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ソランジュ〜「スーパースターの妹」が、インディ・カルチャーでの信頼絶大のクリエイターになるまで

どうも。

 

 

いやあ、もう、本当に今

 

 

この、突如リリースされたソランジュのアルバム。昨日からもう、何度もリピートして聞いています。本当に素晴らしい、「ああ、先進的なクリエイターに成長したんだなあ」と思わせるアルバムですよ。

 

 

でも、すごいですよね。お姉さんのビヨンセは、今の世界を代表するエンターテイメント界のクイーンで、妹の彼女は、サブカルチャーのマニアたちを刺激する、音楽界の中でも有数なエッジィな存在になっちゃって。姉妹がそれぞれ別の意味で、多大なリスペクトとともに成長した例って、音楽以外の世界でもそうは見ませんからね。

 

 

でもなあ。ソランジュが今みたいな成長遂げるのって、昔だったら本当に考えられないこと。というか、よくぞここまでの存在になったと思います。今日はそんな彼女の成長録、そして新作がいかに革新的な作品にまでなったかをお話ししましょう。

 

 

よく考えたら、僕

 

 

 

 

ソランジュって、この時から知ってるんですよね。これが2002年に出たデビュー・アルバムで、この時、まだ15歳ですよ。で、この当時、実はデスティニーズ・チャイルドのジャパン・ツアーに帯同して、前座もやってるんですよね。

 

 

 

 

これ、覚えてますけど、これ、ただ単にお姉さんの路線の真似をしてるだけというか。まあ、その歳で、自分をコントロール術を知ってたら、そっちの方が恐ろしいですけどね。

 

 

 

 

で、この2年後の2004年には、青春コメディ「チアーズ2」でヒロインのライバルのチアリーダーなんて演じてます。今の本人からしたら、これ、絶対黒歴史だと思うんですけどね(笑)。

 

 

で、この頃に彼女は10代にして妊娠、出産もしてしまうので、ちょっとこれは、ノウルズ家が見込んだような成功を妹では得られなかったかな・・と

 

 

思っていたのですが!

 

 

驚くことが2008年秋に起きました。それが

 

 

 

 

これを筆頭とするアルバム

 

 

 

 

突如として彼女はセカンド・アルバム「Sol-Angel And The Hadley St.Dreams」というアルバムを出すんですが、

 

 

これが隠れた名作なんです!

 

 

これ、当時聞いて僕、ビックりしましたね。上の曲は思いっきりスプリームスの黄金期を意識した曲なんですけど、その他にも60〜70年代の音楽へのマニアックなオマージュがてんこ盛りなんですよ、これ。60年代のハーブ・アルパート(みたいな)トランペット曲をサンプリングした渋谷系みたいな曲はあるは、メンフィス・ソウルみたいな曲はあるわでね。で、これに近い時期に、BBキングのステージでデュエットしたりとかね。すごく、マニアックなオールド・ソウル好きはこの頃から知られるようになりました

 

 

そうかと思ったら

 

 

こうやって、自分のライブでMGMTの曲カバーしたり、グリズリー・ベアのライブで客演したりと、この当時のニューヨークはブルックリンのインディ・バンドのライブに足繁く通っては、彼らと友達になってるんですよね。

 

 

こういう経緯から、「ずいぶん、センスがいいんだなあ〜」と思うようになりましたね。で、ちょうどこのころ、姉さんのビヨンセが音楽的につまんない時期でしたから、なおさらそう思いましたね。曲でいうと「Single Ladies」とか「Halo」とか、ヒットは出てたんだけど、別にインディ・ロック聴くような人には「ポップ」にしか思われてないような時期でしたね。

 

 

なので、この当時、「同じ姉妹でもずいぶん違うんだなあ」と思っていたんですが、そんなころにこういうことがありました。

 

 

 

 

ビヨンセとソランジュが2009年のサマーソニックで揃って来日した際、姉妹そろってファッション・ブランドだったか化粧品だったか忘れたんですけど、なんかのプロモーションやったんですよね。その時のソランジュの浮きっぷりがすごかったんですよ。この時、ソランジュ、突然、坊主にして来日しましたからね。これ、テレビでも報道されたんですけど、「比較してくれるな」の無言のオーラ、放ってましたね、彼女。で、しかも、この時の日本の取材陣なんて、ソランジュの趣味的なこととか全く知らないでしょうから、すごく一般向けの「ザ・芸能界」な感じのプロモでしたね、これは。

 

 

で、その後、ソランジュは待てども待てども音源の話がありませんでした。ニューヨークでDJやってるとか、そういう話は聞いてたんですけどね。一説には鬱になったとか言われてもいて心配してたんですが、2014年に

 

 

 

 

「True」というEPを出して、これが好評を博します。このEPはブラッド・オレンジことデヴ・ハインズとのコラボレーションです。今振り返ると、ちょっとデヴ色強すぎたかなと思うんですが、与えた印象はかなり良いものでした。

 

 

で、もう、この映像センスとファッション・センスで、もうかなりサブカルよりになったの、わかりません?ここから彼女の表現スタイルがガラッと今に近づいてきます。

 

 

それには

 

 

 

 

現在の夫のアラン・ファーグソンと結婚したのもこの頃です。彼はフォールアウト・ボーイの一連のMVから、ジャネール・モネエのMVなど、かなり手広く手がける売れっ子なんですが、彼が彼女のヴィジュアル面での洗練されたイメージを引き出すのに大きく貢献します。

 

 

で、こうした妹に徐々に影響されだしたか、姉ビヨンセの作風も2013年くらいから変わってきます。それまではどちらかというと、幼い頃からの「タレント・ショー」のクイーンだったが故か、勢い「歌ってて気持ちいい」タイプのものから、もっと刺激的なビートやサウンドを作り上げるプロデューサーを吟味して選ぶようになってきましたね。僕はこれ、妹からの影響だったんじゃないかと睨んでます。

 

 

そして、そんなビヨンセ姉さんが、ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・ケーニッヒやジャック・ホワイト、ジェイムス・ブレイクなども参加した自身の最高傑作「Lemonade」を出した数ヶ月後の2016年9月

 

 

 

 

ソランジュはアルバムとしては「Sol-Angel」から8年ぶりとなるアルバム「A Seat At The Table」を発表しますが、これが

この年の年間ベストの一つとして大絶賛されました。

 

 

僕、このアルバム、最初、「ちょっと地味かな」と思って、最初はピンときてなかったんですよ。どこか「Sol-Angel」みたいな華やかさを求めているようなところおあって。

 

 

でもですね

 

 

 

 

この2曲のMV見て、このあまりにハイ・アートな完成ぶりに、「やっぱりこれはただ事じゃないな」と思って聞き直して、改めて衝撃を受けたんですよね。

 

 

音数を絞るだけ絞った簡素なサウンドの中に、予てから彼女が好きだった60sと70sのオーガニックな感触のメロディとグルーヴを備え、それを「Sol Angel」の時から定評のあった華やかな彼女自身のハーモニー多重録温で花を添える。そして驚いたことに、このアルバム、全作詞作曲、彼女自身になっていました!

 

 

で、参加メンツの人選も見事だったんですよね。全体の監修が90sの名ソウル・バンド、元トニ!トニ!トニ!のラファエル・サディークで、彼を軸にしながら、ダーティ・プロジェクターズやTVオン・ザ・レディオといったニューヨークのインディ・ロックの友達もしっかり入れてね。そうかと思ったら、この時期に忘れられかけてたサウス・ラッパーのマスターPがトークで参加するという、不思議な展開もあったりね。

 

 

そういうこともあってか、このアルバムは評判も高く、かつ、セールスでも全米1位になるなど、名実ともに注目されるアルバムとなりました。

 

 

・・で、それから2年半。今回満を持して

 

 

 

 

この新作「When I Get Home」となったわけですが

 

 

もう進化が止まらない!

 

 

絶賛された前作を元にはしつつ、そこから全く歩みを止めてはいないですね。

 

 

前作はメロディックでオーガニックでシンプルな、1曲1曲の楽曲素材の良さを大事にしたアルバムでしたけど、今回は

 

 

アルバム全体の流れを重視した、より未来志向のアルバムです!

 

 

で、しかも未来志向と言っても、これが絶妙に「レトロ・フューチャー」っぽいのが味があるんですよ。聞いててこのあたりを思い浮かべました。

 

 

 

 

トッド・ラングレンの「A Wizard A True Star(73)」、スティーヴィー・ワンダーの「Songs In The Key Of Life(76)」、そしてジョニ・ミッチェルの「Hejira(逃避行)(76)」ですね。

 

 

上の2つに関しては、今回大活躍の初期型のシンセサイザーですね。モジュラー通した、生々しい電子音の感じ。おそらくモーグ・シンセだと思うんですけど、あの当時の単音シンセが出す生々しい未来感が今も十分に未来的にひびくのをこのアルバム、証明してますね。それがまず、すごくかっこいいです。

 

 

それプラス、ジャズ期のジョニのそのアルバムは、女性イノヴェーターとしての佇まいと、甘さを抑えたメロディと、ちょっとどことなく、ジャコ・パストリアス風なフレットレス・ベースの浮遊感のようなものを感じるからですね。

 

 

いずれも、あの当時を代表するイノヴェーターですが、彼らを思い浮かばせるあたりが、もうソランジュ、立派なクリエイターですが、今回はそれを

 

 

 

 

ただ、踏襲するだけじゃなくて、今現在の先端な編集感覚のフィルターを通して行ってるんですね。上がティエラ・ワックの「Whack World」、下がアール・スウェットシャツの「Some Rap Songs」と、昨年絶賛されたアヴァンギャルドなヒップホップで、1曲平均が1分台で、それらの短い曲をコラージュした、新しいタイプのヒップホップ・アートだったんですが、ソランジュは、それをそのままそっくりにはやらなかったものの、30秒のインタールードを挟み、2〜3分程度の長さの曲をつなぎ、「19曲39分」の長さでそれをやっています。

 

 

まあ、上のトッドのアルバムがその作りに近いんですけどね。あれも1分台の曲でつないで、という手法でしたから。

 

 

 

 

これがその当時のトッドのイメージ写真ですけど、今回のソランジュのジャケ写になんとなく似てません(笑)?

 

 

あと、今回も参加メンツ、絶妙ですね。全体は前作と同じく、ほとんどの曲がソランジュの単独で作られたもので、全体プロデューサーとして、ジョン・キャロル・カービーという、白人のキーボード・プレイヤーがプロデュースに回ってます。

 

 

今回はそこにタイラー・ザ・クリエイターやパンダ・ベア、サンファといった、いかにも彼女が好みそうなメンツから、メトロ・ブーミンやグッチ・メイン。プレイボーイ・カルティといったトラップ系のアーティストも参加してますが、彼らにほとんどトラップらしいことをさせず、あくまでソランジュの世界に染めてしまう力強さもあります。

 

 

って、この記事の最初の方から比べると、エラい成長でしょ?ここまで来るのにはもちろん才能もあったと思うんですけど、彼女自身のかなりの努力があったかと思われます。尊敬しますね。

 

 

このアルバムで、ソランジュのシーンにおけるカリスマティックなポジションが決定づけられると思いますね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 23:59
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