- 不可解でツッコミどころ満載のグラミー賞2018
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2018.01.30 Tuesday
どうも。
ベスト&ワースト・ドレッサーも考えましたが、、昨日の今日で気持ちが熱いうちに言っておきたいと思うので、やっぱ言っておきます。
いや〜、それにしても
昨日のグラミー賞は変だった!
もちろん
せめて最優秀アルバムはケンドリックが取るべきだと思ってましたからね。
ぶっちゃけ言うとですね、今回のグラミー、「ケンドリックとジェイZとLordeの争い」だと思っていたんですよ。とりわけ、ケンドリックとLordeかな。この2人が何の年間ベスト見ても競うように年間ベスト・アルバムに輝いていたから。あとジェイZもすごく評判が良くて、ケンドリックと対抗させることでラッパーの「旧世代VS新世代」対決みたいな見せ方もできた。そこに加えて、エミー、ゴールデン・グローブをTVシリーズ「アトランタ」で受賞してきたチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーが音楽でも頂点を狙うか、という見方も面白かった。
そういうこともあったので実はブルーノって、
視聴率を上げるための客寄せ的ノミネートだとばかり思ってたんです!
実際の話、こういうデータもあります。この最優秀アルバムのノミネート作5作の発売時のレヴューの平均値をまとめたメタクリティック採点、実はこうだったんですよ。
Damn/Kendrick Lamar 95点
Melodrama/Lorde 91点
4;44/Jay Z 82点
Awaken My Love/Childish Gambino 77点
24K Magic/Bruno Mars 70点
と、このように、アルバムの一般的な批評家評価にこれだけの差があったんです。
実際問題、ケンドリックというのは、こと、ラップのスキルに関して言えば、2010年代はもちろん、歴代でも最高クラスの実力者です。そんな実力者が、ゲットー・ライフでの現実社会や黒人の歴史を文学的に切り取って、トラックで実験的なことをやる、と言ったら、そりゃ評価も高くなるというものです。今作に関しては脱コンセプト的な次の境地も見せていたりもしました。加えて、今回のアルバムに関して言えば、批評的な評価にセールスも伴ってアルバムが1位、そしてロングヒットになったのみならず、「Humble」のような大ヒット曲まで出ていた。「プログレッシヴなこと」を流行の先端にできていた、非常に稀有な存在です。生前最後のデヴィッド・ボウイに「ケンドリックの音楽から刺激を受けた」とまで言わしめた実績だってあります。そういう人が、ヒップホップ部門だけの評価で終わっていいわけがありません!
対してブルーノ・マーズは、声は抜群に良いと思います。僕はデビュー当時から、あの歌いっぷりは好きです。ただ、楽曲的には聞き心地の良さを求めるタイプで、別段、音楽的に新しいことはしない。そうしたことで、決して批評向きではない。それはデビュー当初から今まで変わっていません。
今回のアルバムにしても、マーク・ロンソンとの「アップタウン・ファンク」で80sブラコン・ムードになって、それで勢いでそれっぽいオマージュ作品にはなっていたけど、あまりにそのまんますぎるというか、「これを今の時代に吸収・咀嚼して表現する」というのが今一つ見えてこなかった。ぶっちゃけ、そういうのが好きな人は無条件に好きなんだろうけど、ただ、それだけのアルバムで今一つ深みが感じられなかったんですよね。
まあ、この前の年も、ロックやエレクトロの精鋭と組んで、これまでにない新しいR&B作ろうとしたビヨンセが、大成功した前作から冒険のない無難なアルバム作っただけのアデルに負けました。これもメタクリティック評価では、ビヨンセの92点に対し、アデルは75点だった。さらにその一つ前の年は、ケンドリックの「To Pimp A Buttefly」が、それこそ「ヒップホップの金字塔」的な評価を受けたアルバムだったのに、これもテイラー・スウィフトの現象的ヒットに負けた。この時はケンドリックが96点だったのに対し、テイラーは76点。この3年、「ガチな批評家評価」だったら何が勝つべきか、かなり明確だったんですよ!
「グラミーは批評の賞ではない」。そういう反論もできるかもしれません。僕も、そうならそうで別に問題は本来ありません。それなりの筋さえ通してもらえば。でも
エド・シーランはなんで今回、主要部門から完全にシャットアウトされたの?
だって、おかしいじゃないですか。人気者に勝たせたいなら、去年1年間で、アメリカも含め一番人気のあったの彼ですよ。実際、アルバムのリリース時には、彼のアルバムからの曲がシングル・チャートの上位独占するヒットになっていたし、今だってアルバム発売して10か月くらいになるのにアルバムはまだ上位につけてるし、エミネムやビヨンセとの共演の曲だって大ヒットしている。しかも、この前のアルバムは最優秀アルバムにノミネートもされていた。それなのに、主要部門にノミネートされないって、どう考えてもおかしいじゃないですか。
だから、僕は、「ああ、今年のグラミーは批評よりになったんだな」と評価したんですよ。その方向性で行くなら、そりゃケンドリックが勝つべきで、エドと同じ「大衆性」に支えられたブルーノが勝つべきではない。そうじゃないと、筋が通らないじゃないですか。
だいたい、今年といい去年といい、授賞式前の動きがキナ臭いのも嫌なんですよね。今年はLordeが数日前に「今年はパフォーマンスしない」ということが、主要部門にノミネートされた数少ない女性アーティストだったにもかかわらず一度もステージに立たない不可解さが報じられました。そしてジェイZには、今ひとつ意味のわからない「功労賞」なるものが授けられました。これも明らかに「今回他に賞はないけど、これで勘弁して」というコンソレーションに見えました。事実、LordeもジェイZもこの日、無冠でした。
で、その前の年は、ドレイク、ジャスティン・ビーバー、フランク・オーシャンが「価値観が異なる」ことを理由にグラミーへの参加をボイコットしました。終わってみたら、ビヨンセがアデルに負けてました。
なんか、「事前に結果、教えられてるだろ?」みたいなことを思わせて嫌なんですけどね。それで、ラストに嫌なサプライズつきでね。
あと、今年はパフォーマンスも今ひとつでしたね。よかったと言えるのは、クリス・ステイプルトンとエミルー・ハリスの短いトム・ペティ・トリビュートとか、ゲイリー・クラークJRのファッツ・ドミノとチャック・ベリーのトリビュート、ロジックの自殺防止キャンペーン、カントリー・フェスの銃撃テロに対しての追悼パフォーマンス、そして世間一般で人気のあった
ケシャの「Time's Up」のパフォーマンスですね。これは、中途半端にテイラーあたりにやらせないで、プロデューサーのドクター・ルークとの間のデート・レイプに伴う契約解除を求めた裁判で5年くらい音楽活動ができなくなった彼女が代表して歌うことにすごく意義がありました。決して良いシンガーではないことと、緊張して声が震えてたこともあって、目つぶって聴いたらそこまでいいパフォーマンスだとは客観的には言い難いとこもあったんですけど、あまりに適役すぎたのと、がむしゃらに必死に歌っている姿は説得力あったし、強い共感を呼ぶのはすごく納得できましたね。これは成功だったと思います。
ただなあ〜、あとは「かもなく、不可もなく」な凡庸なものが多かったですね。その原因を作ったのが
過剰な泣かせ演出
これですね。
とにかく、「熱唱バラードとか、ゴスペルばっかりなの、ちょっと勘弁して!」って感じでしたね。上にあげた「よかったもの」って、社会的な事件性も絡むものだから、演出上不可欠なものがあったのに、とにかくガガもPINKもサム・スミスも、なんかみんな揃ってそういう感じだったのにはちょっと食傷気味になりましたね。決して悪いパフォーマンスではなかったですけど、それがあまりにも同じような感じで続きすぎると、ちょっとね。
あと、グラミーはベテランのロック勢をパフォーマンスの実力の貫禄上、起用することが多いんですけど、これ、今年は本当にダメだったね・・。
このエルトン・ジョンとマイリー・サイラスの共演は意味不明だったし
このスティングとシャギーのパフォーマンスも、ただこの2人の共演アルバムのプロモーションに利用されただけにしか見えなかったし
このU2のパフォーマンスもなあ・・。こんな「自由の女神」の見えるところで、事前に録音された演奏の当て振り、とか、およそロックバンドとしての醍醐味のないことやらすより、会場で生演奏で熱いパフォーマンスとメッセージを聞きたかったよ!
あと、あれだけヒップホップの強かった1年で、ヒップホップのノミネートもかなりあったのにパフォーマンスがケンドリックとロジックだけというのも寂しかったし、上に書いたようにロックのベテランが退屈なパフォーマンスをやるなら、コメディ部門とかミュージカルの関係削って、もう少し若いロックの人たちのパフォーマンスなんかもやってほしかったですよ。
全体的に「お涙頂戴」な感情的なところばかり狙おうとしていて、そんなこと関係なしに音楽的に文句なしに素晴らしいアーティストの見事なパフォーマンスそのものをもっと見たかったですね。
今回、これで視聴率、ガクンと落ちたみたいだけど、今年みたいなこういう受賞結果や面白みに欠けるパフォーマンスが続くようだと、この先、心配ですね。
- Comment
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- 英語がわからない哀れな日本人の僕にとってDAMNはそこそこ良いレベルで、ブルーノの方が良さ伝わった。
更にいえばジョーイ・バッドアスは英語がわからない僕でも満足できるもので、今回のアルバム候補作より素晴らしいものだった。
でも現実の評価は違うので評論家に従ってケンドリックが絶対だと思うようにしています。 - 正直, 2018/01/30 7:28 PM
- 確かにアルバムに限って言えば、ケンドリックが絶対に取るべきでしたね。
ただレコードは、ブルーノでも全然おかしくないと思います。
曲単体に関しては、やはり聞き心地の良さは大事かなと。
グラミーのパフォーマンスに関してはおおよそ沢田さんと同じ意見ですが、エドに関して言えば、あのアルバムでは主要部門に入れなくても不思議はないですね。
アデルやテイラー以下と判断されてもおかしくはないと思います。
Shape Of Youもそこまで良い曲か?と言われると・・・絶対入るべき曲とは言えないのではないでしょうか。 - SILVER MASK, 2018/01/30 7:43 PM
- ブルーノってクリス・ブラウンとかビヨンセと
比べると明らかに格落ちですよね。
- 変装訪問, 2018/01/30 8:44 PM
- 最優秀メタル・パフォーマンス二回受賞したトレント・レズナーは2011年の『The Hollywood Reporter』にこう話した。「なんでグラミーが大切じゃないかって? 安っぽく操作されたものだって感じるからだよ。関係者が決める人気コンテストみたいじゃないか」また「引っ越しした際にグラミートロフィー2つの行方が判らない」とも語っている。
彼は既に見抜いていた。 - あんじゃなふ, 2018/01/30 9:11 PM
- 昨年アデルがアルバム賞を受賞した時に「私が受けとるべきじゃない」って言葉が切なかったですよね。そういうことアーティストに言わせちゃダメでしょ。
ブルーノは全然悪くないですが、結構控えめなスピーチだったのを見て、やっぱりアーティスト間でもだいたい読めてた訳ですよね、ここはケンドリックがとるべきかなって。グラミー自体が一番読めてなかった。
けど本当はケンドリックは2年前にとるべきだった、アルバムもパフォも前回の方が良かったと正直思いました。
昨日のパフォーマンスはロジックが良かった。追悼コーナーで自殺したチェスターの後にロジックのパフォの流れはいつものありきたりな追悼ではなくてハッとしました。ロジックも説得力ある力強い語りで個人的に昨晩一番メッセージが伝わったな。
曲が曲だというのもあるけど、いつも追悼って故人のカバーやトリビュートばかりだけど、そうじゃなくて自分の曲で追悼しても全然いいんですよね。この演出がロジックからの案だとしたらすごいと思う。 - ALI, 2018/01/30 10:19 PM
- ブルーノはデビューの頃から大好きで、前回の来日公演も見に行きましたが、、、
そんな自分でも、今回の受賞はすごく不可解だと思いますし、
発表の際も(ソングとレコードを獲得していたので)ものすごい嫌な予感がしていて、
実際に獲った瞬間に、「ああ、グラミーやっちゃった」という感じで、彼の喜びの受賞スピーチの様子を見るのはとても複雑でした。
もちろん、彼には罪はないのですが・・・。
これがまだデビューアルバムだったら、素直に喜べたかもしれませんが、
受賞作品は、2017年を代表する作品でもなければ、後世に語り継がれるような名盤でもないです。
単純な質・レベルもそうですけど、そもそも、そういうタイプの作品とは言い難いし、
ブルーノ自身もそういう気持ちでは製作してない気がしてなりません。
「アルバムを聴いて、みんなで踊って歌ってハッピーになって、ライブに来てね」というようなインタビューを読んだ記憶もありますし。
パーティアンセムというか企画ものに近い作品で、アーチスト渾身の一作というイメージがまるでないです。
昨年のアデルも、前作「21」は確かに名盤だったが故、
「25」は何一つ前作を超える要素がなかったにも関わらず、
あれだけのスーパースターになっても、未だ大きなリスクをしょって冒険して、新たなものに挑戦したビヨンセに
勝ったのも納得いきませんでした。
ただ、アデルの場合は、前作の影響もあってか、社会的な現象ともいえるセールスを記録してましたので
また、少しだけでも理解はできます。
でも、今年のは・・・???
グラミーの迷走、ホントにいつまで続くのでしょうか? - YOSH, 2018/02/01 1:48 PM
- 英語がわからない哀れな日本人の僕にとってDAMNはそこそこ良いレベルで、ブルーノの方が良さ伝わった。
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