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極私的Best Albums Of 2000s(8) 2位
トラブルにより、2位が単独発表になってしまいましたが、かえってこっちの方が良かったかもしれません。なぜなら、1位と2位は気分でコロコロ変わり、これを作成中の段階でも、「やっぱ1位変えようかな」と思ったくらいだから。でも、初志貫徹。結局、最初に「2位かな」と思ってしまったこちらのアルバムを2位にすることにします。



2.Elephant/The White Stripes



 



この人たち、いや、正確にはジャック・ホワイトだな。この人の発見は、ここ10年の音楽界における最大の発見なんじゃないかと思います。僕は80年代に育って来たこともあり、ロックに関しては上の世代からはいろんな小言を言われて来ました。「俺らの世代にはストーンズやツェッペリンがあるけど、オマエたちにはあるのか?」。まあ、それに関しては「90年代にニルヴァーナやレディオヘッドを見つけたけどね」と返答出来るようにはなっていたんですけど、ではもし今度は僕とかと近い世代が下の世代に向かって「オマエらの世代にロック・レジェンドはいるのか?」と問いかけたなら、その世代は間違いなくこう答えて良いと思います。「自分たちにはジャック・ホワイトがいる」と。この人の才能は、こう強く断言しきって良い程に超人じみたものです。でも、その本当の凄さというものは、実際にライブを見ないとわからないものでもあります。事実、このアルバムが出た頃まではライブはフジのレッドマーキーで一度行っただけ。単独ツアーというものは実現していない状況でした。それもあり「こんな気味悪いハイプがはびこるようだとロックもおしまいだ」みたいなことを吹いてまわる音楽雑誌とか評論家とかも実際にいましたね。でも、そんな人は残念ながら日本にしかいなかった。なぜなら、彼らはストライプスのライブそのものをまだ体験してなかったのだから。2003年10月、このアルバムを引っさげての日本公演。そこにおいてこそ、はじめてストライプスはその型破りの才能を発揮したのでした。この人たちが2人で演奏してたのはウケ狙いでもなんでもなかった。それはただ単に「2人しかいらないから」だということは、最初の2曲くらいですぐにわかりました。ジャックのギターがいざならされると、そこにはもう、今までに聴いたことのないような大きな音量のギターが。しかもそれは、シューゲイザーやら轟音ポストロックのような濁ったノイズが全くなく、しかも、ブルーズやカントリーの人間くささに裏打ちされた実に美しいものでした(特に音の伸び!)。しかもそれがボトルネックに乗ってスムーズに放たれる時の、その”美しい攻撃力”と言ったら!ガレージ・ロックの暴力性を最大限にいかしながら、ここまで優雅に工夫された爆音を聴いたのはこれが最初で、おそらくこの先もそんなにすぐには出てこないでしょう。それに加えて歌う時の憑き物がついたような雷神のごとき形相で歌われる、体内ヴォリューム調節がブッ壊れたように歌われるとてつもなくデカくて怖い声歌。もう、この桁外れのギターとヴォーカル。それがあるだけで、既に音楽として成立してしまっているのです。冒頭から頭真っ白にノックアウトされてしまった僕は、ここからが全て驚きの連続。「Black Math」のような爆撃的チューンにも、「In The Cold Cold Night」のような清涼の一瞬も、「Balls And Biscuits」におけるジャック史上最長のブルース・ギターソロにも、そしてエレアコをボトルネックで弾いているはずなのにどう考えてもエレキのソロにしか聴こえない「Seven Nation Army 」にも…。公言の通り1963年以降の機材を使っておらず、伝統音楽にもしっかり根ざしているというのに、このような爆発力と芳醇な懐と人間の根源的な美しさが内在した音楽が存在するなんて。「僕たちは、今の時代にジミヘンが存在しないことをうらやむ必要なんてないんだ」。これを見て僕は本当にそう思いました。いや、それは僕だけの話じゃない。この時の日本初ツアーのときも、そして翌年のフジの3日目の実質上のトリのときも、見終わった観客から聴こえて来たのは、深いため息と「なんだよ。おい、見たか?何だよ、ありゃあ!」という話し声ばかり。僕もストライプス初体験の夜は友人4人に電話し、「いやあ、あれは化け物だ!絶対に見なくちゃダメだ!」と言いまくったものでした。そして、このライブの後、ストライプスをハイプだなんて呼ぶ声は日本からもパッタリと消えて行ったものでした…。この時の壮絶なライブのリアリティ。それをもっとも正確に伝えていたのはやっぱりこのアルバムだと思います。「ストライプスってどんなバンド?」と聴かれたら、すぐさまこれを聴かせればいいです。だけど、ヴォリュームの目盛りは必ず一番上まで上げてね。



author:沢田太陽, category:個人話, 22:52
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極私的Best Albums Of 2000s(7)5-3位
すいません。本当は5〜2位だったんですけど、なぜか2位のとこでデリートが出てしまいまして。結構、原稿が長くなってきて疲れてきたので、5〜3位までにします(苦笑)。



5. Up The Bracket/The Libertines(2002)



 


海外のいろんな雑誌のこのテの企画を読んでいますが、これを真っ当に評価しているのがNMEの2位だけというのは正直納得いかないです。人間年を取ると、いきおい表現力のポイントのみでロックを語ろうとするところがあります。だけど、ロックやらパンクやらというものは「それが若い世代からいかに強い共感を得させるか」ということこそ最も重視されるべきであって。成熟された完成系よりも、未熟だけどつんのめったリアリティ溢れる衝動の方が説得力を持つ瞬間がある。それがあるからこそ、ロックって面白いんです。そのことをリバティーンズのこのデビュー作はまざまざと僕らに教えてくれます。僕は本作に「ゴミ処理場に咲いた一輪の美しい薔薇」みたいな魅力を感じます。メチャクチャでグチャグチャなカオス。だけどその中に一瞬垣間見せる繊細なロマンティシズムや知性。これにこそ僕はパンクやアートの本来の姿を感じます。2000年代に猛威を振るった北米産の”ポップ・パンク”という代物。ギターの音の太さからヴォーカルの音域まで、まるでベルトコンベアーのリミッターによって規定され大量生産されたような型通りのサウンドに僕は”パンク”という言葉を使用されることにモヤモヤした欲求不満を抱いていたのですが、このアルバムでのダッチロールしまくった、制御不能の自由ないびつさは僕に”1977年・ロンドン”の意味を改めて思い出させてくれました。加えて、方々で問題を起こしはするものの、日常と風景の描写に優れ、テムズ川の流れを目前にして涙してしまいそうなロマンティシズムを携えたその歌詞のセンス。それは、文学史や美術史で伝説として耳にしたところの「放蕩の詩人(画家)の伝記」みたいな存在が21世紀に突入した現在も存在するんだなということを実例をもって証明してくれたような感慨を与えてくれました。なかなかこんな人たちっていないもんだけど、パンクやらアートやらって本来こういう人がやるべきなんだと思います。この傑作の後、ピーター・ドハーティはゴシップスター化してしまい、そこにこのアルバムで感じられた純粋さを失ったように感じ幻滅するファンも多くいましたが、しかし現在でも、楽曲単位ではあるものの時折その冴えを感じさせるピーター。思ったより長く生きそうな気もして来たので、まだまだ期待していいんじゃないかと思います。



4. Hot Fuss/The Killers(2004)




Hard To Explainのスタッフ周りではこれを1位に予想した人も結構いましたね。そうですね。単なる純粋な「ファン心理」というものだけを今回の基準にしたなら1位にしても良かったのかもしれません。でも、いくら”極私的”とは言え、自分が生きて来たある10年の中で後世にも「この時代にはこういう人がいてね」と誇らしく語りたいときに、キラーズという存在は「時代の代表」という形ではどうしても語りにくい。それがあったのでトップ3に入れるのはちょっと難しく感じられたんですよね。別にキラーズの存在を抜いたとしても、2000年代の音楽シーンは語れるのではないかと思います。ただ、そうであるとは言え、やはり僕はこのバンドを心の底から愛さずにはいられません。理由その1は、僕の中にずっと生きて来た、たわいない甘い思い出を全面的に肯定してくれたこと。80年代を10年間まるごと10代で過ごした僕にとって、ピコピコ・シンセ全盛のMTVニュー・ウェイヴというのはかけがえのない存在。デュラン・デュランを筆頭にティアーズ・フォー・フィアーズやらハワード・ジョーンズやらヒューマン・リーグやら何でも好きでしたが、こういう人たちって90s以降の人には「古い・ダサい」で片付けられ、同時代を生きた硬派ニュー・ウェイヴ・ファンからは軟派扱いされ、今日的にも批評的にそこまで高いとは言えない。キラーズはそんな軽視されがちだった音楽の要素をフル活用し、遂にはアリーナ・クラスにまで高めてくれました。僕も「Somebody Told Me」のドッヒャーなイントロをはじめて聴いたとき親しみ込めて爆笑したんですが、それが今や世界の誰もが知ってる曲だもんね。そうした過小評価されていた「80sニュー・ウェイヴ」の再評価への貢献も嬉しかったんだけど、それ以上に僕が彼らを評価をするのは、その姿勢。「いい音楽をやって、それを広めるためにビッグになってなにが悪いんだ」。ブランドン・フラワーズのこの主張、全くもって正論です。本来、「良い音楽」こそを僕らは日頃から聴きたいわけで、それが良貨が悪貨に駆逐されるがごとく、なぜ隅に追いやられなければならないのか。そんな自身の音楽への誇りをかけて歌われる、その名も「Glamourous Indie Rock'n Roll」。実はこの曲名こそが2000年代、僕にとって最大の座右の銘です。ある時期ずっとHard To Explainのお客さんがお帰りになる際のエンディングに使っていましたが、僕にとってはいまだ重要なアンセムです。



3.Stankonia/Outkast(2000)




僕は最初から決めてました。「トップ3のうちのひとつは”プレHard To Explain”の時期から選ぼう」と。その意味で最高のアルバムとなると、もう間違いなくコレになります。あれは忘れもしません。2000年の11月。HMVの渋谷でこの頭イカれまくったジャケ写を目にして「なんだあ、こりゃあ!!」とすかさず衝動的なジャケ買いをし、早速家で聴いてみたら、まあ、これがとにかく衝撃中の衝撃でした。ロック、エレクトロ、オールド・ソウル、ファンクがヒップホップと絡み付き、BPM最高潮のファストチューンからネットリとしたメロウチューンまでテンポも自在に操り、全速力でアルバム最初から最後まで駆け抜ける。これ、当然のことながらアメリカではすぐに話題になったのですが、日本ではサッパリ。僕はトゥパックとノトーリアスBIGの二人が96〜97年に血で血を洗う殺し合いをして以来、90年代初頭からずっと好きだったヒップホップから足を洗っていたのですが、これとか、エミネム、ミッシー・エリオットとかネプチューンズを聴いて、「まだまだヒップホップも捨てたもんじゃないじゃん」と思い、以前ほどの熱意ではないものの、再び聴くようになったものです。これに加えてデスチャも好きだったし、インシンクとかブリトニーみたいなアイドルにも遠巻きながら興味はあったし、オルタナ・カントリーも面白いと思ってたし、いいシンガーソングライターの曲もあったし、コールドプレイもいいし…。みたいな感じで、シーンの中心こそはハッキリとは見えないものの、いろんな角度で”洋楽”としてみたらまだ世界の音楽って面白いなと痛感。その当時の僕はNHK時代に作った番組のイメージのせいで「日本のインディーズの人」と勝手に解釈され、そのイメージに辟易していたのですが、そんな僕にもう一度「世界の音楽の今をちゃんと伝えなくちゃ!」と思わせ、「The Mainstream」という洋楽専門メルマガをスタートさせた、割と直接的な原因となったのが本作の存在でした。彼らのアルバムは、世間一般的にはこのランクの14位にも入れた「Speakerboxxx/The Love Below」の方が有名で、実際それはそれで本当に凄い作品なんですが、しかし、グループの常として、やはりメンバーがバラバラに作ったものより、ガッチリとタッグを組んだ作品の方が聴き手としては嬉しいわけで。超高速ラップのビッグボーイ(生で見るとマジで速いです!)と不思議なスターとしての華があるアンドレの奇妙な歌心。これが1曲で同時に聴けるのはやはり宝ですよ。その最高潮はやはり「B.O.B(Bomb Over)Bagdad」。超高速エレクトロに二人の得意技の掛け合いが乗り、ゴスペルが入り、最後はハードロック・ギターというワケのわからない曲展開が圧巻ですが、加えて9/11を予見するかのような、ありえないリリック!あらゆる意味でこの10年を象徴します。なお、この曲、アンドレが紫の草むらの上を全力疾走する謎のPVも必見です!













author:沢田太陽, category:個人話, 21:07
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極私的Best Albums Of 2000s(6)10-6位

では、いよいよトップ10の発表と行きましょう!



10. Antics/Interpol(2004)



 

おそらく、これからのロックの教科書はデビュー作の「Turn On The Bright Light」こそを歴史的名盤として語り継いで行くことになると思いますが、でも、忘れちゃいけない。ここでのスケールアップがもし仮になかったならば、インターポールは一部のカルト的ファンだけを相手取ったカリスマだけで終わることになったと思います。底の深いダーク・サイドを一部の人だけに独り占めさせずに、かつその暗さを水増しさせることなく純度を保ちながら拡大させて行く。その意味で彼らはキュアーやデペッシュ・モード以降途絶えていた系譜の理想的な後継者にこのアルバムで至ったんじゃないかな。このアルバムですが、とにかく、「層構造」に織りなす曲の構成美が本当に見事。キーを握るのは、アー写では後ろをむいたりして本当に地味で謎なギタリスト、ダニエル・ケスラー。曲のポイントポイントで絶妙なフレーズをドラマティックに入れこんで行く神経質なまでの曲のドラマ性。これに関しては、この10年でも指折りの才能では。特に「Public Pervert」の歌終わりからアウトロに至る展開は、「この10年で最高の曲のパートは?」と問われたら1位にあげたいくらいのクオリティです。そしてHard To Explain的にも思い出深いのは、ベーシストの”男爵”(閣下でも可)こと、カルロス・デングラー様がDJゲストとして参加してくれたこと。一生誇れます。



9. Aha Shake Heartbreak/Kings Of Leon(2004)






デビュー前にロンドンの、ステージの段差さえないような小さなバーではじめて見た時以来、僕は彼らの大ファンですが、一作あげろと言われたら、僕はこれにしようと思います。「オラあ、16になるまで、最新のロックも映画も見させてもらわなかったんだべ」と、オン・ザ・眉毛だった当時のケイレブ・フォロウィルはインタビューで語ってくれた(そのとき横にいたジェアドは本当に子供だった!)のですが、そのとき「いくらなんでも、そんなバカげた話が今の世の中にあるもんか。売り出しのための作り話なんじゃないの」と僕も思ってしまったものですが、このアルバムを聴いたとき、その逸話が本当なことを僕は確信しました。だって、ジョイ・ディヴィジョンをカントリー・タッチに解釈するなんて、これまでのロック史において水と油にしか思われなかったようなことを、何の疑問も持たずに平然と表現しきるんだもん!これには腰抜かしましたね。普段、なまじ情報持って生きてきてる人間だったら「そんな成分の組み合わせなんて合うわけがない」と考えもしないようなコンセプトだもの。「真にオリジナルのアイディアのためには、俗世間からの乖離はある程度は必要なんだな」と僕はそのときに思いました。これまで文明に触れてなかった少年たちが、突如ポストパンクやらピクシーズやらU2に目覚めて、それらに純粋に心酔して成長して行くさま。なぜだか「2001年宇宙の旅」のオープニングまで思い出してしまいます。それで今やトップクラスのアリーナ・バンドだもんなあ。



8. Sea Change/Beck(2002)





日本のリスナーはなかなか同意してくれませんが、僕はこのアルバムこそベックの最高傑作と信じて疑っていません。本当に大好きな「心のアルバム」です。これまで「サウンド・コラージュの魔術師」とばかり思われがちだったベックが、彼特有の編集感覚の片鱗を散りばめながらも、真っ向から歌一本でガチで勝負した本当に美しい「うた」のアルバム。この人のこういう指向って「One Foot In The Grave」(94)の頃から既にあったけど、その頃とは決定的に違うのが、彼のシンガーとしての急成長。もともと音域は広くない人だけど、その低い声をいかに渋く響かせ歌うかの術を、彼はこの一作で完全にマスターしたと思います。トム・ウェイツ、ニック・ドレイク、ブライアン・ウィルソン、ジョン・レノン。こうした偉大なソングライターの先達の要素をここまで巧みに噛み砕いたシンガーソングライター・アルバムは、フリーク・フォーク流行りの今日ですが、僕はいまだに聴いたことありません。日本は「Odelay」のイメージを過度に求めすぎるがためか、2000年代の彼を過小評価しがちですが、実は本国アメリカではこのアルバムではじめて全米トップ10入りし、その後も人気を維持している事実を忘れてはいけません。この時の全米ツアーはフレーミング・リップスをバックバンドに回ったんですが、ラッキーなことに、僕は2002年のハロウィンの夜にニューヨークで体験出来ました。一生ものの本当に良い思い出です。



7. Back To Black/Amy Winehouse(2007)




これも本当に大好きな作品ですね。とかくゴシップ的な話題で語られがちな人ですが、この人の発する「声」そのものが、2000年代の音楽の宝だということを、僕らは決して忘れてはならないと思います。女性シンガーとしてはそれこそ、ローリン・ヒル以来の天才の発見なのではないかな。しかも、あの声にして、ウィットに富みまくったリリックから、50s〜60sのソウル、ジャズ、ガール・グループからの影響大の通好みな音楽面まで、すべて彼女自身が作り出しているというのも圧巻です。ネオ・クラシック・ソウルのフォロワーがいくら出てこようが、残念ながら彼女の才能の足下にも及ばない人たちばかりだし、スキニー・ジーンズはいた兄ちゃんたちやギーキーなブルックリン崇拝者がどんなにクールにイキがろうが、この天性の才能とスター性にかなうヤツはほんの一握り。女性だから、音楽性が直接的にロックのフォーマットでないから、わかりにくいかもしれない。でも本来、彼女みたいな存在こそを「ロックスター」と呼ぶべきなのです。



6. Franz Ferdinand/Franz Ferdinand(2004)





く〜、トップ5に入れたかったなあ〜。これも本当に大事な作品だもの。スタート当初のHard To Explainにおいて、ストロークスの「Is This It」同様、収録曲のほぼ全てがフロアでかけてみんなが踊れる必須アイテム的作品でしたからね。もちろん「踊れる」ってポイントも大事なんですけど、このアルバムを僕が好きなポイントはふたつ。ひとつは、ロックンロールとしては最高とも言えるバンド・アンサンブル。スカスカの音空間の中から、贅肉を削ぎ落としたギターが切り掛かり、鋭いスネア・ドラムのロールがその後ろから追いかけるように流れてくる。この、スキニー・パンツよりも鋭く削ったアンサンブル。これ以上にカッコいい4ピース・バンドの構成は、幾多のバンドが登場したこの時代であれ、上回るバンドはなかったですね。あと、DJ的というか、ダウンロード世代的というか、それぞれが全く別々の曲のパートをカット&ペーストして作った斬新すぎる楽曲チェンジ。これも、今日
までフォロー出来た人は出て来てません。このように、あまりにもワン&オンリーのカッコ良さだったために流行りになりすぎてしまい、2009年の今、「ちょっと古い」とさえ見なされ、当のフランツも2ndで音が太くなり、3rdで曲構成が普通になって、この絶妙な輝きを失いつつあるのがちょっと残念。だけど後年、度々振り返られるのは確実でしょう。





author:沢田太陽, category:個人話, 13:10
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極私的Best Albums Of 2000s(5)番外編
あと残すはトップ10のみですが、その前に、惜しくもトップ50入りを逃したものの中から、「こんなのも好きでした」というのをピックアップしてみました。別に51〜60位とかって意味では全然ないです。順位とかは関係なく、アルファベット順に行きます。



Stiff Upper Lip/AC/DC(2000)


 

これが2000年リリースであることを忘れていました。でも、これ、去年出た待望の最新作よりも良い。彼らの場合、レコーディングがソリッドであればソリッドであるほど冴えが出るからね。実際、これ聴いて、「AC/DC、久々にカッコええ!」となって盛り上がっていた矢先に、かの伝説の来日公演があったんですが、何度も言ってますが、僕の一生のうちのベスト・アクトでした。横浜アリーナで、200人規模のライブハウスと同じ音が鳴っていました(笑)!こんなことって、後にも先にも彼らのライブ以外に知らないです。で、その後、長期にわたる活動休止に突入するわけですが、その間、ロックンロール・リヴァイヴァル側からリスペクトが起こったのも納得です。


Love&Theft/Bob Dylan(2001)


これは完全に僕のミスです。50位内に入れるのを忘れてました(笑)。でも、思い出さない時点でそれまでってことだよね。しかしまあ、これはホントに名作ですよ。この前の「Time Out Of Mind」とこの後の「Modern Times」と合わせて”老齢期傑作3部作”とでも言いたいですね。特にこのアルバムは、この人の無尽蔵な音楽的造詣を発揮した意味で驚きものでした。こと”ルーツ回帰”なんてことがあった場合、この人に勝てる人って、やっぱいないんでしょうね。見事です。



The Datsuns(2002)



2000年代初頭になぜか起こった、ちょっと前のハードロック・リヴァイヴァル。アンドリューWK、ダークネス。楽しくて好きでしたけど、この人たちの場合はその範疇でも語られながら、同時にニュー・ガレージのバンドとしても愛されていましたね。それって、NWOBHMというものが今の耳からしたらガレージ・ロックに聴こえる瞬間があるってことですね。それすなわち、レコーディングの感覚の問題なんでしょうね。70sまでの音作りの方が、やっぱロックとしてはあるべき音なんでしょうね。これ以降は、ちょっと考え過ぎな観がありますが、しかし、このままでも流行りが去ったらキツかったからなあ。でも、ロックンロールの選択肢としてはアリな音なんだけどね。



Red Dirt Girl/Emmylou Harris(2000)



この頃、オルタナ・カントリーというのにすごくハマってました。いわゆる、カントリー業界の人がやってる、一般のポップスとさほど変わらない人工的で大味なアレンジの醜悪な感じのものじゃなくて、昔からあるカントリーを進歩的な音楽の視点でいかに解釈するか。それで行くと、この人が90年代からやってるアプローチは素晴らしかったですね。リズムにかかってるエコーとか、ギターのリヴァーブとか、すごくトリップ感あるからね。で、歌声の衰えぬ透明感も素晴らしい。そして、何より、50超えて、白髪混じってこの美貌ってのが衝撃!グラム・パーソンズが生前最後に見つけた逸材だけのことはあります。


Love Angel Music Baby/Gwen Stefani(2004)



この人のことは90年代から見てますが、ノー・ダウト含めて、キャリア上のベストはやっぱりこれでしょう。ネプチューンズやドクター・ドレー、アウトキャストといった、当時の旬どころのヒップホップの精鋭たちと組んだかと思うと、ニュー・オーダー本人と直々に共演したまんま本家なニュー・ウェイヴまで。いろんな角度から楽しめる進歩的なポップ作でした。ただ、この次のソロ作がエイコンとかBEPとか、精鋭とはほど遠い、ただ人気があるだけのヒップホップ・プロデューサーと組んでしまったところを見ると、このアルバムでの直感はたまたまだったのかなあ、と思ってしまうこともあります(苦笑)。いずれにせよ、2000年代に頑張った女性セレブのひとりには違いないです。



The Magic Numbers/The Magic Numbers(2005)




今どうしてるんだろう。でも、猫も杓子も闇雲にバンドがデビューしてた2005年の新人バンドの中では、この人たちがダントツに好きだったんですけどね。アメリカーナをニュー・ガレージ以降のエッジと共に解釈し、そこに子供の歌のようにかわいらしいメロディとハーモニーを舌足らずに歌って…。ネオアコ人脈の間で当時すごく熱い支持があったとはどこかで小耳にしましたが、それもわかる気がします。そう考えると、ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートあたりに代表される今の”ネオ・トゥイー”な人たちの走りだったのかもしれませんね。



Oh No/Ok Go(2005) 




「ジムのランニング・マシーンで踊る人たち」「中国庭園で踊る人たち」。この人たちの世間一般イメージって、そういうものだと思います。だけど、このアルバム、そうしたPVの話題抜きに隠れ名盤だったことって、皆さんはご存知でしょうか。実際問題、リリース直後のレヴューはおおむね好評で、CMJのチャートでも結構上位に入ってたんですよね。PVが話題になるだいぶ前に。このひとつまえの作品だと、いかにもウィーザー直系のフォロワーって感じだったんですけど、これはトーレ・ヨハンソンのプロデュースってこともあって、フランツっぽいポスト・パンクとスウェディッシュ・ポップの柔らかいメロが乗った好盤でしたね。案外、フェニックスの今年のアルバムに近い感じもあります。来年の頭に新作出ます。


Musicforthemorningafter/Pete Yorn(2001)




これも出たとき、すっごく好きでよく聴きました。「ブルース・スプリングスティーンとニュー・オーダーが融合したようなシンガーソングライター」というふれこみでしたが、実際、かなりそのまんまでした。ある意味、この時代の感覚を先駆けていたと思ったのですが、いかんせん当時は比較対象がなく、音楽性的に共通点がほとんどないジョン・メイヤーとかと比較にあってましたね。そういうこともあって売れそうだったのですが、そういう甘口SSWのイメージを嫌ってポップじゃなくなった(単に良い曲を書かなくなった)ために失速しちゃったんですけどね。あとシンガーとしてはもう一歩だったかな。何してるんだろうと思っていたら、今年になってスカーレット・ヨハンソンとデュエット・アルバム出しましたね。評価する人は確実にいる人なので、再浮上の可能性はあると思います。


Razorlight/Razorlight(2006)



レイザーライトというと「リバティーンズと並ぶイースト・ロンドンの兄貴」な印象が強いです。それが故にこのセカンド・アルバムも、そのイメージが欲しい人にとっては退屈なポップ作に映ったようですが、でも僕はファーストの頃から、ジョニー・ボーレルの中にあったディランやルー・リードのようなトルバドールな歌心にひかれていました。モット・ザ・フープルのイアン・ハンターの方が近いかな。それが端的に現れたのが、このアルバムの前のシングルの「Somewhere Else」でしたが、そのノリで作ったアルバムがコレでした。そんなこともあり僕はかなり好きで、実際ウケるとこにはウケてたんですが、ジョニーの舌禍のせいもあり、この音楽的な成熟を「セルアウト」と解釈されてもいました。で、この次の3rdがそっちの方向に振りすぎた、ロックなエッジに欠けるアルバムで自滅気味。こういうこと言うとアレですが、ソロになって本領発揮するには今がいいタイミングかと。曲作りの才能は間違いなくある人だもん。



Diorama/Silverchair(2002)




これは2000年代の若いリスナーにはほとんど馴染みがない作品だと思いますが、これ、いざオーストラリアに行けば”伝説の名盤”扱いされてるほど誰でも知ってるアルバムです。シルヴァーチェアーというと、世間一般には「グランジ・ブームに便乗して出て来た子供たち」という印象が強く、当時はやんちゃな発言も過ぎて嫌われてもいたし、実際僕も白い目で見てました(苦笑)。ただ、それは「若けのいたり」に過ぎなかったんだということは、これでハッキリわかりました。これ、フレーミング・リップスがグランジやったみたいな、ファンタジック・サイケ・ロックの名盤ですよ!あの悪ガキだったダニエル君が、オーケストラをバックにこんな美メロが書ける人だとは思わなかった。これ、実際問題、ヴァン・ダイク・パークスやU2のボノも大絶賛してたのですが、それも納得。今は活動の拠点をオーストラリアに止めてるみたいですが、かの地では今や国民的英雄っぽいです。来年あたり新作の噂がありますが、一度で良いから今のライブ見たいな。











author:沢田太陽, category:個人話, 00:22
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極私的Best Albums Of 2000s(4)20-11位

20.Gold/Ryan Adams(2001)


 


 実は2001年の秋、当初僕が夢中になっていたのはストロークスではなく、こちらの方でした。当時の実感で話すと、期待度はそれほど変わらなかったような気がしますよ。イギリスではストロークスの盛り上がりはそりゃ凄かったですけどね。ただ、この作品は、この当時ホットになりつつあったオルタナ・カントリーをコンテンポラリーな若い層にまでつなげるぐらいの力ありましたね。古き良きアメリカン・ルーツの部分は活かしつつ、ロックンロールの部分はしっかりパンクしててね。ストーンズの「メインストリートのならずもの」にも近いオーラがここにはあったような気がします。この後、彼は近い世代のいろんな才能に嫉妬してか、異様な数の作品を乱発しだすのですが、それはそれで想像力の逞しさはわかるんだけど、悲しいかな、これ以上に輝いている作品はないですね。世界中で悪態つきまくって顰蹙買いまくってるのもいかがかと、今のままでは「後年伝記映画が作られそうな奇才」で終わってしまいそう。マンディ・ムーアにしっかり彼を癒してもらいたいものです。




19. Return To Cookie Mountain/TV On The Radio(2006) 





こと、音楽のクリエイティヴィティで言えば、この時代で1、2位を争う独創性だと思います。トリップホップとシューゲイザーって、90sミュージックの音楽面におけるもっとも先進的な音楽だったと思うんですけど、いつの間にかその流れが止まっていたところ、このアルバムが両者の良いところを咀嚼・吸収して、現在に継承・発展させたような。そんな素晴らしさがこのアルバムにはあります。ギター・ミュージックとしても、グルーヴ・ミュージックとしても、非のうちどころがないです。「音楽処ブルックリン」の象徴みたいな、そんな作品です。顔はナードくささの塊ですが、それを補ってあまりあります。



18.Fever To Tell/Yeah Yeah Yeahs(2003)





この人たちが今日に至るまでに大スターになりきっていないことが、僕には不思議でなりません。ファッション的にはおしゃれウォナビーを魅了出来るものがあるし、バンドの形態、サウンドの鋭角性的にも斬新だし、曲だってコンパクトでわかりやすい。これって、まだまだ敷居やらハードルが高いってことですか?ぶっちゃけ、このデビュー・アルバムが一番わかりやすいだけに、この時にもっとバカウケしてたらなあ。でも、今もって「Date With The Night」のような素っ頓狂なロックンロールも、ミディアムスローの名曲「Maps」の抑制された熟成もいまだ進化中。次のデケイドにも大いに期待です。



17. Poses/Rufus Wainwright(2001)
これも本当に素敵なシンガーソングライター・アルバム。1998年のデビューの時から大好きだったんですが、この人、注目浴びるまでに本当に時間がかかりました。その理由ってやっぱりあからさまにゲイだから?この人に一切の駄作・愚作・失敗作はないのですが、あえて一作をあげるとすればコレ。ジョン・ブライオンの手によるデビュー作も見事なポップ作なのですが、キャンピーな部分がちょっと過剰で聴きにくい瞬間があったものでした。そこへ行くとこのアルバムは、デビュー作における「エイプリル・フール」のような決定的なキラー・チューンこそないですが、余計な装飾を外し、より芯の骨格に近いシンプルな音作りをしているため、彼の楽曲の潜在的な芳醇さがよりストレートに出ています。ただ、歌詞の方では「ヴェニスに死す」をテーマにした「Grey Garden」はじめ、結構濃い目ですが。この時のツアーを僕は幸いサンフランシスコで体験出来たのですが、良い思い出です。



16. Justified/Justin Timberlake(2002)





この時代のポップ・アルバムとしては、やっぱこれが一番でしょう!この当時も本当によく言われたけど、これ、「ジャスティン版オフ・ザ・ウォール」。マイケル・ジャクソンの名作をそのままモチーフに2000年代に現出させたネプチューンズとティンバランドの手腕は本当に見事だったと思います。ジャスティンがマイコー化した「Rock Your Body」、そしてスティーヴィー・ワンダーの「Don't You Worry About Thing」を今風に翻訳した「セニョリータ」。他のアイドルだったまず歌えなかったこうしたオツなセンスの楽曲を、ジャスティン自身もよく歌いこなせたなと今聴いても思います。彼も先進的なイメージが欲しいのか、この次の作品では自身のヴォーカルを減らし、声質までいじくったマニアックなもの作ってましたが、アイドル・ポップの良い部分を残した方がかえって普遍的なことも、これを聴けばよくわかります。


15. Highly Evolved/The Vines(2002)




それは線香花火のように一瞬のことでした。だけど、そんな短い輝きだったけれど、この作品には本当に入れ込みました!ニルヴァーナという存在が、サウンドの構図の部分とセンセーショナルな部分だけが過大解釈され、カート自身が生きてたら絶対嫌ってそうなニュー・メタル野郎に支持されていた中、ニルヴァーナが本来持っていた今にも壊れそうな甘美な危うさを、本来こう継承されていないといけない荒削りなギターと共に表現したのがヴァインズでした。ニルヴァーナというひと世代前のアイコンの概念が今でも充分コンテンポラリーなものとして継承可能なこと。本当に大切な部分を抽出するということが、いかに時代を超えるかということ。それを本作は示してくれました。ものごとに「たら」「れば」は禁物ですが、もしクレイグが音楽的な部分まで自己破綻してなければなあ…。



14. Speakerboxxx/The Love Below/Outkast(2003)





「ヒップホップがまだ進歩的な音楽であることを証明した傑作」ってことになるのかなあ。いや、これ、ヒップホップの概念を通り越した、全盛期のプリンス並みに壮絶なミクスチャー・アルバム。ヒップホップ、ソウル、エレクトロ、ロック。これらの要素を勢いだけで詰め込み、一枚をヒップホップのフィルターで、もう1枚をエンターティナーのフィルターで表現させた、ズバリ1枚ものでも充分画期的だった2枚の作品をひとつにした、後にも先にもない、まるでビートルズの「ホワイト・アルバム」のヒップホップ版とでも言うべき名作ですね。ただ、それが故に、ビッグボーイとアンドレの緊張関係が失われ、その後それぞれがなんかパッとしないのは本当に残念。特にCSとかでたまにアンドレが役者として映画に出て来ると悲しくなります。演技、お世辞にも上手いとは…。アンドレよ!ウィル・スミスには絶対なれないと思うから、とにかく音楽で傑作作ってくれ!



13. Veni Vidi Viscious/The Hives(2000)


「ロックンロールを聴いて頭に血が上る」。2000年代にそれをもっともさせるバンドがハイヴスです。とにかく「Hate To Say I Told You So」は、2000年代を代表する「これぞロケンロール!!!」な名曲。クラシック・ロック・ラジオ局で、AC/DCやらレッド・ツェッペリンと混ぜてかかっても全く遜色のない、本物のロックンロールです。これプラス、「Main Offender」「Die! All Right」もアドレナリン沸騰級のアンセム。これ以降、セールス的にはそれほどパッとはしない彼らですが、それは彼らの音楽のせいではなく、一発屋みたく見えてしまう、若手お笑い芸人みたいなルックスのせいです。絶対にそうです!ただ、インディ界のみならず、ティンバランドやアウトキャスト、ネプチューンズといったR&B系の大物にもすごくリスペクトされている彼ら。「この時代のラモーンズ」として、地道にずっと愛されて行くのは間違いないでしょう。




12. Parachutes/Coldplay(2000)





この10年、このバンドについて書く機会をあまり与えられないのですが、僕、かなり好きなんですよ、この人たち。4枚アルバム出てて、嫌いな作品もないし。でも、ダントツに好きなのは、やっぱりこのファースト!美メロには定評のあるバンドではあるんですが、ここでの曲の優雅さは以降の作品にはない趣きがあります。この時から、後に「U2後継者」と声高に言われることになる要素はあるにはあるんだけど、「Sparks」みたいなゆったりとした深みのある曲は、この後なくなっちゃうんだよなあ。2nd以降の空間的な広がりはこの人たちの持ち味にはなって行くんだけれど、こういう良質シンガーソングライターみたいな素朴に美しい曲、どこかの時点でもう一回書いてくれないかなあ。あと、このアルバムは、インディが閉じたマニア性にばかり走って、醜悪なラップ・メタルとか幼稚なポップ・パンクを野方図にしてたあの時にソッと差し込んだ一筋の光みたいな輝きがありました。そんな時に出て来たからこそ重宝され、可愛がられて、あそこまで大きくなった気もしますね。



11. Is This It/The Strokes(2001)






「なに!Hard To Explainなんて団体率いておいて、この順位とは何事だ!!」。うわ〜、そんな声が聞こえて来そうで怖いよ〜。ただ、これかなり公言してることだけど、リリース当初、僕、このアルバム、そこまでピンと来てなかったんですね。だけど、いろんな状況鑑みて行くうちに、彼らが提示したことがなんだったのかを時間をかけて理解して、もちろん今では全曲に思い入れのあるアルバムになりましたね。ウチのパーティでかかってない曲、ほとんどないはずです。そして2009年の今や、このアルバムでの音作りこそが、欧米のロックバンドの音作りの基本になって来てる。それはフェニックス聴いてもヴァンパイア・ウィークエンド聴いても思うこと。やっぱ、2000年代のロックの音のイメージ、そして、バンドのファッションを形作った張本人はこのバンドしかないし、他はあげれないと思います。それはもちろんわかってはいるんだけど、極私的でこの順位なのは、他のファンの方と比べて、僕自身がメンバー5人に対してある種のドラマを見たりすることがあまりないからなのだと思います。そういうバンドとしても優れてるのにね。






author:沢田太陽, category:個人話, 21:53
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極私的Best Albums Of 2000s(3)30-21位
30.In Rainbows/Radiohead(2007)



 


このテの投票で軒並み上位の「Kid A」ではなく、僕は断然こっち派です。だって「Kid A」って出たとき確かに話題になったけど、あそこで鳴らされた音が2000年代のサウンドを定義したとは思えないし、ましてやレディオヘッド自体の最高傑作だとも思えない。あれを作ることに意義があった作品であることはもちろん認めるけど。むしろ「Kid A」で行ったスタジオでの実験性をステージで血肉化した「アムニージアック」のツアーの方に僕は鳥肌が立ちました。そのレディオヘッドなりの「実験の血肉化」が完全に上手く行った作品がこのアルバムだと思います。この作品も当初はダウンロード先行発売なんてやり口が嫌いで斜めに見てましたが、いったん聴き始めるとクセになり、後にこの中から何曲も自分の鼻歌で出てくるまでになってしまいました(笑)。やっぱ、なんだかんだ言ってもレディオヘッドって「うた」が絶対的に大事なバンドだと僕は信じてます。また、40手前になった枯れ具合がいい感じで出て来てるのも良いです。


29. Neon Bible/Arcade Fire(2007)





僕が上記したように「Kid A」的な価値観にあまり賛同出来なかった理由として、2000年代のロックの流れの大きなひとつであった「安易にテクノロジーに頼らず、人間自身の工夫でまだ出来ることがあるはず」というテーマに僕が大きく惹かれていたというのがあります。その最たる例こそアーケイド・ファイア。クラシックとパンクを両方共に聴いていないと絶対に表現出来ない、あの「優雅な衝動」。あれに関しては、世界規模でもあと10数年はフォロワーでないでしょう。2010年代に向けても僕が最も期待したいバンドのひとつです。


28.White Blood Cells/The White Stripes(2001)




この人たちもとにかく大好きですね。「二人」というバンドとしては制約された状況の中でいかに工夫出来るか。それをサウンドだけじゃなくて、ヴィジュアル面やセクシャル面まで含めて全身で表現したのがこの人たちのカッコ良さです。ただ、このアルバムが出た2001年当時、まだやっぱりライブそのものが見れてないのでそこまで考えて好きになったわけじゃなくて、その時はただ純粋に「いいガレージ・バンドだよなあ」みたいな感じで普通によく聴いてました。今、客観的に振り返ると、純粋に1曲1曲の楽曲単位なら、このアルバムが一番良いかもしれません。特に初心者にはそうかな。


27.Echoes/The Rapture(2003)





2000年代を語る際に、「ロックとフロアを結びつけた張本人」、DFAの存在を見逃すわけにはいきませんが、彼ら絡みの幾多の名盤の中でも僕が一番好きなのはコレ。他の作品ほど電子的な音が聴かれることもないのに、軋んだギター・ノイズと不穏なリヴァーヴ音、そしてラプチャー自身の体を張ったギクシャクした肉感性をもって何にも増して踊れる人間的なビートを作り上げていたものです。この当時誰もがこれに憧れ、結果的にポストパンク・リヴァイヴァルも起きましたが、ここでの音のリアリティを踏襲出来た人は今日まで出ませんでしたね。それは当のラプチャーも含めてのことだけど。


26.Cansei De Ser Sexy/CSS(2006)





これは「ニュー・レイヴ」でも、ましてや「バイレ・ファンキ」でもなくて、まぎれもなく2000年代におけるDIYガールズ・パンク・アルバム。英米のプレスの目が届かない南半球の大都市サンパウロにおいて、ただ単に楽しみたい、踊りたいだけの気持ちで勢いで作り上げた1作がたちまち世界を駆け巡った奇跡的瞬間は見ていて痛快でした。「パリス・ヒルトンに会った」と題して「ねえ、ビッチ、どうよ?」と言ってみる、この世代の女のコじゃないと書けないユーモアとリアリティ、そして、素人の女のコたちの衝動を支えるゲイのメンバーによるプロフェッショナルなソングライティング。そういうとこも含めて、ランナウェイズとかブロンディに通ずる何かを感じます。2ndではこのマジックが薄らいでましたが、ハナエさん。「ツアーやりたくない」と燃え尽きてる場合じゃありませんよ!


25.Ga Ga Ga Ga Ga/Spoon(2007)




2000年代のインディに実りがあったのは何もイギリスだけの話ではなく、アメリカで長年冷や水飲んでいたキャリアの長いバンドたちにとってもそうでした。シンズ、モデスト・マウス、デス・キャブ・フォー・キューティなどはもう全米トップクラスの人気ですが、中でも僕が一番好きなのはこのバンド。名前だけは2000年代初頭から知っていたこのテキサスの雄ですが、これも2000年代的な話ですが、僕が彼らの存在を気にしたのは「The OC」でかかってたから。以降、気になって聴くようになったのですが、それはアメリカ人も同様だったのでしょう。この作品で遂に全米トップ10入り。「ホワイト・アルバム」以降のビートルズのような剥き出しの芯だけの音の骨格から鳴らされる一切の無駄のないロック、そしてフロントマン、ブリット・ダニエルズが吐き捨てるように歌うニヒリスティックなしゃがれ声。心にヒリヒリ来ます。



24.Kala/MIA(2007)




ダンス・フロアが賑わいを見せた2000年代後半ですが、ユニバーサルな視点で最も刺激的かつ有機的なグルーヴを届けてくれた才女がMIA。登場した当時から一部ではかなり注目されてはいましたが、正直その時はそこまでピンと来なかったものです。理由は「音楽性も政治主張も興味深いけど、曲が頭に残らなかった」から。だけど、2枚目にあたるこのアルバムで彼女は見事にそれを克服。ボリウッドな「ジミー」をはじめ、インドと南米の最新ダンス・ミクスチャーな趣の「ボーイズ」、そして「スラムドッグ・ミリオネア」でもお馴染みとなったクラッシュの「ストレート・トゥ・ヘル」使いの「ペーパー・プレーン」。いずれも2000年代後半を彩る見事なアンセムでした。


23.The College Dropout/Kanye West(2004)





今や、「エレクトロな問題発言野郎」な印象が強くなったカニエですが、忘れちゃいけない。キャリアの最初はプロデューサーで、しかもオールド・ソウルのサンプリングの名手。そんな才能をフルに発揮し、かつ、工夫とユーモア溢れるリリシストとしての才能が両方共に開花した名作がコレ。大体、「大学中退」なんて話をネタにするラッパーなんて、後にも先にも彼くらいなものだろう。学校の校長から「子供たちのために良い曲書いてくれんかね」と言われ「クラックかラップを売ってひともうけ」と子供のかわいいコーラスと共に歌う冒頭のナンバーから、イエス・キリストについて言及した問題作「ジーザス・ウォーク」、自らの交通事故をネタ化して笑わせる「スルー・ザ・ワイアー」まで。ひとつひとつの曲調のユニークさとストーリーに耳を傾けるだけで充分に楽しめる充実作です。


22.Rated R/Queens Of The Stone Age(2000)
 



彼らのことを「ラウド系」と思っている人が日本だと少なくないです。それは決して間違いではないと思うけど、でもこれ、どちらかと言うと、「ヘヴィ・ロウファイ・ミュージック」。ギターのリフが重いというだけで、後はしっかりスッカスカのロウファイなロック。しかもヴォーカリストは声が小さいと来たもんだ。そして、このアルバムが出て約10年、この路線を継いで行く者も結局おらず、孤高の存在となりつつありますね。彼らの作品だと、セールス的にはこの次の「ソングス・フォー・ザ・デフ」の方が売れたのですが、「モンスターズ・イン・ザ・パラソル」をはじめ、ここ一番のキャッチーな曲はこっちの方が多いです。あと、当時はジョッシュ・オムの声の弱さを補うべく、当時のコンビのニック・オリヴェリや、そして”グランジ界のジョニー・キャッシュ”とも言うべきスクリーミング・トゥリーズのマーク・ラネガンが数曲歌うためだけに参加する不思議なバンド形態が生むケミストリーも面白かったものです。なまじ真似されにくい作品だけに、これは後々大きな再評価来るんじゃないかな。


21.Good Girl Gone Bad/Rihanna(2007)





誰がなんと言おうと、僕はこのアルバムが大好きです!いろんなディーヴァ流行りの2000年代。僕もデスチャのセカンド・アルバム(これ、1999年のリリース。残念!)以来、このテのアーティストはかなり聴きあさったものです。こういう人たちって、いろんな層にアピールしようとして、何曲かはエッジがあったりするんだけど、他でつまんないバラードとか子供向けのダンスとか混ざったりしてキツかったりする(ブリトニーのアルバムがその典型例)のですが、その意味でこれはものすごくトンがった一貫性があります。大ヒットした「アンブレラ」からして80sのニュー・ウェイヴでしたが、実際にニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」をネタにしちゃった「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」、そして、マイケル・ジャクソンをネタに完全にユーロ・ダンス化してしまった超名曲「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」。これ絶対、R&Bよりも、エレクトロとかインディのファンに刺しますね。加えて、シングル・ヒットの後半あたりから髪型がベリー・ショートになってカッコよくなった(でもモヒカンはやめてね、笑)リアーナ自身も男心的にかなりソソります(笑)。






author:沢田太陽, category:個人話, 15:10
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