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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第3回)デュラン・デュラン

どうも。

 

やっとロラパルーザのレポを書き終えてホッとしていますが、その勢いのあるうちに、今日はこの企画をやります。

 

 

 

 

去年のプリンス、先週のデペッシュ・モードでやってすごく好評だったので、これ、定番企画化しちゃいますね。全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト。もう、ルール勝手に作ってですね(笑)、上の9分割に足るだけの数のアルバムを出したアーティストなら対象にしようと思っているのですが、今、ロラ直後でものすごくマイ・ブーム再燃ということで(笑)、3回目の今回はデュラン・デュランで行きます。

 

 いやあ、「デュランで良いのか!」との声もいただきそうですが(笑)、ここ数日で全アルバムに耳を通したので勢いのあるうちにと思いましてね。実はこの企画、去年にボウイやディランでもやろうとして、全部耳に通したとこまでは行ったんですが、ちょうど書こうとしたそのときにすごく忙しくなって書かないでいたらアルバムの印象が狂ってきたので、結局辞めちゃったんですね。なので、アルバムの印象の記憶が濃いものをやろうと思いまして。あと、こないだも書きましたけど、南米のロラパルーザでデュラン、すごくリスペクトを受けて大好評だったんですね!で、そのあともアイルランドのフェスにThe XXやトライブ・コールド・クエストとヘッドライナーで出演してチケットがすぐ売り切れたなんて話もあって。新作は英米でもトップ10に入りましたけど、かなり再評価、あがってきてるんですね。なので、ここはやはり、長年の大ファンとして、そういうとこもアピールしていかなきゃダメなのかな、とも思いまして。

 

 なのでデュランのオリジナル・アルバムと、もう1枚(それがなにかは、上の写真でわかる人にはわかる、笑)の計15枚の、僕自身によるカウントダウンになります。まずは15位から。

 

 

15.Liberty(1990 UK#8 US#46)

 

 ワーストに輝いたのは、1990年のアルバム「Liberty」。これはやっぱダメですね(苦笑)。ちょうど80sの終わりに人気が下降し出して、本人たち自身もどうしたら良いのかわからなくなってた時期の作品ですね。何がしたいのか、全然わかんないですもん。微妙にハウス入れてみたかと思ったら、厚めのギター鳴らしたりとかね。ジョン・テイラーが後に「どうやって作ったのか、全く記憶にない」と語っているのですが、要はドラッグでハイになっているときに勢いで作って自分たちでもビックリ、というパターンだったようです。このアルバムはなぜか運良くイギリスではトップ10に入ったんですけど、アメリカでは46位まで人気が落ちました。これがデュランが味わう、1回目の危機です。

 

 ただ、こんなアルバムでも1曲だけ嘘みたいにキレの良い「Serious」って曲があるんですけど、これは彼らの定番ベスト盤である「Greatest」で聴くことが出来ます。

 

 

14.Red Carpet Massacre(2007 UK#44 US#36) 

 

 これは、オリジナル・ラインナップで再始動をはじめた2枚目のアルバムですね。このときの話はちょっと悲惨でした。

 

 このアルバムはレコード会社から「ティンバランドのプロデュースでアルバムを作ろう」と勧められてやってみたら、ティンバランドは自分の弟子にこのアルバムをプロデュースさせ、かつ、彼らは生楽器をどうやって録音するかわかってなさそうでバツが悪そうに見えた、と後にサイモン・ル・ボンが語ってますけどね。

 

 これ、録音はですね、やっぱり弟子とはいえティンバランドの息のかかった人物だったので、エレクトロ・ファンク風の音はすごくいいんですよ。ただ、そのエレクトロのビートは、どこかこう事前にプリ・セットされたみたいな音で、今も昔も基本はバンドのデュランらしい生身の感覚が全くゼロなんですね。だから聴いていて、「カッコよくは聴こえるけど、どこか生気がなく気持ち悪い」作品になってしまいました。この失敗で彼らはメジャーとの契約を失い、3度目の危機を迎えました。

 

13.Thank You(1995 UK#12 US#19)

 

 この一つ前のアルバムが久々に大ヒットしたこともあり、勢いで自信持って作ったはずの、95年発表のカバー・アルバム。ただ、これがフタをあけてみると、イギリスの雑誌Qから「史上最悪のアルバム」と酷評されてしまい、それが今日に至るまで伝説となってしまいます。

 

 まあ、おそらく、その理由は、その10年一昔前まではアイドルとして知られたバンドが、やれ、スライ&ザ・ファミリー・ストーンだ、ルー・リードだ、レッド・ツェッペリンだ、ボブ・ディランだとカバーしたのが「お前らの分際で何事か!」な評価だったと思うんですけどね。ただ、それでも、グランドマスター・フラッシュの「ホワイト・ラインズ」のカバーはヒットしていまだにライブの定番曲になってるし、ルー・リードの「パーフェクト・デイ」のカバーはルー自身がすごく好きだと語ってもいますしね。

 

 ただ、僕自身がそこまで評価しないのは、これ、意味不明なまでにハードロック・ギターが炸裂したアルバムなんですよね(笑)。あとにも先にも、こんな作り、彼ら一作もないんですよ。元々がそういうバンドでもないのに、カバーになるとなんでこんなことに?そうした、不透明な方向性ゆえに好きじゃないですね。弾いてたのウォーレンだったけど、どうしたんだろう。

 

 

12.Astronaut(2004 UK#3 US#17)

 

 これはオリジナル・ラインナップでの再始動第1弾アルバムでした。当時ものすごく、「リバイバル・ブームに乗っての華麗なカムバック」を期待してたのですが、そうならずにひどく落胆したものです。

 

 ただですね、嫌な予感はその前年も来日公演からあったんですよね。戻って来たのは良いものの、農家から戻ったロジャーのドラムはおぼつかなく、アンディはやたらとここぞでハードロック・ギターを弾きまくろうとしたがる。なんか見てて複雑だったんですよね。

 

 そして、フタをあけて登場したこのアルバムも非常に中途半端な作品でしたね。微妙に「80sリバイバル」を意識、もしかしたらしているのかな、みたいな曲が少しあるだけで、でも、かといって、「今の自分たちはこうなんだ!」と強い主張も感じない。どっちつかずの中途半端なアルバムになりましたね。当時、せっかく、キラーズとかシザー・シスターズみたいな、80sシンセ・ポップ・リバイバルみたいな大きな波があったのに。全英では3位と復活したんですが、全米は17位止まりでしたね。

 

 

 ただ、オリジナル再結成を強く押し進めた張本人としての責任感からなのか、サイモンのヴォーカルはすごく良くなってたし、「(Reach Up For The)Sunrise」「Nice」と、捨てがたい曲はありましたね。

 

 

11.Notorious(1986 UK#15 US#12)

 

 これは世間一般より、僕の評価が低い作品だと思います。たしかにタイトル曲は当時大ヒット(全米2位)したんですけどね。

 

 この時期はサイモン、ニック、ジョンの3人体制でしたけど、なんかジョンの意見が強かったんじゃないかな、と思えるアルバムですね。すごくブラック・ミュージック寄りで、ホーン・セクションもバリバリで。この頃のファッションがスーツにもなってたし、すごくカフェバーっぽいUKソウル寄りのアプローチだったんですよね。プロデューサーもナイル・ロジャース(ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」で有名な彼です)だったし。

 

 ただなあ〜。このスタイル、正直、デュランには微妙だったんですよね。一番合ってないのはサイモンでしたね。このアルバムで彼、なんか終始、これまでに出したことのないような高いキーで歌わされてるんですけど、この頃のサイモン、高音のコントロールがすごく悪くてですね、聴いてて非常にツラかったんです(苦笑)。後にも先にも、ここまで黒っぽい要素の時代はないですね。

 

 

10.Meddazaland(1997 US#58)

 

 カバー・アルバムのあと、ジョン・テイラーが脱退した後に出された作品です。

 

 デュランって、その昔はジョン・テイラーがバンドの顔のイメージが非常に強かったもので、その彼を失うというネガティヴな印象が暗い影を落とし、レコード会社にも押されず、イギリスでは発売され見送られ、アメリカでやっと58位という内容ですね。

 

 しかしですね、このアルバム、実は内容、悪くないんです!ここでのデュランって、すごくブリットポップのバンドみたいなこと、やってます。ちょうどこの頃、エラスティカとかパルプみたいな、アナログ・シンセ使って80s初頭みたいな雰囲気出そうとしていたバンドも少なくなかったんですが、それに近いことやってたんですね。そこんとこ、ニック・ローズはトレンド、抑えてたようですね。

 

 

9.Big Thing(1988 UK#15 US#24)

 

 80年代前半のような人気はなくなりつつも、でも、まだ「I Dont Want Your Love」みたいな全米トップ10シングル・ヒットは出せるよと証明した88年作。

 

 前作のときのようなカフェ・バー・ソウルっぽい、妙に大人っぽく洒落たテイストはなく、もっとファンキーでハジけたテイストのアルバムですね。彼らのブラック・ミュージックの路線では、前作よりもこっちの方が合ってると思います。

 

 これもジョンの好みが出たタイプの作品だとは思うんですけど、このあと、ジョンが急速にデュランに対して興味を失って行き、アルバムの貢献度がガクンと落ちるんですよね。それで一回脱退して戻って来る訳なんですけど、それ以降も、表には立たなくなりましたからね。でも、申し訳ないけど、そうしてくれた方がデュランにはプラスというか、より”デュランらしい”ものが作れる気が、今から振り返ってもしてます。このアルバムでも一番好きなのは「All She Wants Is」っていう、ちょっとデペッシュ・モードみたいなダークなシンセ・ポップ。やっぱ、ニックのシンセが活躍しないと、デュランっぽくはどうしてもならないんです!

 

 

8.Pop Trash(2000 UK#53 US#135)

 

 ジョンが抜けた体制での2枚目。古巣のEMIでの契約を失い、一応メジャー・レーベルなものの配給の強くないハリウッド・レコーズでリリースした結果、商業的にはかなり苦しいものでした。ここが第2のバンドの危機ですね。

 

 ただ、前作同様、作風は悪いどころか、前作よりさらに良くなってるんです。前作でのブリットポップ路線は、ビートルズっぽいメロウな曲から、ストリングスを配したラウンジ・ポップ系の曲、さらにはファットボーイ・スリムみたいなビッグビートも聴いているのかな、と思えるようなアレンジも光っていましたね。

 

 ただ、どんなに充実して良いものを作っても、注目されないことに堪え兼ねてしまったのか、サイモンはジョン、ロジャー、アンディを呼び戻し、これまで不遇機を支えて来たギタリスト、ウォーレンを切ってしまいます。「ギタリストとしての腕も立ち、ソングライティングもこなせるウォーレンを切ったのは却って損だったのでは」とは、その後に、メタルっぽいフレーズなんかを無理していれようとしたがる復帰後のアンディを見て思ったものでした。

 

 ただ、オリジナル再結成も思いつかずに今も活動を続けていたら、「良い味のベテラン」にこそなったかもしれませんが、今日のような大きな復活があったか、と問われると難しいとこですね。

 

 

7. So Red The Rose/Arcadia(1985 UK#30 US#23)

 

 はい。デュラン以外で番外的にランクインしたのは、このアルバムでした。これは85年当時、ジョンとアンディのロバート・パーマーとのハードロック・ダンス・プロジェクト、パワー・ステーションが大成功(全米トップ10シングルが2枚)したのに対抗した、残ったサイモン、ニック、ロジャーの3人が作ったバンドです。

 

 ただ、こっちは売れなかったですね。「エレクション・デイ」って曲が少しヒットしたくらいで、アルバムも売れませんでしたからね。しかし、高校1年だった当時の僕にしてみれば「こっちの方が圧倒的にいいじゃん!」と大好きになったのがアーケイディアでしたね。だって、このプロジェクト、これまでのデュランのサウンドの要素を、ただ単純に濃くしただけに過ぎないんだもん(笑)。ストリングスを交えたりしてゴシックにセクシーな風にはなりましたけど、そのサビで裏返るサイモンの声も、妖艶なシンセを奏でるニックも、「ああ、ここがデュラン・サウンドの中心なんだな」と思えるようになりましたね。

 

 そして、この10年後、デュランはそのときの2人、ニックとサイモンのプロジェクトとなり、最低2枚は、このアーケイディア体制(そしてウォーレン)で作ることにもなりました。僕が本作をデュランの作品として含めたのはそれが理由です。作ってる人が人なだけに、結果的にデュラン名義の作品よりデュランっぽくさえなってしまったというね。

 

 さらに、このアルバムでもそうでしたけど、不遇の時代の2枚も含め、ニックとサイモンのケミストリー上では、ブラック・ミュージック的なサウンドって一切生まれてないんですよね。やっぱり、あれはジョン経由のものだったのかなと。

 

 あと、コケたプロジェクトの割に再評価は高くて、2000年代の終わりくらいにデジタル・リマスターでちゃんと再発されもしましたね。

 

 

6.Paper Gods(2015 UK#5 US#10)

 

 目下のところの最新作で、鮮やかな復活を印象づけたアルバムです。イギリスで5位、アメリカで10位ですからね。

 

 僕としては、この一つ前の方がアルバムとしては好きです。あっちのアルバムの方がよりデュランっぽいし、実際に曲も、あっちの方がよく書けていたと今も思います。

 

 ただ、結果論なんですけど、前作で「らしさ」を取り戻した後に、ただの懐古主義に陥らず、前作で再確認したアイデンティティをもとに、つんのめりながらもEDMに挑戦もすることで、さらにサウンドを進めて行く。この方法論の方が、たしかにより有効ではあるのかな。

 

 嬉しいことには、今回、ナイル・ロジャースと組んで、黒人女性シンガーのジャネール・モネエと共演したりした「Pressure Off」みたいな楽曲がありながらも、「ノトーリアス」のときみたいに、それまでのデュランのカラーを一切損なうような形でのトライではもうないし、「Last Night In The City」なんてチャラいEDMではあるんだけど、デュランらしい、クセの強いマイナー調メロディなのもすごくらしいなと。このまま「らしさ」がしっかりコントロールしたままで進化出来たらすごく良いですよね。

 

 

5.Seven And The Ragged Tiger(1983 UK#1 US#8)

 

 「Union Of The Snake」「New Moon On Monday」「The Reflex」と、3曲の英米共にトップ10入りの大ヒット・シングル3枚を擁した、自信最大のヒット期での作品。中学2、3年生だった僕はLPでこれ持ってて、何度もくり返して聴いたものです。勢いのある時期の作品なので、もちろん悪いはずがありません。聴いていると、自分の中学時代の甘い思い出がフィードバックされていきます。はじめて行った彼らのライブも、このときのツアーだったりしますからね。

 

 ただ、今、冷静に聞き返すと、意外と穴も少なくなかったアルバムなんですよね。構成上、今ひとつなところがあると言うか。たとえばアナログでいうA面はシングル・ヒットした冒頭の2曲以外が弱いとか、B面も2曲目が弱い上にすぐにインストに行ってラストのバラードに入るので、全体的にちょっとスカスカに聴こえるんですよね。もうちょっと、曲数増やした方が良いタイプだったのかもしれません。あと、前2作に比べるとロック的なエッジがなさすぎかな。

 

 そして、何があったかはわかりかねますが、オリジナル再結成後、大ヒット作だったにも関わらず、彼らはここからの曲を積極的にはプレイしようとしませんね。

 

 

4.Duran Duran(The Wedding Album)(1993 UK#4 US#7)

 

 90年代の前半に放った起死回生の傑作ですね。これはかなり好きなアルバムです。今聞き返しても、大ヒットして、いまだにライブのセットリストから絶対にはずれることのない「Ordinary World」「Come Undone」の2曲は、歴代でも出色の出来だと思います。

 

 ヒットした当時は「アダルト路線、バラード路線に行って成功した」なんて言われ方もしていましたが、アルバムの内容をちゃんと聴くと、そういう安易な作りでもありません。いうなれば、「バック・トゥ・ベイシックス」な感じですね。それは、サウンドが80s前半に戻った、というわけではなく、彼ら本来の「同時代のクラブ・サウンドを意識する」「デュランらしいメロディの曲を書く」というのが実践出来たアルバムですね。特に功を奏したのが、グラウンド・ビートの導入ですね。これは「Come Undone」とか「Love Voodoo」といった曲で使われてますけど、ベースの強いレゲエ・テイストのリズムは、デュラン得意のマイナー調の妖艶なメロディ・ラインにすごく良く似合います。方向性が何も見えなくなっていたワースト作「Liberty」からよくここまで立て直しができたものだと思います。

 

 そこに加えて、どういうわけで実現したのかいまだによくわからない、ブラジルのMPBの大御所、ミルトン・ナシメントを迎えたグルーヴィー・フォーク・チューン「Breath After Breath」が入っていたりするなど、これまでになかった意外なポイントも垣間見せたりもして。あと、「Come Undone」でのリフも自身が考案しているように、前作で正式メンバーになったウォーレンのソングライティングでの貢献も目立ちはじめた作品でもありました。

 

 

3.All You Need Is Now(2011 UK#11 US#29)

 

 デュランが本当の意味で現在につながる復活をしたのはこのアルバムですね。これはもう、出たときから本当に嬉しい作品でした。オリジナル再結成という、話題性の切り札を切っても当の本人たちがピリッとしなかったのはすごく歯がゆかったりもしたんですが、それが再集結で10年近い月日が経って、ようやく戻って来たのは奇跡的でさえありましたね。

 

 きっかけは、このアルバムをプロデュースしたマーク・ロンソンから「デュラン・デュランに聴こえる曲を書いて欲しい」という注文を受けてハッとしたようなんですね。彼ら曰く「そこをむしろ一番避けようとしていたところがあった」とか言って。前も言ったように、結構、あらゆる時期にいろんなこと試してるでしょ?本人たち的には音楽の流れに着いて行っている自負があったし、懐メロで食って行く意識はなかったと思うんです。

 

 ただ、彼らが80s前半で鳴らした音というのが、今やしっかりポップ・ミュージックの世界においてリスペクトされる対象にしっかりなった後ですからね。そこに立ち戻ることは、決して後ろ向きでもないし、むしろ「本家」である彼らにこそ人々がやってほしいと願うものにもなっていた。そのタイミングで、その答をしっかり出したアルバムでしたね。

 

 一番の強みはやはり、80s初頭のニックらしい、流麗でちょっとひねくれたアナログ・シンセのフレーズが戻って来たことです。これでこそ、デュランというものです。そして、そこに呼応するようにかぶさるジョンのスラップ・ベース。このコンビネーションはやっぱり彼らだけにしかできないことです。この感覚が活きたタイトル曲、「Girl Panic」「Safe」といった曲は本当に良いですね。

 

 さらに、その黄金期のサウンドに対し、サイモンの声が劣化することなく、昔と同じトーンと響きで聴けたのも良かった。彼、シンガーとしてはうまくないと言われ続けていて、実際、90sの頃は伸び悩みも感じられたんですが、再結成後、一番成長したのは彼です。再結成を押し進めた責任感からか、プロ意識が強くなって、歌も、ライブでのショーマンシップも上がりましたからね。彼のこのプロフェッショナルな意識がなかったら、今回のようなサウンドに立ち返ったとしてもダメだったと思います。

 

 そして、前作で予想通り再脱退したアンディの代わりにサポート・ギタリストで入ったドミニク・ブラウンが才人だったのも良かったです。彼、ソングライティングでも貢献しているんですよね。正式メンバーにしてあげてもいいのにね。

 

 ひとつだけ惜しむらくは、彼らのカムバックの原動力になった作品だけに、今のライブで最低でも1曲はやってほしいですね。「Paper Gods」でも悪くはないですが。

 

 

2.Duran Duran(1981 UK#3 US#10)

 

 そして、デビュー・アルバムが2位ですね。これも傑作です。

 

 2000年代前半に「ポストパンク・リバイバル」なるものがあって、デュランもリスペクトされる対象のひとつになりましたが、そのとき、ポストパンクっぽいのはむしろこっちのアルバムでしたね。デュランというと、一般的にはシンセポップのイメージが強いんですけど、ここでの彼らはファンキーなベースラインというのも既に武器だったし、そして何より、アンディがちょっとエッジの立ったギター・リフを弾いてたんですよね。なので、この1st、今から振り返って聞くと案外ロックっぽいんですよね。その意味で、その次や2作後での世界ブレイクの時よりも評価する声というのも実際にあります。

 

 たしかにポストパンクのひな形的な「グラビアの美少女」は今聞いてもカッコいいんですけど、ただ、まだサイモンのヴォーカルに表情がないのと、楽曲全体に堅さがあって大衆に開かれた感じはしないかな。デビュー曲の「プラネット・アース」で芽生えはじめていた屈託のないポップ性が本格的に開花するのは、やはりこれの1作後でしたね。

 

 

1.Rio(1982 UK#2 US#6)

 

 やっぱりデュランと言えば、どうしてもこれです!永遠の代表作ですね。

 

 ここで彼らは「シンセポップ;ポストパンク=8;2」くらいのバランスの、良い案配な彼ららしいシグネチャー・サウンドを手に入れますね。加えて、彼らに影響を与えたジャパンやロキシー・ミュージックが持っていた妖艶なポップ・エッセンスを、その良さを殺さないで大衆化させることにも成功しました。メロディメイカーとしての芽生えが見事です。ファンキーで軽快な「リオ」、パンキッシュなエッジもある「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」、そしてシンセポップ・バラードの決定版の「セイヴ・ア・プレイヤー」に「ショーファー」。バランスも完璧です。

 

 そしてこのアルバムは音楽だけじゃない。ジャケ写のアートワークは、80s初頭のイメージを現すときの実例のひとつにもなっているほどだし、さらにスリランカで撮影した一連のミュージック・ヴィデオ!これがあの当時の勃興期のMTVが求めていたイメージとしっかり重なったことで、彼らはあの当時の時代の寵児にもなってしまうわけです。映像でポップ・ミュージックを楽しむ時代の格好のアイドルとなったわけです。

 

 アーティストのいわゆる最高傑作って、マイケル・ジャクソンのスリラーとかもそうなんだけど、音楽以外の時代的な要素も加わって、それらがケミストリーを起こしたものにどうしてもなるんですよね。それが連鎖反応的にパタパタと起こったのがこのアルバムだったし、ぶっちゃけ、これが故に彼らが忘れられない存在になっていることも事実です。

 

 

 ・・でも、長年のファンながら、中学のときの自分にとってのアイドルが、3回も忘れられる危機があったのにそれらを乗り越えて、いまだに大きい会場で新作のためのツアーをやれて、さらにはフェスの何万人もいるデカい会場を沸かすことのできるバンドになるなんてことは、これっぽっちも考えたこと、なかったですけどねえ。

 

 

 ・・といった感じです。この企画、第4回目を早ければ来週にもやります!予定のアーティストは、ガラッと変わりますよ。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:30
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ロラパルーザ・ブラジル2017 感想その2

どうも。

 

 

では、今年のロラパルーザ・ブラジル、2日目について語りましょう。

 

 

日曜は終わりの時間が土曜より1時間早いので、開演が早いんですね。なので、昼一には会場についていないといけない感じです。僕もこの日は12時40分には会場に入っていました。

 

 

 そして一番最初に見たのはブラジルの女性アーティストのセーウ。現在30代半ばで、これまでのノラ・ジョーンズみたいなスタイルから一転してエレクトロ・グラム・クイーンに変身して大好評。そんな彼女が第1ステージの最初をやってました。新作からの感じはすごく良かったんですけど、ただ、昔の曲になると途端に退屈になるとこが課題かな。昔からのファンはそこを取っておいてほしいとは思うから難しいとは思うんですが。

 

 

<14;10 キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン 第2ステージ>

 

 そして、この日、本格的に最初に見たのがキャットフィッシュ&ザ・ボトルメンだったんですけど、これ、僕、楽しみでした。イギリスではもう2枚連続でロングヒット。2013年のファーストは3年くらい全英チャートに入ってて、昨年出たセカンドは全英初登場1位になり、1年くらいたってもまだ100位から落ちる気配なし。UKロックの弱体化が叫ばれて久しい中、これは特筆すべきことだと思ってましたからね。しかも、批評的にはそんなに評価高くないバンドですからね。一体、何が良いのか。この目で確かめたかったのです。

 

 このフェスに限らず、サンパウロのこうしたフェスって、昼の早い時間はガラガラで普通。ということもあり、広大な第2ステージには半分くらいしか人はいませんでした。しかし、その半分が彼らの大ファン。しかも女の子ばっか!確かにサンパウロのロック・ステーションでは結構曲はかかっていたんですが、いつのまにそんなファンが?そういうとこも早速不思議でした。

 

 

 

 

 そして、いざ、本人たちがステージに立つと、そのサプライズはさらに進みました。彼ら、演奏、うまいわ!しかも歌も、曲も、なにか目新しさとか斬新さがある訳では全然ないんだけど、安定感があって飽きずに聴ける。

 

 

 しかも、ヴォーカルのヴァン・マッキャンがかなりしっかり歌えるうえに、ロックスター然とした客の煽りがうまいのね。堂々としたものです。前から、「ラジオ受けはしやすそうな曲、書くな」とは思っていましたが、ライブ現場でもここまで堂々としていたら、好まれるでしょうね。ラジオ、ライブってとこに、国を問わず批評家って判断するのうまくないんですけど、そういうとこでしっかりフォローできているのは立派だと思いましたね。そして、この安定感があれば、かつてレイザーライトとか、クークスが超えられなかった、イギリスでの安定したフェスのヘッドライナー・クラスと、アメリカでの成功も決して夢じゃないですね。だいたい、セカンドも現時点でアメリカで28位まで上がってましたからね。

 

 

 それにしてもブラジルでの彼らのワーキャーな女の子の人気、すごいな。中にはポルトガル語で「脱いで!」なんてボード持った子までいて(笑)。The 1975のマット・ヒーリーが久々に現れたセクシー系のロックのフロントマンと思っていましたけど、このヴァンのアイドル人気もなかなかですね。彼、まだ24歳と若いのも良いです。今後が楽しみになってきました。

 

 

〈16;30 デュラン・デュラン 第2ステージ〉

 

 

 そして続いて見たのは、デュラン・デュラン!わが中学時代の最大のアイドルですよ!中学2年のとき、はじめて彼らのライブを新幹線にひとりで乗って見に行った1984年。それから33年後。地球の真裏で、まさか、こんな大きなフェスの、日曜の夕方なんてすごくオイシいスロットで彼らのライブが見れるとは!もう、それだけで感動でしたね。

 

 

 だって、その間、少なく見積もっても計3度、「ああ、もう、これで懐メロ・アーティスト、決定だな」という瞬間があったんですよ。でも、彼らはそれを乗り切って、いまだに新作を主体としたツアーをアリーナ・クラスの会場で続けているだけでなく、最新アルバム、英米でトップ10に返り咲いてますからね!それだけでも嬉しかったんですが、まさか、こんなにこだわり派のリスナーを抱えたロラみたいな大きなところで呼ばれるほどにまでなるとは全く予想もしませんでしたね。

 

 

 ただ、ブラジルでの反応、出演決定のときから全然悪くないんですよ。「昔のアイドル」なんて言う人は全然いなくて、「実績のあるちゃんとしたベテラン」といったリアクションをちゃんとしてくれる。中には、まあ年寄りではあるんですが、「ちゃんとしたバンドはメタリカとデュランだけ」なんて言ってくれる人もいて。そんな感じだったので「とりあえず人は入るんじゃないかな」と思っていたら、期待以上でした!

 

 

 

 

これが演奏中、モニターに映ったデュランの客ですが、すごいでしょ、これ?地平線の向こうにも人がいて!しかも、リアルタイマーだけじゃなく、結構年齢もバラバラで。そして男女比も50・50でしたね。昔は95;5で女の子しかいなかったのに、今日は前方にハゲたおじいさんまでいましたからね(笑)。僕はかなりステージに近い位置で見たんですけど、後ろ見たら続々人が詰めかけるので、とにかくゾクゾクしましたね。

 

 

 

 

 そしてメンバーはゾロゾロと入場し、その時点で大歓声があがります。そして位置にスタンバイすると、サイモン・ル・ボンとジョン・テイラーがマイクを奪い合うようにして「Wild Boys」を歌いはじめ、ここからがヒットパレードのスタート。これに続き「Hungry Like The Wolf」「A View To A Kill」と80sの代表曲が畳み込まれたので、僕も熱唱カラオケ状態が止まらなくなります(笑)。

 

 

 でも、往年の、しかも80sのヒットだけじゃなかったんですよね。90sの「Come Undone」や00sの「Reach Up For The Sunrise」、そして最新作「Paper Gods」からのEDMナンバーの「Last Night In The CIty」。同じく新作からの先行シングル「Pressure Off」で会場が大団円になるのを見て僕はウルッと来ちゃいましたね。だって、僕、デュランのライブは今回が7回目だったんですけど、そのうち4回が、オリジナル再結成はしてみたものの、うまくいかなかった苦難の時期でしたからね。あれを見てた身からすると、こんな大勢の人の前で、最新作からの曲でこんなに盛り上がるなんて絶対想像できませんでしたから。

 

 

 そして、それを可能にしていたのが、サイモンのヴォーカルですね!オリジナル再結成は彼が主導になって動いたものだったんですけど、その責任感から、「00sから歌がうまくなったよな」の意識はあった(絶対、ボイトレはじめましたね、これ)んですが、歌は文句なく過去最高でしたね!「こんなに歌、うまかったっけ、サイモン?」とまで思いましたから。

 

 

 そして後半のハイライトは90sのデュラン最大のヒット、「Ordinary World」。この2コーラス目を、さっき冒頭で触れたセーウが突然ステージに入って来て歌う演出。これは盛り上がりましたね。

 

 

 そしてライブは「グラビアの美少女」、「リオ」と、ライブの終盤での定番曲でシメました。1時間強で、フェスのこのスロットなら納得のものだったんですが、「セイヴ・ア・プレイヤー」と「リフレックス」やらなかったんですね。僕にしてみれば、あの大定番を抜きでも満足して成立させられた今のデュラン、すごいな、だったんですが、帰って関連の記事の書き込みみたら、「デュランほどの大物にあんな短い時間しか与えないなんて」「トリでも良かったくらいだ」なんて嬉しい不満の声があがっていて、アンケートでも「2日目のベスト」で1位、もしくは2位というすごい大好評ぶり。これだけの評判取れるライブが出来るんだから、まだ、これから再評価、上がって行きそうな気がしますね。前日のメタリカと並んで、これは今年のロラのファインプレーでしたね。

 

 

〈18;50 The Weeknd  第2ステージ〉

 

 

 デュランが終わって、第1ステージではトゥ・ドア・シネマ・クラブ,第3ステージではMOがやてましたけど、今年に関しては、いろいろつまみぐいをするよりはひとつをじっくり見たいため、空いた時間はあえて食料補給に充てました。そうじゃなくても、今年は人が本当にいっぱいで、フードのところは長蛇の列の連続でしたからね.リスクはあえて避けました。

 

 

 そして、間違いなく激混みが予想されるザ・ウィーケンドのライブに早めに行きましたが、開演20分前にはかなりの人数でしたね。しかも若い人を中心に。そりゃ、そうでしょう。サンパウロはトップ40のヒット・アーティストがただでさえ強いし、ましてやそれが,今、もっともヒットの多いアーティストのひとりですからね。開演時間の頃にはデュランを上回る人のやまになってましたね。

 

 

 

 

 ライブそのものはやや押して19時頃にはじまりました。ステージは、高く組まれたバックバンド用の台に、ギター、ドラム、キーボードのわずか3人がエレクトロっぽいパフォーマンス。そして、ステージのフロアは大きく開いて、そこにたったひとり、ウィーケンドがキャップをかぶりながら,中央に一本だけ置かれたスタンドマイクに向かって歌いはじめました。曲はおなじみ「Starboy」.もちろん、のっけから大合唱です。

 

 

 彼のパフォーマンスは生では初めてでしたけど、テレビや動画ではよく見てました。その印象では「そこまで圧倒する歌唱力という訳でもないな」という印象でしたけど、この日は彼特有の甲高い声がびんびん響いて好調でしたね。特に彼が「ハイ!」「ホー」と叫んで、自分の中のインナー・マイケル・ジャクソンを呼び起こすとノッて来る感じでしたね。

 

 あと、演奏、編曲にも好感持てましたね。R&Bのアクトがこうしたフェスに出る場合、急ごしらえで大所帯バンドを組んで、場に微妙に合わない大仰なアレンジ組んだりして相性の悪さを感じさせやすいものなんですが、彼の場合はもとがエレクトロっぽい楽曲だし、そのアレンジを活かしたシンプルなバンド編成だったので、ロックファン的にも入って行きやすかったですね。

 

 

 後、選曲は凝ってましたね.彼くらい、一般的には一昨年に急に人気者になったパターンだと、ここ最近の2枚のアルバムだけ聴いてるという人が多くても不思議じゃないんですけど、この日は、永遠のレディキラー・チューン、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の「Earned It」は当然のこと、インディで話題になった「ハウス・オブ・バルーンズ」の曲もやった上に、ラッパーのフューチャーのアルバムでコラボした曲という、結構ヒップホップを聞き込んでないとわからないことまでやってましたね。僕はドレイクとの「Crew Love」はやってくるんじゃないかと思っていたのですが、そっちじゃなくてフューチャーでした。

 

 

 そして、どの曲のあいまでやったのかちょっと記憶が曖昧なんですが、左右両脇のモニターに、一瞬、彼の控え室がうつったんですけど、そこに

 

 

 セレーナ・ゴメスがどアップで映し出されました(笑)!

 

 この瞬間、女の子たちから悲鳴に似た「キャーッ!!!」って歓声があがったんですけどね(笑)。まあ、欧米圏だと、今もっともホットなゴシップのひとつですからね。セレーナが南米のロラパルーザに来たことは、今現在、アメリカでも報じられています。アルゼンチンに移動しているはずです。

 

 

 楽曲的なハイライトは残り20分で披露した「Secrets」、そして最大のヒット曲の「Cant Feel My Face」のメドレーですね。ティアーズ・フォー・フィアーズの「ペウル・シェルター」をサンプリングした新作からの、これからのプッシュ曲になりそうな前者から、歌詞を変えただけで一気に「Cant〜」に変わったのは鮮やかで、直前の「フーッ!」の所も含めて、サビは大合唱でしたね。そしてライブはヒット中の「I Feel It Coming」、そして「The Hills」で大団円となって幕を閉じました。

 

 

<20;40 ザ・ストロークス 第1ステージ>

 

 

 そして今年のもうひとつのヘッドライナーがストロークスでした。

 

 今回のフェス、世間一般的にはメタリカということにされていましたが、ストロークスの動員もかなりのものでしたよ。この日は9万人の動員で前日より数は少なかったんですが、ヘッドライナーのときに直接会場に集まった人の数だけ見たらストロークスの方がむしろ多かったです。

 

 

 なぜ、そういうことが起こるのかというと、ストロークスのメンバーにひとりブラジル国籍者がいるためです。それがドラムのファブリツィオ・モレッティなんですけど、マイク・シノダが日本でのリンキン・パークの人気があがるのに貢献しているようなことがブラジルでファブを理由に起きてるのは事実です。

 

 

 今回の再始動は貴重ですよ。ライブでの再始動そのものは2014年からフェス出演をメインにやってますけど、年に5回前後しかやりませんからね。かなり限定した数でしかやらないし、今のところアルバムの話もなし。「ライブやってくれただけマシ」なラッキーな場所に今年たまたま南米が選ばれた、ということですね。

 

 

 そういうわけで嬉しくはあったんですけど、心配もありました。それは「ちゃんとまじめにやってくれるかな」という懸念ですね。彼らのライブは過去に4回ほど見てますけど、3回目、4回目は「ふざけないで、ちゃんとやれよ」とちょっとムッと来るものでしたからね(3回目というのは2006年のフジロックですが)。彼らの場合、才能は文句なしなんだけど、問題はライブにおけるプロ意識の欠如の問題です。ダラダラーとやって、コミュニケーションもうまくとらずに自己満足的な緩慢なパフォーマンスをやらないか。僕はそこのところが心配だった訳です。

 

 

 

 

 そして、残念ながら、僕の懸念の方が当たってしまいました。ステージのセットは、なんとなく「Last Night」のセットをまぶしきモダンにしたようでカッコよかったし、一曲目がいきなり「Modern Age」だったのは燃えました。ぶっちゃけ、目をつぶって音だけに集中すれば、今もかなり優秀なバンドであることもたしかです。だって、「Is This It」から15年経ってるのに、いまだにあんな軋んだギターに、パスパスなドラムで演奏出来るバンド、一つたりとも出て来てませんからね。これだけときが流れてなお唯一無二というのは、彼らの当時の才能がいかに異質で抜きん出ていたかの証明です。この音のイメージが故に、今回の彼らのライブを絶賛するメディアもブラジルでは少なくはなかったです。

 

 

 ただなあ、演奏の音色はカッコよくても曲のあいだのしまりのなさは、今回もいかんともしがたかったですね。あいかわらず、ゆるゆる〜としたライブで、一曲終われば、そこで休憩。そしてあいかわらずジュリアンの酒量が多いのか、客にわかるような会話をせずに、内輪でうけているのかもわからないひとりごとみたいな会話を進めるだけ。「ああ、またなのかよ」と思いましたね。

 

 

 曲目は「Is This It」からほとんどに、2枚目から「Reptilia」や「Automatic Stop」「12;51」、と良いとこを取ったものの、3枚目は「You Only Live Once」や「Juicebox」がなく、4枚目はゼロでしたからね。そこもあんまりファン向けではなかったかな。去年でたシングルから2曲はやりましたけど、盛り上がりには欠けましたね。

 

 

 ブラジルのメディアでは「ウケてた」と書かれてありましたけど、実際、現場で見てるとそうでもなかったです。1時間くらい過ぎた時点で帰りはじめた人が多かった。とりわけアンコールに入る前の「Last Night」が終わった時点でゾロゾロと帰った人が多かったのは,見ててちょっと残念でしたね。まだ、予定の終わりの時間まで15分近くあまってたから、アンコールはいくらでもせがめたんですけどね。

 

 

 で、アンコールで出て来て3曲やったものの、これがサードからの「Heart In A Cage」、そして5枚目からの「80s Comedown Machine」と、客が待っていたとは思えない展開になって、帰る客がさらに増えてしまいました。まあ、最後は人気曲の「Hard To Explain」ではあったんだけど、でもここも、昔から彼らのライブを見てる立場からすれば「Take It Or Leave It」じゃないのかよ、とは思いましたからねえ。後味の悪いもり下がりでの終わり方でしたねえ。前の日のメタリカの大団円見てる立場からすればなおさらです。

 

 う〜ん、これから再始動するのかなあ。それも一向に見えない内容でしたけどねえ。

 

author:沢田太陽, category:フェス, 00:03
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最新全米チャート

SINGLES

1(1)Shape Of You/Ed Sheeran

2(2)That's What I Like/Bruno Mars

3(4)I Dont Wanna Live Forver/Zayn&Taylor Swift

4(3)Bad And Boujee/Migos feat Lil Uzi Vert

5(5)I Feel It Coming/The Weeknd feat Daft Punk

6(6)Tunnel Vision/Kodak Black

7(8)Something Just Like This/The Chainsmokers 

8(-)Passionfruit/Drake 

9(-)Portland/Drake

10(9)Paris/The Chainsmokers  

 

 

 

 

ALBUMS

1(-)More Life/Drake

2(1)÷/Ed Sheeran

3(-)Rather You Than Me/Rick Ross

4(3)Beauty And The beast/Soundtrack

5(-)Spirit/Depeche Mode

6(4)24k Magic/Bruno Mars

7(5)Moana/Soundtrack

8(6)Future/Future

9(7)Starboy/The Weeknd

10(8)Culture/Migos

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:全米チャート, 19:58
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ロラパルーザ・ブラジル2017感想  その1 

どうも。

 

見て来ましたよ。

 

 

 

 

僕の生活には欠かせないものです。ロラパルーザ・ブラジル。今年もこれをレポートしましょう。

 

 

今年で6回目で年々、サンパウロ市内での注目度も非常に高くなってきているんですが、今年遂に動員が19万人に達しました!これまで16万とかだったはずですが、一気に伸びましたね。やっぱ、メタリカ、ストロークスとヘッドライナーが大きかったからだと思います。

 

 

 ただ、今年は運営側にとって大きな年にしたいとするあまり、かなりトラブルもありました。それがチケットの売り方や、リストバンドのモダン化に伴う大混乱で,実は僕も巻き込まれています。

 

 

 今年一番驚いたのは、過去5回、当日の券だけ持って行って、入り口でリストバンド交換をするというのが習慣でしたが、今年から急に「リストバンドの方式を変えたから、引き換えるには両日のチケットが必要」ということに急になったんですね。困ったことに僕は1日分しか持っていませんでした。そして、受付で言われたまさかの言葉。

 

 

「取りに帰ってください」

 

 

ガーン!

 

 

 正直、おまけしてもらえると思っただけにものすごいショックでしたね。しかも午後2時半で、これからステージが活発しはじめるときだったのに。

 

 

 幸いにして、僕のアパートは会場のインテルラゴス・サーキットから車で30分程度の距離だったのでなんとかなりましたが、それでもウーベルの往復と、リストバンド交換で食った時間は3時間近く。あやうく、僕がその日最も見たいと思っていたThe 1975のライブを見そこねるとこでした。ただ、まだマシな方です。これが市外の人とか、別の州から来た人に同じことが起こったとしたらゾッとします。

 

 

 そのリストバンドなんですけど、すごくモダンなものでして、リストバンドに課金して、中の飲食がバーコード読み取るみたいに機械でピッとこすれば買えるシステムなんですね。まあ、たしかに使い慣れると便利なんですが、導入して間もない場合は、非常にやっかいでしたね、これは。

 

 

 そうこうしているうちにロスが3時間。リストバンドが交換し終わったのは5時30分でした。そのせいで、グラス・アニマルズを完全に見れず、ケイジ・ジ・エレファントは外で音聴いて、最後の曲だけ生で通りかかりましたが、これで3回目の出演の彼ら、第1ステージでものすごい動員になってましたね。あ〜あ、見たかったよ。

 

 

<17:30 The 1975 第2ステージ>

 

 そして第2ステージへ。ここがゲートから一番遠くにあるステージなので、たどり着くのに一苦労。着いたときにはもう1975ははじまっていて、オープニングの「Love Me」が半分くらい聴けませんでした。くやしかったけど、ウーベルで帰ったのでこの程度の被害で済んだことにはむしろ感謝しましたが。

 

 

 で、1975、僕、今回初めて見たんですが、彼ら自身,初のブラジルでした。ただ、正直、お客さんの入れはもうひとつだったかな.ブラジルの新聞は「いっぱい入ってた」と書いてははったんだけど、3年前に同じ場所での同じ時間帯で、イマジン・ドラゴンズのすさまじい人の入りを覚えている感じからは、それの6割ほどでしたね。彼らはイマジン・ドラゴンズと違って、サンパウロのFM局のサポートを余り受けなかったんですが、そういうとこでの差でしたね、これは。

 

 ただ、女の子を中心に噂にはなっていたのか、黄色い歓声でキャーキャー言って騒がれてましたね。フロントマンのマット・ヒーリー、モニターで大写しになると、確かに男前でしたね。ブランドものっぽいロング・スリーヴのシャツをあけて歌ってましたけど、大写しになった顔を見るや、僕の大学のサークルのときの友人にそっくりだったことを思い出してハッとしました(笑)。目とか鼻筋とか、体型とかがソックリで。「ああ、あいつ、やっぱイケメンだったんだな」と思ったのに加え、「マット、やっぱりそういうセンスでも80sっぽいのかな」と思ったりもしましたね。

 

 ライブそのものは、ほぼ音源通りを忠実にやってる感じでしたね。サポートにサックスがいるとこまで、ちゃんと再現出来ててね。彼らの場合、サックスと、あのカッティング・ギターとシンセでの80sっぽさって肝ですからね。あと、地味ながらギターとシンセを1人2役でやってるアダム・ハンにミュージシャンとしての才能を感じましたね。

 

 彼らのソングライティングの、80sから現在のエレクトロ、R&Bも拾えるレンジの広さは僕もかねてからこのブログで絶賛していることで、その点に関しては楽しめました。ただ、マット、体調よくなかったのかな?あれだけ華のあるセクシーなフロントマンの割にはそこまで客を掴みにいってはいなかったし、煽りが少なかった。そこはまあ、そこまで問題ではないのですが、気になったのは歌唱ですね。前から映像での姿を拝見した際も、「シンガーとしてはちょっと線が細い感じがあるかな」と思っていたのですが、この日は曲が進めば進むほどに声が出なくなってましたね。終盤のハイライトにしないといけなかった「The Sound」で声枯れも起こしてましたが、ちょっとこのあたりは今後に課題を残したのかな、という感じでしたね。

 

 

<19:30 The XX 第2ステージ>

 

 The 1975が終わって、1時間ほど休憩して、次のThe XXへ。その間、第1ステージでは、意外にもブラジル初上陸だったランシドが結構盛り上がったライブをやってましたね。ご飯食べながら横目で聴いてて「Ruby Soho」とかをなつかしいなと思いながら聴いていました。

 

 で、The XXですが、今回の準ヘッドライナーです。「第2ステージ」といってもバカにしてはいけません。実は、人の収容の数で言えば、第1よりも大きいんです。ここはステージが谷底になっていて、そこの収容人数こそは多くないんですけど、斜面がやたら広くて、そこに数万人規模、多分全部で5万人くらいの人が入れそうなんですよね。そういうとこでのシメを彼らがつとめる訳ですが、駆け出しの頃を覚えているだけに、「大きくなったなあ」の感慨には浸りましたね。

 

 ただ、実はブラジルでも結構人気があることはわかってました。2013年に彼ら、サンパウロの3000人くらいのホールでライブやってるんですが、そのとき数日で売り切ってましたからね。僕もたかくくってたら、発売日に「もう半分以上売れた」と聞いてあわてて買いに行ったくらいでしたから。

 

 で、開演前から人がゾロゾロ集まるのなんの。やっぱり人気は本物だったんだな、と改めて思いましたね。そしてXXの3人が登場すると、その時点でもう割れんばかりの大歓声。スタジアム・ライブ級の興奮になっていましたね。

 

 

 

 

 ロミー、オリー、ジェイミーの3人が定位置について、新作「I See You」からの「Say Something Loving」でスタートすると、そこからは大合唱の嵐でしたね。「Crystalized」「Islands」と定番人気曲を立て続けたこともあって、それが加速された感じでしたね。

 

 ジェエイミーは相変わらずDJ、ドラム、鍵盤で、ロミーとオリーの紡ぐストーリーの音の演出家として息を飲むような芸達者ぶりを発揮していましたが、この日の主役はロミーとオリーでしたね。2人のシンガーソングライターとしての説得力が上がってるのなんの!前は2人して本当に暗く内向的なイメージだったけど、観衆に心開いて訴えられるようになってきたというかね。2人とも声が前に出てくるようになったし、特にロミーはよく動くようになってギターのフレージングもよくなりましたね。

 

 

 そしていつも仏頂面だったオリーが笑うようにもなって。彼、2013年にサンパウロのホールでライブやったときに、終始無愛想のままだったのに、最後になって「僕たち初めてここに来たのに、こんなにも熱い歓声飛ばしてくれるなんて・・」と感極まって涙声になったんですね。それが今回は、さらに倍加した熱狂的歓声に驚きながら笑顔で返せるようになった。「変わったな。そして大きくなったな」と思いましたね。

 

 

 ただ、どんなに今作でサウンド的に多用となり、開かれて行こうと、心の奥底の孤独に語りかけるようなスタイルも変わらないですね。ロミーの、地声っぽいんだけど、つややかで響きの良い声でこれをやられるとやっぱり強いですね。

 

 

 選曲的には今回の3枚目と、今のモードで進化したデビュー作、そしてたまに2枚目の曲を挟む感じでしたけど、後半のクライマックスは「Loud Places」で来ましたね。ジェイミーのソロ作でロミーをフィーチャリングしたアッパーな曲ですけど、ここで客が大団円になりましたね。これ見て、「ああ、このお客さんはクラブ界隈でつかんだんだ」としっくり来ましたね。あと、お客さんに黒人が多かったんですけど、R&B/ヒップホップのファン層の受けも良さそうですね。

 

 

 このあとにライブは「Om Hold」でもうひとあがりあったあとに「Angels」でしっとりとシメました。

 

 

<21:30 メタリカ 第1ステージ>

 

 

 そして、この日のヘッドライナーはメタリカでした。彼らはブラジルには最低でも2年に1回、来るときは毎年来てる人たちで、そのたびにチケットも売れるので、今回のロラもまずは集客的には安全パイと言われて来ました。実際、この日だけで10万人集客しましたから。

 

 

 ただ、その場に居合わせた実感からしたら、そんなに会場、メタルヘッドが集まってた印象はなかったし、むしろ古株のメタル・ファン、少なかったんですよ。彼らのうちの頑なメタルファンはむしろ来てなかったですね。あと、50近くの彼らのファンは、第1ステージの縁のところで体操座りして見てました。だから入場の時、入るの大変でした(笑)。このステージはフロア部分が非常に広くて、たとえるなら幕張メッセの野外版みたいな感じなんですけど、そのフロア部分の後ろはモッシュが出来そうなくらいに開いてたし、実際にやってた人、いました(笑)。

 

 

 どっちかというと、メタリカと同じ時間に裏でやってたチェインスモーカーズの客と相乗効果になって多かったんじゃないかと思います。例年EDM系の客はものすごく多いので。ブラジルのメディアの報道、そこを見落としちゃうんですけどね、いつも。

 

 

 僕はここで何度も言っているようにチェインスモーカーズってすっごく嫌いなので(笑)、それで腹決めて「今日はメタリカ、全部見よう!」と決めて来ました。彼らのライブは2003年に「セイント・アンガー」のときに代々木体育館で見ただけだったんですが、正直、その時の印象が良くなかったのでためらったんですけど、今回改めて、新作と、リアルタイムでそこまで熱心に聞いてなかった1枚目と2枚めを重点的に聴いてライブに備えました。そしたら、それが見事に功を奏しました、

 

 

 

 ライブは最新作の「Hardwired」から「Atlas Rise」へ立て続けて流れる展開ではじまりましたが、これがまず良かった。前に代々木で見た際に「随分丁寧な演奏するんだな」と思った僕の印象を吹き飛ばすように、良い意味で不規則で雑な演奏を、年齢お超越したスピードで展開。「ああ、これよ、聴きたかったの!」と思い、引き込まれました。「セイント・アンガー」の時期って、後にドキュメンタリーになったくらい、彼ら的には最悪な時期だったわけですけど、これが本来の姿だったんだなと思いました。

 

 

 そして、事前にチェックしていたセットリスト通り、やはり初期の曲、多くてですね。まあ、大ファンの方からすれば「それは昔からよくやってるよ」という「For Whom The Bell Tolls」「Fade To Black」「Whiplash」「Seek And Destroy」といったあたりなんですけど、今回の「Hardwired To Self Destruct」がその頃のエナジーを意識した作品なので、食い合わせが良かったんですよね。新作からのプレイが、彼らほどの大ベテランにしては多い5曲。そこにプラス、その4曲ですから、セットリストのほぼ半分が高速ナンバー。もちろん、おなじみの「マスター・オブ・パペッツ」や「ブラック・アルバム」からの曲もやったわけですけど、印象としては、やっぱ速さで攻めてる曲の方が目立つ。そう思わせただけで、彼らの勝ちな感じがしましたね。

 

 

 そうした彼らのプレイぶりもさることながら、今回僕がいたく気に入ったのはジェイムス・ヘットフィールドのMCでしたね。この人のMC、噺家みたいですごく面白いのね(笑)。「キミたちがどこから来たか知らないが、ここに集まったからには、(ここから絶叫)キミたちは家族も同然だ!!」、「ノッてるか(Are you alive),、サンパウロ!!」「Do you like heavy? Do you want heavy? (ここから、ゆっくりと絶叫)DO YOU NEED,,HEAVY!!!」とか、こういうやりとりで(笑)。このテンションの高さで、会場、結構、メタルと無関係そうな若い人も多かったのに、これで一気につかんでましたね。これ見て、こういうショーマンシップ、必要だなあと思いましたね。昨今のロックに足りないことだとは確かに思います。

 

 

 この日は彼らもゴキゲンだったのか、2時間の予定だったステージが、制限時間の11時になっても終わったのがやっとアンコールの前。普通、この時間過ぎたら音鳴らしちゃいけない契約のはずなんですけど、そんなこと無視して最後の「Enter Sandman」まで、アンコールは3曲もしっかり長いヴァージョンでやってました(笑)。おかげで家路に着くの、結構大変だったんですけどね(笑)。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 00:12
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最新全米映画興行成績

1(1)The Beauty And The Beast

2(-)Power Rangers

3(2)Kong;Skull Island

4(-)Life

5(3)Logan

6(4)Get Out

7(-)CHIPs

8(5)The Shack

9(6)The LEGO Batman Movie

10(7)The Belko Experiment

author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 20:18
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2日目の朝、体は重いけど・・

どうも。

 

 

いやあ、ロラパルーザ2日目の朝ですが、体がさすがにしんどいですね(苦笑)。

 

でも、すごく充実感あって楽しいのもまたひとつです。

 

 

今日はストロークスやらウィーケンドやらデュランですが、がんばってきます!

author:沢田太陽, category:-, 22:22
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