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ケイティ・ペリーがリオ公演で神対応

どうも。

 

 

最近、ブラジルであるショッキングな事件が起きまして、もうこの5日くらい、「もう、この事件のニュース以外のことが起こってないんじゃないか」くらいの勢いで話題を独占しているんですが、そんな矢先

 

 

ちょうどブラジル・ツアー中だったケイティ・ペリーが、かなりすごいことをやってしまいました。

 

それがこれです。

 

 

15曲めの「Unconditionally」を歌っている最後に、その事件の犠牲者となったマリエーレ・フランコさんの遺影が上がったんですね。

 

 

 

このマリエーレさんという人はリオの市会議員でしたが、14日に、何者かによって、乗っていた車を横から銃撃され、頭に4発の銃弾を受けて38歳の若さで亡くなったんですね。

 

 

彼女は人権運動の闘士として地元リオでは大変有名だった人です。ファヴェーラ(スラム)出身で、友人が警察とドラッグ・ディーラーとの銃撃戦に巻き込まれて殺された体験から政治家を志し、苦学ののちに2016年に急進左派系の政党から立候補して、全体の5番目の得票数を獲得してリオの市会議員に当選。その後はリオの議会一のキレ者として、女性問題や黒人問題に関してのプロジェクトをリーダー的存在となって牽引していました。とりわけ、「ファヴェーラの黒人に対する警察の暴力の問題」、彼女はこれに最も大きな問題意識を抱いていました。

 

 

 彼女の存在は、アメリカで例えて言うなら「Black Lives Matter」のブラジル版の重要なリーダーの一人、と言っていいかと思います。そんな彼女が、死の数日前に改めて警察によるファヴェーラでの暴力を批判したところ前述のような形で殺害されてしまった。しかも、現在のリオは警察の腐敗が非常に問題してされていて、陸軍が警察の代わりに統治しているような非常事態。腐敗したリオの警察が、気にくわない彼女を黙らせるために殺したのではないかとの憶測がすぐに国を駆け巡ったところ

 

 

ブラジルの全国で一斉に抗議運動が起こったんですね。実はこれ、まだ続いています。それくらい、本当に大きな問題です。そのタイミングで、ケイティがマリエーレの遺影をいきなり掲げたものですから、あまりにタイムリー。しかも場所がマリエーレの拠点だったリオ。もう、盛り上がらないわけがありません。

 

 

で、これだけでもかなりすごいことなのに

 

 

 

 

なんとケイティ、その直後に、マリエーレの遺族、妹さんと娘さんをステージに上げて紹介したんですね!これ、ビックリですよ!

 

 

 

ブラジル国内のアーティストでも、カエターノ・ヴェローゾ(この人、ブラジル芸能界の左派のリーダー的存在です)をはじめとして追悼ライブみたいなものをやってましたけど、遺族を登場させたという話は聞いたことなかったですからね。

 

 

 

 で、この時のケイティの振る舞いが飾りがなくて、まっすぐでよかったんですよ。まず、二人の肩を抱いて「私たちがちゃんとついてるからね」と激励。年齢が30代でしっかりした大人のマリエーレの妹さんに対してはマイクを預けて彼女にメッセージを言わせる。そして、まだ10代で、緊張とお母さんを失ったショックでとにかくステージ上でも泣き続けた娘さんには「ママはこれからもずっとあなたを見守るはずよ。あなたは美しい。きっと世を照らし続ける存在になれるはず」と言って抱擁・・。

 

 

 いやあ、この立ち居振る舞い、見事でしたよ。名司会者並みの演出で驚きましたね。全然嘘くさくなく自然にやれてるところがね。また、事件から4日しか経っていないのに、こうやって「自分のステージに上げて激励しよう」とした行動力の早さもすごいよなと。

 

 

 また、この娘さん、可哀想でもあったんですよ。全国から激励される一方で、別の方向では、極右連中によるネット上での嫌がらせも横行してましたからね。特に今のブラジル、前の13年続いた左翼政権が汚職で倒れて以降、極右が増えて左翼嫌悪が強まってましたからね。そこで急進左派のマリエーレが注目されることに気に食わない人たちが「人が死んだってのに、何、ムキになってイデオロギー闘争してんだよ、バカ」って言いたくなるくらいにマリエーレのことを中傷してね。ついには「彼女の娘はリオの犯罪組織の親分との間にできた子供」「その暴力団に貢いだおかげで当選できた」とかいうフェイク・ニュースまで撒き散らされて精神的に参っていたタイミングでもあったんですよね。ケイティのこの件が励みになってるといいですけどね。

 

 

 ケイティ自身も、2016年のアメリカ大統領選でヒラリー・クリントンを支持した時に、「言動があまりに政治的になりすぎでは」と批判されたりもしてたし、昨年出たアルバムも内容的にも商業的にも今ひとつピリッとはしてませんが、今回の件に関して言えば、ブラジル在住者としては、やっぱりかなり嬉しいことですよね、これは。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ブラジル, 12:06
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