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映画「シェイプ・オブ・ウォーター」感想 デル・トロでしかありえない!愛すべき表現の到達点

どうも。

 

では、映画レヴュー、行きましょう。今日はお待ちかねのこれです!

 

 

 

今年のオスカーの大本命ですね。最多13部門でノミネートされたギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」、こちらのレヴュー、行きましょう。

 

 この映画、これだけのノミネートをもらう前からかなり話題を集めていましたが、どんな映画なのでしょうか。

 

 

早速、あらすじから見てみましょう。

 

 

 

舞台は1960年代初頭、主人公のエライザ(サリー・ホーキンス)は「耳は聞こえるけど、手話でしか話せない」女性で、ボルチモアの政府の研究所で用務員として働いていました。

 

 

 

彼女は身寄りもなく、首に大きな傷がありました。何かしらのトラウマを受けているようですが、そんな彼女には2人しか話し相手がいませんでした。一人は、写真や映像の時代に取り残されつつあったゲイの画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)。彼は映画館の真上にあるエライザのアパートの隣の友人で、彼からはテレビでハリウッドの1930〜40年代のミュージカル映画をよく見せてもらっています。

 

 

 

そして、もう一人が研究所内部で唯一の親友、向こう気の強さと面倒見のいい姉御肌の黒人女性ゼルダ(オクテイヴィア・スペンサー)でした。

 

 

 

 

 ある日、研究所には、意地悪で乱暴な軍人のリチャード・ストリックランド(マイケル・シャノン)が南米から捕獲したという奇妙な生物を連れてきました。ストリックランドはこの生物を凶器を使って痛めつけますが、逆に襲われ、指を2本失ってもいました。

 

 

 

 エライザはこの生物、半魚人に最初、あわれみのようなものを抱きました。「これではかわいそう」とばかりに、彼女は半魚人に家で作ったゆで卵を与え始めますが、この優しさに気がついた半魚人は彼女に興味を抱きます。

 

 

 この半魚人ですが、この研究所に置かれているのは、この得体の知れない存在が、この当時、アメリカとソ連の間で進められていた宇宙開発競争のヒントになるのでは思われていたためです。

 

 

 

 エライザは、来る日も来る日もストリックランドに乱暴を受ける半魚人への同情心が強まり、彼との接近が強まります。そんな彼女を、ストリックランドは少し怪しむようになります。

 

 

 ただ、エライザと半魚人の間に愛が育まれていたことにまで気がついていたのは一人だけでした。

 

 

 

 それはロバート・ホフステラー。研究所に出入りしている科学者でした。実は彼はロシアのスパイでもありましたが、彼も半魚人に対して、その感情と理解の能力の高さから「保護したい」という欲求が高まるのでした。

 

 

 エライザは半漁人をストリックランドの手から逃したい気持ちが強まります。それにホフステラーが気がついたことで

 

 

・。と、ここまでにしておきましょう。

 

 

これはですね

 

 

デルトロ自身が大好きな映画でもある1954年のBムーヴィー「大アマゾンの半魚人」を彼なりに時代背景を計算して、よりロマンティックに、より深い人間ドラマにオリジナル作として発展させたものですけど

 

 

まあ〜、素晴らしい!!

 

 

 怪獣、怪人を使うのはデルトロにとってじゃスタンダードなアプローチなんですが、そこで心通わせ愛を育むには、やはり常識を超えたキャラクターでないと・・、ということで、一般常識とはかなりかけ離れた謎めいた女性エライザを、今のイギリスを代表する本当にいい女優さんですね、サリー・ホーキンスが熱演しています。彼女はマイク・リーの映画で注目されてウディ・アレンの「ブルー・ジャズミン」でオスカーの助演女優賞にノミネートされて今回が初の主演でのノミネートですね。

 

 

これだけでも十分見応えがあるんですが

 

 

 そのエライザを支える役として、2人とも過去にオスカーの助演での受賞経験があります、リチャード・ジェンキンス、オクテイヴィア・スペンサーが好助演を見せています。ともに1960年代だと、社会的には受け入れられないゲイや黒人というキャラクターが、心温まる演技でエライザを支える、という構図はうまかったですね。特にオクテイヴィアは、僕からしたら、彼女のキャリア・ベストだったような気がしてます。

 

加えて

 

 

このマイケル・シャノンの嫌な感じね(笑)。1950年代までの典型的な鼻に着く白人キャラクターを上手く演じていると思います。鬼気迫り方では去年彼が映画賞で絶賛された「ノクターナル・アニマル」での癌の警察官ほどではなかったですが、それでも立派でした。デルトロ作品では彼、 前々作の「パシフィック・リム」に続いての悪役でしたけどね。

 

 

 そして、60年代前半ってことで東西冷戦ももちろん入ってくるんですが、これ、特に、中南米目線で見た場合に絡ませ方が絶妙なんですよ。というのはこの時代の中南米って、キューバ革命が1959年に起きた直後だったので、アメリカはこれらの国が続々共産国になるのではないかとすごく恐れてたんですね。そこでアメリカは60年代に主に南米に右翼軍事政権を築いて、僕の住んでるブラジルなんかもそうだったわけですけど、ソ連に対するブロックを築いたわけなんですけど、その米ソの対立の間に翻弄される感じと、この痛めつけられる半魚人がダブって見えるのは「うまいなあ」と思ってみましたね。

 

 

ちなみにソ連のスパイも描かれる映画ではありますが、ソ連自体が好意的に描かれた映画では決してありません。ただ

 

 

スパイ科学者役のマイケル・スタールバーグもよかった。彼はこのアワードシーズンの収穫ですね。この人、「君の名前で僕を呼んで」ですごくハートウォーミングないい主人公のお父さん役で注目されてるんですけど、感情抑えながらも気持ちが伝わる味わい部内演技するんですよ。これから彼の需要が増えそうな気がします。

 

 

 そして、これ

 

 

 話の構図自体はデルトロの最高傑作「パンズ・ラビリンス」に似てますね。これも怪人と純真な少女の心の通い合いと、不公正で出口の見えない世の中の嫌な人たち(これのナチの軍人と今回のマイケル・シャノンが丸かぶり)の手から逃れていくか。この構図を時代青ずらしてアダルトにしたら・・という感じもありましたね。

 

 

 ただ、今回のこの映画、

 

「パンズ・ラビリンス」より良いかどうかはわかりません!

 

 話の進め方でちょっとツッコミの余地のある雑なところと、結局スルーして終わったポイントなんかもあるんですよね。そうしたところを気にする人はいるような気はします。さらに

 

 

 今回のオスカーでベストな作品かどうかもわかりません。

 

 

 少なくとも、僕の中では「君の名前で僕を呼んで」の完成度は超えていません。話の運びのスムースさや隙のなさでは正直負けてるとは思います。

 

 

が!

 

それでも、この映画は賞賛されてしかるべきです!

 

やはり、それは

 

 

ギレルモ・デル・トロという映画作家が、自分の表現をこだわり抜いた末にたどり着いた境地だから!!

 

だって、冷静に考えてもみてくださいよ。半魚人なんてキャラクター使った映画が、オスカーの最高賞に手の届くとこまで来てるんですよ(笑)!そんなこと可能にできるの、世界広しといえども、彼しかいませんよ。

 

 それもこれも、

 

 

 本来グロテスクなものを美しく見せるカメラワークと美術の卓越したセンスと、彼の中で息づくヒューマニズム。これがあるからですよ。このクライマックスのシーンでの海での抱擁。もう、これの美しさときたら!!これなんて

 

 

 

このクリムトの名画を思い出させる、息を呑むような美しさでしたけどね。この人、画才がすごいなと思いましたね。それでヒューマニズムとか言ったら、なんか世界のクロサワみたいでもありますけど、「怪獣、怪人」のフィルター取っ払ったら案外近いような気がします。

 

 それもこれも、誰に何と言われようが、彼が古くから、自分の描きたい世界観にこだわって映画を作ってきた成果だと思います。10年前に大絶賛されながらオスカーでは無視された「パンズ・ラビリンス」のことも加味して、今回は彼にたくさんのオスカーのトロフィーをあげていいと思います。もちろん作品賞も含めてね。とにかく「愛おしいったら、ありゃしない!」という感じの、ラヴリーな映画でもあります。

 

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 12:00
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Comment
昨年の東京国際映画祭で観て以来、まだ興奮が収まっていません。半魚人を描いた映画が、オスカーを争うなんて奇跡ですよね。

サリー・ホーキンスももちろんうまいんですが、私はリチャード・ジェンキンスのキャラクターに感情移入しまくりました。(彼、オスカーの受賞経験はないと思います。『扉をたたく人』でのノミネートも主演でした)
オクタヴィア・スペンサ−は、いつのまにかオスカーノミニー常連になってきましたね。
こしなか, 2018/02/07 10:08 AM









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