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アークティック・モンキーズの新作炎上騒ぎに見る、欧米でのロックに対する渇望感

どうも。

 

では、今回も、この話題、行きましょう。

 

 

アークティック・モンキーズの新作「Tranquillity base Hotel&Casino」をめぐる、ファンの騒ぎですね。日本だと僕はどういう反響なのか知らないんですが、欧米圏では、レヴューやってるサイトのフェイスブックの書き込み、どこ見ても大炎上です。困ったことに、アークティックのオフィシャルの書き込みにもそれが流れててね。「おいおい、落ちつけよ」という感じです。

 

 

だいたい、僕が理解できないのは、いくら今回、彼らが変わったとはいえ、それが決して予測不可能な変わり方ではなかったことなんですね。だって、ラスト・シャドウ・パペッツ聴いてたら、60sのムーディな雰囲気をアレックスが好んでいるのはわかるし、ピアノだって彼はニック・ケイヴのファンでもあるんだからこれも分かる。ヒップホップのダークでヘヴィなビートが好きなのは、セカンド・アルバムの時から明らかだし、彼本人が公言しています。

 

そして、どんなアルバムが今回作りたかったのかというヒントも、ご丁寧に分かりやすく出してるんですよ。アルバムの5曲めと7局めには思い切りビーチボーイズの「ペット・サウンズ」を意識したアレンジをやってるし、9曲めに至ってはビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」の最後のフレーズ、思い切り歌ってますしね。60sのサイケ期のようなトータル・アルバム作りたかったのはそこからも伺えるんですよ。

 

だから、しっかり、アルバム制作の焦点は定められているし、確信を持って作ったはずなんですよ。それなのに、いわゆるジャーナリストまでもが「ラウンジ趣味の変なアルバム」とかってレヴューしたりね。「おいおい。LSPとか、ちゃんと聞いてるか?」「楽曲構成そのものだったらHumbugの方が変なアルバムなんだけど、あれより曲が難しいか?」って突っ込みたくなるんですけどね。

 

 

 それに「ロックをやめてしまった」だの「初期のリリックにあったエモーションが失われ、今や成金趣味に陥った」とか不満を垂れる人が多いんですけど、別にギター弾くのを完全にやめて全編エレクトロになったわけでも、アフロ・ビートを導入したわけでもないのにね。あと、30も過ぎて、工業都市の退屈な日常を生きてナイトクラブから追い払われる生活描く方が変でしょう?成長とか、センス・オブ・ユーモアとかわからないのかね、と思いますね。

 

 

 もう僕的なことでいうと、まだ年間ベストはどのあたりに入れるかはまだ先すぎてわからないんですが、3ヶ月おきにやっているトップ10には、もう宣言します。必ず入れますよ。彼らのキャリアの中でも、「AM」や「Favorite Worst Nightmare」ほど好きかはわからないんですが、僕はデビュー作、好きですけど、そこまで入れ混んだ作品でのもないので、それと同じくらいかそれ以上か。残りの2枚よりは確実に好きですね。

 

 

 ただ、一点だけ、僕がアークティックが今回のアルバムを出すにあたり、一つだけ計算違いだったのは

 

リリースするタイミング

 

これが良くなかったのかなあ、とは思います。

 

それは僕がこないだ「ポップ・ミュージック雑感」で書いた、グレタ・ヴァン・フリートが密かにアメリカで売れている、という話に通じるものです。ここに詳しく書いてますけど、実はギター・ドリヴンな”ロックらしいロック”というのは潜在的に渇望されている音楽で、ロイヤル・ブラッドもキャレオもフェスでライブやればすごく人気がある、という話を書きました。

 

 

 どうやらアークティックも、その一つとしてカウントされていたフシがあるんですよね。イギリスでもアメリカでも「AM」がかなり長いこと売れた背景にもそれがあると思いますしね。実際、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミとはサーDお・アルバム以降、懇意だったイメージもありますしね。

 

 加えて、そのアルバムから5年経っていたこと。ここ最近、そういうギターによるロックが売れてなくて、エレクトロとの折中したようなものがやたら目立っていたこと、フェスのロックバンドの出演領域が削られていたこと、往年のロッカーが次々と世を去ること、ギター・ブランドのギブソンが破産申告したことなど、ロックでいいニュースが入ってこない。そういうこともあって、

 

 

欧米のロック・ファン、かなりイライラがたまってるんだと思うんですね。

 

 

それがああいう形での炎上での爆発になった、ということなんでしょうね。もし、アークティックがハードなロック・アルバムをこのタイミングで出していたら、かなりのヒットになってたと思います。それこそ「ロックファンの数少ない頼みの綱」みたいな感じでね。

 

 

僕としては、アークティックはそうしないでよかったと思います。そんな打算に走らず、作りたいときに作りたいアルバムを作ることでバンドとして「死に体」にならないようにするのが、彼らみたいなフロントランナーのバンドには必要な姿勢なんでね。だから、今回のアルバムはこれでいいし、ファンももう少し理解と歩み寄りが必要だと思うし、もう少し時が経てば落ち着いてものが見えるような気もしてるんですけどね。

 

 

それにしても、こないだの「スター・ウォーズ」もそうなんだけど、このネットの世の中って、自分の中で吟味しきれないタイミングで「ワーッ!!」って簡単に炎上するの、なんとかならないのか、とも思いますけどね。

 

それから

 

 

 

ロック聞いてて、こういう「驚きの展開」ができにくくなるのは、それはそれですごく悲しいですけどね。アークティックの今回の方向性って、この2曲と比べてみても唐突な感じはしないし、通常の路線から別段「不似合い」な感じもないんですけどね。

 

まあ、でも、

 

 

 

イギリスでは2位から20位の売上を合計した数よりも売れてるそうです!

 

 

そこが救いだし、時間かけて噛み砕いて聴いて欲しいんですけどね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 20:10
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