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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第15回)ジェスロ・タル その2 10-1位

どうも。

 

 

では、昨日の続き、行きましょう。

 

 

 

全オリジナル・アルバム「FromワーストToベスト」、ジェスロ・タルの第2回。今回はいよいよトップ10の発表です。どんな感じになったでしょうか。早速10位から見ていきましょう。

 

 

10.Too Old To Rock Roll To Young To Die(1976 UK#25 US#14)

 

10位は1976年に発表した邦題「ロックンロールにゃ老だけど、死ぬにはちょいと若すぎる」。中学生の時に、「昔、こんな邦題のアルバムがあったんだ」というインパクトでまず覚えましたね。タルの場合、ルックスは昔から老けたイメージだったのでピッタリな感じではあったんですが、これ発表したの、彼らがまだ20代後半だったんですよね。それで、このタイトルのセンスというのは、この当時のロックの社会的イメージを表してて興味深いですね。今なんて20代後半なんて言ったらロックの世界だと下っ端ですからね(苦笑)。

 

 このアルバムですが、ライブの定番でもあるタイトル曲がまず強烈ですね。佗しいんだけどユーモアもある、いかにも英国人気質が現れた曲で微笑ましいんですが、この曲のフレーズがアルバムを通して繰り返されもするので、どうしてもこの曲のイメージが先行してしまう作品でもあります。ただ、全体的にフォーク色が強く、それが次のアルバムから築かれる次の黄金時代の前段階のようにも聞こえて興味深いんですよね。タルは70s後半、復活を遂げます。

 

 

9.The Broadsword And The Beast(1982 UK27 US#19)

 

 9位は1982年発表のこのアルバム。上の分割写真だと3段目の真ん中です。

 

 1982年といえば、元イエスやEL&P、キング・クリムゾンのメンバーらが集まったエイジアが大ヒットしたもののポップになって「産業ロック」などと揶揄された時代ですが、それだけプログレ・バンドが生き残りに苦労した時期です。70s後半に盛り返したタルも80sに差し掛かる頃にはまた没落していたんですが、このアルバムでまたしても持ち直します。

 

 このアルバムは、これまでのブルーズやフォーク、ジャズの傾向を弱め、前作「A」で取り入れたシンセサイザーを主体としたモダンなハードロック路線だったんですが、これがうまくいっています。80sの始め頃ってこれに限らずいいハードロック・アルバム、多いんです。確かに70sの時のように泥臭くはないんだけど、同時に80s後半ほどオーヴァー・プロデュースでゴテゴテしてもなく、ギター・サウンドもソリッドで、曲も短くなったから聞きやすいんです。そんな時代に彼らもシンセというモダン・ファクターをうまく使いながらもソリッドにロックし、仕上げにイアンのフルートを添えてくる。どんなに方法論が新しくなっても、伝家の宝刀のフルートがあるからアイデンティティは揺らぎようがありませんからね。

 

 あと、サウンドが洗練された半面、「剣」をモチーフにすることで、彼ららしい中世のファンタジー感覚を生かしたのも良かったですね。欧米の古株のクラシック・ロックファンが思い浮かべる「ヘヴィ・メタル」のイメージって、まさにこう言う感じだったりもします。

 

 

8.Benefit(1970 UK#1US#3)

 

8位は1970年発表のサード・アルバム「Benefit」。この頃のタルって、イメージ的にまだどちらかというとプログレというよりはレッド・ツェッペリンとかディープ・パープルにむしろ近いブルージーなハードロックのイメージなんですよね。まだ、長大な曲とか組曲とかやってませんからね。

 

 ただ、このアルバムから、ジャズ的なインプロヴィゼーションは少し目立つようになりますね。ドラムの手数が多くなったり、変拍子みたいなものが曲によっては目立つようになります。あと、フォークのテイストも濃くなってきますね。最初の2枚のイメージを保ちながらも、少しずつ脱皮していく感じの時期ですね。

 

 ただ、ファーストやセカンドと比べると、代表曲の印象が少し弱いかな。だから、この位置になったんですけどね。それでも「Teacher」や「With You There To Help Me」、当時のアルバム未収録でこのアルバムと並行シングルとなった「Witch's Promise」はやはり代表曲ですけどね。

 

 

7.Heavy Horses(1978 UK#20 US#19)

 

 70年代後半の傑作の2枚目ですね。この前作のアルバムで、「ブリティッシュ・トラッドフォークを主体にドラマティックな曲を展開する」というパターンになっていたんですけど、このアルバムでも基本的にそれは踏襲しています。むしろ、フォーク色は前作よりも濃くなっているくらいです。今作が面白いのは、ここではそこに、ファンクやディスコ調のリズムが加わっていることです。ストリングスの入れ方もなんとなくフィリー・ソウルっぽい感じがして。それが絶妙に、トラッド・フォークで使うフィドルの音とオーヴァー・ラップする感じなんかも面白いですね。

 

 曲の印象度合でいけば、前のアルバムの方に分がありますが、このアルバムのタイトル曲もライブでは欠かせない定番。さっきも言ったような、郷愁を誘うフォークとモダンなグルーヴとの融合と展開が面白い一曲でもあります。

 

 

6.Crest Of A Knave(1987 UK#19 US#32)

 

 1987年発表。彼らの後期の代表作ですね。

 

 これに関しては、70年代のイメ−ジとまったく違うと判断することでファンの中では忌み嫌う人もいたりする作品ですが、僕は傑作だと判断しています。確かにこのアルバム、ギタリストのマーティン・バーの、この当時のヘヴィ・メタル・シーンを意識したギター・ソロは過剰なくらいになるし、80sに入ってからのエレクトロ路線もまだ続いている。80s後半っぽい、ちょっとオーヴァー・プロデュース的な作りも否定はできません。

 

 ただ、それでも僕がこのアルバムを高く評価するのは、彼らが時代の流れに順応していく中で培った手法をこのアルバムでうまく生かしていることですね。これに関しては他のプログレのアーティストがうまくできなかったことです。さらに、そうしたモダンな試みも行いつつも、ここではしっかり、タルの固有のオリジナリティとして根付いていた「ミステリアスさ」が久しぶりに感じられる作品になっているからです。その象徴が「Budapest」という9分にも及ぶ大曲なんですが、この東欧の街で出会った言葉もうまく通じない女性との謎めいたロマンスを描いたこの曲は当時から人気で、その後のライブでも大定番の曲になっています。あと、これもそうだし、「Said She Was A Dancer」もそうですけど、「なんだかんだ言って、セクシーでエロティック」だったりするイアンのリリックが、40男として成熟した彼の色気とともにこれまで以上にリアルな説得力を持っているんですよね。こういう持ち味は、血気盛んな若い時分だったら表現できなかったと思います。

 

 そういうこともあり、このアルバム、僕も高校3年で覚えてますけど、結構チャートではロングヒットしたんですよ。それもあったから、「このバンド、どういうバンドなんだろう」と気にする僕が生まれた、というのも実際にあるんです。あと、これは知らなかったんですけど、このアルバムからのシングル曲、「Steel Monkey」あたりは当時のベテラン・バンドとしては異例のMTVのヘヴィ・オンエアにもなっています。

 

 そうした背景があったので、このアルバム、グラミー賞で初めてのヘヴィ・メタル部門でメタリカに勝って受賞したりもしています。当時もそうだし、今も「変なチョイス」と言われがちなエピソードですが、よく知ると実はそこまで意外ではないです。

 

 

5.Thick As A Brick(1972 UK#5 US#1)

 

1972年発表の4枚目で「ジェラルドの汚れなき世界」の邦題とジャケ写で有名な作品ですね。

 

 このアルバムは、昨日紹介した「A Passion Play」とともに、タルが「世に流行っているというプログレなるものをうちらもやってみるか」とばかりに作った、彼らのキャリア史上2枚だけの組曲形式のコンセプト・アルバムです。このアルバムも、LPのA面、B面、それぞれ20分近くの組曲、それぞれ一曲ずつ、という構成です。

 

 僕はこの組曲形式というのがあまり好みではなく、それがゆえに順位も初の全米ナンバーワンという記念すべき作品の割に意外と低くもつけたりもしたんですけど、ただ、この形式がこの当時のロックの一つの象徴であることは理解しているつもりだし、その方向で時代を代表する作品を作った、という意味では客観的に高く評価しているつもりです。

 

 というのも、これ、コンセプトがハッキリしてるから。ストーリーそのものも、ジェラルド・ボストック君なる8歳の架空の少年が書いた架空の詩に曲をつけたという設定になっているんですが、英国式センス・オブ・ユーモアを感じさせるウィットに富んだ優雅な気品が全体を通して存在するし、曲の主題となり何度も繰り返される牧歌的なフルートとアコースティック・ギターのリフもすごく耳に残るフレーズだし、その合間に展開される演奏も、「組曲」というクラシック的な感じよりは、彼らが本来得意としていたジャズのインプロヴィゼーションからの影響の方を強くにじませている感じといい、すごく「ジェスロ・タルらしさ」があるし、それが当時に彼らが持っていた時の勢いとともに衝動的に表現されているのがいいです。こう言うコンセプト・アルバムであるのならば、僕も歓迎しますね。

 

 

4.Songs From The Wood(1977 UK#13 US#8)

 

 4位は今日的な再評価が非常に強いアルバムですね。1977年の「Songs From The Wood」。このアルバムの人気は、去年だったかな、このアルバムのデラックス盤が発売された際、UKチャートで28位を記録したほどなんですよね。

 

 なぜ、そういう評価になっているのかといえば、それはやはり、彼らがこのアルバムでの自らの立て直しの仕方にあったと思いますね。つまり「トラッド・フォークを主体として、展開力のある新たなロックを構築した」ことにあるでしょうね。タルの場合、これまでのアルバムだったら、サウンドの要になっていたのは、ブルーズ・ハードロックのヘヴィなリフだったんです。そこを彼らは、アコースティック・ギターとヴォーカル・ハーモニー、そしてバグパイプを模したエレキギターもそうですね。これらを主体とし、そこにハードロックやジャズのインストに通じる展開力にあふれたアンサンブルを表現することができた。それがここまで決まったアルバムを僕は他に知らないですね。

 

 あと収録曲のレベルもこのアルバムはすごく高いですね。タイトル曲はトラッド・フォークの名曲としても通用するし、「Cup Of Wonder」「Hunting Girl」の「ハードフォーク」と言った味わいのドラマティックな曲展開にはカタルシスを感じますし。

 

 ちょうど時代はパンクロックのでてきた時代で、ハードロック/プログレはかなりの突き上げも食らうことにもなりますが、そこにもはや「形式」として形骸化した「プログレ」ではなく、文字通り「進化」したサウンドを提示することがしっかりできた意味でもこれ、賞賛に値すると思います。

 

 

3.This Was(1968 UK#10 US#62)

 

 

 

 ここからはジャケ写月でいきましょう。3位はデビュー・アルバム「This Was」。邦題でいうと「日曜日の印象」というヤツですね。

 

 ここまでも書いてきたように、ジェスロ・タルは様々な音楽的変遷をたどっていて、いろんな音楽要素をものにしてきました。もちろん、それもかなり魅力的なことであり、それがあったからこそ、彼らは長寿バンドにもなったとは思います。でもですね、本音の本音を言ってしまうと、僕は初期のドロドロなサイケをやっていた頃のタルが一番好きです。そして、そのことはおそらく当の本人たちもわかっているんでしょうね。ライブにおいて最も演奏頻度の多いのは、僕が選んだトップ3とまったく同じです。

 

 このファースト・アルバムなんかは、もうプログレというよりは、本当は純粋に「ブルース・ロック・アルバム」というべきなんでしょうね、本当は。この年に、ピーター・グリーンのフリートウッド・マックとか、フリーとかもデビューしているわけだから当時のUKロックとして同時代的な必然性がかなりありますしね。実際、この当時はまだ、イアンが完全な実権を握る前で、バンドにはミック・エイブラムスという優れたギタリストがいまして、本来なら彼をバンドのスターにしようとまでしていたほどです。

 

 イアンはそのミックの売り出しの結果、ステージでのギターは奪われてしまったのですが、そこで「なんか楽器を弾いてステージでアピールしたい」と思って手にしたのがフルートでした。後にも先にもロックでフルートがメインのバンドなんてないし、それが結果的にタルを歴史上においてでさえも珍しいタイプのバンドにしているのですが、このフルートの不穏な響きがですね、サイケだったりヘヴィでダークなハードロックにはすごく似合うんですよ。やっぱフルートって、どこか密教的な謎めいた雰囲気、ありますしね。

 

 このアルバムは「Sunday Feeling」「Beggar's Farm」「A Song For Jeffrey」とブルーズ・ロックの名曲が多いんですけど、イアンとミックの対立が深まり、ミックはたった1作で脱退してしまいます。そのあとミックは自分のバンドも作りますが、開花できずに終わってしまいます。タルはキャリアの最初にいきなり惜しい才能を失ったわけですが、そんな”伝説のメンバー”の才気がみなぎるアルバムでもあります。

 

 

2.Stand Up(1969 UK#1 US#20)

 

 

 

 続いて2位ですが、セカンド・アルバムの「Stand Up」です。

 

 前述のイアンとミックとの対立ですが、これはミックがもっとブルーズ・ロック寄りにタルをシフトさせたいと願っていたところ、イアンがもっとジャズやフォークまで含めて包括的に大きなサウンドを表現するバンドにしたかったことで起こっていますが、このアルバムはそんなイアンの音楽的理念が早くも結実したアルバムです。

 

 実は、アルバムのハードさでいうと、ファーストよりこっちの方が断然ハードなんですよ。このアルバムはレッド・ツェッペリンのファーストとセカンドの間にリリースされているんですが、人気曲の「A New Day Yesterday」なんかはほとんどこれ、タル版の「幻惑されて」、もしくは「胸いっぱいの愛を」ですからね。かなりハードなんですよ。さらにもう一つの人気曲の「Nothing Is Easy」はピーター・グリーンのフリートウッド・マックみたいな正統派なブルーズ・ロックでもあったし。こうしたブルーズ・ハードロックのアイデンティティは、ミックの気持ちとは裏腹にさらに強化されているんですよね。

 

 そして、それでいて、確実に進化も見せています。その象徴が「Bouree」という、バッハの曲をイアンのフルートで演奏したインストがあるんですが、この時期からすでに「ハードロックにクラシックやジャズ、フォークの要素を導入」という意識はかなり明確です。それゆえ、プログレとも呼ばれるんでしょうけど、でも、それだけだったら僕はむしろレッド・ツェッペリンに近い気がするんですけどね。

 

 あと、CD時代以降だとボーナス・トラックで聴ける、この時期の彼らのシングル曲なんですが、これがまた秀逸なんですよね。「Living In The Past」はジャズ・フォークというか、全く同じ時期のヴァン・モリソンの「Moondance」に通じることをやってますし、「Sweet Dream」ではホーンを配したハードロックとここでもわかりやすく刺激的な実験をやってますね。これらの曲は彼らのアルバム未収録曲の初期ベスト「Living In The Past」に入ってますが、このベスト盤も秀逸。今回の対象に入れてたらこのアルバムと並ぶくらいの出来ですよ。

 

 

1.Aqualung(1971 UK#4 US#7 )

 

 

 

 そして1位はやっぱりこれですね。最高傑作「Aqualung」。これで彼らは初めての全米トップ10も記録し、インターナショナル・ブレイクも果たします。

 

 このアルバム、僕の位置付けだと、「裏レッド・ツェッペリンIV」なんですよね。ツェッペリンのそれが、多様な音楽性を含みながらも、結果としてすごくダイナミックなハードロック・アルバムになっているものだとしたら、タルのそれがこのアルバムです。音楽的に深みがありつつ、スケールの大きな曲展開でスカッと爽快に楽しめる。同じ1971年のリリースではありますが、こっちの方がツェッペリンのソレより半年ほどリリースが先なんですよね。ツェッペリンの方がもしかしたらこれを意識したかもしれません。

 

 僕、思うんですけど、もしイアン・アンダーソンがロバート・プラントばりに高音を張り上げて歌えるシンガーだったら、タルのこの先もハードロックのままだったんじゃないかと。あるいはイアン・ギランみたいに叫べたり、オジー・オズボーンみたいに声に猟奇性があったりしたら。そこがそうならなかったのは、イアンが低音の美声でノーマルかつ丁寧に歌う人だったからじゃないかと。声にパワーのある人ではないですからね。それがゆえに、このつぎの2作のアルバムで組曲形式という「ザ・プログレ」な方向に行ったのかなと。本当にあの2枚のアルバムがなければ、もしかしたら今頃はプログレに分類されるバンドではなかったのかもしれません。

 

 このアルバムは彼らの中では圧倒的に人気でして、今でもライブではここから最低でも4曲くらいは必ずやってますね。リフがものすごく有名なタイトル曲に、ライブでは必ず最後に演奏される「Locomotive Breath」、「My God」「Mothergoose」、そしてタルの大ファンを公言するアイアン・メイデンのカバーでも有名な「Cross Eyed Mary」。ここまで代表曲があったら、そりゃ、1位にもなりますよね。

 

 タルに偏見がある人はまずはここから聞けば良いと思います。絶対イメージ変わりますから。そこから初期に飛んだり、コンセプト期、フォーク・プログレ期、シンセ・ポップ期、アダルト・メタル期に飛んでみると、僕の言うところの「ゲーム・オブ・スローンズ感」というのが少しわかってもらえるかな(笑)とも思いますので。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 10:56
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