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今年も半年が過ぎた
 どうも。



気がつけば今年も折り返し地点ですね。とは言え、昨年に引き続き、僕としてはそんなに早く過ぎ去った気はあまりしません。30代の後半はちょうど1年が今の半年くらいに感じたものでしたが。これが僕の年齢のせいなのか、ブラジルのせいなのかはよくわからないのですが。


…ということで”上半期ベスト”みたいなものを選ぶタイミングではあるんですけど、エンタメ的には正直あまり意味がないんですよね、上半期って。たとえばTVだと基本9月更新だし、映画だとやっぱアワードシーズンがはじまる秋口くらいから面白くなるし。そして、アメリカとの公開時期のズレもあるので、その基準のズレもなんかイヤというか。



そういうわけで、上半期のランクがつけれるとなるとせいぜい音楽なんですけど、こちらも”アルバム通して聴くリスニング”が年々億劫にはなって来てますね。やっぱ昨今の傾向で”細切れにたくさん聴く”ことに慣れてしまったからなのかな。


で、それに加えて、今年の場合、最初の3ヶ月くらいがすごくおとなしかったですしね、音楽。ここ数ヶ月くらいでようやく面白くなって来たというか。


…ということで、今年半年で気になったアルバム、あげておきます。まだ、アルバム全体でじっくり聴けてないので曲の印象でのチョイスもありますが、個人的に「あっ、これは2011年の顔だ!」と思ったところをあげると、こんな感じでしょうか。




まずは、このボン・イヴェールの2ndは仰天ものでしたね!後年まで見て”名作”に残して良いと思います。この人に関して言うと、もう”シンガーソングライター”の域、超えちゃってます。歌詞のスタイリッシュな物語性といい、クラシックのフランス印象主義みたいに聞こえる瞬間さえあるメロディといい。特に今回はアレンジに広がりがある分余計にそう感じてしまいます。スフィアン・スティーヴンスやルーファス・ウェインライトという素晴らしき才人でさえもどうしても出し得なかった大衆性まで何気にあるのもすごいです。





タイラー・ザ・クリエイター、もしくはOFWGKTAは、90年代前半の、僕がヒップホップのCDを毎週のように買ってた時代を思い起こさせます。ひとつのローカル・シーンで友人同士がレコード業界の大物の力を借りずに友情とDIYの精神だけでのしあがっていくあの感じ…。しかもそれでいて、ここ10年くらいのオルタナティヴ・ヒップにあった「気持ちはわかるけど、理屈くさすぎてそれじゃ踊れねえよ!」な感じもなく、良い意味での無邪気さとユーモアがあるのもすごく好きですね。





アークティックはすごく今作で見直しました。これまで、才能も評価出来るし好きな曲もたくさんあったんだけど、どうもかわいげのないクールな態度だけがひっかかっていて、前作はその頭でっかちな部分がすごく全面に出てて敬遠しちゃったんですけど、今回は前作の生煮え状態をちゃんと糧に成長した姿を見せ、加えてアレックスのソングライターとしての素材の高さを改めて証明した。加えて「ギターでガツンとカッコよく聴かせるバンドがなくちゃダメなんだ!」という、シーンにおけるロックの存在意義の主張も熱くして来た感じもするしね。こういうガッツのあるとこ、見てみたかったのですよ。





最近の踊れるバンドの中じゃ、そのきらびやかさとメロディ・センスの良さという点でフレンドリー・ファイアーズ、ダントツですね。グルーヴに乗らせる曲作らなきゃいけない立場にして、あれだけ頭に残るメロディ書けるのは大したものです。最近「今の時代のケミカル・ブラザーズになりたい」と言ってたらしいですが、目指すところがわかりやすくていいし、その通りのベクトルのまま進んでる気がします。





で、もう1枚。これ、最初、そんなに気に留めてなかったんですけど、曲が頭の中で回るんですよね、このバンド。何の変哲もないと言えばないんですけど、この人たちの場合、曲の尾ひれらしきものが全くと言っていいほどないために、かえって覚えやすいんですよね。加えて、彼らのようなロックンロールをやるバンドが極端にいなくなったときに、まるで「俺たちのロックンロールはどうしちまったんだ!」と10年前のBRMCみたいなタイミングで希少価値を持って出て来たのも良い。最近のシーンに物足りなさを感じてるロック野郎の渇望感を刺激する爽快さも良いと思います。



…と、こんな感じですかね。あと、気になったところでいうと


アデル…前作のアダルト・コンテンポラリーっぽい甘さがなくなって良くなったと思います。売れそうになったときに逆に締めていったのが大衆的にもクールに見えた理由でしょう。ポール・エプワース、うまい導き方したと思います。


フー・ファイターズ…3rdアルバム以来の傑作だと思います。ここ数作で目立った大仰さがスリムに絞れて、ソリッドな中で熱くロック出来てるのが、音圧とこけおどしだけの形式的なラウド・ロック・バンドやポーザーっぽいへなちょこなインディ・バンドよりは全然好感持てました。


レディオヘッド…良い作品だと思うんですけど、前作ほど賞味期限ないなあ、やっぱ…。


ジェイムス・ブレイク…「Limit To Your Love」の時点では「2011年最高!」とさえ思ったし、曲だけで言えばあれが今年のベストなんですけど、アルバムがほとんどあれと同じような曲だったのが盛り上げを下げちゃった観が…。素材として今年最大の新人だったのは間違いないんですけど、その”予感”のデカさだけを過剰に感じさせるだけになっちゃってた観も否めないかもしれないなあ…。


TVオン・ザ・レディオ…過去3作どれも最高だったんですけど、この人たちの場合、逆に「頭でっかち」な感じが薄れちゃうとダメかなあ…。曲がポップにゆるくなると、あまりにもピーター・ゲイブリエルっぽくなることも判明。


Cults…音的にはとてもいいです。でも、去年のベスト・コーストあたりから顕著な「クール・ガール・ネクスト・ドア」を愛でるような感覚、僕はどうしても好きになれません。マイブラとかロネッツ聴いてるってだけで、そんなにカッコつけなくても…。存在感、ビシッと見せろよ!


フリート・フォクシーズ…良いんですけど、ボン・イヴェールにオイシイとこ持って行かれちゃったかなあ…。曲が”想定内”の域を思ったほど出なかったこともあるんですが。


レディ・ガガ…賛否割れてるっぽいけど、僕は嫌いじゃないです。短い制作スパンではちゃんと作ってる方ではないかと。ただ、シングルとしてのインパクトのある曲はあんまりなかったので、もっと「Just Dance」「Bad Romance」級のベタい曲がないと人は「ああ、ガガ、今回インパクトないじゃん」と思ってしまうのかも。


ストロークス…何曲かは最高なんですけど、いろんなことやろうとしすぎて、とっちらかってしまいましたね。もっと邪念抜きにロックンロールに徹してたら、アークティックやヴァクシーンズさえも上回ってウケてたのでは…。



…ってな感じです。まあ、僕の趣味で語ってしまってますが。「2011年は地味かなあ〜」と思わせつつ、案外「おっ!」というのはあった半年かもしれないです。


author:沢田太陽, category:個人話, 11:45
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SWUフェスふたたび…だけど…う〜ん…
 どうも。


今日はある時間帯、ずっとネットがつながらなくて更新時間が就寝前になってしまいました。


今日はある意味すごく楽しみにしていた日でした。昨年、オーガナイズの最高なマズさにも関わらず、結果的に15万人動員した(一応)ブラジル最大のロック・フェスティバル、SWUフェスティバルの第1弾の発表の日でした。


先日もお伝えしたように、ストロークス&ビーディ・アイの組み合わせゆえに、楽しみにしていいたプラネタ・テハがまさかの半日ソールドアウトだったがゆえに期待は高かったのですが、第1弾発表はこんな感じでした。






…てな感じですが


う〜ん、微妙…。


ピーター・ゲイブリエルだけちょっと見たい気はするんですが、後はなんか、スケジュールの空いてた人を抑えた感じがして、どういうフェスにしたいのかがよく見えないんですよね〜。


まあ、噂の段階だと、ボブ・ディラン、MGMT、サウンドガーデン、ソニック・ユースはかなり有力に来る噂はあるんですけどね。で、今年は昨年1日におけるライヴの本数がやたら少なかったアクトの数も一応70は用意出来る(でも、フジ、サマソニに比べると圧倒的に少ないけどね)そうなので、後続の発表に期待は一応しますが。


…う〜ん、でも、今年はぶっちゃけ”フェスなしイヤー”の心の準備はする必要はあるかもしれません。
author:沢田太陽, category:ブラジル, 11:24
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最新全米映画興行成績
どうも。



では、早速ではありますが、火曜日恒例、全米映画興行成績、行きましょう(ポスターをクリックするとトレイラーが見れます)。 



1(-)Cars 2


2(-)Bad Teacher




3(1)Green Lantern
4(2)Super 8
5(3)Mr.Popper's Penguins
6(4)X Men:First Class
7(5)The Hangover Part 2
8(7)Bridesmaids
9(8)Pirates Of The Caribbean:On Stranger Tide
10(6)Kung-Fu Panda 2


1位を獲得したのは予想通り、ピクサーの今年の最新作「カーズ2」。やはりピクサー・ブランドということもありまして興行の数字自体は良く、6600万ドルを記録しています。


しかし


ここ数年、ピクサー映画と言えば、必ずその年の年間ベストの1作に入ってくるほど、Metacriticでも常時90点前後の高得点を記録するのが当たり前の感じだったわけですが、かねてから「ピクサー最弱」のレッテルも貼られがちだったこの「カーズ」。その低評価は今回覆るどころか一層強まってしまったようでして、Metacritic採点はなんと58点。これまで一度も70点を切ったことのないピクサー作品としてはかなりショックの大きな点数となってしまいました。


いや、もっと言うと、Rottentomatoesに至っては、それより低い33点。通常、Metacriticはエラい評論家40人くらいが出した点数の平均、Rottentomatoesは一般の映画マニアの意見を加え100票くらいの母体で換算した得点なんですね。なので、Rottentomatoesの方が一般評判が良ければ良いほど点数が高くなり、悪ければ悪いほど低くなるんですけど、これから判断するに、どうやら今作、否定的な評価の方が一般的なようです。批評家の中には「やっぱピクサーだから」と高得点をつけた人も結構いるようなんですが、Metacriticの点数のアップはそうした人たちの好意で上がっている観がちょっと否めないですね。



…で、実はこの映画、僕ももう見てます。まあ、上の書き方のような歯切れの悪い言い方はせざるはえない感じでは正直言ってあります。



で、2位ではあったものの、3600万ドルとかなり高い数字での初登場となったのはキャメロン・ディアズ主演の「Bad Teacher」。これはキャメロン・ディアズ扮する不良先生を中心としたコメディ。ハートスロブの新米先生の役でジャスティン・ティンバーレイク、そして、キャメロンといがみあいながらも…みたいな間柄の体育教師役にジェイソン・シーゲルと、配役的には僕はかなり好みな感じです。



ただ、基本的には中身自体は薄そうなドタバタ・コメディゆえMetacritic採点は47点と良くはありません。


しかし


驚くことにRottentomatoesでの採点は44点と、普通、Metacriticから考えられるRottentomatoesの点数(大体30点前後)からすると案外悪くないこと、そして、「カーズ2」より10数点よいというのはちょっとビックリしましたね!これ、つまり、「評価自体は半々」くらいで、悪い点数をつける人に足を引っ張られた、ということなんでしょう。そんなに期待してなかった映画ですが、他に候補がなければ見に行っても良いような気になって来ました。ちなみに、この映画、日本での公開の方がブラジルよりは2週間くらい先でして、邦題は「イケない先生」とのこと。8/6公開だそうです。



さて来週ですが、この夏話題の作品のひとつ「トランスフォーマー3」が登場します。前作は興行で大成功を収めたものの評判は最悪で、ラジーのノミネート常連だったあのマイケル・ベイに遂に大量にラジーをもたらした作品として知られてしまいました。その後もメーガン・フォックスの降板トラブルなど踏んだり蹴ったりな話題も多かったものですが今回はどうでしょう。僕が事前に耳にする感じでは、前作ほど悪い話は耳にしてませんが。では、そのトレイラーでシメましょう。


 


author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 08:05
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最新全英チャート
どうも。


 


ちょうど今週はグラストンベリー・フェスティバルでしたね。今年は初日がU2、2日目がコールドプレイ、3日目がビヨンセというヘッドライナーの組み合わせでしたね。名前的にはかなりのビッグ・フェスな感じがしますね。今、大きいムーヴメントみたいなものが見えにくい時期はこういう感じで乗り切った方がいいような気はします。


それにしてもU2、「Stay(Far Away,So Close)」なんてやってんだ〜。いいなあ〜。これ、昔っからすごい好きな曲なんだよなあ。こないだエルヴィス・コステロがホストをつとめるHBOの音楽特番でもボノとエッジがまさにこのヴァージョンでこの曲やってて「あ〜、ええわ〜」って感じで聞き惚れてたばっかりだったんですよね〜。特に3:40〜3:50あたりは今聴いてもゾクッとするものです。


では、そんな感じで今週も行きましょう。月曜恒例、全英チャート。
 


SINGLES

1(-)Don't Wanna Go Home/Jason Derulo
2(1)Changed The Way You Kiss Me/Example
3(2)Bounce/Calvin Harris feat Kelis
4(4)Give Me Everything/Pitbull/AfroJack/Ne-Yo
5(3)The A Team/Ed Sheeran
6(7)Mr.Saxobeat/Alexandra Stan
7(-)Badman Riddim(Jump)/Vato Gonzalez/Foreign Beggars
8(16)The Edge Of Glory/Lady Gaga
9(6)Right There/Nicole Sherzinger
10(8)I Need A Doctor/Aloe Blacc


1位となったのは、あの「Just Dance」に酷似したことで有名な「イーン・マ〜イ・ヘーッド」のヒットでお馴染みジェイソン・デルーロ。ニュー・アルバムからの先行シングルが幸先よく初登場でNo.1。この曲はあの「デーオ、デ、エ、エ、オ」でお馴染みの「バナナ・ボート」を下敷きにした曲。これ、J.Loの「On The Floor」が「ランバダ」を下敷きにしたのと戦略的には非常に似てますね。これ、2011年のプチ・トレンドか?


そして7位には、これどうやらオランダのDjの曲のようですね。ヴァト・ゴンザレス。フィーチャリングのフォリン・ベガーズというのはグライム系のヒップホップ・グループなんだそうです。


では、圏外行きましょう。今週は51位初登場のこの曲で。

 


Hard-Fi、4年ぶりの新作からのニュー・シングルですね、「Good For Nothing」。この人たちって、2005年のバンドブームの時の波にうまく乗って売れて、2007年の前作もその勢いのまま全英1位になってたりしてましたが、それがどれくらいアーティスト・パワーでヒットしているのか、当時からよくわからなかった人たちですからね。この4年の間にロックがすっかりパワーダウンしたこのご時世でどこまで奮闘していくか。それには初登場がこの順位というのはちょっと幸先悪い気がしますけどね。さあ、どうでしょう。


では、アルバムに行きましょう。


ALBUMS

1(3)Born This Way/Lady Gaga
2(2)21/Adele
3(1)Progress/Take That
4(-)Bon Iver/Bon Iver
5(5)19/Adele
6(4)Suck It And See/Arctic Monkeys
7(8)Deleted Scenes From The Room/Caro Emerald
8(11)Doo-Wops&Hooligans/Bruno Mars
9(15)Loud/Rihanna
10(7)Hell-The Sequel/Bad Meets Evil


ガガ、1位奪還です。


そして4位に初登場は話題のシンガーソングライター的バンド・ユニット、ジャスティン・バーノンことボン・イヴェールの2ndアルバム。大絶賛レヴューの数々に押され、この高順位での初登場となりました。

僕もyoutubeで何曲か聴いて、いてもたってもいられなくなっています。こっちではフィジカルで売ってないので、itunesで買ってしまうか、amazonで通販で買うか、すごく迷ってます。すぐ聴きたいのでitunesで欲しい気はするんですが、絶対あとでフィジカルで改めて買いそうな気がするんだよなあ〜。このアルバムに関してはすごく話したい気でいます。


あと圏外では”フィーチャリング・ラテン・デュード”なピットブルが18位。やっぱアーティスト・パワーまではないのかな。そして20位には、バリー・マニロウの業界批判作の「15Minutes」が話題を呼ぶ形で結構上位に来ましたね。37位にはパトリック・ウルフが初登場してきています。


さて来週ですが、ビヨンセのニュー・アルバム「4」が入ってきます。今回のアルバムは彼女自身が「アデルとフローレンスに刺激された」と語るほど、かなりの意欲作になっているっぽいですね。僕がかじった程度でもなんとなくそれは伝わってきます。楽しみですね。では、その先行シングルとなった「Run The World」でシメましょう。


 

author:沢田太陽, category:全英チャート, 04:33
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映画「ミッドナイト・イン・パリ(Midnight In Paris)」感想〜「ウディ・アレン全盛期の未発表脚本」と言っても信じられそう
どうも。


今日はこの映画のレヴュー行きましょう。






ウディ・アレンの最新作「Midnight In Paris」です。


この映画、現在アメリカでもトップ10入りしている人気作だし、ウディ・アレンの作品では、彼の最大の興行成功作である1986年の「ハンナとその姉妹」をも抜きそうだという話なんですね。


それはどうやらブラジルでもそうらしいですね。この人、ブラジルだと、基本公開作がトップ10いつも入るくらい、おそらくアメリカ本国より映画ファンの人気が高い(これ、ヨーロッパ諸国もそうらしいですね)んですが、それでも既にブラジルにおける彼の映画の興収で一番の入りになってるらしいです。


僕は先日の水曜の晩に見に行ったのですが、平日の夜なのに結構満員でしたもんね。特に中年以上のカップルがすごく多かったですね。なんか僕がその昔、日比谷のシネ・シャンテあたりに彼の映画を見に行ったときのことを思い出しました。


で、今回の映画、戦略なのか


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この写真が宣伝ポスターに使われ、そのせいもあってカップルが本当に多いんですけど


このイメージで期待されがちなものと実際はかなり違いますのでご注意を!


では、あらすじに行きましょう。はじめに断っておきますが、話の簡便上、前後関係を若干いじってるのでご了承ください。



ストーリーはまさに上の、主人公ギル(オーウェン・ウィルソン)と、そのカノジョ、イネス(レイチェル・マクアダムス)の仲睦まじいところからはじまります。婚約中の2人は、仕事の関係上パリにいるイネスの両親に会いに行っています。


ただ、ギルとイネスは性格は正反対。純文学小説家になる夢を持つハリウッドの脚本家のギルに対し、イネスはとことん現実主義者。そして


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イネスの父親はギルが嫌う共和党支持者で、ギルのことを「ロシア野郎」呼ばわりすることさえあります。そして母親は金に糸目をつけない浪費癖あり。そして


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イネスもパリで偶然再会した大学教授の友人ポール(マイケル・シーン)の知的ぶりを誇らしげに示した話術にすっかり魅せられます。そしてそれは、大袈裟な言葉で適当なことを言っているようにしか聞こえないギルには全く面白くなく



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やがて2人の間に空虚な空気が流れます。


イネスは不機嫌なギルをおいてポール夫婦と出かける夜を過ごしますが、ある真夜中、ギルが道に迷っていると


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そこに、何故か現在のものとは思えない100年近く前の車が通りかかり、その車に乗って辿り着いた先には


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なんと、スコット・フィッツジェラルドやヘミングウェイといった、ギルが心の底から憧れる「ローリング20s」こと、1920年代の作家が存在したのでした!アメリカ文学を築いたと言っても過言ではない彼らは当時物質文明に溺れるアメリカを後ににパリに理想を求めやってきていたのでした。そして、そんなパリこそが、ギルがもっとも憧れるものでもありました。


ギルはまるで子供の頃のヒーローに出会ったかのように興奮し、彼らと文学論をかわし、自作の小説を見せようと心に決めます。


翌朝、ギルは興奮してイネスに昨晩のことを話します。彼はその晩、車と出会った地点にイネスを連れて行きますが、彼女の前では結局なにも起きず。しかし、ギルが意気消沈してると、そこに昨晩のように車がやってきます。そして、それは来る日も来る日も起こり


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ギルの出会う人たちもエスカレートしていきます。コール・ポーター、ジェセフィン・ベイカー、TSエリオット。そしてピカソにダリ(写真上)にルイス・ブニュエルに…。そう。当時パリは文学、絵画、音楽、映画の大物たちが続々と理想を求めてやって来るエルドラドのような芸術の街だったのです。


ギルは夢のような世界にのめりこり、そして


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かのピカソやモディリアーニと浮き名を流したというパリジェンヌ、アドリアナ(マリオン・コティヤール)と恋に落ちます。ギルは自分の求めていたものを見つけたようで有頂天になりますが、その一方で、毎夜不審な行動を取るギルにイネスの父親は疑念を抱くようになり…


…と、ここまでにしておきましょう。



まず、結論から言いますが、この映画


ウディ・アレンでしか描け得ない、彼本来の”あるべき”映画です!


いや〜、彼がここまで、自分のトレードマークの数々を露にした作品を撮ったのっていつ以来でしょうね。彼は70年代以来、毎年のように新作を発表し続けていますが、いわゆる”代表作”と呼ばれるものが揃っているのは1970年代後半から80年代いっぱいにかけて。それらの作品群で顕著だった特徴が、この作品では次々とモチーフになって現れて来ます。


その特徴をかいつまんで言うと以下のような感じですね。


1.知ったかぶりをする嫌みなインテリ人と、それにクラッと来るヒロインが登場する。


ウディ・アレンって、自分も明らかにインテリ層に属する人なのに、ひたすらこういうタイプの知人を毛嫌いしますね。特に、歴史的名作を作り上げた作者をひたすら神格化し大袈裟に美化するようなことを言うタイプをとにかく嫌う傾向が強いですね。このタイプは「アニー・ホール」、「マンハッタン」、そして「重罪と軽罪」に出て来ますね。そして、そういう男性に惹かれる、本当は自分がモノにしたい女性もよく出て来ます。それは彼のかつての恋人のダイアン・キートンが演じることが多かったものですが、今回はそれをレイチェル・マクアダムスが演じております。アレンはダイアンを称して「映画史上でも屈指のコメディエンヌの才能を持った人」と今日でも絶賛していますが、そんな昔の彼女がやってたような役回りをつとめるというのは、僕のレイチェルに対してのひいきめが明らかにあるとは言え(笑)、やっぱり素敵なことだと思います。


2.1920〜30年代についての強い憧れ


これについては全盛期以前の70sの初頭から顕著ですね。コール・ポーターの音楽に関しては「誰でも知ってる〜セックスについて教えましょう」(題が長過ぎるので割愛します、笑)からそうだったし、80年代の全盛期にも「カメレオンマン(Zelig)」「カイロの紫のバラ」はまさにその時代に主題を置いた作品だったし、それから少し後の評判のいい「ブロードウェイと銃弾」や「ギター弾きの恋」もそう。1935年生まれのアレンにとって、自分が体験しそこなった、もしくは、リアルタイムの記憶に残しておくにはあまりにも若過ぎた、20世紀カルチャー的に重要なこの時代への憧れって尽きることがないんでしょうね。それは今作でも変わらないようですが、しかし同時に、そういう自分の傾向に対しある種の結論をうまく導いているところも今作の良さでもあります。


3.なにげにファンタジー好き


本来起こりえない夢みたいなことが起こってしまう。この設定もこの人好きですね。今作はさしずめ「カイロの紫のバラ」の男版(ロマンスがあるところまで含めて考えて)な趣きですが、その傾向は、監督作でなく脚本&主演ものですが、70sの「ボギー!俺も男だ」のハンフリー・ボガードの亡霊のときから、これも変わってないですね。


4.なんだかんだで楽天的な結末


これは比較的どのウディ・アレン映画にも顕著なんですが、劇中散々クヨクヨしてるくせにラストに微笑ましい楽天性があるのもアレン映画。それは今回もそうですが、なんか「(500)日のサマー」にそのエンディングをまんま持って行かれちゃった観を彼も感じたのか、あえてその典型例に近い終わり方を今回の映画、してます。


こういうトレードマーク的な要素が並んだものって、たとえばそれがある程度続いたあとに出してしまうと「マンネリ」やら「芸がない」と批判される対象にもなるんですけど、逆に、いったん離れて久しくなってしまうと逆に恋しくなるもの。今作のウケがいいのって、そういうファンの渇望感を刺激した側面がすごく強かったような気がしますね。音楽にたとえて言うなら、ボン・ジョヴィが「It's My Life」出したときの反響のデカさとか、ああいうのにすごく似てるような気がします。


そして今回、なんと言っても大きかったのが




やっぱオーウェン・ウィルソンの演技あってのものでしょう!
今回のオーウェン、ウディ・アレンの物真似としてはあまりに完璧過ぎです!


いや〜、これはビックリでしたね〜。猫背のまま身振り手振りでまくしたててしゃべる感じから、興奮しすぎたり都合が悪くなるとどもる癖とか、まんまウディ・アレンでしたから。目つぶって聞いたら、ほとんど一緒に聞こえるほどでした。この映画、仮にもし20年くらい前に作られていたら確実にウディ・アレン本人が演じていた役だと思うのですが、オーウェンもそれを強く自覚していたせいなのか、それともアレン映画に出たくて仕方がなかった夢でも叶ったせいなのか、完全にアレン本人の分身になり切ろうとしてましたね。



で、逆に、すごくもったいない気もしてきましたね。これ、もしアレン本人がオーウェンにここまで彼にソックリな演技が出来ることを知っていたならば、少なくともあと1〜2本は彼を主役にした映画を作っていただろうから。ここ数年、自分が年を取り過ぎていることを自覚しているせいからなのか、滅多に演技をしなくなった彼ですが、そのせいで、昔みたいなタイプの作品を取れなくなっていたこともたしか。ここ10数年の彼に一番必要だった役者。それが本作で、まるでパズルのピースがハマったかのように見つかったのが本作だったのでは、とつくづく思います。



いや〜、素晴らしかった。ゴールデン・グローブのコメディ/ミュージカル部門の主演男優賞にノミネートしてもいいくらいの見事な出来でしたね!


そして、アレン自身も「自分の分身を演じられる役者」に自覚的になってきたのか、ちょうど撮影がスタートする頃の次作もそれを念頭において作っているようですね。なんたって主役は




ジェシー・アイゼンバーグですからね。ユダヤ人でナードで早口。これにはアレン自身が「まるで自分だ」と実際に認めたほどで、そのせいか、彼本人が久々に出演もするそうですからね。加えてエレン・ペイジも出演するそうで!最近のギーク青春コメディもの、アレンも好みなようで嬉しいです。



で、この「Midnight In Paris」ですが、日本公開に関して言うと、前々作の「人生万歳!」昨年末に出たばかりな状態なので、もう少しかかりそうな気はしますね。彼の映画の場合、「日本公開なし」という状況はコアファンの存在がある限りまずは考えにくいので、前作の「You Wll Meet A Tall Dark Stranger」の存在を無視していきなり公開というのはちょっと考えにくいんですよね。でも、ここは久々の大ヒット作かつ代表作に近い評判も取った作品なので、多少融通を利かせても悪くはないと思います。
author:沢田太陽, category:映画, 05:06
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そして2年が経った…
 どうも。


今週はどうも悲しいニュースの多い週でしたね。Eストリート・バンドのサックス奏者クラレンス・クレモンスが亡くなったことは既にお伝えしてますが、そのあとも「Jackass」のライアン・ダンが事故死したり、今日は突然「刑事コロンボ」のピーター・フォーク逝去の報も耳にしたし。ここまで立て続けに人が亡くなるのは、このブログをはじめてからはなかったことなので非常に残念です。



そして、今日6/25はこの人の命日です。




マイケル・ジャクソンが亡くなってちょうど2年がたちました。


僕の彼への想いは、その亡くなった日の僕のブログに書き切ったのであえてここでは触れませんが、空いた空白はまだ大きいかな、やっぱり。


昨今のガガの成功や「Glee」とか「アメリカン・アイドル」を筆頭としたオーディション番組の需要がまだ高いことなどを見るにつけ、「いくら配信中心の世の中で、アーティスト側の過剰供給もあり包括的なスターが生まれにくいとは言いつつ、やっぱ、なんだかんだで世間はポップ・ミュージックに強くコネクトしたくて、スターを求めていたりするのかな」とはやっぱり思いますね。でも、それは基本良いことだと思います。やっぱ、いち音楽好きとしては、ポップ・ミュージックに人生の指針さえ与えるような影響力って持っていて欲しいもん。


ただ、そうなったときに、それが「最大公約数」的な凡庸なものにならず、マイケルのようにどこから見ても才能が突出し、なおかつわかりやすさもあるスーパースターとなると、やっぱりそう簡単には見つからないもの。ただ、そこで「だからあの時期は良かったんだ。それに比べて今は…」みたいなネガティヴな論調にならず、ポジティヴにマイケルの不在を埋めて行けるようになると良いなあ…と2年経った今、素直に思います。


では、僕が個人的に大好きな彼の曲をここで何曲か。


 


author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 11:21
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