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今年最後の全米映画興行成績
どうも。


ちょっと変則的ですが、1月1日にいきなり「全米映画興行成績」ではじめるのもいやなので、もう今日やってしまいます。今年最後になります、全米映画興行成績、行きましょう(ポスターをクリックするとトレイラーが見れます)。




1(1)The Hobbit:An Unexpected Journey
2(-)Django Unchained



3(-)Les Miserables


4(-)Parental Guidance


5(2)Jack Reacher
6(3)This Is 40
7(5)Lincoln
8(6)Guilt Trip
9(7)Monster Inc 3D
10(4)Rise Of The Guardians


注目映画2本のエントリーにもかかわらず、やはり「ホビット」は強かった!これで3週連続の1位です。


そして2位で初登場はクエンティン・タランティーノ監督最新作「Django Uncahined」。これは解放された黒人奴隷のジャンゴがドイツ系移民と組んで、悪党大地主から盗まれた妻を取り戻すというお話。ジャンゴ役をジェイミー・フォックス、相棒のドイツ人を「イングローリアス・バスターズ」でおなじみとなったクリストフ・ヴァルツ、そして地主をレオナルド・ディカプリオが演じるという物です。


この映画、早くも評判が非常によろしく、Metacriticで81点、Rottentomatoesで89点。当初、「タランティーノと言えども、映画賞向きの題材と違うのでは」とも思われていたのですが、ぎりぎりのタイミングでの公開でありながら、12月の映画賞争いにも結構絡んできています。ゴールデン・グローブでも作品賞、監督賞にノミネートされましたね。果たしてオスカーではどうなるか。


3位に初登場は「レ・ミゼラブル」。これはもう言うまでもなく、19世紀のフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの同名の名作小説の映画版。これはもう、日本でもミュージカルのド定番として知られていますよね。今回の映画版は「英国王のスピーチ」でオスカーを受賞したトム・フーパーを監督に、主演のヒュー・ジャックマンをはじめ、アン・ハサウェイ、アマンダ・サイイフリッド、ラッセル・クロウなど豪華キャストで臨み、「今回のオスカー最有力候補」として業界内では今年の初め頃から話題でした。12月のニューヨークでの最初の試写でもスタンディング・オヴェーションが起こり「これはオスカー確実」の声もその時点では聞かれました。


しかし


いざ蓋を開けると、映画賞でノミネートはされるものの、順調に受賞しているのはアン・ハサエエイの助演女優賞だけで、作品自体は前哨戦未勝利。そして先のゴールデン・グローブのノミネートでトム・フーパーが監督賞ノミネートを逃したことでオスカーレース後退の声も大きくなってきています。


その劣勢を巻き返すには、公開後の批評と興行が頼みだったわけですが、Metacriticで64点、Rottentomatoesで72点。普通のミュージカル映画なら上出来な点数ではありますが、オスカー狙いの作品としては、ノミネートの足切りをやっとパスしたくらいの点数。ならば興行で挽回を狙いたかったところですが、公開の25、26日の両日はデイリーで1位だったのですが、今回のこの週末のチャートでは3位後退と、後押しの材料としてはちょっと苦しくなりました。アンの助演女優と、美術系の技術部門での受賞狙いに切り替えるか。


4位初登場はビリー・クリスタルとベット・ミドラー主演のコメディ「Parental Guidance」。なんか主演の2人の顔ぶれは80sのコメディみたいですね。この映画は、この2人がマリッサ・トメイ演じる娘の3人の子供、つまり自分の孫に会いに喜びいさんで行くのですが、そこで孫の感覚との間のジェネレーション・ギャップに苦しむ、といったお話。


「ビリー・クリスタルがじいちゃんの役やるようになったんだなあ〜」と思いつつも、今や確実にじいちゃん、ばあちゃん世代になてしまった戦後ベイビーブーマー世代。そろそろ現れるべきタイプの映画だと僕も思うのですが、評判はよろしくなくMetacriticで36点、Rottentomatoesに至っては17点と評判はさんざん。ありきたりの内容になってしまったか。


¨という感じで、2012年のTHE MAINSTREAMはこの記事で終了です。2013年も新年の挨拶を皮切りに、もちろん毎日更新するつもりでいます。最初の全米映画興行成績は順調に行けば8日かな。ただ、年明け早々に重要な映画賞のノミネート発表もあるので、年明け早々、映画ネタは多くなりそうです。


では、今年1年、お世話になりました。良いお年を!来年もよろしくお願いします。

author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 10:59
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今年最後の全英&全米チャート
どうも。


一昨日書いた「洋楽が聴かれないと嘆く前に(2)」、かなり反響が大きかったみたいでうれしいです。やっぱ、ここ数日、一部で洋楽の未来を危惧する動き、本当にあったんですね。


でも、この件に限らず、「今の音楽に魅力がないせいで流行らない」という帰結のもので建設的な議論ってあんまり生まれないんですよね。「良い物を出してて盛り上がっているところもあるのに、それがなぜ多くの人に届かないのか」という方がやはり話してて未来がある感じがするというか。


で、「どうやったら初心者向けが生まれるか」という問題に関してですが、僕としては、やっぱ地道にチャートのこととか伝えて行って、そこで出くわす魅力を持ったアーティストたちを盛り上げて行く、という地道なやり方以外、方法はないと思っています。海外からの正しい最新の情報が何かしらで絶えず伝えられている状況をちゃんと作ることが一番なんだと思います。それができるだけ目立つ形でね。


では、本当はやらないつもりでいましたが、思ったより僕にも時間があったのでこの際行くことにします。月曜恒例、全英チャート、そして、こないだの土曜日に遅れて更新されていた全米チャート、一気に紹介しましょう!


1(2)Impossible/James Arthur
2(3)Scream&Shout/will i am&Britney Spears
3(6)Gangnam Style/Psy
4(7)Troublemaker/Olly Murs feat Flo Rida
5(1)He Ain't Heavy,He's My Brother/Justice Collective
6(5)Locked Out Of Heaven/Bruno Mas
7(8)I Knew You Were Trouble/Taylor Swift
8(10)Diamonds/Rihanna
9(14)Candy/Robbie Williams
10(11)Beneath Your Beautiful/Labrinth feat Emeli Sande


今年の「X Factor UK」のウィナー、ジェイムス・アーサーのデビュー曲が1週で1位を奪還しました。


あとはさすがに年末なので、そこまでチャートは動いてませんね。9位のロビー、10位のラブリンスとエメリもトップ10再登場ですしね。


圏外もそこまで大きな動きはありません。では、アルバムに行きましょう。


ALBUMS

1(1)Our Version Of Events/Emeli Sande
2(2)Right Time Right Place/Olly Murs
3(6)Unapologetic/Rihanna
4(3)Christmas/Michael Buble
5(4)Unorthodox Jukebox/Bruno Mars
6(7)Take Me Home/One Direction
7(12)18 Months/Calvin Harris
8(38)Ora/Rita Ora
9(5)The Very Best Of/Neil Diamond 
10(9)Take The Crown/Robbie Williams


今年のイギリスの最大ベストセラーのエメリ・サンデが今年を締めくくるように1位ですね。これがアデルのようにアメリカ人気に飛び火しなかったのが不思議です。アメリカでは最高28位にとどまっています。


今週は7位にキャルヴィン・ハリス、8位にリタ・オラがトップ10再登場ですね。リタ・オラは13年に全米市場を狙って行きたいところでしょうけど、さて、どうでるか。


では、2日前にひっそり更新されていた全米チャートも行きましょう。


 
SINGLES

1(1)Locked Out Of Heaven/Bruno Mars
2(2)Diamonds/Rihanna
3(3)Ho Hey/The Lumineers
4(10)I Knew You Were Trouble/Taylor Swift
5(7)Beauty And A Beat/Justin Bieber feat Nicki Minaj
6(4)Die Young/Kesha
7(5)One More Night/Maroon 5
8(6)I Cry/Flo Rida
9(8)Home/Philip Philips
10(13)Thriftshop/Mackelmore&Randy Lewis feat Wanz



ブルーノ・マーズが3週連続1位キープですね。4位にテイラー・スウィフトの新曲があがって来ましたね。ハリー君は彼女にとってトラブルか、否か。


10位には先週圏外で紹介した貧乏白人ラッパー、マッケルモアが入ってきました。この曲、ロックチャートでも盛り上がってるみたいですよ。


ちなみに一昨日の記事で「ロックチャートは2000年代前半はニュー・メタルに独占されていた」みたいなことを書きましたが、今ではもうニュー・メタルものはすっかり姿を消して、マムフォードやブラック・キーズが上位を占めるチャートに様変わりしています。1位はルミニアーズの「Hey Ho」です。


では、アルバムに行きましょう。



ALBUMS

1(1)Red/Taylor Swift
2(-)Trouble Man-Heavy Is The Head/T.I.
3(2)Unorthodox Jukebox/Bruno Mars
4(4)Take Me Home/One Direction
5(3)Christmas/Michael Buble
6(5)Merry Christmas Baby/Rod Stewart
7(7)The World From The Side Of The Moon/Philip Philips
8(11)Babel/Mumford&Sons
9(-)12.12.12 The Concert For Sandy/Various Artists
10(12)Now 44/Various Artists


テイラーが依然1位独走ですね。


2位初登場はT.I.の新作。ただ、彼もムショ入りしてる間に勢い落ちて来ましたね。


9位は12月12日に行われたハリケーン・サンディのチャリティ・コンサートのライヴ・アルバム。ポールとカート抜きニルヴァーナの共演曲は結局ナシになってますね。



このような感じで今年の全英と全米チャートはおしまいです。来年は、予定に変更がなければ、1/4に全米チャートから入ることになると思います。お楽しみに!
author:沢田太陽, category:全英チャート, 06:41
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投稿トラブル発生!
 どうも。


すみません。昨日の記事もすごく良い反応をいただいてて、その続きを数時間に渡っていろいろ書き直しなどしながら書いていたら、最後にアップする段階で書き上げたデータが全部消えるトラブルが起きてしまいました(泣)。あ〜、すごい時間の無駄遣い!


これから、書いたものはこまめにアップデートするようにします。ちょっと、まとまらなくなっていたこともあるので、続きはもう少し時間をください。では!








author:沢田太陽, category:-, 14:21
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「洋楽が聴かれない」と嘆く前に(2)「弱体化」ではなく「お高く」なった今日のロック
では、前記事の続きに行きましょう。


前回は「洋楽初心者がロックを聴かなくなった」というところまで話をしましたが、では、なぜそうなってしまったのか。ロックは、「過去の遺物」の古い音楽になってしまったのか。


結論から言ってしまうと、それは全く違います。それどころか、むしろ逆です。


なぜなら、ポップ・セレブとかアイドルとかって、自分たちがプロデューサーに曲をこしらえてもらって、生楽器で演奏しない音楽をやっていることに対して引目を感じがちですからね。だから、結構多くのアーティストが、ときたま「ここぞ」とばかりに、バンド編成やアコースティックの曲をやることで、自分のことを「単にプロデューサーに操られているだけじゃなくて、ちゃんと考えるところは考えてるんだぞ」というアピールをしたがるものです。


では、なぜロックがポップ・ミュージック界の代表的な存在でなくなっているのか。答は簡単です。ロックの側が、ポップ・ミュージックの中心になることを自ら拒んでしまったから。


そういう流れのはじまりは、やっぱりニルヴァーナに原型がありますね。1992年頃の話ですが。その当時のロックって、エンタメ界の中でもかなりの影響力があって、私生活も含めてセレブの中核的な存在でもあったんですけど、ニルヴァーナをはじめとしたグランジ勢やその他オルタナティヴ・ロックが浮上してきたことで、世の中が不況にもかかわらず不良成金みたいな振る舞いしてる人が急に寒い存在になっちゃったんですね。そして、その頃から「レコードを売った枚数じゃなくて、いかにリスナーの心に響く曲を作るか」の方に重点が置かれるようになって、80sみたいにロックのアルバムから4〜5枚のシングル・ヒットが出るという、今のケイティ・ペリーがやってるような売り方をしなくなったんですね。


その時点でも、かなり「ロックが弱くなった」みたいな物言いをする人はいましたが、そういう人はアルバムでの売り上げの方を見なかった人です。実際、CDのセールス枚数だけで見ると、90sのオルタナティヴ・ロックのアーティストのアルバムの方が80sのロックバンドのそれよりも枚数の上では売れてるんです。ただ、この当時、ロック・アーティストは「カルチャーの顔」であろうとして、セレブであろうとは決してしなかった。だから、世代が違うとちょっとわかりにくくはあるんですが、この90sの世代にドンピシャな人なら、それでもまだロックがカルチャーに影響があることはわかってもらえると思います。加えてイギリスにはブリット・ポップという、これまた文系よりのバンドが受けた時代を体験してますからね。



そして、90年代の末にひとつの大きなひずみが起こります。それはリンプ・ビズキットを中心としたニュー・メタルのブームが起こったときに端を発します。このとき、このテのバンドは、昔のロックスターっぽい振る舞いを復古させようとして、80sのときの不良成金みたいなスタイルにWWEやヒップホップのマッチョでヴァイオレントなテイストを加えて発展させようとしました。これはキッズ的にはウケて、洋楽の初心者的なところにロックを持っていくことには表層的には成功しました。ただ、ニルヴァーナをはじめとした90s前半のオルタナティヴ・ロックの作ったアートで文化的な空気を謳歌した人たちにこの路線が受けいられるはずはなく、実際問題、このテのロックは2001年の9/11が勃発すると、暴力的な雰囲気が敬遠され、一気に人気を失うこととなります。そして、それと時を同じくして、英米のメディアが共にストロークスやホワイト・ストライプスのようなタイプのバンドを「本来あるべきアートなロックバンド」として後押しするようにもなります。


だが、この際に大きな歪みが生じてしまうことになってしまいます。イギリスの場合はストロークスやストライプス以降、リバティーンズみたいな国産の新タイプのインディ・バンドが出て来たこともあり、ロックシーンの2000年代的な変わりがはっきりと現れ、フェスのヘッドライナーも純粋に最近の人気バンドがつとめる感じになっていたのですが、アメリカのラジオ・メディアが頑として新しいインディ・バンドの台頭を認めなかったんですね。この当時のアメリカのロック系のラジオは、リンプ・ビズキットだったりクリードだったりで築かれたミレニアム前後のニュー・メタルのフォーマットでガチガチに路線を固めてしまった。もう、リンプなんかのラップ・メタルが完全に過去のものとなったにもかかわらず、その後から出て来た、リンキン・パークとかニッケルバックをメインに据えた感じで、ストロークスやストライプス以降のバンドがなかなかラジオでかからなかったんですよね。アメリカの音楽雑誌周辺でさえ、ストロークス以降のバンドを押していたにも関わらず、雑誌関係でほとんど顔を見ることのなかったニュー・メタルの末裔系のバンドばかりがラジオで押されてしまった。だから、アーティスト人気を決定的にするバロメーターであるシングル・ヒットが出せなかった。



まあ、それがいかにも「ブッシュ期のアメリカ」って感じでもありますが、それによって、イギリスの方面であたっていた新世代のインディ・ロックのバンドのインパクトがアメリカで「アルバム初登場順位は高いけど、一般層にまでは浸透しない」レベルでとまり、マニアックな評価の印象がついてしまいます。僕がHard To Explainはじめた2004年なんてすごくチャンスだったのに、結局アメリカでシングル・ヒットしたのはキラーズの「Mr.Brightside」ぐらいなものでね。こうして、アメリカでの後押しがもうひとつだったため、ストロークス以降の新世代のバンドの世界的なアピールの説得力がもうひとつ迫力不足になってしまった。やっぱり、イギリスでどんなにフェスのヘッドライナー・クラスの人気になろうが、アメリカでの人気がついてこないと国際的な浸透度ってどうしてもあがらない。2000年代世代のバンドが、違う世代のロックリスナーの目線からして、どうしても地味に見える理由ってこれが原因なんです。これは日本でももそういう印象持たれていたし、実は僕の住んでるブラジルをはじめ、非英語圏の国では割と一般的に持たれがちなイメージでもあります。


ただ、このことに関しては今の世代のアーティストやファンの体質にも問題があったように思います。やっぱり、「カート・コベインの亡霊におびえた」というか、「フレッド・ダーストの寒いロック復権への嫌悪感」もあってか、2000年代のインディ・ロックのバンドで良い意味で「出る杭」になるタイプが出なかったんですね。ファンの方もちょっとでもバンドが売れそうになったら「セルアウトした」と過敏になるところがあった。また、ダウンロードが主流になり、メジャー・レーベルと絡まないでも成功できるようになったことから、「自分らがマイペースでできる」レベルのそこそこの成功で満足するバンドが増えてしまった。そういうことから、がむしゃらな上昇志向のバンドが目立たなくなった。


さらに、この頃からピッチフォークをはじめとしたインディ・ロックのサイトが台頭し、インディ界隈では影響力の強いものになります。彼らの情報は早いし、最新のトレンドを知る意味ではたしかに役には立ちます。しかし、「スター」を作った実績がなく、元の趣味自体が地味だから、一般ウケしない地味なものを優先的に押しすぎる傾向が強い。それゆえに、ピッチフォークはアンダーグラウンドではカリスマだけど、オーヴァーグラウンドでの影響力を持ち得ないまま終わってしまっている。


その結果、どうなるか。「インディ・ロック」というものに対する10代のリスナーが構えるようになってしまい、大衆的な人気をつかめなくなってしまう。これにより、80〜90年代のアメリカに普通にいた「ロックファン」が減少することとなってしまう。ただでさえ、放送に乗らないからとっつきにくく見えるのに、そのうえ押してるものが地味なら、そりゃ大衆音楽として楽しめるわけがありません。批評的な見地に立てば、この5〜10年くらい、批評で90点以上をとった作品も少なくない訳で、決してロックのクオリティが落ちたと思えないし、そういう優れた作品は一部でカリスマ的評価を受けて多少なりとも知名度は獲得するから、「ロックのレベルが落ちた」なんて感じで悲観的に報じられることもあまりなかったような気もします。むしろ、「インディ・ロック」と称される音楽が、良くも悪くも高尚になりすぎて、手が届きにくいものになってしまっている、ということなんだと思います。


また、インディじゃなくても、ロックを「高尚化」させる事態が進んでいます。それは別名、「ロックの高齢化」と呼ばれるもの。今やポール・マッカートニーやローリング・ストーンズが70代、70年代の人気アーティストが還暦超え、U2やマドンナさえも50を超え、グランジやブリットポップの世代でさえ40代。今の10代にしてみれば、ロックは親どころか祖父母の代までが楽しんでる音楽のわけです。また、その親、祖父母の世代のロックの名作は「古典」として後世に伝えられるアカデミックな価値さえ持つものとなってきた。それだとさすがに今の子供世代だと、エスタブリッシュされすぎてて近づきにくい。いわば「文学作品って、なんか難しそう」みたいな感じで小説読むのをこわがるのに似たタイプのリスナーが出て来たとしても何ら不思議はないはずなんですね。


そういう感じで、”ロック”という存在が、本来の”若者の価値感覚を代弁するもの”というところから乖離して、「芸術価値の高い文化教養」みたいな感じに受容のされ方が変わってしまっている。その感覚は、なんか否めないかな。たしかに今、ローリング・ストーンとか、イギリスのMOJOやUNCUTみたいな大人向けのロック雑誌を読んでも、なんか「知識層向け」という感じはしますもんね。


ということで、「高尚になりがちなロックから、いかに若い世代にアピールするところを見出していくか」というのが、欧米のロックには必要なこととなってるのが現状なんだと思います。2000年代の後半には、10代前半の層を狙ったフォール・アウト・ボーやパラモアみたいなエモの人気が出て、このファン層は実はブラジルあたりでも大きかったところではあるんですが、ただ、これに関して言えばあまりにもポップ・セレブ的なものにノリとして近づきすぎて、アイドルっぽいのりと変わらなくなりすぎてしまった。その矢先に、FOBもパラモアも活動が滞ってしまったことでブームがすごく短命で終わってしまった。また、キッズ層がEDMに目移りしてしまったのも、ロックが彼らの間でなかなか人気音楽になりにくかった原因でしょうね、この頃だと。


¨と、こういうことが続いて来ているので、「ロックを若い人にとっての洋楽初心者音楽」にするのは、現状、非常に難しいのです。このように、欧米ですら、ロックが若い人にとってのポップ・ミュージックへの初心者音楽たりえてないわけですからね。


ただ!


最近のアメリカで興味深い形でのロックの聴かれ方がはじまってきています。それは、大人のリスナーがインディ・ロック的なものを発見しはじめたことです。


それまで、「大人が流行のポップ・ミュージックを聴く」となると、イメージとしては60〜70年代からのベテランの作品を聴くとか、AORのようなアダルト・コンテンポラリーを聴くとか、2000年代以降だったらノラ・ジョーンズやマイケル・ブーブレを聴くとか、そういうイメージでした。


ところが、この5年くらいでそのイメージが少しずつ変わって来ました。それは、アダルトなリスナー層が、インディ・ロック的なメディアで話題になるものに興味をもちはじめたことです。その傾向が目立ち始めたのは、2007年にエイミー・ワインハウスの世界ブレイクがあったあたりですね。あのあたりから、「インディ・ロック・メディアで評判のいいもの」が局部的に大人に刺さってメガヒットを有む傾向が出て来ます。最近のその最大の例はやはりアデルで、マムフォード&サンズやフローレンス&ザ・マシーン、そしてブラック・キーズあたりがこの流れに入って来ている、と言って過言じゃないと思います。そうじゃなかったら、発売タイミングをすぎて、あんなに長く売れないはずだし。


そして、グラミー賞効果も絶対あるんでしょうね。2011年にアーケイド・ファイアが最優秀アルバムを取ったあと、今年に入って、オブ・モンスターズ・アンド・メンみたいなフォロワーがウケはじめているし、マムフォードが今回のアルバムで一気に大ブレイクしたのも、同じ年のグラミーでボブ・ディランと共演したのも大きかっただろうしね。マムフォードがウケてなかったら、今年のルミニアーズの全米ブレイクもなかったことでしょう。


今、キッズがロックを聴くならば、こういう形で大人が発見したものに興味を持って手を伸ばすような状況ができてきたときだと思います。既にその前兆ならありますしね。
author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 11:23
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「洋楽が聴かれない」と嘆く前に(1)「初心者向け」をロックに求める時代ではない
どうも。


今日、全米チャートが更新されていなかったので、ネタを変えてお送りします。


ここ数日、facebookの方で気になった話題があり、僕も多少意見した問題があったので、ここでも紹介しておきたいと思います。


最近、ある音楽系のサイトでこんなことが話題となっておりました。



第49回:それでもやっぱり、邦楽は聴くけど洋楽は聴かないだなんてもったいない!


こんな感じですね。これが結構議論が熱くなっているようです。


本当は僕がそっちのサイトに飛んで意見するべきなのかもしれないですが、ここでも十分話せる議題だと思ったので、あえてここでしてみようかな、と思った次第です。


僕自身のことで言えば「洋楽を聴こう!」という、かけ声をあげてのキャンペーンみたいなものはそこまでやろうとは思ってません。それは、このブログをやっていること自体が、「洋楽・洋画・アメドラにもっと興味をもってほしい」という無言のアピールみたいなものだから。なので、このブログでアジテートすることは、同じことを2重に説明するみたいな感じにも思えて、あまり乗り気じゃなかったのもたしかです。


ただ、こんな風に「言わなきゃ伝わんない!」と煽ることの意味ももちろんあるので、僕からも、こういうことが熱く唱えられていることを知っていただきたいと思って、こうやって紹介した次第です。


詳しくはリンク先を読んでいただきたいのですが、かなり分量的に長いので要約すると、「最近、洋楽を聴く人が減った。以前は”ロックを聴く”という行為に洋楽を聴くのが不可欠だったのに」といった内容で、そんな「洋楽不毛」な状況の中、「入り口がない」といわれる洋楽にどうやったら入れるのか、という提言も行っている、というものです。


僕もこういう話は基本的にかなり好きなトピックなので、興味を持って読みましたが、それと同時に強い違和感も覚えたのはたしかです。


それは


今の「洋楽の入り口」ってロックじゃないといけないわけ?


この点に関しては正直ひっかかるんですよねえ〜。


これ、この上のコラムだけに限ったことじゃなく、よくこういうことをおっしゃる方がいらっしゃるんですけど、「最近の世界のロックのレベルが落ちたから、日本人が憧れなくなったから洋楽が弱くなったんだ」みたいな意見ですね。こういうことを言う人は90年代からいましたし、僕もある時期陥りかけた考え方でもあります。


しかし!


僕が30余年の洋楽ファン歴において、「なぜ洋楽を聴くようになったのか」というものをいろんな友人リスナーの例を見るにつけ、だいたい以下の2パターンに分かれるんですよね。


1.邦楽では味わえない、レベルの高い音楽が聴きたいから。

2.白人(もしくは黒人)のスターに憧れてるから。


だいたい、この2パターンからはじまります。僕の経験上、1のパターンは男性に目立ち、2のパターンは女性に目立つ傾向で、2の場合はファッション面も強めに含んだものとなります。


これ、一見、1のパターンの方が、音楽リスナー的にまじめに見えるんです。実際、音楽について上のような議題をはじめ、語りたがるのもこのタイプです。それに比べると、2のパターンの人の方が軽く見えて、すぐ洋楽聴かなくなりそうな印象も一瞬もたれがちなんです。実際、1のタイプの人は、2のタイプの人のことを考慮に入れるのを忘れがちでもあります。


なんですが


案外、2のパターンの人の方が、長く洋楽聴けてたりする場合があります。


なぜか。1のパターンの人の場合、たとえば日本から面白い音楽をやる人を見つけたりすると「すごい!日本からもついに世界的な存在が現れたか!もう洋楽ばかりに頼る時代じゃないぞ!」と、そちらの方向に突っ走ったり、ちょっと音楽の流行の傾向が自分の思い通りにならないと「最近の洋楽はつまらなくなったな」と意固地に自分の思い入れの強い頃の音楽にこだわって先に進めなくなる傾向が強いんですね。


逆に2のパターンの人の方が、邦楽に気が移る確率が1の人に比べてかなり少ないし、流行の変化にも難しく考えすぎないで柔軟に対応でき、リスニング歴自体が長持ちする人も結構いますね。ただ、こういう人の場合、理屈っぽくないせいであんまり自分の音楽の持論展開をするタイプじゃないので、「声が聞かれにくい」という事情はあります。


で、今現在の洋楽シーンで言うと


圧倒的に(2)のパターンのリスナーに有利にできてるんですよね。


たとえば、これは大昔のハリウッドの映画スターもそうだし、ビートルズとかクイーンの初期のファンにも顕著ですけど、「国境の向こうのアイドル」として海外エンタメに接する人って、日本には大昔から伝統的に存在するんですが、この需要は今も尽きてるとは思いません。特にブリトニーとかビヨンセ以降、現在のレディ・ガガやリアーナ、ケイティ・ペリーやテイラー・スウィフトを「女の子にとってのロールモデル」みたいにとらえてる女の子の層にはこの脈々とした流れを感じますね。最近、このテの良い意味でミーハーな「外国指向」の女の子が韓流に取られちゃってる観も否めませんが、いずれにせよ、こういうタイプの人たちにとって「洋楽への良い入り口がない」という理屈は全く通用しません。


むしろ、「今の洋楽は入り口みたいな音楽だらけだ」とさえ思います。特に90年代末期以降、それこそさっき言ったブリトニーやビヨンセから後のアメリカのポップ・ミュージックって「いかに10代にウケるか」で作られているし、「アメリカン・アイドル」みたいなオーディション番組も、ダウンロードもyoutubeも、その世代を刺激するものとして機能した側面も否めません。むしろ今、日本の洋楽界が問題とて悔やむべきは、「海外ポップ・セレブのファンの数を今現在の規模の数倍にできなかったこと」であり、洋楽ロックのファンの数を増やすことではないと思います。


そして、今の僕が住んでいるブラジルみたいな非英語圏の欧米の国にとっても「英語の音楽への入り口」はやはりこのテの音楽です。たいがい、ガガとかビヨンセとかテイラーとかリアーナです。ロックを入り口に英語圏の音楽に入っていく若年層の音楽リスナーなんて、非英語圏の欧米の国でも少ないのです。



「じゃあ、ロックはもう世界的に、マニアしか聴かない、売れない音楽になっちゃったのかよ」。そう思う方も少なくないと思います。この話の続きは、記事をまた改めて、この次の投稿で書こうと思います。
author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 06:58
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全米年間チャート(2)アルバム50
どうも。


昨日から見ていただいている方は、シングルの方に既に解説もつけてありますので、そちらの方もご覧になってくださいね。


では、2012年ビルボード、年間アルバム・チャート、行きましょう。



1.21/Adele
2.Christmas/Michael Buble
3.Take Care/Drake
4.Red/Taylor Swift
5.Up All Night/One Direction
6.Tailgates&Taglines/Luke Bryant
7.Babel/Mumford&Sons
8.Talk That Talk/Rihanna
9.Tuskegee/Lionel Richie
10.El Camino/Black Keys


「やはり」と言うべきか、アデルの「21」が2年連続で1位でしたね。これは、この10年を語るのに重要な作品になるでしょうね。


ブーブレのクリスマス・アルバム、そんなに長くチャートに入ってたのか。この人も「大人が一家に一枚」の人になってますな。


ドレイクもロングチャートの賜物ですね。逆にテイラーやマムフォードは秋からのリリースなのに、初動の売上の高さが考慮されて入ってますね。


ワン・ディレクションも今年の現象考えたら妥当な結果ですね。


うれしいのは10位のブラック・キーズ!遂に年間トップ10に入るまでの人気になったか!最近、インディ発のアーティストがビッグになるパターンって、いかにアダルト・リスナーの関心を引くかにあると思うんですけど、アデル、マムフォード、ブラック・キーズはまさにその典型。「ユース・カルチャーのリーダー」としてロックを聴く時代では残念ながら2012年の現在は動いていないようですね。そこを、エレクトロに飽きた若い子たちがロックをどう再発見して行くのか。今後ちょっと見物だと思ってます。


11.Believe/Justin Bieber
12.Own The Night/Lady Antebellum
13.Under The Misletoe/Justin Bieber
14.Blown Away/Carrie Underwood
15.Here And Now/Nickelback
16.19/Adele
17.Mylo Xyloto/Coldplay
18.Whitney:The Greatest Hits/Whitney Houston
19.My Kinda Party/Jason Aldean
20.Some Nights/fun.


ビーバーが11、13位で2枚ランクイン。1stほどのインパクトはないですが、そこそこ売れてることは示せましたね。


気になるのは6位のルーク・ブライアント共々、19位にジェイソン・アルディーンとカントリーの男性シンガーが入っていること。12位のレディ・アンテベラムも加えてトップ20に3組カントリーが入ってますね。最近のこれらのカントリー勢に言えることですけど、もう曲調は完全に70〜80sのアーシーなロックですね。ブライアン・アダムスとかと、もう聴後の印象が全然変わらないのね。こういうの、もちろんその当時のロックリスナーだった今の大人が聴いてるというのもあるんでしょうけど、結構若いキッズが「わかりやすいバンド編成の音楽」として聴いてる印象も、最近のアメリカの音楽番組でのパフォーマンス光景見てるとありますね。「インディ・ロックだと、お高くて手が出ない」みたいなティーンが案外手を伸ばしやすいというのは今のカントリーにあるんじゃないかな。


21.Overexposed/Maroon 5
22.Now 41/Various Artists
23.Cheif/Eric Church
24.Stronger/Kelly Underwood
25.Teenage Dream/Katy Perry
26.Pink Friday:Roman Reloeaded/Nicki Minaj
27.Making Mirrors/Gotye
28.Sorry For Party Rocking/LMFAO
29.Sigh No More/Mumford&Sons
30.Night Train/Jason Aldean


さっきのブロックで僕が言ったことが、ここでさらに濃くなってる気がします。


実は「若いキッズがカントリーを”バンド演奏によるわかりやすい音楽”として聴いている」という現象、実はここ2〜3年のブラジルでも起きてる現象なんですよね。最近のキッズ、カントリー(こちらブラジルでは”セルタネージョ”と呼んでますが)のバックグラウンドとか関係なしに、「曲のわかりやすさ」で選んでますって、絶対。


逆にインディ・ロックは「難しそう」と思って手が出しにくいものになって、さっきも言ったように「大人のリスナーにウケる」というフィルターを通したものしかウケないシステムになって来てると思いますね。


31.TM103:Hustlerz Ambition/Young Jeezy
32.Clear As Day/Scott McReery
33.Ceremonials/Florence&The Machine
34.My Life II..The Journey Continues/Mary J Blige
35.Uncaged/Zac Brown Band
36.Now 40/Various Artists
37.The Truth About Love/P!NK
38.The Band Perry/The Band Perry
39.The Carter IV/Lil Wayne
40.Living Things/Linkin Park


ここでも、アダルトにウケのいいインディの代表のフローレンスと、カントリーのザック・ブラウン・バンドとバンド・ペリーが入ってますね。こういうものの方がリンキン・パークのアルバムよりウケる時代になっちゃってますね。


41.Welcome To The Fishbowl/Kenny Chesney
42.Concerto:One Night In Central Park/Andrea Bocelli
43.Born And Raised/John Mayer
44.MDNA/Madonna
45.Speak Now/Taylor Swift
46.Hands All Over/Maroon 5
47.Four The Record/Miranda Lambert
48.Now 42/Various Artists
49.God Forgives,I Don't/Rick Ross
50.Wrecking Ball/Bruce Springsteen


ここまで見てわかるのは、いくら批評でものすごく絶賛されようが、フランク・オーシャンがTop50入りしてないことです。やっぱ、活字媒体の影響だけでアルバムの年間50位内に入るほどの影響力がないことが、このチャートを見るとハッキリとわかりますね。



そして、インディ界隈でどれだけ騒がれようが、まだテイム・インパーラやグリズリー・ベアみたいなアーティストもまだまだこの辺りに至るまではフランク・オーシャン以上に距離があります。インディ媒体での騒ぎだけだと、良くてまだ、瞬時の「トップ10入り前後」くらいが限界です。そういう風に客観的に認識する必要が今のロック・ファンには必要な気がしますね。特に日本のインディのロックファンのタイプにはピッチフォーク辺りを過大評価してる人をネットなんかでかなり目にしますしね。


¨まあ、とは言え、僕は上に書いたようなことをロック好きとして「良いサイン」として受け止めています。やっぱ、それまで、「バンド・サウンド的なもの」さえもチャートからほとんど失われたような状態があったことから比べると、いくら「年配のロックリスナー」や、「わかりやすいバンド・サウンドのカントリー」に引っ張られているとは言え、生身のバンド演奏の感触が求められはじめた実感は感じますからね。これが、向こう数年でどう変わっていくか。個人的にちょっと期待しているところはあります。
author:沢田太陽, category:全米チャート, 06:09
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