- 映画「Cold War あの歌、2つの心」感想 歴史翻弄型の、久々の大型正統派ロマンス
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2019.02.19 Tuesday
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どうも。
オスカー、昨日で作品賞ノミネート作のレヴューは全て終わっているのですが、重要な作品ならまだあります。例えば、これですね。
ポーランド映画「Cold War あの歌、2つの心」。これのレヴュー、行きましょう。ポーランドの作品、ということで、もちろん外国映画賞のノミネート作なんですが、この映画の場合、それだけでは決してありません。どういうことなんでしょうか。
では、早速あらすじから見ていきましょう。
話しは1949年。ヴィクトル(トマシュ・コット)は音楽学校の若い教師をしていましたが、その際に、才能あふれる美少女を見つけます。それが
ズーラ(ヨアンナ・クーリグ)でした。ズーラの才能に魅せられたヴィクトルは次第に自分の立場も忘れ、ズーラを愛するようになります。
音楽学校では次第にソ連からの圧力が強くなり、スターリン礼賛を強いられるようになります。創造の自由を求めたいヴィクトルは国外逃亡を考え、その気持ちはズーラもよくわかっていました。
ある時、二人はフランスへの逃亡を試みましたが、成功したのはヴィクトルのみ。一度、接触のチャンスはあったものの、その時も未遂。二人は離れ離れになります。
そうしているうちに時代は1950年代の後半になります。ヴィクトルはパリの映画音楽家として活動していましたが、そこにすっかり大人になったズーラがやってきました。
久しぶりに巡り合い、愛を爆発させたかった二人でしたが、長年の距離ゆえに疎通がなかなかうまくいきません。
ズーラはしばらく見ないうちに、すっかり西側社会の自由な空気の似合う奔放で魅力的な女性に育っており・・。
・・と、ここまでにしておきましょう。
これはですね
2014年度のオスカーで外国語映画賞を獲得した「イーダ」という映画を作った、パウェウ・パウリコフスキー監督の次なる作品です。この映画は1960年、共産圏時代のポーランドにおいて、自分探しをする修道女の少女の内面を探るストーリーをモノクロームの美しい映像とともに追った作品ですが
とにかく映像が美しい、この人!
これは「イーダ」の時のショットなんですけど、モノクロの色合いが絶妙なのと、この絵画的な絵の収め方するんですよね。引きの絵のキマり方がいつも絶妙です。
これ、見ていて
アントン・コービンの撮影したジョイ・ディヴィジョンの写真を思い出して、思わずウットリとしてしまうんですよね。今回の「Cold War」が外国語映画作品にもかかわらず撮影賞にノミネートされた理由も納得です。
そして、今回の「Cold War」なんですが、名前からは「戦争映画?」「歴史映画?」と、ちょっと堅いイメージを思わせるのですが
今時珍しい、直球すぎるほどの、超正統派のラヴ・ロマンスです!
もちろん、「冷戦下の塔王国」というトピックは、ヴィクトルとズーラの愛の距離を近づきにくくするための障害として、非常にもどかしい機能をしています。ただ、この映画でそれ以上に大事なのは、どんな困難があろうとも、二人が、それが運命でもあるかのように、相手のことがどうしても話末れることができずに、どうしても求めてしまう。その姿を丁寧に折っていることが何より素晴らしいです。
特に
このヨアンナ・クーリッグの演技が素晴らしいの一言です。彼女、本国では大女優ならしいんですけど、36歳にして、純粋無垢な十代の少女も全く違和感なく演じていたし、その後の
ジャズやロックンロールという、この当時の東側の人からしてみたら西側の「自由」の象徴であるものがすごく似合う、「強い意志を持ったまばゆさ」の似合う、カッコいい女性、これも魅力的に演じています。
それと
そんな彼女に手を焼き、生き方そのものも不器用ながらも、強い包容力で愛さずにはいられないヴィクトルを演じたトマシュ・コットの演技も見事です。この人も本国ではかなり大きな俳優さんみたいですね。
そしてこれが
監督のパウリコフスキーの、両親のロマンスをもとにして作ったもの、というのもなかなか心憎いです。事実はここまでのドラマがあったわけではなさそうですけど、彼自身が、こういう障害を両親が乗り越えて育った世代、ポスト冷戦の子供、というわけだったんですね。
この映画は昨年12月の、ヨーロッパの映画界では一番の権威、ヨーロッパ映画賞で賞を総なめにしています。その勢いもあって、オスカーでは外国語映画賞、監督賞、撮影賞の3部門にノミネートされるという、非英語作品では異例の盛り上がりです。
が!
「Roma」さえなければなあ・・。
「Roma」、いい映画であることは疑わないんですけど、僕の個人的趣味だと、絶対こっちなんですけどねえ。悪いタイミングの時に当たっちゃったなあ。まあ、同じことは「万引き家族」にも言えることですけどね。僕が外国語映画賞選ぶなら、この「Cold War」ですよ。
そして、さらにこの映画が
「スタ誕」の勢いを微妙に殺してしまいましたね。おそらく、「同じロマンスものなら、こっちだろ」という、オスカーの投票者の流れがあったんじゃないかな。ブラッドリー・クーパーが監督賞のノミネート逃して、パウリコフスキーが代わりにノミネートされたのがすごく象徴的ですもん。
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