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仕込み中
どうも。


すみません。

映画レヴュー用の、過去の作品を勉強中だったりするので、今日は休ませてください。


では全米映画興行成績まで。
author:沢田太陽, category:-, 20:34
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ボウイの記録ラッシュが止まらない!最新全英チャート
SINGLES
1(1)Stiches/Shawn Mendes
2(2)Love Yourself/Justin Bieber
3(61)Fast Car/Jonas Blue&Dakota


4(3)Sorry/Justin Bieber
5(8)All My Friends/Snakehips feat Tinashe&Chance The Rapper
6(6)History/One Direction
7(5)Girl Is Mine/99 Souls
8(4)What Do You Mean/Justin Bieber
9(10)Light It Up/Major Lazer feat NYLA
10(7)Hello/Adele


ショーン・メンデスが2週目の1位です。

3位初登場は、トレイシー・チャップマン、88年の大ヒット「Fast Car」のトロピカル・ハウスによるカバーですね。この曲、昔からカバー多いですけど、相変わらずですね。


では、圏外に行きましょう。15位上昇中のこの曲で。




アメリカでは既にトップ10ヒットになっていたエル・キングの「Exs&Ohs」がイギリスで上がってきました。これはBBCのトークショー「グレアム・ノートン・ショー」でのスタジオライブが話題になったからだそうです。パフォーマンスでの評価というのはすごくいい話です。この曲、ブラジルではすごくかかってて僕も気に入っていたのでうれしいですね。


では、今日もすごいことになってます。アルバムに行きましょう。


ALBUMS
1(1)Blackstar/David Bowie
2(2)25/Adele
3(3)Best Of Bowie/David Bowie
4(5)Purpose/Justin Bieber
5(6)Nothing Has Changed/David Bowie
6(-)Night Thoughts/Suede
7(9)I Cry When I Laugh/Jess Glynne
8(10)Chaos And The Calm/James Bay
9(12)Hunky Dory/David Bowie
10(19)The Rise And Fall Of Ziggy Stardust/David Bowie


ボウイが3週連続の1位なんですが、それ以上にすごいのが


トップ10中5枚、ボウイが独占!!




なんとまあ、新作、ベストに加え、「ハンキー・ドリー」や「ジギー・スターダスト」までトップ10入りですよ。これって、何年ぶりのことになるんだろうな。


なお、トップ10の5枚独占は、2009年にマイケル・ジャクソンが急死して以来の出来事になります。


また、アルバムのトップ40には今週12枚ランクイン!これは、1977年にエルヴィス・プレスリーが急死したときに並ぶのだそうです。

内訳はこうでした。

1.Blackstar
3.Best Of Bowie
5.Nothing Has Changed
9.Hunky Dory
10.The Rise And Fall Of Ziggy Stardust
20.Aladdin Sane
27.Low
28.Heroes
30.Diamond Dogs
31.The Next Day
32.Station To Station
36.Scary Monsters


このほかにも他5枚がトップ100に入っています。3週経ってまだこれというのはすごいですね。

そんなタイミングで、90年代前半にボウイ・リバイバルを起こしたスエードの新作が6位で初登場というのは面白い偶然ですね。聴いてみましょう。




 思えば僕も、このバンドなかったらボウイの旧譜に向かい合うのがもっと遅れていただけに今さらながら感謝ですね。それにしても、トップ10がボウイ半分にボウイ・チルドレンというのは偶然ですけど、これまたマジックですね。


今週はほかに11位にメガデス、26位に僕も大好きなサヴェージズの新作が初登場。サヴェージズはメディアの絶賛からしたらもう少し順位欲しかったですけど、ボウイ旋風に飲まれたかもしれないですね。あと、先ほどのエル・キングがアルバムでも18位に上がってきていますね。



 
author:沢田太陽, category:-, 03:25
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映画「The Diary Of A Teenage Girl」感想〜2015年の裏カルト名作!70sポップ・カルチャー好きは必見!
どうも。


今日は映画レヴューですが、オスカー関係ではありません。しかし、僕としては猛烈におススメしたい映画です。これです!





 この「The Diary Of A Teenage Girl」という映画です。これは去年の秋ぐらいですかね、アメリカのインディペンデント系の映画アワードで結構頻繁にノミネートされていたときから個人的にすごく気になっていた映画です。僕は、このテの青春もので、かつヒロインものってすごく好みだったりしたので、「見たいなあ」とずっと思っていました。ただ、なかなかこれがネット上でアップされないので、あきらめていたら、ちょうどこないだの僕の誕生日に、ブラジルのケーブルテレビの大手の映画チャンネルがやっている、ケーブル版のネットフリックスみたいなサービスがあって、この映画がDVDスルーにはなっていたけど、もうリストに入っててみれる状態だったんですね。それで「なんて素敵なバースデイ・プレゼント!!」と喜んでこれを見たんですけど・・、もう、タイトルにも示してますけど、最高のプレゼントになりました!


 では、どんな話なのか。あらすじを見てみましょう。




 舞台となるのは1976年のサンフランシスコ。15歳のミニー(ベル・パウリー)は母子家庭の中、かなりヒッピー気質の母親シャーロット(クリステン・ウィグ)と妹のグレーテルと、基本的に3人暮らしをしていました。年頃のミニーは、自身の処女喪失の願望を、ラジカセを使ってカセット・テープに吹き込む毎日を送ります。





 そんな彼女は、出来心から、ママのカレ氏のモンロー(エリック・スカースガード)と性体験をしてしまいます。そして、この関係が続いて行くことにもなります。




 ミニーのセックスへの欲求は日に日に高まって行きます。それは、自分が誰かに愛されることを確認したい気持ちの強さゆえにそうなるのだと、彼女は自らに語りかけます。そんな彼女は、ハイスクールで自分のことを気にかけてくれる男の子にも対応し、さらに、ロック好きで、部屋に飾ってあるイギー・ポップのポスターに一緒にメロメロになるベスト・フレンドのキミーと刺激的な体験をしに外に繰り出します。




 その一方で、ミニーは自身の内側から溢れ出す芸術心を、当時隆盛を誇っていたアンダーグラウンド・コミックにぶつけようとします。彼女は、この世界の大家、ロバート・クラムの恋人(後に夫人)の漫画家、アリーネ・コミンスキーに自分の書いた漫画を送ったりもします。





 また、母のシャーロットも豪放磊落な生活をしていました。図書館司書の仕事を解雇され、一家の生活は苦しいはずでした。ミニーとグレタは、以前の継父からお金を援助してもらうよう頼みますが、それ以前に既に彼がお金は送っていたことが判明します。シャーロットは、もらったお金をドラッグとパーティに散在していたのでした。


 ただ、そんないかにも70sな享楽の日々は続いてはいかず・・・。


 と、ここまでにしておきましょう。


 これはですね




 このフィービー・グレックナーという、アメリカのアンダーグラウンド・コミックの女性漫画家が書いたグラフィック・ノベルが元になっているんですけど、どうやらこれ、彼女のほとんど実話に近い話のようですね。70年代の半ばの自由の街サンフランシスコで、パンクがまさに到来しようとしている時代の境の時代を描いています。


 それもあるからなんでしょうね。劇中では、フラワー・ムーヴメントっぽいイメージは、むしろヒロインのお母さんの方のイメージで、ミニーの世代はグラムロックの影響(西海岸、実際、結構影響あったみたいですからね)を経て、ちょうどパンクに変わって行く感じですね。実際、映画の後半でテレヴィジョンが流れたりしているくらいですからね。


 そして、肝心の話の方なんですが、これ


 もう、とても大好きです(笑)!





 僕はですね、すごく頭が良かったり、人よりも数倍多感な感性の持ち主が故に、女性が積極的に性を語ったり、追究したりする話というのがすごく好きなんですよね。昔は、それがたとえハリウッドとかでも、女性が積極的に公に性について語るのがためらわれていたところもあったし、たとえば、これは僕の勝手なイメージかもしれないけど、日本の映画とかドラマとかで女性の性的な話がテーマで浮上したものの場合って、それはなにか悲しいものと結びつけられたり、すごく無学な感じのものとして、それこそ品がなく描かれる感じのものがなんか多かったような気がするんですよね。でも、どんな人にとっても、性生活というのは欠かせないものであり、十分に前向きにかつ知的に語れるものでも本来あるわけじゃないですか。


 僕自身も「セックス&ザ・シティ」を見て以来、このテの開放的に女性の側から性を語るものはむしろ普通になっていて、それをよりインディ・カルチャーっぽいテイストとユーモアで表現している、たとえば、「Girls」でのレナ・ダナムとか、エイミー・シューマーのコメディとかも大好きなんですが、この「Diary Of A Teenage Girl」も、そうしたライン上にある知的なユーモアを感じる性の作品で、それを、おそらく人類史上、おそらく進歩的にリベラルだった70年代の、しかもサンフランシスコという、バリバリに尖ったアーティスティックな感性で描いているのがすごく好感が持てます。





 劇中でも、こうした田名網敬一のサイケ・アートのようなデザインと実写の組み合わせのコマが随所に見られ、それもあの当時の時代を華やかに演出していましたね。


 こうした絵柄って




 70年代という時代が何もロックだけじゃなく、アートやデザインにとっても重要な時代であることを教えてくれますけど、この映画の場合は、アンダーグラウンド・コミックですね。この世界、アメリカでは文化としての影響力が強くて、それは、上のイラストの肖像画の本人でもあるロバート・クラムの94年のドキュメンタリー映画とか、同じ時代に活躍した漫画家、ハーヴィー・ピーカーの伝記である2003年の映画「アメリカン・スプレンダー」でも伺うことが可能ですが、そういう世界への知的好奇心もこの映画は誘ってくれています。


 そして、今回、そうした世界観を描き出しているのが





 マリエル・ヘラーといって、まだ、新進の36歳の女性監督で、これが彼女のデビュー作という点でも衝撃度が高かったですね。スキャンダラスかつ骨太なストーリーを鮮やかなアートワークと共に、第1回作品でここまで堂々と描ききったのは見事だと思うし、今後にも俄然注目したいと思っています。

 ちなみに隣にいるのは、彼女のダンナさんです。彼はヨーマ・タッコーンといって、「サタディ・ナイト・ライヴ」が生んだ、アンディ・サンバーグ率いるコミック・ヒップホップ・グループ、ロンリー・アイランドのメンバーでもあります。ロンリー・アイランドって、アンディ・サンバーグもジョアンナ・ニューサムのダンナですからね。


 あと、この映画で見逃せないのやっぱり





 主演のこのベル・パウリーですね。彼女、15歳どころか23歳で、実は国籍もイギリス人なんです。トークショーに出演したのを見たとき、しっかりブリティッシュ・アクセントでしゃべってて、同時にちゃんと大人の女性だったんでビックリしたんですが、彼女が、この特徴的な大きな青い瞳をぎょろぎょろさせて、頭はいいんだけど、子どもっぽく無防備なミドルティーンの女の子の姿を、何の不自然な違和感も演じさせずに完璧に演じきっているのは見事だし、それがこの映画を成立させる原動力にもなっています。


 それから、やはりこの人も重要です。



 やはりクリステン・ウィグですね。彼女、数年前までは「サタディ・ナイト・ライヴ」でダントツに面白い女王的存在だったんですけど、ここ数年、かなり積極的にインディペンデントの映画に出て役の幅を広げてますね。特に最近は、笑わせる役ではない部分でのシリアスな演技が光っています。こういう役が出来たかと思うと、一方ではSNLのときと同様、’キャラクターになりきって、キツいえげつないジョークを連発しますからね。今年彼女は「ズーランダー2」での悪役や「ゴーストバスターズ」の女性キャスト版の主役をつとめることもあり、期待したいとこです。


 決して万人向けとは言えませんが、気に入る人には猛烈にアピールする映画です。
author:沢田太陽, category:映画レビュー, 08:17
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最近気に入ってる曲
どうも。


今日は本当は映画レビューのはずだったんですが、ちょっと、思うとこあってやめました。レビューのタイミングみたいなものをちょっと考えてしまいましてね。


なので、最近の気に入ってる曲なんかをちょっとここで。


新作的には断然コレなんですけどね。





サヴェージズですよ!彼女たちのアルバム「Adore Life」よく聞いてます。正統派のポストパンク・バンドではあるんですけど、かねてから演奏力では歴代でも屈指の巧さのバンドでしたけど、新作では曲調のヴァリエーションと、ジェニー・ベスのヴォーカルにすごく幅が出ましたね。こういう抑えた曲でも表情がしっかり出せるようになってきました。このあたりがアルバムが好評な理由でもあります。


あと、これもそそりますね。




youtube上ではわかりにくいんですけど、PJハーヴェイのニュー・アルバムはすごく期待出来そうですね。ここ数作、ずっといいんですけど、今回も楽曲がシンプルな時点で完成度の高さを十分伺わせるんですけど、その短い中に随分凝った楽器上の実験を、この短いスニペットの中でも感じます。


 あとは、自分でもビックリしてるんですけど、これですね。





このThe 1975のこの曲を、こないだ全英チャートで紹介して以来、メロディが頭から離れなくてですね(笑)。デビュー作のとき、そんなに気にしてなかったんですけど、良い曲書けますね、この人たち。EDMからのフィードバックをバンドに持ち込んだ例で、これが今まで聞いた中で一番良いですね。これは何かの弾みで当たったら、かなりのアンセムになるんじゃないですか。コールドプレイに見習ってほしいですよ、ホント(笑)。


 あと、この曲だけじゃなくて、先行の2曲も好きなんですよ。






 最初の「Love Me」の方はまんま80sのインエクセスですよ、これ。これはもう、ファッションから思いっきりマイケル・ハッチェンスの物まねですけど(笑)、だけど再評価の目の付け所としてはなかなか面白いです。たしかに「今聞いたらカッコいいかも」と思える重箱の隅ですからね。僕も当時大好きなバンドでもあったし。


 あと「Ugh!」の方は、ジャスティン・ティンバーレイクから最近のPB R&Bに至るまでの良質なR&Bのエッセンスをこれもうまくバンドサウンドに落とし込んでますね。このフィードバックの仕方もマルーン5あたりより全然上手いと思います。出、また、メロがすごく覚えやすいんだ、これが。


 そんな感じですね。ここ最近、やっぱ、オスカーが近いので、映画モードなのですが、息抜きに聞いてるとこはこのあたりということで。
 
author:沢田太陽, category:個人話, 13:03
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最新全米チャート
どうも。


今日はテキパキ行きましょう。水曜恒例、全米チャート。


SINGLES
1(1)Sorry/Justin Bieber
2(3)Love Yourself/Justin Bieber
3(2)Hello/Adele
4(4)Stressed Out/twenty one pilots
5(6)Here/Alessia Cara
6(8)Stiches/Shawn Mendes
7(5)Same Old Love/Selena Gomez
8(11)Roses/Chainsmokers feat Rosez
9(7)Hotline Bling/Drake
10(10)What Do You Mean/Justin Bieber


依然としてビーバー強いですね。あと数週続くか。


トップ10は8位にチェインスモーカーズ、こないだ紹介しましたけど、入って来ましたね。


では圏外に行きましょう。12位上昇中のこの曲で。






フローライダーのニュー・シングル「My House」。2000年代のアメリカの享楽パーティの象徴的存在だったフロー・ライダーですけど、今回はテンポを落として歌ものですね。まあ、「この人にしては」なんですけどね(笑)。またまた、売れそうなんですけど、それにしても寿命続いてますね、この人は。


では、アルバムに行きましょう。


ALBUMS
1(1)Death Of A Bachelor/Panic At The Disco
2(2)25/Adele
3(3)Purpose/Justin Bieber
4(1)Blackstar/David Bowie
5(5)Blurryface/twenty one pilots
6(-)Kidz Bop 31/Kidz Bop Kids
7(4)Best Of Bowie/David Bowie
8(7)Traveller/Chris Stapleton
9(6)Beauty Behind The Madness/The Weeknd
10(8)TRAPSOUL/Bryson Tiller




初登場1位はパニック・アット・ザ・ディスコです。1位は何年ぶり?結構久々な気がします。聞いてみましょうか。





EDMの要素を入れて、より下世話になりましたね。フォールアウト・ボーイに続いた感じなのかもしれませんが、あっちがまだバンド色はしっかり残してるのに対して、こっちはそういうこともあんまり気にしてない感じですね。


今週は6位にキッズもののコンピ、キッズ・バップの第31巻目が入って来ています。


そして11位のアルバムから聞いていただきましょう。





先週はボウイの追悼モードが濃厚でトップ100に7枚のボウイのアルバムが入っていましたが、今週はグレン・フライ追悼ということで、彼とイーグルス関連の作品がたくさん入って来ています。最高位は惜しくもトップ10を逃して11位だったイーグルスの「グレイテスト・ヒッツ1971−1975」でした。以下、こんな感じでした。


11.Their Greatest Hits 1971-1975
28.The Very Best Of The Eagles
82.Solo Collection
95.Hell Freezes Over
112.Greatest Hits Vol.2
171.Hotel California


このように6枚のアルバムがトップ200に入りました。これでもかなりすごいことですが、ちょっと今回のボウイのショックがあまりに大き過ぎて、ちょっと目立ってない感じは否めないかな。ボウイ、今週も2枚がトップ10ですしね。
 
author:沢田太陽, category:全米チャート, 06:46
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映画「キャロル」感想〜本当に差別されたのは誰なのか
どうも。


オスカーの候補作がぼちぼちたまって来たのでレヴューして行こうと思っています。今日はこれです。





この「キャロル」行きましょう。この映画は今年のオスカーで主演女優、助演女優を始め6部門にノミネートされていますが、本当はもっとあってもおかしくなかった作品です。それがなぜなのかを語って行きましょう。


まずはあらすじから。




 舞台は1952年の冬のニューヨーク。テレーズ・ベルビット(ルーニー・マーラ)はカメラマン志望の女性でしたが、それで食べているわけでなく、恋人のリチャードに「パリで僕と暮らそう」と口説かれてもいました。そんな彼女はクリスマスにデパートのおもちゃ売り場でバイトをしていました。




 するとそこに、小さな娘のプレゼントを買いに来た貴婦人とカウンターで会話をします。魅惑的なその貴婦人に目を奪われたテレーズでしたが、婦人が手袋を忘れて帰ったのを、買い物の届け先の住所を調べて送ったところ、それが運命のはじまりでした。




 婦人は手袋を受け取ると、お礼とばかりに早速テレーズに電話を入れ、「会わない?」と切り出します。テレーズは指定された日時と場所で婦人に会いに行き、そこでお互いの名前を知ります。貴婦人の名前は「キャロル」。キャロルはクリスマスも押し迫っている頃だというのに、「私のところに会いにこない?」と積極的に迫ります。



 この誘いに、「何かがおかしい」と感じながらも、テレーズは自分の胸が静かに高まるのを徐々に抑えきれなくなっていました。彼女はそこで「本当に自分が求めているもの」を素直に感じはじめるのでした。この頃から、テレーズは自身の写真の売り込みにも積極的になりはじめ、リチャードからの誘いがだんだんと重荷になって来もしました。



 一方、キャロルは自分の家庭に問題を抱えていました。夫であるハージ(カイル・チャンドラー)とは性格上の不一致などもあり、協議離婚の手続きの最中で、もう同居もしていない状況でした。そして、一人娘のリンディの親権を争っていました。ハージは、今回のクリスマスに、郷里の実家で、自身の両親と一緒に過ごすことをキャロルとリンディに提案しますが、キャロルはそれを頑に断り、結局リンディだけをクリスマスに相手の実家に預けることにします。


 ハージはこの問題が起こる以前から、キャロルの性的傾向について疑っていました。彼はそれを、彼女の古くからの幼なじみの独身女性、アビー(サラ・ポールソン)との関係によるものだと疑っていました。




 ただ、クリスマスの当日、ハージがキャロルのアパートにリンディを迎えに行くと、そこには彼の見知らぬ女性の存在がありました。それが他ならぬテレーズでした。ハージは関係を強く怪しみますが、キャロルはそれを全力で否定します。




 数日後、キャロルはテレーズにシカゴへの小旅行をすすめますが、それはテレーズにとってのかけがえのない喜びに変わっていました。テレーズはリチャードに本音を告白し、呆れられる中、キャロルとの2人旅を行ないます。しかし、そこには、思いも知らぬ展開が待ち受けていて・・。


・・と、ここまでにしておきましょう。


 これはですね、20世紀半ばの小説家、パトリシア・ハイスミスの小説の映画化ですね。彼女はあのアラン・ドロンで有名な「太陽がいっぱい」の作者としても有名なのですが、あれも実はゲイ小説だったということは、かの淀川長治先生が随分昔から気づいていて、それを指摘する文章を大学生のときに読んで僕もそういう認識で見ていました。それと同じ作者の作品、ということです。




 しかもそれを、オープンリー・ゲイとして知られるトッド・ヘインズが監督するわけです。その時点から、LBGTの問題に深く切り込むものになることは予想は出来ましたけど、これ


素晴らしいです!!





 これの何が良いかって、これ、1950年代という、レズビアンというものの存在が全く理解されない時代に、2人の女性がどうやって恋に落ちるのか。そのメカニズムがものすごく、心理的に、かつ、シチュエーション的に見事に表現されているんですよね。かたや、自分の性癖に気づき、自分の魅惑で積極的に迫り、もうひとりが、果たして自分がどちらの性を好むのかどうかさえわからず、迫られたことによってはじめて扉を開く。そのふたつの典型的なモデルを、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが絶妙なマッチングで演じていますね。ケイトは、この頃の女性の最高級に洗練されたファッションで、あの低い声を生かし、とことんカッコよくグイグイと迫り、ルーニーは、普段からあの無表情なお人形さんのような表情をひときわキョトンとさせながら、静かに自分の揺れる心情を自分の中で反芻させる。双方見事でしたが、特にルーニーの役柄の方が、表情の幅に限界のある役柄なだけに難しいですよね。そこを彼女はよく引き出せていたと思います。さすがにこれで、カンヌ映画祭の主演女優賞を受賞しただけのことはありました。


 それから、この2人だけでなく、実は他の役者陣も見事だったんですよね、これ。特に男性陣で、とりわけカイル・チャンドラーですね。愛する女性の方から、男に興味がない本音を切り出される、50年代を生きる男性としては、「そんなのなにかの間違いだ。一時的に誤った考えでも起こしたのだろう」と、悪い言い方をすれば、本気にとらえていないというか、「冗談」もしくは「病気なのか?」とさえ思ってしまい、それがかえって相手を傷つけるシチューション。ここの論理設定も見事だし、文句なしに演じていましたね。カイルなんて、普段は善人の役しかやっていなく、珍しく嫌われ役を演じたわけですが、これは、「誰も傷つけようと思っているわけじゃなく、当時の常識に従えば普通で、むしろ人を助けたいと思っているくらいだ」という「悪意のない悪役」というですから、なかなか難しいとこもあったかもしれませんね。


 あと、最近、「アメリカン・ホラー・ストーリー」などで性格女優として名をあげてるサラ・ポールソンが、キャロルの長年の友人で、同性愛について長く知っている、ちょっとした「ベテラン」の役を風格もって演じていたのも印象的でしたね。特に彼女がテレーズに対して心理的に与える影響もうまく表現出来ていたと思いましたね。そのほか、この映画では、「このときのレズビアンがこの当時にどう生きていたのか」という実例を、説明をあえて行なわず、短いコマの中にサブリミナルに表現していたのも良かったですね。一瞬の描写ではあるんですけど、これもすごく効果的でした。


 そして、こういうストーリー・テリングを




 ヘインズが彼お得意の、彼にしか出来ない確固たる映像美のスタイルで表現していたのも良かったですね。真っ先に思い出したのは、2002年公開の「エデンより彼方に(Far From Heaven)」ですね。ここでのヘインズは、1950年代の「ゆらめき系メロドラマ」の名人だった名監督、ダグラス・サークの「All That Heaven Allows」(1955年)のリメイクを、サークが表現した、この当時最先端の女性ファッションと、カラーが「総天然色」と言われていた時代の鮮やかな色彩感覚をまんま再現する形で行なっていました。そして彼は、サークが劇中で表現していた「人種や階級の違い故に許されない愛」の禁断度をあげて表現しています。「エデン」では、「富豪の婦人が庭師の男性と恋に落ちる」という設定を、「(公民権施行前の)50年代に黒人男性と恋に落ちる」という設定で紹介していましたが、今回も「レズビアン」という題材で、あたかも「エデン」に続く第2弾でもあるかのように一貫性を持って演じていたのも、作品の芯がしっかり確信を持って固定されていて、そこも大きなポイントですね。


 撮影、アート、コスチューム、どれをとっても一貫性の美学があって美しいです。ついでに言えば、一番肝心となる、「そのシーン」でさえ、「これまでのこの系の映画でもっともスタイリッシュで上品に描かれている」ことは見ていただければわかると思います。それは保証します。行き過ぎたグロさみたいなものとは一切無縁です。


 と、語りはじめたら、ほめる言葉しか出てこなくなっちゃうんですけど(笑)、この作品はですね、昨年、Metacriticで年間最高点となる96点をたたき出し、さらに前述のカンヌでの受賞に、地方アワードの中で一番権威のあるニューヨーク映画批評家協会賞(NYFCC)、ゴールデン・グローブ、そして英国アカデミー賞(BAFTA)で最多ノミネートを獲得しています。普通だったら「今年のオスカー最多ノミネート」になってもおかしくないはずだったの


ですが!


作品賞と監督賞のノミネートを外れてしまった!!!


 もうね、これ、僕はいまだにショックですよ。なんで??それは僕がヘインズに関して、「エデン」がすごく好きなのと、彼がボウイをモデルにした「ベルベット・ゴールドマイン」とボブ・ディランを題材とした「アイム・ノット・ゼア」を監督したという、ロック好きなら愛さずにいられない仕事をしていることで大好きな監督なだけになおさらなんですね。


 こないだから何回も言ってるように、今、オスカーって黒人差別をことのほか問題視してますけど、でも、今回問題になっている黒人映画で、ここまでのレヴューの点数と、有名アワードでのノミネート実績がある作品なんてないんですよ。この作品が味わった、オスカー本番での大どんでん返し落選に比べたら、不当なものなんてなかったに等しいですよ。僕は「クリード」は好きで、作品賞の一部と交換してもいいくらいではありますけど、それだってむしろ責任はオスカーというよりは、オスカーのノミネートの参考資料となる前哨戦で同映画を上位ランキングにつけさせることの出来なかった配給先のキャンペーンの仕方に問題があったと思うし、オスカーに臨む以前の問題なんですよね。ひとつあるとするなら、前述の黒人映画は「クリード」や「ストレート・アウタ・コンプトン」はじめ興行的にもヒットした作品だから人々に比較的認知度が高くて、「キャロル」が限定公開で終わって知名度が高くなかったから、というとこでしょうか。


 特にヘインズの場合、今回だけじゃなく、2002年にも「エデン」で、それこそこれもNYFCCアワードの作品賞を受賞しているのに、オスカーで監督賞と作品賞をこのときも逃しているんですよ。なんか露骨過ぎませんか?


 正直、今回の件で、差別の解釈が正しくないまま、「黒人優遇」だけをひたすら求められてLBGTにはふたをする傾向ってどうなんだと思いますけどね。「LBGTと言ったって、過去に『ブロークバック・マウンテン』や『MILK』や『キッズ・アー・オールライト』は作品賞にノミネートされているじゃないか」って反論も見てますけどね。それだけに僕も「ノミネート外されるわけないだろう」と思っていただけにビックリしたんですけどね。あえて言うなら、たしかその3つはキスまではあったんですけど・・・ってとこですかね。僕自身は無関係ではないと思っていますけど。


 この件に関しては、思い出して、蒸し返して僕は主張して行くでしょうね。それだけの価値がある作品だと思うのでね。
 
author:沢田太陽, category:映画レビュー, 10:55
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