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映画「グレイテスト・ショーマン」感想 人生描写も音楽も、とにかく軽すぎ

どうも。

 

 

これから2月までは、毎週のように何かしら映画レビューが入るようになります。やっぱりオスカーが近い上に、その上に話題性のある映画の公開が続きますからね。

 

 

今日はこちらの映画のレヴュー、行きましょう。

 

 

この「グレイテスト・ショーマン」。19世紀のニューヨークの伝説の興行師、PTバーナムの生涯を描いた伝記映画で、バーナム役をヒュー・ジャックマンが演じています。昨年の初め頃から期待値の高い映画だったのですが、さて、どんな感じだったのでしょうか。

 

 

早速、あらすじから見てみましょう。

 

 

 舞台は19世紀のニューヨーク。PTバーナムは貧しい育ちで、子供の頃から父親と一緒に地元の裕福な家庭ハリエット家に、父親と一緒に仕立屋として出入りしていました。そこで彼は、ハリエット家の同世代の女の子チャリティと恋に落ちます。

 

 

 

 

 やがて大人になったPT(ヒュー・ジャックマン)とチャリティ(ミシェル・ウィリアムス)は結婚し、チャリティは勘当同然で家を出ます。そして2人は2人の女の子の子宝に恵まれますが、生活は苦しいままでした。さらに追い討ちをかけるように、PTの勤めていた会社が倒産となってしまいました。

 

 

 なんとか妻と娘を助けたい。PTはその一身でしたが、奇想天外な転職を行います。それは街中に劇場を立てて、自分のサーカスを作ることでしたが、

 

 

 PTはそのサーカスの団員を、身体的に異常を抱えた人たちなどで構成しようとしました。そこには、小人症の人や、髭の生えた女性などが集まり、いわば彼らを見世物にする、俗に言う「フリーク・ショウ」を主催します。

 

 

 このやり方に世間からの批判は高まり、抗議運動まで起きます。しかし、娘の言った「特別なことをやらないとダメ」という言葉を信じ切ったPTは気に留めません。また、PTは自分の団員を差別しているつもりでは全くなく、むしろ逆に「キミのその人との違いは立派な個性なんだ」と励まし、これまで日陰を生きてきた彼らにスポットライトを当てさせます。そして、このショウは、批評家の予想を覆し、大成功します。

 

 PTは一躍ニューヨークで話題の人物となり、その手腕には賛否両論が集まります。「成功はしているが、やっていることは卑しいこと」。そのような見られ方をします。そんな中、PTは上流階級青手に劇作家をしていた若者フィリップ・カーライル(ザック・エフロン)を説得して自分の仲間にしてしまいます。最初は半信半疑のカーライルでしたが、アクロバット担当のサーカスの女の子

アン(ゼンダヤ)に一目惚れをすることで人生観が変わってしまいます。

 

 

 そんなある日、PTはカーライルの絡みでの女性歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーグソン)を紹介されます。ジェニーはヨーロッパで最も成功した女性歌手でしたが、未踏の地アメリカでの成功を目指していました。その彼女の全米ツアーをPTが手がけることになりますが、これが大成功。PTはジェニーのツアーに没頭するようになります。

 

 

 しかし、その間に、省みられなくなった家族やサーカス団員は彼に複雑な心情を抱くようになり・・。

 

 ・・と、ここまでにしておきましょう。

 

 

 いや〜、これですね。僕の事前の期待、高かったんですよ。だって、これ、話の組み立て方いかんでは、

 

 

「興行師版市民ケーン」みたいにすることも可能な映画だったから!

 

 

PTバーナムの存在自体はすごく興味深かったんですよ。彼は貧しい育ちから、人生の逆転劇のように上流階級を見返すように成功した。でも、そのやり方は、人道に反したと見られる卑しいやり方での成功だった。

 

さらに

 

幸いなことに、フリークショーのメンバーたちはPTのことに対して信頼を抱いている。だけど、いくら「キミたちは特別な存在なんだ」と励ましたところで、彼らを利用して自分が金儲けしていたことには変わりはないわけで。そこに対しての人道的な良心の呵責とか葛藤みたいなものがなかったのか。まあ、19世紀だから、そこまで突き詰めて考えなかったのかもしれないけど、でも、それを21世紀の、これだけポリコレがうるさい世の中であえて映画にするってことは、そこのところで何らかの説得力を持たなくてはならない。ましてや、この当時の観客が体に異常のあるサーカス團員を温かい目で見ていたから集まっていたとは、それこそ19世紀の倫理観で考えてあるとは思えない。蔑んで好奇の目だけできてた人もたくさんいたはず。

 

 ・・そこのところ、どう返答するのかな・・・と思って見ていたんですけど・・

 

 

 特に、その答えらしいののがありません(苦笑)!

 

 だから、全然心が打たれなかったんですよ。いや、それどころか、

 

 彼とサーカス団員が直接絡むシーンそのものが圧倒的に少なくさえあった!!

 

 いや〜、そこはすごく残念でしたね。確かにミュージカルという形式は、登場人物の深い人間描写に向いているとは思いません。あまりそれやりすぎると、ミュージカルに不可欠なテンポ感が失われてしまいますからね。だけど、もっと、PTとサーカスとのふれあいのシーンを増やすことで、PTの人となりをほのめかすことなら十分できたはず!それがないのに、抗議に来る人を一方的に差別主義者的に描くのも違和感ありましたね。さっきも言ったように、サーカス見に行ってる人がそこまで人道的に彼らにあたたかかったのかどうかもわからない世の中だったのに。

 

 この違和感も最後まで引っかかったんですが、もう、それ以上に

 

音楽!!!

 

 も〜う、これが聴いてて辛かったの、なんの!

 

 別に「こんなの19世紀にあるわけないじゃないか!」なんて野暮なことは言いません。ポップスのフォーマット上のミュージカルで全然大丈夫です。

 

しかし!

 

 もっと、普通のアレンジでよかったんじゃないの???

 

 

 このアレンジがですねえ。なんかいかにもこう、ここ10年、5年くらいの、芸能界よりのポップスの妙に作り込まれた感じが一気に凝縮していたというかね。

 

 

 わかりやすく言うなら、なんかR&Bもエレクトロもフォークもコールドプレイみたいなものとか、なんか一緒くたになった、ただただオーヴァー・プロデュースなアレンジなんですよね。全方向にいろんなもの、足し算でくっつけすぎた。だから聞いててとにかくうるさいんです。

 

 

 「でも、こういう曲、本当にある時期のトップ40に多いよねえ」と思いながら聞いてましたけど、なんというか、P!NKとかデミ・ロヴァートあたりに提供しようとしてボツにされた曲みたいというか、サイモン・コーウェルが自分の番組で勝ったアイドルにあげる没個性的な曲みたいというか、曲そのものよりも、「今どきの流行りのポップスのお決まりフォーマット感」みたいなものの方が先行して表に出てしまっているというかね。

 

 まあ、それだからこそ、キッズにウケて全米アルバム・チャートで1位になったんだと思うんですが、この今のフォーマットが通用しない時代になったら、真っ先に恥ずかしいものになりそうな気がします。

 

 

 あと、「フォーマットすぎる」といえば

 

 

このザック・エフロンとゼンダヤのロマンスのシーンね。これ別に、PTバーナムの伝記であるわけだから本来ならいらないはずなんだけど(笑)、お互い別の世代のもとディズニー・アイドルが共演ということで、ほぼ話題作りのために無理矢理くっつけましたね、これ(笑)。「主役以外に、若い人のロマンスのサブ・プロットがあったらさらにウケる」みたいな、そういう方程式を信じ切ってる気がしますね。これも、やっぱそもそもの脚本と音楽がしっかりしないことも手伝い、 熱さがまったく伝わらないロマンスでしたね。まあ、ミュージカルなんで「あった途端に一目惚れ」は許すにしても、やっぱりこれも、フォーマットの方が先に目立ってしまい、心を打ちませんでした。だいたい、何でエフロンが一方的にハートに火をつけているのかがわからないですもん。

 

 

こういう感じなので、この映画、批評自体はかなり悪かったんですが、それでもゴールデン・グローブのコメディ/ミュージカルにノミネートされてしまいました。GGって、発表が1月と早いから、票を入れる人が対象作品を見きらずに期待値だけで入れるケースがあるんですが、これがまさにその一つですね。

 

 

 こういう風にツッコミどころ満載の、僕にとっては残念な映画だったんですが、一番個人的にズッコケたのは

 

 

 

ミシェル・ウイリアムスがこんなチャラい映画に!!

 

 今や30代のハリウッドの女優の中で最高の演技派と呼ばれる彼女がですよ、ロングヘアのウィッグかぶってトレードマークの超短髪が見えなくなってるだけじゃなく、なんと歌まで披露してしまってます!!う〜ん、その選択でよかったのか、ミシェル?少なくとも、ここ10年の彼女で、こんなにイメージに合わない映画、ズバリないですね(笑)。

 

 

 あと、ヒュー・ジャックマンはミュージカル大得意な人なんですが、「伝説のショーマン」の描き方がこんな感じで本当によかっんでしょうか?そこも疑問に残りますけどね。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 11:03
comments(2), trackbacks(0), - -
Comment
「The Greatest Showman」のサントラを聴いてみて、全体的にどの曲もアレンジしすぎだなと感じてました。レビューをみて、観に行くかどうか考え直そうと思います。
Ben Pasek&Justin Paulのコンビが手掛けた(作曲はJustin Hurwitz) La La Landのサントラは大好きで、何度も聴いています。Emma Stoneの声が素敵だなと聴くたびに感じます。

少し話はズレますが…
ヒュー・ジャックマンに関してですが、レミゼのときから彼がミュージカル映画をするのは少し無理があると思っています。高音になったときの彼の声が苦手です。(「Logan」での演技は素晴らしかったと思います)
スミス, 2018/01/11 8:29 PM
うまく説明できないのですが、なんというか、「日本人(というか配給会社)が好きそうな映画だなぁ…」という印象です。

日本人はフォーマットに乗っ取った作品が好きなような(とくにこういったミュージカルのようにクラシカルなジャンルは)気がします。
安心するんでしょうか(^_^;)
偏頭痛持ち, 2018/01/13 7:28 PM









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