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最新全米映画興行成績
どうも。




「裸のガンを持つ男」のレスリー・ニールセンが亡くなってしまいましたね。あのシリーズ、決してファンというわけではなかった(監督のデヴィッド・ザッカーの現在の「絶叫計画」に至るあの趣味はあんま好きじゃないです)にせよ、この人の演技は見ててにくめなくて好きでした。シレッとさりげない顔して大ギャグやるとか、ジタバタ動く時のカッコ悪さとかを計算して出来るとかとか「うまいなあ」と思ってみてました。「アメリカン・コメディは日本ではウケない」の慣例を破って日本でも結構引っ張りだこな人気者でしたね。
謹んでご冥福をお祈りします。


それでは火曜日恒例、全米映画興行成績、行きましょう(ポスターをクリックするとトレイラーが見れます)。



1(1)Harry Potter And The Deathly Hallows Part 1
2(-)Tangled


3(2)Megamind
4(-)Burlesque


5(3)Unstoppable
6(-)Love And Other Drugs


7(-)Faster


8(4)Due Date
9(5)The Next Three Days
10(6)Morning Glory



ハリー・ポッター「死の秘宝」が予想通り今週も1位。2週目になっても依然5000万ドルというのは驚くべき数字ですが、実はこれ、今週の2位の作品に大差をつけているわけではなかったんですね、これが!2位の作品の興収は4900万ドル。実はかなり紙一重の差だったわけです。


その2位に輝いた映画はディズニー・アニメの「Tangled」。これはディズニー・クラシック・アニメとしては記念すべき50作目で初の3D作品。ベースにしているのはグリム童話の「ラプンツェル」で、主人公は塔の中に閉じ込められたやたらと髪が長い少女ラプンツェル。




どんだけ長いんだよ、って感じですが(笑)。まあ、タイトルの意味が「(髪などが)からまる」という意味ですからね。ただ、日本公開のときはこのままだと間違いなく意味不明になるから邦題は「塔の上のラプンツェル」になるみたいですが。ただ、原作とは話を少し今にわかりやすく変えているみたいですね。まあ、そうじゃないと面白くないとは思いますけど。で、今回僕が面白いなと思ったのは声優。この組み合わせはなかなか思いつかない。




ラプンツェルがなんとマンディ・ムーア。そして相手役のフリン・ライダーに現在人気ドラマ「Chuck」でナードなCIAを演じて人気のザッカリー・レヴィ。将来性を見越した面白い起用だと思います。ただ、僕のマンディのイメージって、「髪が長い」というよりは「背がデカい」という印象の方が強い(ニコール・キッドマンと最高身長女優の座を争うくらいデカですよ!)んですが(笑)。


ディズニー・アニメという老舗性の強さとこの新鮮さがウケたか、Metacritic採点はなかなか良く72点。まだまだ数字を伸ばして行きそうな感じです。


そして4位に初登場が「Burlesque」。こちらはシェールとクリスティーナ・アギレラという、その顔を画面に二つ並べただけでもうお腹いっぱいなコンビによる、キャバレー・ムード満点のミュージカル。予想通り監督さんはオープンリー・ゲイだそうです。ストーリーはシンガーになる夢を抱いて田舎からLAに上京してきたアギレラ姐さんがシェールの経営する
バーレスク・スタイルのパブで修行し、ド派手なパフォーマンスを展開する…みたいな映画っぽいんですが、


この話を聞くと僕はどうしてもこれを思い出してしまいます。





1995年の映画「Showgirls」。知る人ぞ知る、「映画史上最低」の悪名も凄まじく高い、ラジー賞で見事8部門に輝く伝説の一作(笑)!いや〜、僕もこれケーブルで一回だけ見たことあるんですが、こんなに酷い映画はそうあるもんじゃないですよ(笑)!主演の上の人が演技がほぼ全く出来ないに等しいくらいの棒読み&脈略もなく逆ギレする上に、安物のポルノ映画並にテキトーな筋書きにやたらと感情的なだけな登場人物たち。そんな話のクセに上映時間だけは2時間以上あるから見ていてとにかく苦痛苦痛(笑)。


「Burlesque」はパッと見、この映画を思い出させるんですが、Metacriticの採点は50点。う〜ん、この点数だと、良い意味でも悪い意味でも歴史には残りそうにないですね〜。せっかく見た目が激烈に濃い映画なわけですから、どっちかに振り切って欲しかったんだけどなあ〜。


6位に初登場は「Love &Other Drugs」。ジェイク・ジレンホール演じるバイアグラのディーラーがアン・ハサウェイ演じるパーキンソン病患者の女性と恋に落ちるロマンスもの。FOXのこの秋の一押し映画ということもあり賞レース争いにも加わるかと目されていたのですが、Metacritic採点は意外とパッとせず55点。監督は「ラスト・サムライ」「ブラック・ダイアモンド」のエドワード・ズウィック。「良いんだけどなんかいつももう一押し弱いんだよなあ〜」という同監督のいつもの印象通りの展開になってしまってますね。



7位に初登場は”ザ・ロック”ことデュエイン・ジョンソンの最新アクション・ヴァイオレンス映画。弟を殺した銀行強盗への復讐劇みたいですが、ロックの顔でそのストーリーと聞いただけでもうほとんど見たかのような気にさせられてしまいます。ストーリーの時点でひねって欲しいですね.監督がアイス・キューブの「バーバーショップ」の監督さんなので手腕的には嫌いじゃなさそうなんだけど。ロックももう少しひねったキャラの方が良いかもしれません。そんな感じでMetacriticは39点。



そして今週は限定公開でこの話題作も出ました。




今年のオスカーを「ソーシャル・ネットワーク」と争うと目されているイギリス映画「The King's Speech」。Metacritic採点上では「ソーシャル〜」みたいなわけにも行かず一部で微妙評もありましたが、それでも83点。まあ、評判倒れに終わらずに確実にノミネートを確実にする順当な点数ですね。


さて、来週ですが、こと「強烈さ」で言えば、2010年最大級の作品かもしれません。このブログでも以前から紹介して来たダーレン・アロノフスキーの問題作「Black Swan」が公開されます。もちろんこのトレイラーでシメます!


 


author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 00:28
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最新全英チャート
どうも!


今日はこれからウィル・フェレルの「The Other Guys」を見に行きます。もしかしたら途中で映画見に行った後の文章になっている可能性が大いにありますが(笑)、とりあえず。


 
SINGLES
1(-)Heroes/X Factor Finalists 2010
2(3)Your Song/Ellie Goulding
3(1)Love You More/JLs
4(-)Thinking Of Me/Olly Murs
5(4)Only Girl(In The World)/Rihanna
6(2)The Flood/Take That
7(6)Like A G6/Far East Movement
8(5)Firework/Katy Perry
9(12)To Make You Feel My Love/Adele
10(18)What's My Name/Rihanna feat Drake


「X Factor」、おそるべし!今年のファイナリストたちによるチャリティ・シングルが初登場1位です。


う〜ん、スーザン・ボイルがルー・リードの「Perfect Day」をカバーしたときにも思ったんですが、古くからロック・ファンの間で甘ったるい評価に成り下がらずにレジェンドたりえた曲がこういう使われ方になってしまうのはなあ〜。これだってもともとは

 


デヴィッド・ボウイのこの大名曲なわけですからね。たしかに「誰だってヒーローになれる」というメッセージは聴く人に勇気を与えるアンセムとしても、チャリティのモチベーションとしてもバッチリの曲だとは思うんですけど、ただ、曲そのもののイメージがこうも安っぽくなられるのはちょっとね〜。ボウイもよく許可出したなあ〜。


で、4位に初登場はその「X Factor」の昨年の準集勝者、オリー・マーズのニュー・シングル。デビュー・アルバム前の先行シングル。この年末のリリース・ラッシュ時にこの順位は立派だと思います。


9位はアデルの「To Make You Feel My Love」が3度目のトップ10返り咲き。よほど「X Factor」で定番カバーになっているのが好まれているようですね。10位はリアーナの「What's My Name」がアメリカに続いてこちらでも2曲同時トップ10となっています。


ではトップ10圏外見てみましょう。今週は41位に初登場のこの曲です。

 


ダフィのニュー・シングル「Well,Well,Well」。この曲、ストロークスのアルバート・ハモンドJrのお父さん、アルバート・ハモンドが書いた曲ですね。バックアップしてるのはザ・ルーツですね。ただ、前作があれだけヒットした割に、これが次のアルバムからの直前の先行シングルの割にはこれは滑り出しとしては「あれ?」ってくらい低いですね。まあ、彼女の場合、レトロR&Bシンガーとしての実力は高いんですけど、エイミー・ワインハウスのように自作曲が書けるタイプじゃなく、プロデュースのされようによっては全然イメージ違ってしまうのもわかられてしまっているのがちょっと響いてるかもしれませんね。なんかアデルと立場が逆転している印象があるんですが、さあ、アルバムはどこまで行くか。



では、アルバム行きましょう。


ALBUMS
1(1)Progress/Take That
2(-)Outta This World/Jls
3(-)Gravity/Westlife
4(3)The Gift/Suzan Boyle
5(2)Loud/Rihanna
6(4)Moonlight Serenade/Andre Rieu&Johann Strrauss Orc
7(6)Greatest Hits/Bon Jovi
8(12)Come Around Sundown/Kings Of Leon
9(5)Greatest Hits So Far/P!NK
10(9)Crazy Love/Michael Buble


やっぱりテイク・ザットは強かった!飛ぶ鳥落とす勢いのJlsの1週目でさえもテイク・ザットの2週目の数字には勝てなかったくらいですから、いかにこれが国民的な盛り上がりかはわかるでしょう。その2つに続いて、テイク・ザットなき時代を10年支えた、そもそも「X Factor」スタッフが育てていたボーイバンド、ウェストライフが初登場しています。


あと8位には先週トップ10圏外に落ちていたキングス・オブ・レオンがトップ10返り咲き。強い!彼らもこれから2nd、3rdとシングル切っていけばまだまだ上位には残れるはず。



で、圏外ですが、なんとマイケミとカニエがトップ10入りを逃すという大波乱!マイケミ14位のカニエ16位!何があったんだろう?!このタイミングは案外初登場1位クラスの人がこういう結果になることがあるんだけど、まさかこの2つがねえ〜。



さて来週は、ブラック・アイド・ピーズ、オリー・マーズ、ダフィなどが入って来る予定。「X Factor」も残り3回なのでこちら関係の物も熱そう。さてどうなるか?






author:沢田太陽, category:-, 04:40
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感謝祭につきネタはお休み
 どうも。


今日はこちらに来て初のThanksgiving Day。実際の話をするとブラジルではこの習慣はないんですが、ワイフのママが生粋のアメリカンなので祝うことになっているようです。彼らいわく「Thanksgivingは宗教色が薄いのでクリスマスよりも好きなくらい」だそう。昼間からターキーの巨大な丸焼きの塊を腹いっぱいに食べました。で、そのあとはクリスマス・トゥリーのデコレーション付け。こちらでは既にクリスマスの飾り付けをしてるところが本当に多いのです。


で、今日なんですが、どのネタも本当にまだアップするには中途半端なんでお休みします。来週はグラミー賞のノミネートの発表だったり、ナショナル・ボード・オブ・レヴューの発表だったりがあるし、明日ウィル・フェレルの「The Other Guys」を見に行くので感想もアップするし、カニエのアルバムのレヴューもしたいしと、書くネタが満載なので「まあ、たまには良いか」と。本当は「Due Date」も見に行ってるのですが、別の形で応用させる可能性が出て来たのでアップしないことにしています。あと、後にここで展開する大ネタのために研究してることもあるので、それも用意が出来たらやりますね。


と言うことで今日はこれでシメます。「Thank You」という曲で思いつく曲の動画で考えたんですが、youtubeで真っ先に来るのってダイドとアラニス・モリセットなんですね。まあ、予想通りですが、僕としてはやっぱりこの2曲だなあ。と言うことでソウルフルにシメます。



author:沢田太陽, category:個人話, 09:18
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今こそ「ロング・ヒットのロック」に注目を!
 どうも。


本当は今日はカニエ・ウェストのアルバム・レヴューにしようと思ったのですが、聴き込み不足なので来週のどこかになりそうです。


そんなこともあり、今日はどうしようかと思いましたが以前からそのうちやろうと思っていたこのネタで行きます。


まずはこの曲から聴いてください。





「これが一体なにか?」と思われる方も多いと思いますが、実はこの曲こそ現在のビルボードのロック・チャートの1位の曲です。しかも何週にも渡って1位を続けてるほどの大ヒット曲です。


これ、おそらく、どんなに熱心なインディ・ロック・ファンでもなかなか知らないことだと思うんですね。でも、こういうことこそ大事なことです。


なぜなら





この曲を収録したアルバム「Brothers」。これは総合アルバム・チャートの初登場も2位と高かった(これもそんなに知られてない事実)ものなのですが、このアルバムはチャートインから半年、27週経った今も97位とトップ100以内をキープしています。



…と言っても、そこまでピンと来ないかもしれませんが、実はこれ、立派なことなのですよ!大体今どき、全米トップ10入りするくらいの人気バンドの新作でさえ、200位内に2ヶ月入らないのが普通です。


そう。それはウィーザー・クラスの人気バンドでも例外なく言えることです。ちなみにジャック・ジョンソンはブラック・キーズより2週少ない25週目なのに既に199位だし、16週目のアーケイド・ファイアも117位です。いかにブラック・キーズのヒットが大きなものかはこういう例だけでもおわかりでしょう。


その昔、アルバムというものは「時間をかけて売る」タイプのロングヒットものがかなりの数ありました。「チャートイン1年にして全米No.1」みたいなアルバムも少なくなかった(ガンズ&ローゼズの伝説の1stアルバムもそういう作品でした)し、1年以上ビルボードの200位に入っている作品なんてザラでしたけど、今は全体的に見てそういう作品が本当に少なくなりましたね。ロング・ヒットしている作品というとテイラー・スウィフト(前作は2年、前々作に至っては4年経ってもまだチャート200位内!)とかレディ・アンテベラムとか、せいぜいそんな感じです。



ただ、そうであるとは言え、ことロックの作品に関して言うと、とにかくチャートイン週数が少なすぎる!ここでしっかり覚えていただきたいのですが、ピッチフォークなどでハイプとなる若手バンドのビルボードのアルバム・チャートのトップ200におけるランクイン週数って大体どのくらいかおわかりでしょうか。それはせいぜいたったの2〜3週間。さすがにそういうものだと、一部では話題になってもせいぜいそこ止まり。これじゃ”ヒット”と認知されるには至らないのです。


「でも作品によってはインディでも全米トップ10に入るようになったじゃないか」。そういう反論もあるかもしれません。しかし、そういうことが今起こっているのはなにもインディ・ロックだけではありません。それはローカル・レヴェルのヒップホップでもBクラスのカントリーシンガーでも、メタルコアのバンドでも、果てにはこういう音楽ジャンルの中で最もマニアックなクリスチャン・ミュージックのアーティストでも多少人気さえあれば今の世の中初登場全米トップ10は充分可能です。全体的な発売実数が落ちているため、多少也ともコア・ファンさえついていさえすりゃ誰だってトップ10に入れる。その昔、全米トップ10入りする作品なんて大体1週に枚か2枚だったものが、今や毎週少なくても2〜3枚、多い時で一気に5〜6枚入っても不思議じゃない週があるくらい、今の全米アルバム・チャートの上位に入ることのステータスなんてガタ落ちしているわけです。今やトップ争いをするくらいの位置に来ないと、アルバムのヒットの実感なんて出ないご時世。僕が最近「ピッチフォークで高得点がついたよ」と言われてもそんなに気にしなくなった理由もこういう点にあったりします。そんなものがたくさん出ても数週もすりゃ熱が過ぎて、その次の「バズのあるホットなもの」に移り気なインディ・ロック・ファンの興味が移ってるだけのことだから。



「そんな時代の中において、どうやったらヒットの実感がロックに出せるのか」となると、それはやはり「長く愛聴されること」、これに他ならなくなって来ます。今度はこういう例を出しましょう。先日、アメリカン・ミュージック・アウォードという、スケールの小さなグラミー賞みたいな賞の発表がありました。ジャスティン・ビーバーや売れ線のヒップホップ・アーティストばかりが独占する中、「オルタナティヴ・ロック部門」なるものがアーティストのパフォーマンスもない超地味な状態の中で一応発表されたのですが、そのノミネートされた3つのバンドというのが


ヴァンパイア・ウィークエンド、MUSE、フェニックス


という、最近のロックから数年離れているような人からしたらすごく地味に見える結果MUSEが受賞したんですけど、ただ、これすごくわかるような気がしたんですね。なぜなら


ヴァンパイア・ウィークエンド(1stと2nd ALが半年程度トップ200に入るヒット)
MUSE(「Resistance」は1年以上全米トップ200入り)
フェニックス(「Wolfgang Amadeus Phoenix」は1年半以上トップ200入り)


こうして見ると、やはりヒットのカギとなるのは「いかにアルバムが長く聴かれたか」ということだと思います。実際フェニックスは最高位37位にも関わらずロングヒットの結果全米で50万枚売ったわけですから。


これをさらに裏付けるとしましょう。2008年の大ヒット・アルバム、キングス・オブ・レオンの「Only By The Night」やMGMTの「Oracular Spectacular」はつい最近まで2年全米トップ200にランクインしていました。そのあとに彼らがどれだけ”時代の寵児”扱いされたかはご存知の方も多いでしょう。やはり今のご時世、シングル・ヒットというものが滅多なことがない限り飛ばすのが難しいロック勢にとって、アルバムを長く聴かせること自体が一番のステータスなんだと思います。


で、実際ロングヒットすると、こういう効果も一応あります。


 


このように「動画による一般人のカバー」が増えます。実際問題、フェニックスにはメチャクチャこのテのファンが多いんだ、これが!やっぱり「曲が良いバンド」の代表格みたいな見られ方なんでしょうね、これ。


で、MUSEに至っては

 


弾き語りを通り越して、こういうカラオケ・カバーの動画もよく見かけます(笑)。やはりロングヒットを記録した最近のバンドのファンに特にこういう人をよく見かけますね。



そして、最近も大ロング・ヒット候補の作品が2つほどあります。





ひとつがマムフォード&サンズの「Sigh No More」、そしてもうひとつがフローレンス&ザ・マシーンズの「Lungs」。ロンドンのニュー・フォーク・シーンの代表格の前者は全米チャート・ランクイン33週目にして40位代、後者は25週目にして50位台と、これからまだまだ長くチャートに入って行きそうな勢いですね。フローレンスのこのアルバム、作品としては個人的にはこの人の持つ資質を出し切った作品だとは思えずそこまで好みではないのですが、ただ何度か見たパフォーマンス映像で実力に溢れた人なのはハッキリとわかったので、ここをステップとして次作以降でトップ・アーティストの足固めをしてほしいものです。この2枚、面白いことにアメリカだけじゃなく、本国のイギリスでもずっとトップ20位以内を1年以上ウロウロしている息の長いヒットになっているんですよね。特に今の、ロックでヒットが出にくくなっているイギリスにおいても彼らの健闘は光っていましたね。



…と、こうして説明して行くと「ロックにロングヒットが必要な理由」が少しはおわかりいただけるのではないかと思います。特に配信中心の世の中になって音楽そのものが使い捨てになって行けば行くほど、長く聴かれることの重要性は強い意義を持って行くと思うし、これからのポップ・ミュージックのヒットのパターンはこちらの方に徐々に移行して行くと思います。すごくポジティヴで良いことだと思います。


しかし


もし、そうなったらそうなったらで心配なのは、日本の洋楽界がこうした「ロングヒット重視」の動きに対応出来るのか、これが個人的に気になって仕方ありません。日本における今の洋楽アーティストのプッシュの仕方というのは、新作登場タイミングのときに集中して全力を傾けるパターンが当たり前になっているのですが、このやり方だけで進んでしまうと、海外で発売からしばらく経って徐々に人気が出てしまった場合に対応が利かなくなってしまうんですね。70〜80sに全米チャートの番組がラジオやTVに多かった時代だと対応が利いたんですけど洋楽自体を巷で聴けなくなっている状況の中で「海外のロックのロングヒット」まで気にするようなメディアが紙媒体まで含めてあるかどうか。僕はそこがすごく気になりますね。この時代の波について行けずに「日本と海外の情報の格差」が生まれてしまわないか。ちょっと心配ではあるんですよね。さあ、これからどうなるか。

author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 10:50
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最新全米チャート
どうも。


昨日、アクセス数が最高値を一気に更新しました!ここのところトワイライトの「エクリプス」で飛んで来ていらっしゃる方が多かったので平均数値は高かったのですが、それにしても1日のアクセスの最高値を200以上更新したのにはビックリ。なんでだろう。いくら昨日、ハリー・ポッターについて書いたからって、検索に反映されるにはまだそれなりの時間いるはずなんだけど。でも嬉しいです。昨日くらいの数が毎日来たら月間50000アクセスが夢じゃなくなるんだけど。 いずれにせよ、たくさんの方に読んでいただいて本当に嬉しいです。ありがとうございます。


では、金曜恒例、全米チャート行きます!


SINGLES


1(2)Only Girl(In The World)/Rihanna
2(4)Raise Your Glass/P!NK
3(1)Like A G6/Far East Movement
4(6)We R Who We R/Kesha
5(5)Just A Dream/Nelly
6(9)Firework/Katy Perry
7(3)Just The Way You Are/Bruno Mars
8(7)What's My Name/Rihanna 
9(22)F..k You(Forget You)/Cee-Lo Green

10(10)Bottoms Up/Trey Songz feat Nicki Minaj


リアーナが1位に輝きましたね。皮肉なことに、先に出ていたはずの「Only Girl」が10週近くかけてトップ10内を行ったり来たりしてるうちに、この曲での初の1位を取りましたね。「What's My Name」のイメージがあるのでいきおい「返り咲き」って言いそうになるんですけどね。


トップ10入りは9位のCee-Lo。これもトップ20〜30くらいでくすぶってたんですけど、先日どうやら「Glee」で使われたことで一気に入って来ましたね。Gleeのヴァージョンでもトップ圏外ですが入って来てます。テレビ・オンエアなので間違いなく「Forget You」と歌ったかと思いますが(笑)。


トップ10圏外だと、マイケル・ジャクソンの遺作からの先行シングル「Hold My Hand」が入って来てますね。曲は聴いてはいるんですけど、動画が雰囲気壊すような変な映像つけたインチキなものばかりなので、これはあんまり美しくないと判断して載せるのはやめます。正式なPVが入り次第、紹介しましょう。


 
では、アルバム行きましょう。



ALBUMS
1(1)The Gift/Suzan Boyle
2(-)O Holy Night/Jackie Evancho
3(-)Loud/Rihanna
4(-)Illumintions/Josh Groban
5(-)Born Free/Kid Rock
6(-)Nothing Like This/Rascal Flatts
7(-)Get Closer/Keith Urban
8(-)The Music Christmas/Glee Cast
9(2)Speak Now/Taylor Swift
10(-)5.0/Nelly


アメリカのCD業界は基本11月がシメなので、この下旬にかけて大量に新作を出して来てますね。


で、2位に初登場のジャッキー・エヴァンチョなんですが、これは僕も「だれ?」という感じだったのですが、どうやらこういう人みたいですよ

 


なんと10歳の女の子ですよ!この子はアメリカのリアリティ・オーディション番組「America's Got Talent」で発掘された少女クラシック・シンガーなのですが、もうこれ明らかに「イギリスが幸薄いオバサンを世界的大スターにしたのなら、こっちは天才小学生で対抗だ!」というのがミエミエですね。で、案の定、スーザンおばさんが1位の週に2位だもん。まんまと狙った通りになりましたね(笑)。


「America's Got Talent」、実はこちらでは見れるんです。でも、正直あんまり面白いと思わなかったんだけどなあ。あっ、そう言えば昨日、FOXから「2011年秋に『X Factor USA』放送開始!」載せ意識アナウンス出ましたね!やった〜、サイモンがアメリカのブラウン管に復活!なんかそれと引き換えにアメアイ終わりそうな気がするけど。



で、その英米を挟んだリアリティ・ショウ・クラシック・スターの対決の前には、あのリアーナでさえ勝てなかった!僕的にはこの事実が一番の衝撃です。で、4位もジョッシュ・グローバンとまたもやライト・クラシック系。この季節はやっぱこのテのものが家族中心に盤石なんですね。そして5位にはそういう清らかなノリとは対極の位置にあるキッド・ロック。カントリーシンガー化が加速してそうです。6位はカントリーの人気グループ、ラスカル・フラッツ。7位は、”カントリー”というよりはニコール・キッドマンのイケメンのダンナさまキース・アーバン。そして8位にはGleeのクリスマス・アルバムと来ています。


ちなみに今年の「アメリカン・アイドル」のウィナーになったリー・デワイスのデビュー作も出てますが初登場順位は19位。ほら、だから言わんこっちゃない!こんな弱いウィナー選んだところで一般的に売れないは番組に対する視聴者の信頼も失うは。次のJ.Loとスティーヴン・タイラーによる新体制、いきなり窮地だと思いますよホント。


さて来週ですが、今の時点で方々で「歴史的名作既に決定!」と大騒ぎになっているカニエ・ウェストの最新作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」が出ますが、これに関しては僕は記事を組むつもりなので、ここはあえてマイ・ケミカル・ロマンスでシメましょう。以前紹介したのと同じ曲ですが、今回のヴァージョンの方が状態は全然良いです。この人たちも良い感じで変なバンドなので、個人的に苦手なエモ系のバンドでも僕は全然平気でむしろ何やるか見ものだと思ってますが、今回のアルバムはどうでしょうか?それにしても「ナーナナ、ナーナナ」とクセになりますな(笑)。


 

author:沢田太陽, category:全米チャート, 02:45
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これでやっと最新作が見れる!〜今さらながらハリー・ポッターに入門してみた
 どうも!


先週から人知れずコツコツ行っていたことが今日終わりました。それは




そう、それは


ハリー・ポッターのシリーズ1作目から前作までをぶっ通しで見ること!



普段ここで映画についてのあれこれをいろいろ語って来ている僕ですが、ハリー・ポッターに関してはまだ人生で1作しか見たことがなかったのです。しかもそれがいきなり3作目の「アズカバンの囚人」。これはおつきあいで見に行ったものでもあったので、そのときに見た内容もほとんど覚えてなかったことが今回のイッキ見で判明もしました(苦笑)。


これまでなんでハリーを見て来なかったかと言うとですね、このシリーズが始まった頃、ちょうど30歳を回った頃だったんですよ。そういうこともあり「30男が見るもんじゃねえなあ」という印象があったんですね。で、しかもはじまった当初のイメージって




これだったワケでしょう?「いい年した男が小学生の映画見に行くのもなんだかなあ(苦笑)」というのが、スタート当初の僕の偽らざる印象でしたね。そういう年齢云々の問題プラス、ファンタジー映画そのものに対しても興味なかったんですよね。僕が中学のときに「ET」や「ネヴァーエンディング・ストーリー」がすごく流行った時でさえ見に行かなかったような子供でしたからね。だから「自分とは縁がないんだ」と思っていました。



そんな僕がなぜ今回ハリー・ポッターを全部見てみようと思ったかというと、一番はやはりこのブログをやるに際して「みんなが知ってる話題作というものはとりあえずは頭に入れておかなくちゃ」という気持ちがあったからですね。そして二番目の理由としては「10年間、世界中のファンを飽きさせずに、悪いイメージも持たれずに続くってエラいな」と思ったこと。三番目としては「ロード・オブ・ザ・リング」をかなり気に入って見れたことで、ファンタジーに対しての偏見みたいなものが自分の中でだいぶなくなっていたこと。あとは、Hard To Explainの今のメンバーの世代がちょうどこれがはじまった頃に中高生で、彼らが共に育ったひとつの大きなカルチャー・アイコンとしても知っておく必要があるなと思ったこともあるかな。


そんな感じで、先週末に最新作「死の秘宝」がはじまったと同時に「見たい!でもストーリーがわからない!」と思ったその瞬間から、僕はハリー・ポッターを第1弾「賢者の石」から猛然と見始めました。先週の木曜の夜から約1週間かけて、前作「謎のプリンス」まで駆け足で見てみました!そこで今日は僕の鑑賞した感想を1作目から素直に書いて行こうと思います。ストーリー説明みたいなものに関しては、おそらく今これをお読みの方でこのシリーズのファンの方も少なくないと思いますので、僕みたいな初心者が語るのもおこがましいのであえて語りません。ですが、僕がこうして感想を書くことで、このブログの読者に結構な数いらっしゃる僕と同世代の方で僕と同じような理由でこれまでハリー・ポッターを見ずに来た方も少なくないと思いますので、そういう方たちが「じゃあ、見てみようかなあ」と興味を持てる感じで書けたらいいなと思います。




1.賢者の石(Philosopher's Stone)2001


まず、ひとつ決定的に言えることは、「この第1弾見ないことには、以降の話が全くワケわからなくなる」ということですね。ここにこのハリー・ポッター・シリーズの基本骨子が形成されていたわけですね。今から考えると、いきなり第3弾から見て当惑したのは無理もなかったわけだ。


どんなに疎かった僕でもさすがにハリー、ハーマイオニー、ロンのトリオぐらいは知ってたし、名前はそのときわからなかったけどホグワーツ魔法学校の校長先生(ダンブルドア)やバカでかい門番(ハグリッド)がこの3人にとても好意的な人格者(まあ風貌からいかにもですが)なのもわかってましたが、ハーモイオニーが普通の人間の子供(マグル)であるとか、そういうことは知りませんでしたね。


あと、メッチャクチャはずかしい話、この話がハリーの両親を殺した男への敵討ちを前提に進んでいる青春物語だということをはじめて知りました(苦笑)。ぶっちゃけ最低限、そこさえわかっておけば後は比較的わかりやすい話の大元がわかってなかったんですから、あの時見たものは本当に意味がなかったんだなあ。


あと、主演の3人以外に案外サブキャラが多いのだなあ、ということに気づきましたね。思いっきり出っ歯でナードなネヴィルだとか、ロンの双子の兄貴と妹とか、こういう人が案外大事なんだなということがわかりました。


あと、どうしても気になったのはこれですね。




この髪型はいったい…(笑)!なんか入所式を終えた宝塚養成学校の男役志望の人を思い出してしまいました。どうりでマルフォイ、方々で妙にツッコミ多いわけだ(笑)。あと、スネイプって、若いときのトレント・レズナーにソックリなのね!…と思っていたら




こういう比較写真を載せてるサイトが海外にはメチャクチャたくさんありましたね。やっぱみんな思うことは似てるんだな。


…などと、「へえ〜」「ほお〜」「ふみふむ」と意味を理解しながら見てたんですが、ただなあ〜、全体の印象としては、これだと僕の年で見るとやっぱまだ照れがあるんだよなあ〜。子供たちが声変わりしてない(ハーマイオニーなんて舌が全然回ってない、笑)というのもあるんだけど、監督のクリス・コロンバスがいかにも彼好みの思いっきり子供向け映画っぽく作ってるほのぼのしすぎた感じ(映画スコアが特に)はちょっと違和感あるかなあ。リアルタイムで見なくてある意味良かったかもしれません。


2. 秘密の部屋 (Chamber Of Secrets) 2002


前作のときの総評と同じで、今作もまだ大人の男が直視するのは照れがあります。やっぱ、クリス・コロンバスものってあんまり得意じゃないんだよなあ〜。あと一話のときにも思ったのですが、ハリーの育ての親的存在のダーズリー家って、ハリーをただいじめてるだけなのに、なんでそんなハリーを家に閉じこめておこうという気になるのかがよくわからない。普通そんなに嫌いなら家から出て行きゃせいせいしないか?あと、「悪者」として描きたいのはわかるにせよ、あの良心のかけらも見えない描き方はあまりに図式的すぎるし、見てて凄く子供っぽすぎるなあとも思いましたね。



そして途中まで、「これが一番面白くなさそうだなあ」と思ってました。「全体の話の中で、ちょっと本題をそれた一話完結ものなのか?」とさえ思っていました。そうしたら、第4作の終盤あたりで「あっ、トム・リドルってここでこうつながるようになっていたのね」と気がついてからは評価を改めましたけどね。「一話すっとばすとわからなくなる」くらい、肝な話の軸が必ず入っているというのは良いなとは思いました。


3.アズカバンの囚人(Prisoner Of Azkaban)2004


これだけリアルタイムで見てたんですけど、話を全然覚えていなかったです。特に前半。なのですが、こうして改めて見て、ここで前2作より格段に良くなったんだなということがわかりました。この作品が「天国の口、終わりの楽園」のアルフォンソ・キュアロンが監督してることは去年くらいにたまたま知ったのですが、後述するように確かにこの映画を見事に変えてます。


前作から2年インターバルが空いてることで子供たちが急に大人びてるんですね。特にネヴィルと双子の兄貴が背伸び過ぎ(笑)。ただ、こうやって、10歳かそこらでその素性もわからないまま配役された子供たちがこうやって基本最後まで10年にわたって同じ役を全うするというのはすごいことだなと感心しました。


ただ、この作品から良い意味で子供っぽさが消えた最大の理由は、そういう子供たちの肉体的な成長もさることながら、ストーリー全体を覆うダークな雰囲気ですね。前2作に比べてシーンの配色に青や灰色がすごく増えてるし、映画スコアもガラッと不穏なトーンのものに変わってるし。前2作にあったほのぼのとしたファミリー映画っぽさがかなり削られているんですよね。細かいとこで見ても、お馴染みの冒頭のダーズリー家でのやりとりもだいぶ短く淡々と進むようになったし、ハリーたちの服装もこの作品、やたら私服が多くスクール・ブレザー着てるシーンが少ないんですよね。そのあたりも学園ものっぽく見えない要因になってるのかもしれないですね。


で、話の肝的には




コイツが最高に怖いですね。ハリーの父親を罠にかけて死に追いやったピーター・ペティグリュー。これ、個人的にヴォルデモートより数倍怖いです。そのまま普通にホラー出れますよ、この人。それくらい名演だと思います。それから




ゲイリー・オールドマンってやっぱカッコいいよね〜。シーンに加わるだけで、彼の世界で持って行く演技出来るよね〜。シリウス・ブラックってこのシリーズだと人気キャラのひとりだと思いますが、この映画版でさらにファン増えたんじゃないかな。この人の起用にも見られるように配役もいいですね、今作。エマ・トンプソンもすごく地味な役で出てるしね。


あと、マルフォイ、髪型が良くなったのはいいものの、ここから急速にヘタレ化が(笑)。当初ハリーのライヴァル的な扱いだったはずなのが、ここからの展開が妙にカッコ悪い。



4.炎のゴブレット(Goblet Of Fire)2005


まず結論から先に言うと、僕個人的にはこの作品が一番好きです。前作でキュアロンが築いたダークな路線をイギリスの職人系監督のマイク・ニューウェル(「フォー・ウェディング」etc)がかなりスリリングに描いていて、話に緊迫感が生まれてますね。やはりクライマックスで人がひとり死んでしまうという、これまでのこのシリーズの中で(この時点で)一番ヘヴィな展開が待ち受けてますからね。あと、ハリーたちの間の鉄壁の友情が壊れる瞬間が訪れるのも「超えるべき人生の壁」を見るようでグッと来ます。



そして、ハリーたちがミドル・ティーンに突入して来ることに伴い、世界観がそれ相応に成長して来てるのも好感持てましたね。パーティではロックがかかり、これまでほとんど描かれて来なかった恋愛観に関しても顔を覗かせて来るようになるし。このあたりの描写は、本作がもう「子供映画」の域をはみだして「青春映画」の領域に突入していますね。あと、この作品だけ、なぜかハリーとロンの髪が2ヶ月散髪をサボッた感じの長さになってるんですが、これも演出なのかな?



で、ここで





ロバート・パティンソンが学校の先輩セドリック役で登場するんですね。彼がこのシリーズで登場するの、これ1作ですけど、たしかに本作では存在感放ってました。この時点での演技、かなり下手なんですけど(笑)、とにかく顔立ちが美しい!彼の場合はしばらくは外見だけで行けちゃうんでしょうね。このときにはそんなこと思った人いなかったとは思うんですが、今見るとエドワード・カレンがハリー・ポッターに出てるみたいで違和感あります(笑)。


あとはやっぱり




ここで遂に姿を現した最凶魔法使い、ヴォルデモートでしょう!個人的にはピーター・ペテュグリーの方が怖いんですが(笑)、”いかにもな悪役顔”でいいかと思います。これ、レイフ・ファインズって最初わかんなかったですね。目元じっくり見てやっとわかるくらい。


5.不死鳥の騎士団(The Order Of The Phoenix) 2007


前作からさらに2年。ハリーたちも実年齢でハイティーンに突入して来ました。


なんですが


正直、僕、これはちょっと期待はずれだったんですよねえ。前作のニューエルの路線、かなり気に入ってたんですけど、ここから監督がデヴィッド・イエーツに変わってるんですよね。なんで代わっちゃったんだろう。これ思うに、前作で原作がかなり変えられたこと(原作に出て来た妖精が完全に切られてしまったこと)や、話のトーンがダークになりすぎたことで、原作ファンや子供たちのウケが悪かったからなんじゃないかと。う〜ん、大人的にはだいぶ見やすくなったんだけど、やはり「子供たちに見られてこそのハリー・ポッター」というのはあるんでしょうね。だいぶ本来の「学園ものらしさ」が戻って来てます。



それでも好きな部分はちゃんとあります。やっぱ一番は、それまで敵なのか味方なのか今ひとつ謎だったスネイプが徐々に正体を現しはじめたことですね。ホグワーツの青春時代にハリーの親父にからかわれていた苦い思い出がフラッシュバックするシーンは、「青春期に受けた心の傷ってささいなことでも後の愛憎劇として引っ張るもんなんだよね〜」と韓国映画「オールドボーイ」あたりと重ね合わせたり、自分の人生体験で起こったそれに似た体験なんかもフィードバックされたりして、妙に懐かしかったり共感出来たりでしたね。


あとは、これはまあ、この映画に限ったことではないんですが




ヘレナ・ボナム・カーターが取り返しのつかない領域に来てますね(笑)。この人、昔は「イギリス時代劇のアイドル」みたいな感じの人だったのに、今やこういう気味の悪い役ばかりやってる印象が。この人見てると、「急激に非行に走った元優等生の良家のお嬢様」を見てるようです(笑)。ティム・バートンも罪なことをするものです。ただ、彼女ほどのハリウッドでも主演級の女優がいきなり途中参加出来るのも、イギリス映画界の勢力あげて作っている意気込みを感じますね。マイク・リーの「ヴェラ・ドレイク」役をやったイメルダ・スタウトンも市原悦子みたいなイヤ味なオバサン役で出て来たりとかね。


6.謎のプリンス(The Half-Blood Prince)


これは、どっちかと言うと、最終章「死の秘宝」への橋渡し的な印象を僕は受けましたね。トム・リドルのかつての恩師が出て来て、リドルがいかにして凶悪な男へと変貌して行くかを語るモノローグあたりはモロですね。


あと、この点については本シリーズ中一番だと評価したいのは、遂にハリー、ハーマイオニー、ロンについての具体的な恋愛感情が描かれるようになったことですね。正直、こと”恋愛”に関しては随分奥手なドラマだなあと思っていてそこに僕は物足りなさを感じていたのですが、遅まきながらそれがやっとしっかりと形になって来たのは嬉しいですね。まあ、今の世の中、「気持ちより先に体」みたいな恋愛の描かれ方も多いので、逆にこれくらい清々しいピュアな恋愛の方が新鮮なのかもしれませんが。


ただ、やっぱり今作においての最大の見せ場はラスト付近でしょう。3作目以降、単なるヘタレ・キャラに成り下がっていたマルフォイの、情けないキャラクターだからこそ逆に強烈な説得力を持ち得た彼自身の自己ベスト演技。そして、同シリーズにおける最大の”良心の象徴”が息を引き取る瞬間…。ショックの度合いではこの幕切れが最もショッキングでしたね。



…というのが、前作までの僕のハリー・ポッター・シリーズに対する感想です。すごく断片的に語っているのでわからない人には謎なままかもしれませんが、極力完全なネタバレにはせずともわかりやすく書いたつもりです。


印象としては、全編通してきわめて純なドラマだと思いましたね。「ロード・オブ・ザ・リング」の方が、誘惑に弱い人間のエゴイズムを含めてリアルに描いている分、「責任感」「良心」「信頼」などの重要性をより克明に描けている感じはしますが、ハリーも「愛する人の死」(最初からそうだし、シリーズ4,5,6と次々に誰かが死んでいる)という繊細なティーンエイジャーには堪え難い痛みを通して人間的に成長し、「痛みがわかるからこそ友情や愛が大切なんだ」と、まだ人間の汚い部分まではそこまでわかりようがないピュアな子供たちにストレートに訴えている潔さはやはり好感が持てますね。


これでようやく「死の秘宝」が見れますが、どうやら最終章に突入しても、主要キャラクターのまだしっかりと語られていない過去が明るみになる瞬間がありそうです。そういうことにも注目しながら見て行きたいものです。


author:沢田太陽, category:映画, 10:39
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