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映画「レディ・バード」感想 「インディの女王」が描く、個人的日常の中に潜むドラマ

どうも。

 

 

オスカー作品賞対象作、この映画も見たので、あと1本です。ということで、今回の映画レヴューはこれです。

 

 

 

この「レディ・バード」、こちらのレヴューをしましょう。この映画、当初、全くのどインディな配球の作品で、賞レースそのものも考えられていなかったんですが、評判が評判を呼んで遂には、全米映画批評家協会賞だったり、ゴールデン・グローブのミュージカル/コメディ部門で作品賞を受賞したり。今回のオスカーでも5部門にノミネートされています。一体、どんな映画なんでしょうか。

 

 

早速、あらすじから見てみましょう。

 

 

 舞台は2002年のカリフォルニア州のサクラメント。本名はクリスティーン、しかし、その名前が嫌いで自分をレディ・バード(シアーシャ・ローナン)と名乗るこのドラマのヒロインは高校の最終学年を迎えていました。彼女は街に退屈さを感じ、ニューヨークをはじめとした東海岸の大学に行きたがっていました。決して裕福ではない家庭で看護婦をして生計を立てている母マリオン(ローリー・メトカルフ)から、家庭の経済事情や先行きの不安、前年に起こった911のテロなどを理由に強く反対され、地元のカレッジに行くことを希望します。

 

 

 レディ・バードは、頼り甲斐はないけど、娘に強く理解を示す優しいパパ、さらに、メキシコ系の養子の兄と、その彼の謎のカノジョとともに生活していました。

 

 

 

 

レディ・バードは、規律の厳しいカトリック系の高校では、ちょっとした反抗児にも映ってましたが、優しくも口うるさいシスターともしばし対立します。

 

 

 

そんな彼女には、ちょっとずんぐりむっくりなジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)という大親友街て、彼女と一潮に演劇部に入ります。

 

 

 

その演劇部でレディ・バードはダニー(ルーカス・ヘッジス)に惚れ、恋に落ちます。

 

 

(中略)

 

 

続いてレディ・バードは、学校のバンドでベースを弾いているロック少年のカイル(ティモシー・シャラメ)と恋に落ちます。保守的な環境は嫌いだけど、基本、根は良い子ちゃんなレディ・バードは、ちょっと不良っぽいカイルを前に、自分が自分らしくいられるかが微妙なシチュエーションとなります。その一方で、進路の選択の時は確実に迫り・・。

 

 

・・と、ここまでにしておきましょう。

 

 

これはですね

 

 

元はと言えば、インディペンデント映画界隈で、今ちょっとした女王人気の女優グレタ・ガーウィッグの初監督映画作です。

 

彼女と言えば

 

 

 

日本のインディ映画のファンの間でも人気の高い映画ですね、「フランシス・ハ」の主演女優として有名です。これの監督のノア・バウムバックの私生活でのパートナーでもありました。

 

それから

 

 

去年公開された「20センチュリー・ウーマン」では、主人公の高校生の少年に、パンクロックの存在を教える、ニューヨークからLAに渡ってきたフォトグラファーの役でもかなり高い評価を受けていましたね。

 

 

 こうして、女優として期待値の高かった彼女が、34歳の若さにして、初の監督作品としてこれを作ったらたちまち大絶賛。ロットントマトーズでは100点満点という、ありえないすごい評価まで受け、「やはりインディの才女は違う」と唸らせていました。彼女はこの作品で、まだオスカーでは珍しい女性監督としてのノミネートをデビュー作で記録するという快挙も成し遂げました。

 

 

 で、この映画なんですが、僕の率直な感想は

 

 

実に彼女らしい!

 

 

 そういう感じでしたね。

 

 

 音楽にも通じることですけど、こういうインディペンデントな人って、「すべての表現は出し尽くされた」という言葉なんて信じずに、ただ、自分の表現したいものを表現している、ただ、それだけなんですね。だから、この映画、特殊な映像表現も、無理やりなプロットのひねりもありません。だけど、本人に描きたいものと、それに対するストーリー・テリングの熱意と説得力、それさえあれば脚本も映画も作れる!そういうことを証明したような映画ですね。

 

 そういう意味では、パンクロックというか、ローファイというか。そういったものに似たような感じがしたし、そうした「個人表現欲求」がある限り、映画とか音楽って、いつまでも作ることが可能なジャンルだな。そういうことを思わせてくれましたね。

 

 

 これ、特に、設定が2002年でしょ?しかも、グレタはサクラメントの出身です。ということは・・・

 

 

 

これ、彼女の実質上の自伝なんです!

 

 こういう風に、その頃の本人とシアーシャの劇中での写真を比較するものまであるくらいです。ちなみに、劇中でこの当時の彼女が好きだった音楽も明かされますが、まあ、「インディの女王」にはあまりふさわしくないものだったりします(笑)。そういうとこまで含めて、彼女の話だったんだなと。

 

 

 ただ、個人のお話ではあるんですけど、そこで描かれていることって、この年頃の女の子なら誰しもが体験すること、なんですよね。心配性の母親との将来のことでの対立とか、友情とか、保守的なものへの反発心とか、恋とか。そういう、「オール・アバウト18歳」みたいな要素が誇張なく、自然に作れているのもいいですね。勢い、アメリカのティーン・ムーヴィーって、いいんだけどコメディ要素を無理に強めようとするところもあるんだけど、この映画はそれを抑えめにして、クスッと笑えはするんだけど、極めて自然体な筆致で描かれているところがいいです。

 

 

 そんな、グレタの若き日の人生を

 

 

 

 

シアーシャ・ローナンが見事に演じてくれています!

 

 

 

彼女見事ですよね。その前の主演作「ブルックリン」も、極めて日常的な話だったのに、彼女の演技見ているだけで、結果が分かってるのに、なんか見ていてドキドキしてしまう。その場面ごとの演技に強いリアリティがあるから、結果的にそうなってしまうんですよね。これって、かなりの演技力がないとできないことですが、彼女、まだ23歳。これからがまだ非常に楽しみです。

 

 

そんな彼女の周りにいる周囲の人たちとのケミストリーも抜群でしたね。オスカーにもノミネートされたお母さん役のローリー・メトカルフに目が行きがちですが、お父さん役のトレイシー・レッツも良かったし、ベスト・フレンドのジュリー役のビーニー・フェルドスタイン

 

 

この子ですね。彼女がなかなか場面を作る演技したので、僕的に注目です。この子はセス・ローゲンのコメディ「The Neighbor 2」でクロエ・グレース・モレッツのベスト・フレンド役として出てくるんですが、その時から印象に残ってる人でした。

 

 

 

あと、ルーカス・へッジス、彼はここ2年で3作品がオスカーの作品賞にノミネートされていますね。去年の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、そして今年が「スリー・ビルボード」でのフランシス・マクドーマントの息子役、そしてこれ。彼も21歳とすごく若いんですけど、有望ですね。

 

 

そして

 

 

ティモシー君!

 

 彼の主演映画「君の名前で僕を呼んで」を僕は大絶賛していますが、それが日本で4月公開で、これが6月公開。もう、その頃には、かなり日本での人気に火が付いているんじゃないかな。ここでの役は、ちょっと嫌なタイプのものなんですが、主要作2作品の立て続けの公開で、そういう流れになりそうな気がします。

 

 

 この映画、オスカーはどうか、ということになると、正直難しいと思います。「シェイプ・オブ・ウォーター」や「スリー・ビルボード」ほど熱烈な支持者がいるとも思えないので。ただ、それでも、こういうインディの正道みたいな映画がちゃんと評価されることはすごくいいことだと思うし、グレタが、女優としても監督としても、今後カリスマ化していく契機を作るのには最適な映画であることは間違いありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 12:04
comments(4), trackbacks(0), - -
Comment
本当はこういうタイプの作品にこそ作品賞とってオスカーに風穴を開けてほしいんですけどね〜。面白ければどインディ青春コメディ映画が作品賞だっていいじゃないかー!!!(笑)公開がとっても楽しみです。
haru, 2018/02/17 8:35 AM
親友役のビーニー・フェルドスタインちゃん、ジョナ・ヒルの妹だったんですね!似てる!演技が上手いの納得です。兄みたいに痩せないで欲しいな(笑)
haru, 2018/05/27 7:33 PM
>haruさん

やっと、お返事できます。返せなくて申し訳なく思っていました。

ビーニー、そうだったんですね!ビックリ。あの体型、遺伝だったのか。演技もかなりうない兄妹ですね
太陽, 2018/05/27 9:26 PM
いえいえ!お返事頂けるなんて。好きにコメントしてるだけなので、逆に気を使わせてしまって申し訳ありません。
ほんとかなり演技力高めな兄妹!作品選びもコメディ寄りでいい感じですね。
本作、日本ではやっと一昨日から公開になって早速観に行きましたが最高でした!!
上映館数は少なめですが、かなり人いっぱいでしたよ。ティモシー君効果もありそうでした(笑)
haru, 2018/06/03 3:42 PM









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