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最新全米映画興行成績&サンダンス映画祭のことなど
どうも。


ギルド・アワード系の結果が出ましたね。今年は「The Artist」が2勝に「The Help」が1勝。ただ、『The Help』は監督賞にノミネートされていない時点で作品賞としては弱いので、まず勝つことが考えられないことを考慮すると、この時点で「The Artist」のオスカー勝利は決まっちゃったかな、という観が否めないですね。もう少し「The Descendants」と「Hugo」に粘って欲しくはありましたけど。



では、火曜日恒例、全米映画興行成績、行きましょう(ポスターをクリックするとトレイラーが見れます)。


1(-)The Grey

 
2(1)Underworld Awakening
3(-)One For The Money


4(2)Red Tails
5(-)Man On A Ledge


6(4)Extremely Loud And Incredibly Close
7(4)Joyful Noise
8(16)The Descendants
9(5)Beauty And The Beast(3D)
10(6)Haywire



初登場で1位はリーアム・ニーソン主演のサスペンス「The Grey 」。これはアラスカの僻地に不時着した観測隊が、狼に襲われる中、どう生き延びるかを描いた過酷なサバイバル・ストーリー。ニーソンは前作もサスペンス「Unknown」だったので2作続けてのサスペンスでの全米興行成績No.1ということにもなります。興収は1900万ドルとあまり高くありません。


評判の方ですが、Metacriticで63点と悪くありません。オスカー映画を見飽きたあたりに見ると良いかもしれません。


2位に初登場は「One For The Money」。これはアメリカのミステリー&ロマンティック小説の世界で大ヒットしている女エージェント、ステファニー・プラム・シリーズの映画化。もうアメリカでは10冊以上のシリーズが出ている人気作なんですが、しかし、これ、問題は最近ロマンティック・コメディでずっと外し続けているキャサリン・ハイグルがこの役をやってしまったこと。厳しい「ミス・キャスト」との声に押しつぶされる形で、Metacriticでは20点、Rotten Tomatoesに関しては屈辱の3点!さすがにキャサリン、これは主演クラスからの降格が間近な感じです。「グレイズ・アナトミー」から頑張って這い上がって来た人だけに親近感はあるんですけどね。


5位はサム・ワーシントン主演の「Man On A Ledge」。これはワーシントン扮する無実の罪でとらわれた元警察官の逃走犯がニューヨークのど真ん中の高層ビルから飛び降り自殺をしようとするところからはじまるサスペンス。


これ、相手役がエリザベス・バンクスで他にもあの大きくなったビリー・エリオット、ジェイミー・ベルなど、僕好みの役者が出てる映画なんですけど、トレイラー見た時からあまり面白そうな感じがしなかったんで良い予感はなかったのですが、実際興収も評判もパッとせず、興収は1000万ドル前後のMetacritic採点は40点。「アバター」で当てたサム・ワーシントンですが、まだ彼の名前で客が呼べるまでには至っていないようです。



8位にはゴールデン・グローブ受賞効果で「The Descendants」が再度トップ10入り。この映画、昨日映画館でしっかり見て来ました。明後日あたりレヴューすると思います。



では、ここでこないだの日曜までやってました、インディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭についてお話ししようと思います。


サンダンスはもう20年程前からインディペンデント映画界の映画作家の登竜門的な存在で、ここ数年でも『オウレシャス』『ブルー・バレンタイン』『ウィンターズ・ボーン』などのヒットを生み出していますが、今年は果たしてどうか。


今年グランプリをとったのはこの映画でした。





「The Surrogate」という映画。この作品でヘレン・ハント復活ですよ!この人、90s後半にすごい人気があったのに、00sはどこかに雲隠れしてた印象があった(映画監督もやってましたけど、地味な映画だったな、あれ)んですが、50にして戻って来ました。力的にはローラ・ダーンとかジュリアン・ムーアに負けてない人なので頑張ってほしいですね。相手役はここ数年「サンダンス俳優」としての地位を固めつつあるジョン・ホークですね。この作品、来年の賞レースに絡んで来るか?


他には、個人的には以下の映画に期待です。




まずは「Parks And Recreation」に出演しているオーブリー・プラザが出演している青春ロード・コメディ・ムーヴィー「Safety Not Guranteed」。なぜかいつも顔が不機嫌なのに笑いの取れる不思議な女優さんなんですが、これもなんだか評判が良いっぽいですよ。個人的には先物買いしておきたいです。





そして、同じく「Parks And Recreation」組で、現在のコメディ映画のアクトレスとして不可欠な存在になりつつあるラシーダ・ジョーンズはアンディ・サンバーグとのロマンティック・コメディ「Celeste And Jesse Forever」。この映画、ラヴコメ・カップルとしてのケミストリーがうまいこと生まれてるようですよ。





そして「メランコリア」で復活したキルステン・ダンスト主演の「Bachelorette」。これ、なんとウィル・フェレルとアダム・マッケイのプロデュースによるコメディです!タイトルのイメージと女性ばかりという点で既に「Bridesmaids」の二番煎じっぽい印象もあるようですが、レポートからあがってるレヴューは悪くないようです。キルステンの脇を固めているのがリジー・カプランとアイラ・フィッシャーというのが効いてる上に、「Bridesmaids」で短時間ながらも強烈な印象を残したオーストラリアの秘密兵器コメディエンヌ、レベル・ウィルソンがフィーチャーされているのもデカいですね。


さあ、これらの中からヒットは生まれるでしょうか。


さて来週ですが、”ポスト・ハリー・ポッター”としてダニエル・ラドクリフが選んだ第1作映画が入ってくるでしょう。今日はその映画『The Woman In Black』でシメましょう。




author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 07:34
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ジャック・ホワイト ソロ・デビュー・シングル「Love Interruption」
 どうも。


とうとう動き出しましたね!




ジャック・ホワイト、ソロ・シングルが解禁になりましたね!タイトルは「Love Interruption」。いや〜、これはすっごく楽しみです!


まだ、貼付けできないみたいですので、youtubeのリンクを貼っておきましょう。




まだ、これだけで今後を判断するのは難しいですが、楽曲はメロディ、アレンジともに文句なしですね。今回はソロということでエレキギターをあえて封印してしまう可能性もありますが、それがなくてもソングライターとして、シンガーとして、そして唯一無二のアレンジ感覚を持つアーティストとして、才能をいかんなく発揮してくれると僕は信じてます。この曲、今日は何度も聴くことになりそうです。



ちなみにアルバムの発売は4/24。タイトルは「Blunderbuss」。楽しみです!



author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 06:26
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SAGアワード2012生ブログ
 どうも。


何の予告もなしにSAG(スクリーン・アクターズ・ギルド)アワードの授賞式の生ブログをします。ただ、そこまで大きなアワードではないので、オスカーとかゴールデン・グローブと比べるとゆるやかにやります。


いきなりジョン・クライアーがしゃべりはじめました。エミリー・ワトソンもブリティッシュ・アクセントで話してますね。「Glee」の黒人の女の子や「ビッグ・バン・セオリー」のジム・パーソンズなどが語ったあとミシェル・ウィリアムスがプレゼンター。


助演男優賞

クリストファー・プラマー(Beginners)


続いてジョージ・クルーニーがシェイリーン・ウッドリーを連れてステージに。「The Descendants」の紹介。


続いてドン・チードルがプレゼンター。


助演女優賞


オクタヴィア・スペンサー(The Help)


ノー・サプライズすぎで面白くない。ギルド系のアワードがオスカーの種明かししてるみたいで全然ドラマがないのがオスカーの視聴率低下の原因に明らかになってる。対策練った方が良いと思います。


ジュリアナ・マーグリースとブライアン・クランストンがプレゼンター。


男優賞(TVコメディ)

アレック・ボールドウィン(30Rock)


SAGでは6年連続受賞ですよ。すごい。


続いてカイル チャンドラーと隣の黒人女性は名前忘れちゃった。


女優賞(TVコメディ)

ベティ・ホワイト(Hot In Cleveland)


90歳祝いですね。90に見えないよ、元気良すぎ!


続いて夫婦登場!ケヴィン・ベーコンとキーラ・セジウィック。


キャスト(TVコメディ)


モダン・ファミリー


さっきまで先月買ったDVDをワイフと見てました。ルークとアレックスが成長してるは。


ケネス・ブラナーとグレン・クロースがプレゼンター。


女優賞(TV映画)

ケイト・ウィンスレット(Mildred Pierce)

エマ・ストーン、ヴァイオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサーが「ヘルプ」を紹介。


ゾーイ・ザルダナとアーミー・ハマーがプレゼンター。


男優賞(TV映画)

ポール・ジアマッティ(Too Big To Fail)


TV映画の男優・女優は共に欠席。


SAGの会長の挨拶語CMに。


クリスティン・ウィグ、マヤ・ルドルフ、メリッサ・マッカーシーが登場。この3人、また共演しないかな。トーク、すっごいおかしい。「Bridesmaids」の紹介。


往年のTVアクター、ディック・ヴァン・ダイクがステージに。メアリー・タイラー・ムーアの功労賞の紹介。いいね!アメリカ女性TVコメディの立役者ですよ!「メアリー・タイラー・ムーア・ショウ」のDVDはいつか絶対に欲しいものですので。


50年代のTVデビュー当時の映像はすごい貴重だなあ。60年代の「ディック・ヴァン・ダイク・ショウ」での奥さん役、これも貴重な映像。そして70年代の「メアリー・タイラー・ムーア・ショウ」!ロゴ、ファッション、世の変わり目の世相、全てが最高!最近「Hot In Clevemand」にゲスト出演してたのか!知らなかった。ベティ・ホワイトは「MTMS」での共演者だもんね。


そして本人登場。長いスタンディング・オベーション。なんかパッと見がジェーン・フォンダの今みたくなってますが、整形のし過ぎで顔が崩れてるのが残念。現在75歳か。でも、70歳台も昔に比べると随分洗練されたなあ。


ジュディ・グリアーとエド・ヘルムスがプレゼンター。


女優賞(TVドラマ)

ジェシカ・ラング(American Horror Story)

ゴールデン・グローブに次ぐ受賞。ベティ・デイヴィスの晩年みたいなキャリアですが、60代として見たらすごく奇麗ですよ。


「The Artist」の紹介のあとティナ・フェイとジョン・クラシンスキーがプレゼンター。


男優賞(TVドラマ)

スティーヴ・ブシェミ(Boardwalk Empire)


ライバル多い部門の中、ブシェミが取りましたね。


キャスト(TVドラマ)

ボードウォーク・エンパイア


まだ「ホームランド」がエントリーされる前だったからね。今のうちに勝っておく必要があるでしょうね。


オーウェン・ウィルソンとキャシー・ベイツが「Midnight In Paris」を紹介。


ナタリー・ポートマンがプレゼンター。


主演男優

ジャン・ドゥジャルダン(The Artist)


あ〜、クルーニー勝てなかったか。オスカーもこっちに流れちゃうかな〜。


続いてベン・キングスレーがプレゼンター。


主演女優

ヴァイオラ・デイヴィス(The Help)


今日初めて心から嬉しい瞬間!これ、取らなきゃウソだよ。シシリー・タイソンが客席で泣いてるよ。ゴールデン・グローブで「ヴァイオラ、ゴメンね」と言ったメリル・ストリープにもメッセージを送ってます。


キャスト

The Help


ギルド・アワードでの「The Artist」3冠を阻止しただけでも十分よくやったと思います。全部勝ったら面白くないもんね。多少は意外性がないとね。



author:沢田太陽, category:映画, 09:58
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最新全英チャート
どうも。

SAGアワードの傍ら、今日は更新してます。月曜恒例、全英チャート。


SINGLES


1(-)Twilight/Cover Drive
2(3)Titanium/David Guetta feat Sia
3(1)Domino/Jessie J
4(2)Mama Do The Hump/Rizzle Kicks
5(-)Wild Ones/Flo Rida feat SIA
6(4)Antidote/Swedish House Mafia
7(21)Somebody That I Used To Know/Gotye feat Kimbra
8(11)Stronger/Kelly Clarkson
9(5)Good Feeling/Flo Rida
10(13)International Love/Pittbull feat Chris Brown


1位は初登場でバルバドス島出身のダンス・グループ、カヴァー・ドライヴ。一応バンド編成っぽいですけどね。この人たちは去年デビューシングル出して、それも幸先よくトップ10に入って来てたので覚えてました。今年本格的にブレイクしそうですね。


5位初登場は、なぜイギリスでここまで人気のあるのか不明なフロー・ライダー.フィーチャリングにはデヴィッド・グエッタの曲でもフィーチャリングされていたオーストラリアの女性シンガー、SIAですね。短期間で2曲のトップ10入り。


7位のゴチエはオーストラリアのシンガーソングライターです。って僕、何年か前に取材してるは日本で!いつの間にこんなに出世を?


10位はピットブルのニュー・シングル。フィーチャリングはクリス・ブラウン。相変わらずどっちがフィーチャリングなのかわからないですね。


では、圏外に行きましょう。14位初登場のこの曲で。

 


ラナ・デル・レイの「Born To Die」。今、音楽雑誌は表紙連発状態でヒットはもう間違いないですが、ここに来て「サタディ・ナイト・ライヴ」でのパフォーマンスの不評が多々ってか、アルバム評は酷評が目立ちますね。別にこの人に非があるわけじゃなく、その前の異様なまでのハイプな盛り上がりが問題だったわけで。来週アルバムがチャートに入って来ますが、さてどうなるか。


ではアルバムに行きましょう。



ALBUMS


1(2)+/Ed Sheeran
2(3)Mylo Xyloto/Coldplay
3(1)21/Adele
4(5)Doo-Wops&Hooligans/Bruno Mars
5(9)Stereo Typical/Rizzle Kicks
6(-)Beyond The Sun/Chris Isaak
7(10)Who You Are/Jessie J
8(7)What Did You Expect From The Vaccines/The Vaccines
9(12)Noel Gallagher&The High Flying Birds
10(8)Ceremonials/Florence&The Machine


エド・シーランが遂に1位獲得です。聞いた話だと、日本で結構ウケてるんですって?


6位には1991年の「Wicked Game」のヒットで知られるクリス・アイザック。これはおそらく、最近彼がホストをつとめているTV番組「Chris Isaak Hour」の影響でしょうね。


圏外での初登場は19位にメタルコアのラム・オブ・ゴッドが入ってきています。


さきほども言いましたように、来週はラナ・デル・レイがアルバムで入ってきますが、SAGアワードに移らせてください。では!

author:沢田太陽, category:全英チャート, 09:39
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映画『別離(A Separation)感想』〜今年度アカデミー外国語映画賞受賞確実。文句なしの傑作!
どうも!


オスカーのノミネートの発表もあり、オスカー大好きのブラジルでは映画館がメチャクチャ込みはじめています。実は今日、その上位候補である「The Descendants」(邦題「ファミリー・トゥリー」)を見に行く予定だったのですが、上演30分前に着いたのになんと売り切れ!アレクサンダー・ペインなんて、すっごくインディ・イメージの強い人なのに!しょうがないので、日曜のチケットを予約して家路につきました。


そして、今日はこの映画のレヴュー、やりましょう。



 


『A Separation』。今年のアメリカの映画アワード・レースの外国語映画部門をダントツで独走中のイラン映画ですね。先日のゴールデン・グローブでも受賞しました。


去年のベルリン映画祭で金熊賞を取って以来無敵で、今回のオスカーでも外国語映画賞のみならず、外国映画なのに最優秀脚本賞にもノミネートされたほどですからね!Metacriticで94点、Rotten Tomatoesでは87人のレビュワー中、86人が「良い映画」と評価し、なんと99点をゲット!


そんなこともあり、先週末のブラジルでの公開タイミングでは、普段単館でしか公開されないアジアの映画であるにもかかわらずシネコン系にしっかり組み込まれた上に、土曜の夕方の会、売り切れですよ!しかも来てたのは、いかにも普段単館系に通ってそうな、ものすごくオシャレにキメた映画の趣味のうるさそうな、50代以上気取ったオジサンとオバサンばっか!日本の日比谷界隈の映画館を思い出すようでした。





では、あらすじに行きましょう。映画はまず、2人の夫婦が家庭裁判所で離婚の申請をしているところからはじまります。2人は妻がシミンで夫がナデルと言います。2人は比較的裕福な夫婦ではありましたが、シミンはイランの環境を嫌い国外での生活を望んでいました。プラス、ナデルにはアルツハイマーを患っている父親がいて、それもシミンには苦痛でした。シミンはなんちか




11歳になる娘のテメルを引き取って国外に出たかったのですが、結局それは裁判では認められず、結果、シミンは1人、母の住む実家に戻るだけでした。





シミンは、出て行く自分の代わりに、貧しい暮らしをしている信心深い女性ラジエを家政婦として雇わせ、ナデルの父の面倒をまかせます。


ラジエはまだ幼い自分の娘を傍らに置き、ナデルの父の面倒を、ナデルが仕事の勤務で留守にしている最中に見ることになりますが、その仕事は予想以上に難儀なものでした。トイレに自分で満足に行けないかと思ったら、勝手にフラッと外に出かけたり。それは、やや楽天的なところがあるナデルが知らないものでした。ラジエはこの仕事を続けたいとは思いませんでしたが、そして借金を踏み倒して訴えられ、期日までに払わないと監獄に入れられる夫のために働かざるを得ません。そんなラジエの唯一の幸せは、側にいる娘と、お腹に宿した赤ちゃんで、ナデルのアパートの周囲の人にもそのことを嬉しそうに話していました。




ある日、ラジエがふと目を盗んだ瞬間に、ナデルの父は、近くのキオスクに新聞を買いに出かけました。通りは人通りが多く、方向感覚の不安定な彼には非常に危険なものでした。ラジエはそんな彼の行方を必死になって追います。そして、何ごともありませんでした。




しかし、その次の日のこと。テメルが家に帰ると、ナデルの父が腕を点滴台に吊るされたまま、意識不明で倒れていました。直後にナデルも帰宅し、一家は大騒動になりますが、なんとか命を取り留めます。


そこに留守にしていたラジエが娘と共に帰って来ました。ナデルは激怒して「仕事もしないで父親になんてことしやがるんだ!」と言い、ラジエの言い分も聞こうとせず罵倒し、彼女を突き飛ばして家から追い出してしまいます。


そして


これが事件の発端でした。


数日後、ナデルは連絡を受け、ラジエが身ごもっていた子供を、ナデルが突き飛ばして、アパートの階段から落ちたせいで流産してしまったと主張したのです。ナデルがあわてて産婦人科に行くと、そこには




ラジエの夫で、異常に激情しやすい危険な夫、フジャトが待ち構え、ナデルに殴り掛かります。


このままナデルとフジャトは警察の事情聴取を受けることとなります。この場合、もしナデルがラジエの妊娠を知っていて流産で死なせた場合、懲役3年の実刑判決を受けることとなりますが、ナデルはそのことを知らなかったと言い張ることでなんとか罪を免れようとします。


しかし、どうしても納得が行かないフジャトは取り乱し、やがてそれはテメルの学校に出向いて「こいつのオヤジは人殺しだ」などとの脅迫まがいのことを行うようにもなります。





それを見かねたシミンはある行動に出ますが、それは…、


…と、ここまでにしておきましょう。



これですね、このあらすじだとわからないと思うので補足しておきますと


話の6〜7割は口論です(笑)。


まず、これがある意味すごい。しかもすごく早口でまくしたてるので、字幕追うのがものすごく大変でした。しかも、僕にとってはポルトガル語だったのでかなり大変でしたね。


ただ、この口論がそれぞれ本当に迫真の演技で、まずそれだけで惹き付けられます。


そして、この口論シーンとも大いに関わりますが、この映画


題材は誰の身にもいつ起こっておかしくない身近でリアルな題材なのに、しっかりプロフェッショナルな激として見れた。


これも僕にはすごくポイントが高いですね。「えっ、こんなシチュエーションで、こんなトラブルが起こることってあるの」というプロットながら、決して自分にも起こりえないわけではない感情移入しやすい題材を説得力持って演じられてるのが良いです。


そしてそれを、演技素人の人にやらせてないのがすごくいい。よく、このあたりのリアリティを追究するタイプの映画作家の人たちって、時によってリアリティを出そうとしすぎるがあまり素人を使ったり、ハンディ・カメラみたいなロウ・テクで撮影したりと、飾らない雰囲気を出そうとしすぎるがあまりにかえってスノビッシュに見える瞬間があったりするのも珍しくないんですが、そういう小賢しいことを考えずに、言葉がわからなくとも上手いと思える役者さんたちがそれぞれの感情をガチでぶつけあうのが良い。ここまで迫真に迫った激しいいがみあいは一体いつ以来だろう。


でも、何にも増して、このドラマが最も賞賛されるべきは


主要登場人物たちのエゴと良心のせめぎあい


もうズバリこれに尽きますね!結局みんな自分が可愛いんだけど、ある人は愛のために偽ることだってあるし、またある人は下心のあるエゴのために一見正しく見えることに動いたりもする。でも、そうした選択を誰も悪いとは決して責められないくらいに誰もが難しい決断を迫られているし、この光景を見ている自分でも結局こういうことをやってしまうだろう。
そして、そのことに貧富の違いなどもないんだ…。



…などと、そんな風に悩む大人たちの苦悩の横を、まだ人生経験が少なく、どんな色にも染まりうる人生の余白にあふれた子供たちの姿が「ここぞ」の場面で、サブリミナル的にかぶさってくることで余計に重くのしかかります。まるで『最初から間違ってる人間なんていないんだ』と僕らに問いかけて来るかのようです。



こうした登場人物たちの良心とエゴとのせめぎあいと争いを見ていると、改めて思い出されたのが『羅生門』をはじめとする黒澤明の初期の映画作品やキシエロフスキーの『デカローグ』あたり、また、黒澤映画に多大な影響を与えたドストエフスキーのロシア小説を思い出し、まるで心に楔でも打ち込まれたかのような、別に何も罪をおかしたわけでもないのに、不思議な罪悪感を自分の中に覚えるかのような、そんな気分になります。そこまで自身の心にのしかかって来るタイプの映画は世界広しと言えども、1年の間でそんなに簡単に見つかるわけではないと思います。


…と、こうした文学性さえ高いストーリーであるが故に、外国作品にもかかわらずオスカーの脚本賞にノミネートされるのも納得なんですが、この脚本にはもうひとつの秘訣があります。それは


巧みな編集


この映画、実は要所となるところを絶妙にかつ自然に映るように編集でカットしてるんです。しかももっとも大事なところを数カ所!


しかもそれは、僕の書いた上のあらすじの中に実はあります。さあ、それは一体なんでしょう?これ、まるで、それ以前の文脈に巧妙に隠された指示語の意味を答える大学入試の国語のテストのような醍醐味さえあります(笑)。プロットがそこまで複雑なわけでもないんですけど、それ以前に、口論や登場人物への感情移入に気を取られているうちに、その部分のプロットラインへの注意が一瞬甘くなるうちに仕掛けたものでもありますしね。そう言う意味でもこれはものすごく緻密に計算されたプロットだと思います。


今回、この映画の監督と脚本を手がけたのはこの人です。




アスガー・ファルハーディ。顔は老けてますが、現在まだ39歳のイラン映画の期待の俊英です。イラン映画は90年代にアッバス・キアロスタミという巨匠を生んで以来、現在の非英米の映画界では韓国やスペイン、メキシコに次ぐくらいの注目の国です。キアロスタミの後にも『カンダハール』のモフセン・マフマルバフや『チャドルと生きる』のジャハール・パナヒ(この人は反政府活動でイラン政府に拘束され、世界の映画界が抗議して救われた話も有名)といった先達たちの次の世代にあたる人とでも言いましょうか。そう考えると、イランでは良い映画の系譜が出来ているんでしょうね。





今回のこの映画で彼は世界中の映画賞を総ナメにしていますが、これは娘と写った貴重な写真です。そしてよく見てください。この娘さん、この映画で主人公2人の娘役のテメルでもあります!そういうこともあり、ファルハーディには二重にうれしいことかもしれません。


この映画、日本でも4月頃に公開されるようですが、僕の勘だと


来年の今頃に発表されるキネ旬ベストテンの1位狙えると思います!


なんかこういう、普遍的な文学性を持った作品が英語圏以外から出て来る感じって、いかにもキネ旬好みではないかと思います。あのキネ旬ベストテンって、毎年のように韓国映画とクリント・イーストウッドばかり選ぶ印象があって、「ホントかよ」と思うことが個人的に多い(でも、韓国映画に関しては僕個人的に好きな作品も結構あります)んですけど、これは韓国映画からよほど強力なものが出て来ない限りは勝てるんじゃないかな。それくらい、文句のない傑作だと個人的には思います。









author:沢田太陽, category:映画, 09:22
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明日あたりから映画評続きます!
 どうも!


本当は今日、映画評を更新しようかと思ったのですが、すごく疲れてて眠たいのでちょっと今日はお休みします。


ただ、映画のレヴューで書きたいのがこの週末見る分含めて3つはあるし、全部映画賞絡みの楽しみな作品なので、ご期待ください。


では、また明日。
author:沢田太陽, category:-, 11:32
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