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沢田太陽の2018 年間ベスト・アルバムTop50  10-1位

どうも。

 

では、お待ちかね、沢田太陽の2018年間ベスト・アルバム、いよいよトップ10の発表です。

 

 

ズバリ、こうなりました!

 

 

 

 

さすがにトップ10ともなると、ジャケ写見るだけでワクワクしますけどね。どれも本当に大好きです。

 

 

では、早速10位から行きましょう!

 

10.Chris/Christine And The Queens

 

 

10位はクリスティーン&ザ・クイーンズ。

 

もう、このクリスに関して言えば、僕は一昨年に、本国フランスから2年遅れでヒットしたファーストの時からとにかく大好きです。よりインターナショナル展開するであろうこのアルバムは楽しみで仕方がなかったんですけど、見事に期待に応えてくれました!前作は、おフランスらしい優美なソフィスティケイトされたアーティなエレ・ポップを聞かせてくれていたんですが、今回はそのオシャレ路線から一転、80sのちょっとR&Bテイスト寄りのサウンドに、バッサリ短く切った髪と同様(これでかなりLGBTウケが良くなってます)にたくましく進化。前作で、その吐息交じりの発声がズルいくらいにセクシーだったフランス語も、ちょっと聞き取りにくくはあるものの果敢に英語へと変わっていきました。ただ今回も前作同様、ダンスのコアグラフは完璧で、オーディオ・ヴィジュアルの総合勝負ということに変わりはなく、ダンスの指揮力に至っては前作より上ですね。トータルなセルフ・プロデュースの力に長けた、今、世界でも希少な、本物のアーティストだと思います。あえて注文をつけるならば、彼女のメロディメイカーとしての実力を高く証明した「Girlfriend」「Doesn Matter」「5 Dollars」と並ぶ前半に比べると後半がややパワー・ダウンしてるところですが、それが乗り越えられるようだと、その時はもう世界一ですね。

 

 

9.Astroworld/Travis Scott

 

 

9位はトラヴィス・スコット。

 

 もう今となっては、世界各国の誰もが取り入れたがるがために、トラップも急速に大衆的な音楽になりつつあるこの頃ですが、そんな中、「だからこそ、もう一歩先に」とトラップを進化させたいという強い意識を感じさせるのがトラヴィス・スコットのこのアルバムですね。しかも、今のR&B/ヒップホップのオールスター・チーム的な布陣で。ミーゴス、21サヴェージ、スウェイ・リー、ジュースWRLDといった若手から、ドレイク、フランク・オーシャン、ウィーケンド、さらにそれ以外からもスティーヴィー・ワンダー、ジョン・メイヤー、ジェイムス・ブレイク、さらにテイム・インパーラのケヴィン・パーカーですからね!トラックメイカーもドレイクでおなじみBoi 1daやNinteen85、ビヨンセでおなじみHit Boy、さらにトラップの売れっ子のマーダビーツにワンダガールまで。トラヴィス・スコットって、これまで「ゲストは豪華だけど彼自身の姿がよく分からない」と批判も受けてきましたけど、ここまでキュレーションがうまければ文句ないですね。しかも今回の場合、「遊園地を奪われた子供の気持ち」というイノセンスをモチーフにサイケデリックで未来的なトラックを作るというコンセプトもしっかりしています。彼のやり方だと金かかって仕方がないかとは思いますが、オールスターにこれだけクリエイティヴな意味があるのなら支持したいですね。

 

 

8.Tranquility Base Hotel & Casino/Arctic Monkeys

 

 

8位はアークティック・モンキーズ。

 

これは5月のリリース時に非常に物議を醸した作品でしたよね。だけど、ここでも反論させてもらいましたけど、未だに僕はそれ、理解できてません。だってこれ、路線そのものは、中期ビートルズにビーチボーイズにバロック・ポップという、ラスト・シャドウ・パペッツの構成要素に、ヒップホップとニック・ケイヴとデヴィッド・ボウイ混ぜて、それを60sのトータル・アルバム風に作りたかったって感じじゃないですか。しかも曲調そのものだって3rdの「Humbug」よりは断然わかりやすく、ポップで良質な曲も揃えていて。だからリリース直後にファンが一斉に拒否反応起こして、不要なマイナス・イメージ作って足引っ張ったのは非常にマズかったですね。メディアの批評まで彼らにしては不当に低い点で。それがリリース半年経った今、どうなったかというと、年間ベストで結構上位で健闘してるんですよね。前作「AM」ほどじゃないけど、「年間ベスト総合サイト」の「albumoftheyear」でもトップ10前後の高さで、同じ日にリリースされて点数が圧倒的に良かったビーチハウスよりむしろ順位、上ですよ。それだけに、すごく悔やまれます。ただ、そこも含めて、やはり非凡なアルバムなんですよね、豪速球タイプだった「AM」から巧みな変化球へ。こう言うレンジが見せつけられるのも今、彼らくらいじゃないですか。その意味ではやはり、今のロックには不可欠な「真打ち」です。

 

7.Honey/Robyn

 

 

7位はRobyn。

 

Robynというと、もう2000年代の半ばから、「ニュー・レイヴ」の界隈ではすごく人気があって、2010年の2枚のEP「ボディ・トーク」は本格的なエレクトロのファンにコアなところですごく愛されたロングセラーでした。ただ、その後、途中、ロイクソップとの共作アルバムはあったものの音沙汰なし。「どうしたんだろう」と思っていたんですが、今年、ようやく戻ってくれました。しかも、さらに成長した姿を見せる形で!冒頭の、先行シングルにもなった「Missing U」は「これぞRobyn!」という感じの会心の1曲だったんですが、今回もこれまで同様、テディベアーズのクラス・アールンド主体の作品ではあるんですけど、2005年のセルフ・アルバムや「ボディ・トーク」がどちらかというとキレの良いアッパーなチューンが目立っていたところ、このアルバムは若干ダウン・テンポで、より全体の流れとつながりを意識した、これまで以上に表情豊かなアルバムです。その理由としては、活動が止まっていた理由にもなっていたスウェディッシュ・エレクトロの盟友クリスチャン・フォークの死と、今回から製作陣に加わったメトロノミーのジョセフ・マウントの力が大きかったかな。でも、やっぱり今作はRobyn自身の声かな。眉間に皺寄せて、喉から懸命に振り絞られるあのキュートなハイトーンが彼女の魅力ですけど、その痛々しい声の紡ぎがこれまで以上にソウルフルで胸を打ちます。

 

 

6Joy As An Act Of Resistance/Idles

 

 

6位はアイドルズ。

 

イングランド南部ブリストル出身の5人組の彼らですが、アイドルズを抜きに今年のロック、いや、ロックンロールは語れません。コッテコテのブリティッシュ・アクセントでのぶっきらぼうな歌い方に、怒涛のスピードに乗せたヒリヒリするようなフィードバック・ノイズ。そして、垂直にポゴ・ジャンプしながら、人差し指立てながらサビで合唱したくなる欲求不満のアンセム。かようにも、原初的かつ直情的な「初期パンク」の衝動性を持ったもの聴くの、一体いつ以来なんだろう。しかも、多少、ルックスは良くないながらも(笑)、イギリス国内のパブに長時間たむろしてそうな、ワーキング・クラスのちょっとクセのある大人たちが集まっている感じも、この歌を歌うにはすごくリアル。彼らとか、シェイムとかを聞いてると、パンクやポストパンクが本来どういうところから生まれたのか、改めて思い出されます。ロックが行き詰まった時に戻る場所があるとしたら、やはりこういうところですよ。まばゆいばかりの才女で溢れた今のロックシーンにおいて、野郎で対抗する(別に競争でもなんでもないですが)には、これくらいのパワーがないと、やっぱりダメだと思います。また、この前年に出たアルバムでの直情ハードコア路線から、楽曲のスケール感がグンと上がっているところにも強い伸びしろを感じさせます。今、最もライブを体験したい、リアルに熱いバンドです。

 

 

5.Invasion Of Privacy/Cardi B

 

 

5位はカーディB。

 

ヒップホップは僕の場合はこれが今年の最上位になります。カーディは今年、このアルバムもそうだし、フィーチャリングでも引っ張りだこだったから、どうしてもポップなイメージがついちゃって、ややもすると本格評価をする人が減りがちなところもある人なんですが、僕はこの人、ちょっとビックリするくらいの才能感じたんですよね。まず、驚いたのは、この人、ラップのフロウがトゥパックにソックリなんです。シングル曲聴いてた時点で、「どこかで聞いたあるんだよなあ、この感じ」と思った時に「そうだ!」と思ってトゥパック聴いたらやっぱりそうで。エモーショナルで人をやる気にさせるリリックを、独特なリズムと抑揚でスケール感膨らまして、バックのトラックに乗りやすいポップさを作るあの感じ。これ、全く同じこと、ケンドリック・ラマーのエージェントの社長も言ってるのでなまじ嘘ではないと思っています。これが根底の武器にあるからか、トラップでも、ラテン・ダンス・ポップでもバラードでも、どれが来ても軸が全くブレないんですよ。もうすでに今の時点で、トラップの時代が終わっても全然大丈夫な雰囲気さえ作り上げているのも立派です。スピードとかワード・プレイに関して言えばニッキ・ミナージュの方が上だとも思うんですけど、フロウと曲の記憶の残り方に関してはカーディの比ではないですね。しばらく彼女の時代、続く気がします。

 

 

4.Clean/Soccer Mommy

 

 

4位はサッカー・マミー。

 

僕は「良し悪し」と「好き嫌い」は似て非なるものだと思っていて、こういうベスト企画みたいなものは「良し悪し」で判断しているつもりですが、実は「好き嫌い」だとこのアルバムが一番かもしれないと思っています。サッカー・マミーことソフィ・アリソンはテネシー州ナッシュヴィル育ちの、1997年生まれの21歳。人生最初のスターがアヴリル・ラヴィーンでテイラー・スウィフトも普通に好きな子だったようです。前回紹介したスネイル・メイルが生粋のインディっ子だったのに比べると、そこまでマニアックな音楽に凝った形跡もありません。なんですが!いざ、曲を歌いはじめてみると、とにかく曲のセンスが抜群にいい!なんか無意識のうちにギターを抑える指が絶妙に洒落たコードを抑えている感覚があるというか。あと、周囲のセンスも絶妙なのか、なんかダイナソーJRを女の子っぽくキュートにしたようなギラー・アレンジあるし。あと、リリックも、まだ彼女と世代の近いスクール・ライフでのリアリティを描く才が巧みで、甘酸っぱい恋物語でのロマンティシズムや強気な女の子の気持ちをテンポ良いライムで畳み掛ける力もあったり。歌唱力など、まだミュージシャンとしての経験の浅さは伺えますが、天賦の職業作家の才能はものすごく感じるので、今後、その方面で大成する可能性もありです。いずれにせよ、インディ・ロックの枠を超えた活躍を期待したいです。

 

 

さあ、いよいよトップ3! 第3位は

 

 

3.Golden Hour/Kacey Musgraves

 

 

3位はケイシー・マスグレイヴス。

 

これも今年大絶賛のアルバムですけど、これは衝撃のポップ作ですね!少なくとも、これまでのカントリー・ミュージックの歴史で、ここまで実験的なアルバム、なかったですからね。インディ・ロックの世界では決して珍しくはない手法ではあるんですけど、やはりサイケデリックなアレンジとか、後期ビートルズ風の生スネアのディレイとか、ボコーダーとか、エレクトロのリズムとか、ディスコのビートとか、そういうものが一緒くたになったカントリーはさすがに聞いたことがない。しかも、ケイシーの書く楽曲そのものはカントリーのマナーを決して裏切っているわけでもなく、伝統楽器のバンジョーなんかもしっかり鳴らされているわけで。これ、カントリーどころか、現状のインディ・ロックよりも断然刺激的だったくらいです。本作をプロデュースで支えたの、ダニエル・タシアンと言って、2000年代にザ・ビーズという、地味渋なインディ・ロックバンドがあったんですけど、その中心人物。本作で一躍引っ張りだこのクリエイターになると思いますが、彼とケミストリーを起こして好ポップ・チューンを連発したケイシーのソングライティング能力にも脱帽です。そしてケイシー、「本当はテイラーにこそ、こうなって欲しかったんだけどね・・」と思っている、音楽にうるさい殿方たちのハートも、これで確実にわし摑みしたものと思われます。

 

 

続いて行きましょう。第2位は

 

 

2.Be The Cowboy/Mitski

 

 

2位はMitski、ミツキです!

 

いやあ、これはですね、結構感慨深いものがあるんですよ。僕の年間ベストというのは、基本「インターナショナル」で中学生の時からずっと来ているのですが、「邦楽」とカテゴライズはできないものの、それでも人生のある時期まで日本国籍のあった日本名も持つ人が2位になったのなんて初めてですよ。そしてもちろん、僕のこんなちっぽけな年間ベストだけじゃない。かのピッチフォークで1位になったのをはじめ、世界の名だたる年間ベストで軒並み上位(6媒体で1位、24媒体でトップ10)ですからね。やっぱり僕の職業柄、大坂なおみも勿論嬉しかったですけど、Mitskiの快挙の方が断然嬉しいことは否定できないですね。

 

じゃあ、Mitskiの何がそんなにすごいのかいうと、彼女の人種のことが国際的には色々言われますけど、それ以前にやはり僕は音楽的な才能の方が先だと思います。まずはソングライターとして非常に多彩なこと。インディ・ギターロックから、フォーク、(やや

)エレクトロ、バラードとどんなタイプでもキラーのメロディが書ける。この才能、かのイギー・ポップが絶賛した話はご存知ですか?そして、元がクラシックやってた人なのでポップ・ミュージックの通常の曲展開をいじってたり、とりわけ2コーラスめ以降を大胆に削ったりするももかなり刺激的です。そして、その上での、「USインディ・ロックにおける女性マイノリティの代表」ですね。彼女を筆頭にジャパニーズ・ブレックファストのミシェル・ザウナー(韓国系)とか、ジェイ・ソム(フィリピン)をはじめとしたエイジアン・インディ・ガールのブームの筆頭格になり、その血筋が「孤独・疎外感」をテーマにした彼女自身のリリックに説得力を与えているのも強みです。もう、ビルボードのアルバム・チャートでも52位まではすでに上がっているんですが、今回の年末でのこの盛り上がりで次作での期待感はハンパないものになるでしょう。その時は日本でも盛り上がって欲しいんですけどね。

 

 

ちなみに、ミツキのこのアルバムがですね、

 

 

11月29日の時点までは1位でした(笑)!

 

 

前も言いましたよね。その時までは「女性がトップ5独占」って。そう言ってた時の順位は「1位ミツキ、2位ケイシー、3位カーディ、4位サッカー・マミー、5位ロビン」の順だったんですよ。それが最終日の11月30日で崩れてしまったがために、上のように順位、いじりました。もう、独占することに意味がなくなってしまったから。

 

 

「どうせ、あれなんだろ」と言う声が聞こえてきそうですが、1位はこれでした。

 

 

1.A Brief Inquiry Into Online Relationships/The 1975

 

 

 

はい(笑)。勿論、The 1975でした。

 

「そんな、たった1日判断だけで、年間1位にできるものなのか」。そう思われる方もいるでしょう。ええ。でも、厳密にはですね、「たった1日」どころの話ではなかったですね。もう11月30日の配信開始直後の1回目のストリームの、まだ聞き終わらないうちから「あっ、もう、これが圧倒的に1位だね」と決めたから、正確には1時間以内でしたね(笑)。でも、選んで後悔も何も全くないですね。それは、「僕がこれがとにかく好きで好きでたまらない」からでは厳密にはなく、他の、2位から10位までに入ったアルバムとは、もう、「志」の時点で明らかに何かが1枚も2枚も違う、ただならぬ何かを感じたからです。

 

 その最大の理由は、彼ら自身が確信犯的に「名作を作るモード」になりきっているからです。そんなことを思いつく心境そのものがかなり図々しいんですが(笑)、それをやりきってしまうからすごいんです。その一つとしては「現状のロック以外の他ジャンルの音楽や、過去から未来のあらゆる音楽をジャンルに関係なく自分に可能な限り取り入れる」という無軌道な音楽精神があるんですが、彼らはインディ・ロックリスナーだけでなく、EDMやトラップにしか興味のないミレニアム・キッズに向けてもこれを正面から届けている。売れるために媚びるのでもなく、「そういう人たちは自分のリスナーにはならない」と切り捨てるのでもなく。前作では、今日のバンドがルーツに持たない「忘れ去られた80sの隠れたポップの宝」を再発見しようとすることで一部上の世代(僕とかのことです、笑。他にも結構知ってるけど)を味方につけましたが、そのソングライティングのセンスは今作もしっかり軸として残せてもいる。誰にも背を向けてないんです。あとはそこに、「ネットの世の中に抱える社会とコミュニケーションの問題」という現代的なトピックを彼らなりに咀嚼して、その一大音楽パノラマの主題にしているのも見事です。そこまでのことが考えられて制作されたアルバムが他に見当たらない。1位で当然です(笑)。こういう姿勢がロック界で受け継がれれば未来は明るいんですけどね。

 

 

・・というのが今年の僕の50枚でしたけど、楽しんでいただけたら幸いです。

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 02:22
comments(3), trackbacks(0), - -
Comment
沢田さんの年間ベストアルバム非常に興味深く読ませていただきました。
ありがとうございます!
k.k, 2018/12/16 7:39 PM
ベストからワーストまでとっても面白かったです!ありがとうございました。
やっぱりTHE1975は強かったですね!私も大好きです。
ALI, 2018/12/17 4:47 PM
年間ベスト&ワースト発表お疲れさまでした!とても楽しく読ませていただきました!チェックしていないアルバムもあったので、参考にさせていただきます。
mg, 2018/12/17 7:59 PM









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