め、前作「A」で取り入れたシンセサイザーを主体としたモダンなハードロック路線だったんですが、これがうまくいっています。80sの始め頃ってこれに限らずいいハードロック・アルバム、多いんです。確かに70sの時のように泥臭くはないんだけど、同時に80s後半ほどオーヴァー・プロデュースでゴテゴテしてもなく、ギター・サウンドもソリッドで、曲も短くなったから聞きやすいんです。そんな時代に彼らもシンセというモダン・ファクターをうまく使いながらもソリッドにロックし、仕上げにイアンのフルートを添えてくる。どんなに方法論が新しくなっても、伝家の宝刀のフルートがあるからアイデンティティは揺らぎようがありませんからね。
あと、サウンドが洗練された半面、「剣」をモチーフにすることで、彼ららしい中世のファンタジー感覚を生かしたのも良かったですね。欧米の古株のクラシック・ロックファンが思い浮かべる「ヘヴィ・メタル」のイメージって、まさにこう言う感じだったりもします。
8.Benefit(1970 UK#1US#3)
8位は1970年発表のサード・アルバム「Benefit」。この頃のタルって、イメージ的にまだどちらかというとプログレというよりはレッド・ツェッペリンとかディープ・パープルにむしろ近いブルージーなハードロックのイメージなんですよね。まだ、長大な曲とか組曲とかやってませんからね。
ただ、このアルバムから、ジャズ的なインプロヴィゼーションは少し目立つようになりますね。ドラムの手数が多くなったり、変拍子みたいなものが曲によっては目立つようになります。あと、フォークのテイストも濃くなってきますね。最初の2枚のイメージを保ちながらも、少しずつ脱皮していく感じの時期ですね。
ただ、ファーストやセカンドと比べると、代表曲の印象が少し弱いかな。だから、この位置になったんですけどね。それでも「Teacher」や「With You There To Help Me」、当時のアルバム未収録でこのアルバムと並行シングルとなった「Witch's Promise」はやはり代表曲ですけどね。
7.Heavy Horses(1978 UK#20 US#19)
70年代後半の傑作の2枚目ですね。この前作のアルバムで、「ブリティッシュ・トラッドフォークを主体にドラマティックな曲を展開する」というパターンになっていたんですけど、このアルバムでも基本的にそれは踏襲しています。むしろ、フォーク色は前作よりも濃くなっているくらいです。今作が面白いのは、ここではそこに、ファンクやディスコ調のリズムが加わっていることです。ストリングスの入れ方もなんとなくフィリー・ソウルっぽい感じがして。それが絶妙に、トラッド・フォークで使うフィドルの音とオーヴァー・ラップする感じなんかも面白いですね。
曲の印象度合でいけば、前のアルバムの方に分がありますが、このアルバムのタイトル曲もライブでは欠かせない定番。さっきも言ったような、郷愁を誘うフォークとモダンなグルーヴとの融合と展開が面白い一曲でもあります。
6.Crest Of A Knave(1987 UK#19 US#32)
1987年発表。彼らの後期の代表作ですね。
これに関しては、70年代のイメ−ジとまったく違うと判断することでファンの中では忌み嫌う人もいたりする作品ですが、僕は傑作だと判断しています。確かにこのアルバム、ギタリストのマーティン・バーの、この当時のヘヴィ・メタル・シーンを意識したギター・ソロは過剰なくらいになるし、80sに入ってからのエレクトロ路線もまだ続いている。80s後半っぽい、ちょっとオーヴァー・プロデュース的な作りも否定はできません。
ただ、それでも僕がこのアルバムを高く評価するのは、彼らが時代の流れに順応していく中で培った手法をこのアルバムでうまく生かしていることですね。これに関しては他のプログレのアーティストがうまくできなかったことです。さらに、そうしたモダンな試みも行いつつも、ここではしっかり、タルの固有のオリジナリティとして根付いていた「ミステリアスさ」が久しぶりに感じられる作品になっているからです。その象徴が「Budapest」という9分にも及ぶ大曲なんですが、この東欧の街で出会った言葉もうまく通じない女性との謎めいたロマンスを描いたこの曲は当時から人気で、その後のライブでも大定番の曲になっています。あと、これもそうだし、「Said She Was A Dancer」もそうですけど、「なんだかんだ言って、セクシーでエロティック」だったりするイアンのリリックが、40男として成熟した彼の色気とともにこれまで以上にリアルな説得力を持っているんですよね。こういう持ち味は、血気盛んな若い時分だったら表現できなかったと思います。
そういうこともあり、このアルバム、僕も高校3年で覚えてますけど、結構チャートではロングヒットしたんですよ。それもあったから、「このバンド、どういうバンドなんだろう」と気にする僕が生まれた、というのも実際にあるんです。あと、これは知らなかったんですけど、このアルバムからのシングル曲、「Steel Monkey」あたりは当時のベテラン・バンドとしては異例のMTVのヘヴィ・オンエアにもなっています。
そうした背景があったので、このアルバム、グラミー賞で初めてのヘヴィ・メタル部門でメタリカに勝って受賞したりもしています。当時もそうだし、今も「変なチョイス」と言われがちなエピソードですが、よく知ると実はそこまで意外ではないです。
5.Thick As A Brick(1972 UK#5 US#1)
1972年発表の4枚目で「ジェラルドの汚れなき世界」の邦題とジャケ写で有名な作品ですね。
このアルバムは、昨日紹介した「A Passion Play」とともに、タルが「世に流行っているというプログレなるものをうちらもやってみるか」とばかりに作った、彼らのキャリア史上2枚だけの組曲形式のコンセプト・アルバムです。このアルバムも、LPのA面、B面、それぞれ20分近くの組曲、それぞれ一曲ずつ、という構成です。
僕はこの組曲形式というのがあまり好みではなく、それがゆえに順位も初の全米ナンバーワンという記念すべき作品の割に意外と低くもつけたりもしたんですけど、ただ、この形式がこの当時のロックの一つの象徴であることは理解しているつもりだし、その方向で時代を代表する作品を作った、という意味では客観的に高く評価しているつもりです。
というのも、これ、コンセプトがハッキリしてるから。ストーリーそのものも、ジェラルド・ボストック君なる8歳の架空の少年が書いた架空の詩に曲をつけたという設定になっているんですが、英国式センス・オブ・ユーモアを感じさせるウィットに富んだ優雅な気品が全体を通して存在するし、曲の主題となり何度も繰り返される牧歌的なフルートとアコースティック・ギターのリフもすごく耳に残るフレーズだし、その合間に展開される演奏も、「組曲」というクラシック的な感じよりは、彼らが本来得意としていたジャズのインプロヴィゼーションからの影響の方を強くにじませている感じといい、すごく「ジェスロ・タルらしさ」があるし、それが当時に彼らが持っていた時の勢いとともに衝動的に表現されているのがいいです。こう言うコンセプト・アルバムであるのならば、僕も歓迎しますね。
4.Songs From The Wood(1977 UK#13 US#8)
4位は今日的な再評価が非常に強いアルバムですね。1977年の「Songs From The Wood」。このアルバムの人気は、去年だったかな、このアルバムのデラックス盤が発売された際、UKチャートで28位を記録したほどなんですよね。
なぜ、そういう評価になっているのかといえば、それはやはり、彼らがこのアルバムでの自らの立て直しの仕方にあったと思いますね。つまり「トラッド・フォークを主体として、展開力のある新たなロックを構築した」ことにあるでしょうね。タルの場合、これまでのアルバムだったら、サウンドの要になっていたのは、ブルーズ・ハードロックのヘヴィなリフだったんです。そこを彼らは、アコースティック・ギターとヴォーカル・ハーモニー、そしてバグパイプを模したエレキギターもそうですね。これらを主体とし、そこにハードロックやジャズのインストに通じる展開力にあふれたアンサンブルを表現することができた。それがここまで決まったアルバムを僕は他に知らないですね。
あと収録曲のレベルもこのアルバムはすごく高いですね。タイトル曲はトラッド・フォークの名曲としても通用するし、「Cup Of Wonder」「Hunting Girl」の「ハードフォーク」と言った味わいのドラマティックな曲展開にはカタルシスを感じますし。
ちょうど時代はパンクロックのでてきた時代で、ハードロック/プログレはかなりの突き上げも食らうことにもなりますが、そこにもはや「形式」として形骸化した「プログレ」ではなく、文字通り「進化」したサウンドを提示することがしっかりできた意味でもこれ、賞賛に値すると思います。
3.This Was(1968 UK#10 US#62)
ここからはジャケ写月でいきましょう。3位はデビュー・アルバム「This Was」。邦題でいうと「日曜日の印象」というヤツですね。
ここまでも書いてきたように、ジェスロ・タルは様々な音楽的変遷をたどっていて、いろんな音楽要素をものにしてきました。もちろん、それもかなり魅力的なことであり、それがあったからこそ、彼らは長寿バンドにもなったとは思います。でもですね、本音の本音を言ってしまうと、僕は初期のドロドロなサイケをやっていた頃のタルが一番好きです。そして、そのことはおそらく当の本人たちもわかっているんでしょうね。ライブにおいて最も演奏頻度の多いのは、僕が選んだトップ3とまったく同じです。
このファースト・アルバムなんかは、もうプログレというよりは、本当は純粋に「ブルース・ロック・アルバム」というべきなんでしょうね、本当は。この年に、ピーター・グリーンのフリートウッド・マックとか、フリーとかもデビューしているわけだから当時のUKロックとして同時代的な必然性がかなりありますしね。実際、この当時はまだ、イアンが完全な実権を握る前で、バンドにはミック・エイブラムスという優れたギタリストがいまして、本来なら彼をバンドのスターにしようとまでしていたほどです。
イアンはそのミックの売り出しの結果、ステージでのギターは奪われてしまったのですが、そこで「なんか楽器を弾いてステージでアピールしたい」と思って手にしたのがフルートでした。後にも先にもロックでフルートがメインのバンドなんてないし、それが結果的にタルを歴史上においてでさえも珍しいタイプのバンドにしているのですが、このフルートの不穏な響きがですね、サイケだったりヘヴィでダークなハードロックにはすごく似合うんですよ。やっぱフルートって、どこか密教的な謎めいた雰囲気、ありますしね。
このアルバムは「Sunday Feeling」「Beggar's Farm」「A Song For Jeffrey」とブルーズ・ロックの名曲が多いんですけど、イアンとミックの対立が深まり、ミックはたった1作で脱退してしまいます。そのあとミックは自分のバンドも作りますが、開花できずに終わってしまいます。タルはキャリアの最初にいきなり惜しい才能を失ったわけですが、そんな”伝説のメンバー”の才気がみなぎるアルバムでもあります。
2.Stand Up(1969 UK#1 US#20)
続いて2位ですが、セカンド・アルバムの「Stand Up」です。
前述のイアンとミックとの対立ですが、これはミックがもっとブルーズ・ロック寄りにタルをシフトさせたいと願っていたところ、イアンがもっとジャズやフォークまで含めて包括的に大きなサウンドを表現するバンドにしたかったことで起こっていますが、このアルバムはそんなイアンの音楽的理念が早くも結実したアルバムです。
実は、アルバムのハードさでいうと、ファーストよりこっちの方が断然ハードなんですよ。このアルバムはレッド・ツェッペリンのファーストとセカンドの間にリリースされているんですが、人気曲の「A New Day Yesterday」なんかはほとんどこれ、タル版の「幻惑されて」、もしくは「胸いっぱいの愛を」ですからね。かなりハードなんですよ。さらにもう一つの人気曲の「Nothing Is Easy」はピーター・グリーンのフリートウッド・マックみたいな正統派なブルーズ・ロックでもあったし。こうしたブルーズ・ハードロックのアイデンティティは、ミックの気持ちとは裏腹にさらに強化されているんですよね。
そして、それでいて、確実に進化も見せています。その象徴が「Bouree」という、バッハの曲をイアンのフルートで演奏したインストがあるんですが、この時期からすでに「ハードロックにクラシックやジャズ、フォークの要素を導入」という意識はかなり明確です。それゆえ、プログレとも呼ばれるんでしょうけど、でも、それだけだったら僕はむしろレッド・ツェッペリンに近い気がするんですけどね。
あと、CD時代以降だとボーナス・トラックで聴ける、この時期の彼らのシングル曲なんですが、これがまた秀逸なんですよね。「Living In The Past」はジャズ・フォークというか、全く同じ時期のヴァン・モリソンの「Moondance」に通じることをやってますし、「Sweet Dream」ではホーンを配したハードロックとここでもわかりやすく刺激的な実験をやってますね。これらの曲は彼らのアルバム未収録曲の初期ベスト「Living In The Past」に入ってますが、このベスト盤も秀逸。今回の対象に入れてたらこのアルバムと並ぶくらいの出来ですよ。
1.Aqualung(1971 UK#4 US#7 )
そして1位はやっぱりこれですね。最高傑作「Aqualung」。これで彼らは初めての全米トップ10も記録し、インターナショナル・ブレイクも果たします。
このアルバム、僕の位置付けだと、「裏レッド・ツェッペリンIV」なんですよね。ツェッペリンのそれが、多様な音楽性を含みながらも、結果としてすごくダイナミックなハードロック・アルバムになっているものだとしたら、タルのそれがこのアルバムです。音楽的に深みがありつつ、スケールの大きな曲展開でスカッと爽快に楽しめる。同じ1971年のリリースではありますが、こっちの方がツェッペリンのソレより半年ほどリリースが先なんですよね。ツェッペリンの方がもしかしたらこれを意識したかもしれません。
僕、思うんですけど、もしイアン・アンダーソンがロバート・プラントばりに高音を張り上げて歌えるシンガーだったら、タルのこの先もハードロックのままだったんじゃないかと。あるいはイアン・ギランみたいに叫べたり、オジー・オズボーンみたいに声に猟奇性があったりしたら。そこがそうならなかったのは、イアンが低音の美声でノーマルかつ丁寧に歌う人だったからじゃないかと。声にパワーのある人ではないですからね。それがゆえに、このつぎの2作のアルバムで組曲形式という「ザ・プログレ」な方向に行ったのかなと。本当にあの2枚のアルバムがなければ、もしかしたら今頃はプログレに分類されるバンドではなかったのかもしれません。
このアルバムは彼らの中では圧倒的に人気でして、今でもライブではここから最低でも4曲くらいは必ずやってますね。リフがものすごく有名なタイトル曲に、ライブでは必ず最後に演奏される「Locomotive Breath」、「My God」「Mothergoose」、そしてタルの大ファンを公言するアイアン・メイデンのカバーでも有名な「Cross Eyed Mary」。ここまで代表曲があったら、そりゃ、1位にもなりますよね。
タルに偏見がある人はまずはここから聞けば良いと思います。絶対イメージ変わりますから。そこから初期に飛んだり、コンセプト期、フォーク・プログレ期、シンセ・ポップ期、アダルト・メタル期に飛んでみると、僕の言うところの「ゲーム・オブ・スローンズ感」というのが少しわかってもらえるかな(笑)とも思いますので。
- 全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第15回)ジェスロ・タル その1 21-11位
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2018.07.26 Thursday
どうも。
予告通り、今日は久しぶりの「FromワーストToベスト」、やります。このシリーズ、過去にプリンス、デペッシュ・モード、ドレイクはウケが良かったようで、たまにまだリツイートされたりもしてるようですが、その一方で、かなり自己満足度の高いものもあったりします(笑)。それでいうと今回は、最高に自己満足度、高いかな(笑)。これです!
はい。今回のテーマはズバリ、ジェスロ・タルです!
「え・・」と思われる方、いらっしゃるかもしれません。「なぜ今?」と思う人も。ただ、今、ジェスロ・タルってイギリスのクラシック・ロック系のメディアでは割とよく見るんですよ。というのも、過去の名盤の再発がイギリスのチャートでリエントリーしたり、今年は結成50周年で、それを記念して「50 For 50」 といベスト盤が出てこれがイギリス、ドイツ、イタリアでトップ100に入ったり。
あと、このシリーズでまだプログレやってないんですよね。だからやりたかった、というのもあります。僕は正直、「プログレ・ファンが好むプログレ」ってあんまり好きじゃないんですが、そこへ行くとジェスロ・タルって、そこまでプログレプログレしてないのも良かったです。なので、ちゃんと自分の言葉と素直な気持ちでレヴューできるかなと。あと、ファンタジックな風貌と音楽、これが見ていて、聞いていて、なんとなく「ゲーム・オブ・スローンズ」思い出すんですよ(笑)。だから、現代性あるかなあ、と思ってトライした次第です。
知らない人もいらっしゃるかと思うので、こういう人たちです。
なんとなく言わんとしてること、わかるでしょ(笑)。この真ん中のイアン・アンダーソンという人が、ステージでフルート弾きながら踊ります。今、70超えてますが、頭ツルッぱげでニットキャップになっても同じことやってますね。
今日はトップ10圏外、彼らは全部で21枚のオリジナル・アルバムを出しているので21位から11位の僕のランキングを見てみましょう。まずワーストから。
21.Under Wraps(1984,UK#18,US#76)
ワーストは1984年に発表した「Under Wraps」というアルバム。この頃のジェスロ・タルは、シンセサイザーを多用したエレ・ポップ仕様になっていたりするんですが、もう、音色のセンスがひどいんですよ、このアルバム。シンセを使うのはこのアルバムで初めての訳でもなかったし、その前はうまくいったりもしてたんですけど、このアルバム、何が悪いかって、シンセ・ドラムを使ってしまったこと。「パシャッ」っていうスネアの音がどうにもツラい。さらに言えば、ホーンをシンセで代用した安っぽい音。これもカッコ悪い。同様の企画でワーストに選ばれることもしばしばです。
でも、これ、この時期の流行りの弊害なんですよね。まったく同じ頃にデヴィッド・ボウイも「トゥナイト」ってアルバム出して、まったく同じ失敗してるので。時代は時として罪なことをするものです。
20.Rock Island(1989,UK#18, US#56)
続いては、これも80sのアルバムですね。実は、これと、ワーストに選んだ「Under Wraps」の間のアルバムが傑作だったりするんですが、その前後が良くなかった。こっちは、ちょっとこの当時のメタル・ブームを意識してて、特にギター・ソロがそういう感じで、曲全体もあの当時のハートとかアリス・クーパーが復活したときみたいな感じで、なんかダサいんですよね。前作もそれに近いと言えば近いんですけど、前作に感じられた大人の色気が消えてるし、そのアルバムにあったタル本来のエキゾチックな感じも消えてる。その前のアルバムはいったい何だったんだ、と言った感じの安っぽい作品です。
19.A Passion Play(1973,UK#16, US#1)
これは全米1位にも輝いたタルの全米最大のヒット作の一つでもあるんですけど、大嫌いですね、このアルバム。彼らの場合、いわゆる「テクニック志向の長い組曲形式」の、いわゆる「ザ・プログレ」なアルバムは実はキャリア上、2枚しか出していないんですけど、これはそのネガティヴな面が噴き出したアルバムですね。さして表現したい主題があるわけじゃないのに、曲が無駄に長く、これ見よがしに変拍子みたいなテクニカルなプレイをチラつかせてね。しかも曲に入るまでが長くて退屈なんですよ。彼らの場合、基本にフォークがあり、歌心が非常にあるバンドなんで、歌に入るまでがこんなに長いんじゃダメなんですよ。もう、聞いててとにかく「早く終わらないかな、これ」と思いますもんね。
実際これ、アメリカじゃ、「これまでのヒットからの期待値」ということで最高位1位ですけど、レヴューはこの当時、コテンパンに叩かれましてチャートからはすぐ落ちました。実際、イギリスはこれでキャリア史上、最高位が初めてトップ10から落ちましたしね。
彼らはこの失敗以降、こういう組曲みたいな作品は2度と作らなかったのですが、早いうちに失敗して方向転換しておいて良かったと思います。彼らがやったこの失敗の3、4年後、パンクが出てきてプログレのまさにこのアルバムの欠点みたいなことを否定したわけですから。それで軌道修正できなくて終わったバンドが一体いくつあったことか。その意味では、「やるべき失敗」だったのかもしれません。
18.Stormwatch(1979, UK#27,US#22)
タルの場合、先ほどの「A Passion Play」以来、時として、フッと気の抜けるアルバムを作る時が時としてあるんですよね。先述の「Rock Island」が割とそんなアルバムだし、これもそうですね。これなんかも、その前2つのアルバムがせっかくうまい具合に内容もよく成功していたのに、同じような作品を作ろうとして、なんか曲を置きに行って結局何もしなかったみたいなアルバムですね。まったく曲の印象が残らないんです。それで「北海油田の謎」というテーマだけがむなしく残ってしまいました。
このアルバムが失敗したことで、タルはこの後、大きな転換にも出ることになります。
17.A Christmas Album(2003)
目下のところの最新作ですね。タイトルの通り、クリスマス・アルバムです。
順位は高くないですが、それは企画アルバムだからであって、内容はこれ、割といいんですよ。半分近くはセルフカバーでもあるんですが、新曲もテーマ縛りはあるとはいえいい曲書けてるし、クリスマスらしいトラッド・フォークの渋みは、彼らのキャリアの年季も相まってすごく味があるんですよ。彼らには一度、ストレートなブリティッシュ・トラッドなフォーク・アルバムを作って欲しかっただけに、「なぜこのタイミングでそれを作らなかったのかなあ」と非常に惜しまれる作品です。
これ以後はツアーはやるものの作品はイアンのソロしか出さず。今日はイアン名義でタルのツアー、やってますしね。
16.A(1980, UK#27,US#22)
これは異色作品扱いされてるアルバムですね。
これはタイトルが示す通り、イアン・アンダーソンのソロ・アルバム(Aは彼の名前の頭文字)として作られるはずがタルのアルバムに発展したものです。ここで彼は大胆にシンセサイザーを導入して、ソロ作で作るはずだったが故に、プログレバンド、UKのエレクトリック・ヴァイオリニスト、エディ・ジョブソンを多くの曲で参加もさせたりして、通常のタルのアルバムとは作り方も随分違います。
ただ、今の耳で聞くと、そういう作り方云々以前に、イアンの方が新しい方向性にシフトするのに、まだ準備ができてなかったのかな、という感じがします。なんか、そこまで言うほどエレポップな作品ではないし、振り切れてない。イアンのソロの名義のままで良かったかもしれません。でも、これがなかったら80s以降のタルも存在しなかったわけで、痛し痒しです。
15.War Child(1974 UK#14,US#2)
先ほどの「A Passion Play」の次のアルバムです。このアルバムは通常の曲作りに戻ったためにそこまで批判を受けることはなかったのですが、ただ、どの方向性に軌道修正していいのかわからないような迷いがこのアルバムからは感じられますね。どういうアルバムにしたかったのかが今ひとつ伝わりにくいです。
ただ、シングル・ヒットもした「Bungle In The Jungle」(US#12)みたいなわかり易いヒット曲はあるのでそこが救いではありますね。
14.Catfish Rising(1991,UK#27,US#88)
91年9月発表のアルバムですね。パール・ジャムの「Ten」とかニルヴァーナの「Nevermind」と同じような時期に出たんですね。
そんなグランジの波など知ることもなく、前2作と同様に世のメタル・ブームを横目でチェックしながら作った感じのするアルバムで、とりわけ先行シングルになった「This Is Not Love」なんかはその香りが濃厚だったりするのですが、全編聞いてみると、彼ら本来のブルーズ・フィーリングが久々にじっくり出た、いい大人のロック・アルバムですよ。これはこれで悪くないし、この感じがこのあと3枚続くアルバムに共通していたりもするから、「90sタルの基礎」となったアルバムと言えるかもしれません。だいたい、70sのかつてのプログレ・バンドと思われていた彼らが、この時期でも全英トップ30のヒットが出せていたわけですからね。立派です。
13.J Tull.Dot.Com(1999,UK#44,US#161)
これも90sの「大人のコンテンポラリー・ブルース・ロック」路線ですね。その3作目です。この当時、ちょうどメジャーの契約切れて、自主レーベルからのリリースですが、その割にチャート・アクションが悪くないのは、それだけコア・ファンがいたということでしょう。このタイトルが時代を感じさせますが、この時のイアンたちの気持ちとしては、「これからは自分たちのサイトが発信地だ」くらいの気持ちがあったんでしょう。実際に「Dot Com」という曲まで作って、このアルバムでの代表曲にもしてますしね。
このアルバムですが、ここ3作と同じ流れではあるものの、初期の感じが少し戻ってきてますね。初期ほどドロ臭くも、タメが聞いてるわけでもないんですけど、クリーンに音を録っていたのが少しいい意味で緩くなったというか。この路線で何枚か作っても良かったんですけどね。
12.Roots To Branches(1995 UK#20, US#114)
90年代の、結果的に3分作になったものの真ん中のアルバムですけど、これが一番いいと思います。これがこの3枚の中で一番ハードだし、小細工なしで一貫したカッコ良さがあります。
あと、80年代の時には、70sの頃が嘘のようにクリーンなメタル・ギターをやたら弾きたがったマーティン・バーが、コードで重低音を響かせるブルージーな奏法に戻ってきましたね。時代的にも、その方向性で良かったと思います。
11.Minstrel In The Gallery(1975, UK#20, US#7)
これは過渡期の、なかなかいいアルバムですね。
「A Passion Play」の失敗で我を忘れたタルが徐々に次のやりたい方向性を見つける過程で出来たアルバムで、ここでは、70s初頭に確立した、「ブルーズ・ハードロックの動」と「トラッド・フォークの静」のコントラストに戻りつつもあり、さらに新しい方向性に行くべく、答えがない中、探してる感じですね。
ただ、このアルバム、光るものはかなりあります。とりわけ冒頭のタイトル・トラックのダイナミックな展開。これは鳥肌が立ちまますね。「ザ・プログレ」に挑戦した際に完全に自分のものにした手数の多いドラムに誘導されるトリッキーなプレイが、このアルバムのドラマ性を高めるのに役に立っていますね。