RSS | ATOM | SEARCH
ライブ評「ポップロード・フェスティバル(2018.11.15@サンパウロ)」Lordeとブロンディの新旧ロック・ディーヴァの揃い踏みに感動!

どうも。

 

 

ちょっと仕事が押した関係で、更新しながらのアップになりますが

 

 

 

 

11月15日に行ったサンパウロのラテン・アメリカ記念館(と言っても野外ですが)で行われたポップロード・フェスティバル、これのレヴューやりましょう。

 

 

このフェスは、サンパウロの音楽ジャーナリストが主催しているもので、毎年、1日限りではありますがかなり鋭角なラインナップ組んでくれる良質なイベント。去年もPJハーヴィー、一昨年がウィルコ、その前がスプーンとベルセバなど、毎年オイシイんですけど、今年はLorde、ブロンディ、MGMT、デス・キャブ・フォー・キューティー、アット・ザ・ドライヴ・インというかなり豪華な並びでした。

 

 

では見た順に。

 

 

・アット・ザ・ドライヴ・イン

 

 この日は昼の12時にイベントがスタートしました。国内組のアーティストも素敵な感じだったので、午前から外に出る気満々だったのですが、家を出ようとした途端に大雨!あまりに雨脚が強いので「ちょっと小止みになってから」と思っていたら、なかなか出れず。少しずつ会場に近づくような行き方してたら3時を回っていました。

 

 なので、3番目に出演したアット・ザ・ドライヴ・インも、会場が駅前なんですけど、駅から聞こえてきたのが2曲目。空耳アワーでの「童貞ちゃうわ!」の曲でした。そこからリストバンドの引き換えとかいろいろしてたら、彼らの姿を見たのが3曲くらいになってしまいました。

 

 ATDIはミレニアムの頃、最も旬なバンドだったんですけど、当時、初期エモとポストロックって好きになろうとしてどうしても難しかったジャンルでしてね。ATDIも、2、3回ライブ見てるんですけど、どれもピンとこなかったんですね。なので今回、「改めてもう1回!」と思ったんですけど、天候アクシデントでちゃんと見れず。「やっぱ、縁が薄いのかなあ」と思った次第でした。

 

 で、聞いていくうちに何がそうさせるのかがわかりました。ギター!僕の好きなギター・スタイルって、AC/DCとかハイヴスみたいな、「リフでロールする」タイプだったりするんですが、彼らの場合、それがなく「♩チラリラリララー」みたいなフレージングでリフ作ってリズミカルじゃないんですよね。そこが多分、身体的にノレなかったのかな。ただ、そこが冷静にわかっただけでも収穫ではありました。

 

 

・デス・キャブ・フォー・キューティ

 

 

続いてデス・キャブ・フォー・キューティ。僕がライブ見るのは2回目ですね。ブラジルではこれが初のライブでした。

 

ただ、一つアクシデントが。フロントマンのベン・ギバードが多分ギックリ腰だと思うんですけど、腰を痛めた都合で椅子に座ってのライブでした。そのことは主催者側から発表され、「そこまでして」という心意気に打たれてファンは大盛り上がりでした。

 

 このライブに関してはATDIとは逆に、「これまで僕がうまく捉えきれてなかったのかな」と若干の後悔もありました。これまで「ウィーザーの内気ヴァージョン」とか「声が弱いなあ」とか「歌詞がよく読むとキモいな」とか思っていたんですけど、ライブで見ると、そうしたキャラクターが徹底されている感じがして、「アイデンティティがかなりしっかりしたバンドだな」という印象になりましたね。

 

 昔からそうだし、近作の曲(多めにやりました)が余計にそうなんですけど、やはり「ニュー・オーダーのギター・バンド解釈」みたいな曲をやらせたら、いい曲書きますね。この辺りはちょっとメランコリックなアルペジオのフレーズ聴くだけで高揚するものありました。あとベンの歌い方も、どうしても力が入らず空気が抜けるような歌い方ではあるんですが、でも声はそれでもちゃんと聞こえるし、ただ単に脆弱というわけでもない。この辺りのバランス加減もいいなと思いました。

 

 あと、女の子が歌詞を口ずさんでる姿が印象的でしたね。僕は「失恋した男の女性への粘着性」みたいな歌詞って好みではないんですが、「そこにシンパシー覚える女性って案外多いのかな」と思いながら見てました。大合唱になる曲に限ってそういう曲だったし。ベンの場合、どうしても前妻のゾーイ・デシャネルを思い出すんですけど、「リアル(500)日のサマー」みたいに実生活でも至ってしまったことを考えると、皮肉にも説得力は増したのかな、とも思いましたね。

 

 

・MGMT

 

 

この日の目玉はLordeでしたが、僕はMGMTも気になっていました。このバンドに関しては、もう「終わったな」とさえ思っていたのですが、今年でた新作「Little Dark Age」が会心の復活作で、久しぶりに満足感得られたので、すごく楽しみになっていました。

 

 

 ただ、これまで彼らのライブは3度見ているのですが、一度たりとも良いと思ったことがない。とにかくマインド的にもう未熟も未熟。「いつになったら学生インディ・バンドの気分、抜けるんだよ」というくらい、ステージ上でおどおどして、オーディエンスとのコミュニケーションもまともにとれない、演奏力は推して知るべしなライブをずっと見せられ続けてガッカリしてましたからね。これが傑作ファーストの頃に立ち返ったようなアルバムとともにどう変わるか、楽しみでした。

 

 天候は一度止んだ雨がまた降ってきたんですが、このバンド、サンパウロ的には究極の雨男です。だって、やった3度のライブで全て雨降りましたからね(笑)。2014年の時なんて豪雨の中で見て、地面が土だったんですけど、川辺みたいになりましたからねその記憶があったので「まただ」と思いながら見てました。

 

 で、結論から言うと、「こんなライブに前向きに向かい合ったMGMT、初めて見た!」というくらい、真摯なものを感じました。アンドリュー、まだオドオドしていて、「視線、どこ見てんだよ」とツッコミたくなる瞬間はあったものの、それでもオーディエンスに話しかけたり、手でウェイヴ作って客と一体となる瞬間作ろうとしたり、これまでにない姿が見られました。演奏や歌も、これまででは間違いなく一番安心して聴けましたね。

 

 そうした本人たちの努力と、新作のクオリティが気に入られてたんでしょうね。これまで、「ファーストの人気曲聴き終わったら客が帰る」というのがすごく見られた光景だったんですが、この日は「James」「Me And Michael」といった新作内のキャッチーな曲もすごく人気でしたからね。構成的にも「Kids」で大団円で終えるのではなく、「Electric Feel」で続けて、最後にファーストの中のシングルでなかった「The Youth」でシメるなど、「自分たちでライブをこう運びたいんだ」という彼らのライブに対しての気持ちが伝わってきたのも好感持てました。

 

「こういうライブがデビューの時からできてたらなあ。せっかくの才能が10年、無駄になっちゃったよ」とは思ったんですが、今からでも遅くはないから取り戻して欲しいですね。

 

 

・ブロンディ

 

 

続いてはブロンディ。僕は10年くらい前に東京で「最後のツアー」を見たはずなんですが、いつの間にか撤回され(笑)、デボラさん、御年73歳なんですが、全然元気にやってます。

 

 ちょうどフェスなので、ディナーを取らねばならず、Lordeは前方で見たいのでその時間を有効利用したかったので「ブロンディの最初の方を犠牲にするか」と思い、人気のピザ屋台で窯焼きピザを待ってて、それは思いの外、早くできたのですが、1曲だけ、オープニングの「One Way Or Another」を見逃したのだけが非常に悔やまれます。

 

 それにしてもデボラさん、カッコいい!この日のファッションはオレンジの色違いのタンクトップにスカートで、スカート部分はとってケープにできる仕様になっていましたね。あとトレードマークのブロンドはウィグっぽかったんですけど、サングラスして歌うと妙に様になってカッコよくてね。元々、低めの声で歌うので声の衰えはさほど目立たないし、声の艶はまだ全然現役。姉御肌の、ちょっとつっぱった口の悪そうなエラそうな風格もカッコいいし、「ボーイズ」ともいうべき、若い(と言っても余裕で中年ですが、笑)野郎バンドを従える姿も元祖ロック・クイーンらしいです。

 

 選曲も、「ブロンディの先駆性」を示したものばかりで過去の曲が構成されてるのもよかったですね。「ハート・オブ・グラス」「アトミック」「ドリーミング」「コール・ミー」「夢みるナンバーワン」、そして「ラプチャー」。パンクも、エレクトロも、レゲエもヒップホップもいち早くみんなやって、それを流行にしてしまった「モード」と「ポップ」の絶妙なバランス感覚。これ、今、「クラシックス」として聞いても全然新鮮。そこに、その感覚とあまり違和感のない新曲群を足してね。ロック界の温故知新のためにはやはり必要な存在です。

 

 

彼女とか、スティーヴィー・ニックス、パティ・スミス、ハートのアン・ウイルソン。プリテンダーズのクリッシー・ハインドもそうかな。いずれも40年くらい前から「ロック・クイーン」として君臨し、今もしっかり現役やってますけど、女性アーティストが今やロック界で不可欠で男よりもパワーあるんじゃないかとさえ思える昨今ですからね、彼女たちパイオニアの存在はいまいちどしっかりリスペクトを受けるべきだとの思いを強くしましたね。

 

 唯一残念だったのは、デボラの夫でバンドリーダーのクリス・スタインが欠席してたことですね。「残念ながら今日はこれてないけど」という説明がデボラさんからあっただけで理由は語られませんでしたが、年齢が年齢だけに気になるところです。

 

 

・Lorde

 

 

 そしてヘッドライナーはLordeです。ブロンディが終わると同時に、オーディエンスが一斉に前の方に集まっていきました。僕ももちろん、その中にいました。

 

 Lordeを前回見たのは、2014年のロラパルーザでしたね。あの時は夕方のスロットで第3ステージの扱いのところで見ました。「Royals」がすでに大ヒットしていた割にはそこまで人は多くなかったですね。まだ’一発屋かも?’と思われた時期でもありましたしね。だけど、もう、この日は早くから前の方はギュウギュウ。周りにも、アルバムのツアーTシャツを着た男女で溢れかえっていましたからね。Lorde、まだ22歳ですが、もうしっかりカリスマになってますね。この時点でかなり嬉しかったものです。

 

 

 そしてライブが始まると、もう、その盛り上がりが凄まじかった!僕の周囲、もうどの曲も最初から大合唱の嵐ですよ。どの曲も、どの曲も。こう言うライブを見るのはラナ・デル・レイもそうでしたけど、ブラジルのオーディエンスの、カリスマティックな女性アーティストでの熱狂ぶりは本当にすごい。単語のひとつひとつ、全部覚えて合唱に備えますからね。そのせいで、肝心な音楽の方が聴こえなくなりますからね(苦笑)。

 

 そしてLorde自身もお見事なものです。ファースト・アルバムは本当に音数が少ない作品だったので、ライブも彼女以外にドラムとシンセと一部ギターのような限られた編成でしたけど、セカンド「メロドラマ」で幾分音の要素増えたと言っても、ミニマルな音構成はそのまんま。大きな会場でやるにはスカスカな音なのに、それでもしっかり魅了できるから大したものです。一つには、今回のツアーからつけたアーティな動きのダンサーたち。これが彼女のサウンドのシンプリシティと絶妙に呼応する感じで、基本的に静寂な音世界とうまくケミストリーを起こします。そしてもう一つはLordeのカリスマ性ですね。声の出る出ないでいえば、フローレンスよりは全然でない方だとは思うんですが、あの独特の声の呪術性で歌世界の緊迫性を上げるあの魔力はさすがですね。これだけで会場を一つにできます。そして、レッドのロングドレスをただ単に着てるだけなんですけど艶やかさも増してますね。前回が暑い時にやったからスポーティで軽装だったのもあるんですけど、やっぱ、この人は基本、ドレッシーに着込んだ方がいいタイプですね。よく比較されるケイト・ブッシュ同様、ヘアとドレスは長い方が絶対にいいタイプです。

 

 そして今回改めて思ったんですけど、彼女のさらなる魅力は、その「エモーション」なんですよね。ステージでは彼女、本当によく喋って。コミュニケーションとって自分の気持ちを訴えますね。ブラジルにいかに早く戻ってきたかったか、今日のライブがツアーのラストから2番目でいかに気持ちが高揚しているか。こういうことを伝えるのがうまい。そして曲に説明を加えるんですけど、特にブラジル人の心をつかんだのが「Liability」の前振りですね。彼女はここで「この曲は、どうしてもある規範に自分をカット・ダウンできない人の疎外感を歌ったものなんだけど、いいのよ、カットダウンなんてしないで。そのままのあなたが素敵なんだから」と語った後、会場のとりわけ女性が悲鳴に似た叫び声をあげます。「この国でも特にそうなんでしょ。カットダウンしようとする感じが強まってて」というと、もう会場は「Ele Nao!」と、女性嫌いで有名な極右大統領、ジャイール・ボウソナロに対するアンチの掛け声をあげます。Lordeはニヤリと微笑んだまま、ボウソナロについてはあえて言及せず、そのまま「Liability」を、曲途中で感極まって涙を流しながら熱唱。こうしたエモーションとパッションが、結局のところ、彼女を支えているんだろうと確信しましたね。

 

この後は最大の代表曲「Royals」を惜しげもなく、ラストから3、4曲目で披露してもなんの打撃にもならないくらい他の曲でも十分盛り上がって、ラストは「怒りや孤独、クレイジネスをぶつけて盛り上がりましょう」と呼びかけて「Green Light」の大団円で幕を閉じました。

 

 この先に出たデボラ・ハリーとは51歳差。これにもおどろくばかりなんですが、ロック・ディーバのトーチはこの22才の才女に確実に受け渡された、ある意味、歴史的瞬間の目撃者になれたようで、嬉しい一夜でした。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 21:38
comments(0), trackbacks(0), - -
Comment









Trackback
url: http://themainstream.jugem.jp/trackback/3662