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沢田太陽の2017 年間ベスト・アルバムTop50  10-1位

どうも。

 

では、年間ベスト・アルバムもいよいよトップ10を残すのみとなりました。全体では、こんな感じでした!

 

 

 

だいたい、わかったかな?では、10位から行きましょう。

 

 

10.All We Know Of Heaven,All We Need Of Hell/PVRIS

 

 

10位はPVRISです。

 

僕がこれを選ぶことを予想した人はほとんどいないんじゃないかな(笑)。これ、僕としても、もしかしたらイケないものにハマったかもしれません(苦笑)。「言うの恥ずかしいけど、実は好き」みたいのを英語でギルティ・プレジャーっていうんですけど、これはまさにそんな感じがあります。PVRISはどちらかというとイギリスのキッズ系ロック雑誌がすごく押してるアメリカはボストン出身の紅一点フロントの3人組ゴス系シンセ・ポップバンドで、これが2枚目です。

 

 ただ、なんで興味持ったかというと、最初のきっかけはメタクリティックで、得点が80点以上とかなり高かったんですよ。そしたら、イギリスのチャート速報聞いたら「アルバムがトップ5に入りそう(結果は4位)」というので気になって聞いてみたらすごくハマって、8月の発売なんですけど12月になった今もまだ聴いてるくらい愛聴するものになってます。

 

 ただ、これ、なんで好きかというと、とにかく全曲、曲がちゃんとよく書けてるんですよ。作ってるのはリン・ガンという名前のヴォーカルの女の子なんですけど、彼女の書く曲がすごくツボを押さえたメロディックさがあるんですね。しかもアレンジがすごく絶妙なんです。一歩間違うと通俗的なインダストルアル・ロックになりそうなところを、ギターの音量はだいぶ下げ目でストロークよりはアルペジオのフレーズを大事にしてたり、声の多重録音を多めに駆使したり、さらにリンがなんか不思議な歌い方というか、ファルセットとガッツのあるソウルフルな唸りで聞かせたりするんですね。なんか、こういう組み合わせが不思議というかね。「エヴァネッセンスとガービッジとホールジーを足して3で割った」というか「スマパンの 『アドア」の後継者が20年かかってやっと出てきたか」というか、「エレクトロ方面に行きたいのならチェスタ・ベニントンはこういうバランスでやればもしかしたら良かったのかなあ」とか、聞いてていろいろ考えさせてもくれて、それも面白いんです。

 

 ただ、結構すでに反響が良くて、BBCではすごく曲がかかるは、全英、全米ツアーではソールドアウト続出するは、ロック・サウンドっていうケラング!に人気が近づいてるイギリスのキッズ系の雑誌のアーティスト・オブ・ジ・イヤーになったり、気がついたら次で知らぬ間にデカくなってた、というパターンの面白い動き、実際にしてもいますよ。

 

 

9.Vision Of A Life/Wolf Alice

 

 

9位はウルフ・アリス。

 

これは今年のUKロックではかなり強いアルバムでしたね。とにかくイギリス国内の押しが強かった。アルバム発表されるだいぶ前からシングルの解禁があればその都度活字メディアが盛り上がったし、BBCでもずっと何らかの曲がオンエア・リストから外れない状況がありましたからね。惜しむらくはその波がイギリス国内から出るものではなかったことですが、それでもイギリスにおいてこのバンドの重要性が増した1作であることには間違いありません。

 

 このアルバムは、デビュー時から持ってた彼らの多様性が広がったアルバムですね。よく「グランジ」とも評される彼らの音楽性ですが、僕としてはそうは思っていません。どっちかというと、シューゲイザーまで含んだ「90s」の感覚のバンドだな、という印象が強かったんですけど、今回はその硬軟のレンジをよりハッキリつけ、リズム・パターンも新しいものを試し、さらに後半になると、一部で「レッド・ツェッペリンのようだ」とも評されるフォーク&大曲の展開へと流れていきますね。これをあくまで生のアンサンブル中心で表現しているところが、ギター・ロックの危機を感じているような人たちへの安心感と希望も与えていて、そこも良いと思います。

 

 あとエリー・ロウゼルのヴォーカルですね。彼女、声が細いキンキン声ですけど、こうした本来ロック的でない声を逆に武器に変えられるところは、PJハーヴィーの良き後継者な感じがして、そこも共感できますね。彼女がバンドのロック・クイーンとしてシーンの中で需要な存在でいる時間は長くなりそうな気がしています。

 

 それにしても去年がThe 1975に今年がウルフ・アリス。今のUKロック、この2バンドのレーベル、ダーティ・ヒットの一人勝ちですよね。音楽をたくさん聞くように育成している誰かがレーベル内にいたりするのかな?

 

 

8.The Navigator/Hurray For The Riff Raff

 

 

8位はフーレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ。この人たち、名義はバンドになっていますが、プエルトリコ移民の女性シンガーソングライター、アリンダ・セガーラのソロ・プロジェクトのニュアンスが強いです。

 

このアルバムは、今年、せっかくトランプ政権が誕生し、いくらでもプロテストしようがあった1年においてそれがほとんど生かされなかった状況の中、数少ない、「聞くべきリリック」を持ったアルバムだったと思います。プエルトリコといえば、トランプからかなり意図的に徹底して差別意識を持っていじめられたところですからね。これ、レコーディング時期は昨年のはずなので直接トランプを攻撃しているようなものはないんですけど、それでも移民として小さなコミュニティの中で世知辛い生活を強いられ続けている同胞、そしてその本音をより広い層に伝えようとする彼女の強い気概を感じさせます。しかも「Living In The City(この町で生きること)」「Nothing's Gonna Change That Girl(誰もあの娘を変えられない)」など、すごくわかりやすい言葉でそれを訴え、クライマックスではスペイン語で、移民のパイオニアたちへの強いリスペクトの思いを絶唱するなど、プエルトリカンでなくとも思わず胸をわしづかみされる瞬間があります。

 

 さらに面白いのは彼女、この前のアルバムまでカントリー寄りのフォークの曲を歌ってたんですね。それがこのアルバムでは前半にルー・リード・スタイルのロックンロールが出てきたかと思うと、途中からはそのフォークやソウル、さらに自分のルーツであるラテン・ミュージックの影響までハッキリ出たものまで多彩に展開されます。

 

 これ、もう少し注目されて欲しかったんですけど、気にする人は気にしていて、イギリスではMOJOとUNCUTの年間ベストでTop10入りしてBBCの「Later With Jools」に呼ばれてテレビ・パフォーマンスもしています。アメリカでもNPRの年間ベストでトップ10入りしてましたね。

 

 

7.4:44/Jay Z

 

 

そして7位はジェイZ。これが今年の僕のベストの、ヒップホップでは最高位のアルバムになります。

 

もともとジェイZは僕と歳が同じこともあって兼ねてから共感とリスペクトを持った人ではあったんですが、今回はそんな彼の作品の中でも屈指のいいアルバムになったと思います。この10年くらいどこかから回っていた感もあったジェイZだったのですが、このアルバムでは、たった一人のプロデューサーとガチに向かい合って、ゲストも限られた人しか呼ばないという、昔ながらのヒップホップの作り方に立ち返っているのがいいです。最近のヒップホップの作品、あまりにも一曲ごとにプロデューサーが違ってゲストラッパーも多すぎで、何が実力なのかがわからない作品があまりに多すぎましたからね。

 

 そして、プロデューサー役を務めたNo IDの談話がまたいいんですよ。今回の彼、ジェイZにとってのラップ・セラピスト役までやってるんですね。あのジェイZに「このリリックはつまらない」とかってダメ出ししてたという!具体的には「ヤツ自身、もっと自分を掘り下げたリリックを出したいようだった。だからジェイZとしてもうみんなが知っているような話じゃなく、新しい話を引き出させた」とのことです。その結果が、ビヨンセへの浮気の謝罪から、お母さんのレズビアン・カミング・アウト、OJシンプソンへの批判、そして全てのビーフで許しあうことなどを歌った、これまでのジェイZに見られなかった新鮮なリリックにつながっています。

 

 あとトラックの中の三曲、スティーヴィー・ワンダーとソニー・ハザウェイとニナ・シモンの曲をサンプルネタに使っていたんですけど、これ、いずれもジェイZが自分のやってるストリーミング・サービスのタイダルの「ブラック・ライヴス・マター」に触発された「Music For Survival」という黒人のメッセージ・ソングを集めたプレイリストからのピックアップで、こうしたところからもコンシャスでスピリチュアルなものを作ろうとする彼の気概が伝わってきましたね。若いラッパーやプロデューサーからしたら地味な作りかもしれませんが、あえて時代の対局をいく、一本筋の通った、もはや現役第一線では長老クラスのラッパーだからこそできる貫禄の一作だと思いますね。

 

 

6.Masseduction/St.Vincent

 

 

 

6位はセイント・ヴィンセントです。

 

2014年のセルフ・タイトルの前作とそれに伴うツアーでの彼女は、「ああ、これこそがロックの最新型の姿だよ!」と思わせるものがありましたね。エレクトロ・ビートに彼女自身によるフリーキーなギターに加え、担当楽器プレイヤーの配置から衣装、体の動きにまでこだわった、徹底して「見られる」ことを大前提にしたステージでの自己演出。「ああ、こうして聴覚だけでなく、視覚でも最高のものを見せつけてくれる。これこそが最近のインディ男子に決定的に欠けているものなんだ」と思い、ここ最近のロック女子の元気さと、どんどん内に地味に篭るだけのインディ男子への苛立ちが募っていった(それは今もそう)ものでした。

 

 それから3年半。セイント・ヴィンセントは戻ってきましたが、最初は「どうかな?」とやや不安もありました。やはり前作があまりにも刺激的でかなりの完成度だったから。上回るのは容易なことではありません。実際、最初に「Los Angeles」聴いた時、「ちょっと地味かな」とも思いました。 しかし、いざしっかり聞いてみると、いやはや、ちゃんと進化はしていましたね。前作ほどギターは大暴れはしていないんですがそれと引き換えに肉感的なファンク感とセクシャルな雰囲気はさらに増量していましたね。こういうところは前年にプリンスを失ったばかりだったので「ああ、よかった。しっかり継承する人がここにいた」という感じで嬉しかったですね。

 

 そして今回は、果敢にもバラードやミュージカル調の遊びの曲までうまい具合に変化球を取り入れることができるようになって、聞かせる幅が広がりましたね。このあたりの感覚はLordeの「メロドラマ」も手がけた、元funのジャック・アントノフ(レナ・ダナムの彼氏)の手腕によるところも大きいのかな。彼がいなかったら、ポップに砕けたいところが硬いままで終わっていたかもしれません。ユーモアの感覚がヴィンセントの方にある分、僕はジャックはLordeよりは彼女の方と相性いい気がしましたけどね。

 

 二作連続の充実作で、これで彼女も英米でトップ10に入るアーティストになりましたが、持ってる潜在的実力からすれば、それでもまだまだな商業実績かな。でも、ボウイやプリンスのいなくなったロスをどこで埋めたらいいかはしっかり示されたアルバムだと思いますね。

 

5.Ctrl/SZA

 

 

5位にはSZA(シザ)が入りましたが、これも今年、かなり話題のアルバムでしたね。

 

彼女はケンドリック・ラマーのマネージメント、Top Dawgが力を入れてプロモーションした女性R&Bシンガーなんですが、これがまた、この言葉しょっちゅう使ってますけど、いわゆる昨年からのフランク・オーシャンとソランジュ以降の、ソフィスティケイトにソフィスティケイトを重ねた新世代R&Bのライン上にある人ですね。このアルバムはまさに、商業的にも批評的にも、昨年のあの金字塔的な2枚を今年に引き継いだ一作だと思います。凝って洒落たコードの感覚に、生楽器とエレクトロをその両者のコントラストがハッキリするような絶妙なアレンジ。この世代のR&Bって、クラシックで言うところのドビュッシーとかサティの雰囲気さえあるんですけど、独特の浮遊感と幻想感があります。

 

 そして、そうしたサウンドだけでなくて、SZA自身もかなり魅力的です。一つはまず歌い方ですね。彼女、すごくスラングで歌って文法もヒップホップのリリックみたいな感じで歌うんですけど、アクセントも「いったいどこの訛り?」っていうくらいに、かなりクセのある歌い方です。ちょっとレゲエぽいのかな。ただ、彼女、出身はニュージャージーで家もお父さんがCNNのエグゼクティブ・プロデューサーだったというから裕福な家のはずです。実際、彼女自身がインタビューで話す口調はかなり綺麗な英語ですからね。

 

 そして、さらに才能を感じさせるのがリリシストとしてのセンスですね。とにかく語感と状況設定がうまいんです。例えば、「昔の恋がジワジワと懐かしくなってくる」を「Love Galore(愛の霧雨)」という曲名で、ちょっと自分に自身のない、内気な恋の歌を、ドリュー・バリモアの代表作の一つ「25年目のキス」をイメージして、その名も「Drew Barrymore」という曲名にしてみたりね。彼女のリリックを読んでいると、他の女性と自分を比べて自身をなくしてしまう劣等感とか、孤独感から浮気が疑われるカレ氏の友人と恋に落ちたりなど、ストーリーの組み立ても立体的にうまいですね。

 

 この感覚、今、HBOでやってる「ガールズの黒人版」みたいなドラマ「Insecure(まさに「自信のなさ」という意味です)」にすごくピッタリなんですよね。今時の、都会の中流以上の黒人女性の日常を描いたコメディなんですが、頭も切れてファッション・テイストなんかもかなりいいのにどこか自信のなさや孤独感でちょっぴりペーソスある話になったりするドラマです。一回劇中で「Drew Barrymore」がかかったんですけど、あまりにハマりすぎてニヤリでしたね。

 

4.Pure Comedy/Father John Misty

 

 

4位はファーザージョン・ミスティ。

 

彼のことは、フリート・フォクシーズのドラマーとして覚えてくれている人も少なくないとは思うんですけど、2015年発表のアルバムの中の「Bored In The USA」 でのユーモラスな風刺がウケて一躍注目されるようになって、今回、かなりの期待を持たれてのアルバム発表でしたね。

 

 そして今回のアルバム、まあ何が驚いたって、この人のメロディ・メイカーとしての抜群のセンスですね。これ、現代版のエルトン・ジョンであり、ジョン・レノンであり、キャット・スティーヴンスであり、ジャクソン・ブラウンですよ!それがつまんないと思ったような批評もあったようですが、そんなの一切無視してください。これ、スタイルがどうとかの問題超えて、普遍的なメロディ書くセンス、メチャクチャ高度ですよ。ここまでのメロディ書ける人、この後でもいい時のエリオット・スミスとかライアン・アダムス、ルーファス・ウェインライトくらいのものですよ。基礎的な楽曲構築レベルが物凄く高いんですね、この人。これは軽視すべきではありません。確かに前作「I Love You Honeybear」でのエレクトロとか、ちょっとひねったフィル・スペクターみたいなアレンジの方がインディ・リスナーウケはするとは思うんですけど、そんな小手先の違いなどどうでもいいですよ。

 

 あと、リリックも今回は読んでて、ジェイムス・テイラーの「ファイア&レイン」の現代版みたいな世界観ですね。10分を超える大曲の「Leaving LA」とか「A Big Paper Bag」とかの曲に顕著ですけど、ドラッグ中毒と隣り合わせの彼の日常がかなり写実的に描かれていて、そこが興味深かったですね。あと、合間合間で見せるユーモアのセンスもさすがといったところか。

 

 あと、今年は古巣のフリート・フォクシーズも素晴らしいアルバムを出しましたけど、やっぱりオーディエンスと真っ直ぐに向かいあおうとする気持ちが強い分、こっちのアルバムの方に惹かれますね。両者とも英米でトップ10に入りましたが、勢いは今、圧倒的にこっちの方が上ですね。

 

 

3.Lust For Life/Lana Del Rey

 

 

3位はラナ・デル・レイ!

 

このブログを普段お読みの方なら、今年の夏頃に僕に空前のラナ・デル・レイ・ブームが来たのを覚えていらっしゃる方もいると思います(笑)。彼女のことは前から好きだったんですけど、このアルバムでその思いが溢れてしまいましてね。というのも彼女、デビューしてからここまで6年でアルバム4枚(それに加えて8曲入りEPも1枚)出しているという、今どき他にライアン・アダムスくらいしかやってないくらいの早いペースで作品作るのに、楽曲のクオリティにムラがなく、どれも水準以上の作品作ってるわけでしょ?まず。それが素直に物凄いことだと思ったし、誰も彼女みたいなキャラクターの作品とアーティスト・イメージ、作らないでしょ?そう考えると、今もっとも創作力あって個性あるアーティストって、彼女なんじゃないか?そう思ったら「すごいことだよなあ」と素直に思ったんですね。

 

 そしてこのアルバムは、一つは「全く変わらない」ところが圧巻です。それはたとえゲストにウィーケンドが入ろうが、ラッパーのASAPロッキーが入ろうが、スティーヴィー・ニックスが入ろうが、ショーン・レノンが入ろうが、彼女の以前から持ってるカラーが何もぶれない。結構、エレクトロだったり、トラップだったり、フォークだったり、いろんな要素入れてるのに、どう聞いてもラナ・デル・レイでしかない。そこにあるのは、いつもの通り、古き良き60sへのゴシックな憧憬。このフォーマット自体が何ら揺るぎません。

 

 さらにもう一つ特筆すべきが、逆説的かもしれませんが「大きく変わった」こと。これまでの彼女、登場した時のイメージが「Born To Die」だったり、フェミニズムに対して賛同しないかのような発言を行ったことで、ややもすると閉塞的で保守的な印象も抱かれたりもしたのですが、ドナルド・トランプという、彼女の中の精神的敵が登場したこともあり、今回のアルバムでそことは完全に一線を弾く姿勢を見せ、コーチェラにウッドストックをダブらせてみたり、広い意味での社会や地球への愛を口にすることで、彼女の本当の姿である「エリザベス・グラント」の本音の部分をさらけ出したり。だいたいタイトルからして「生への欲求」な訳で、「死ぬために生まれた」からは大きく変わったところです。

 

 このアルバム、「とは言っても、何も2017年を象徴する作品でもアーティストでもないから、僕が感じているようにこのアルバムを見てる人は少ないだろうな」と思っていましたが、案外注目度はあるようでして、年間ベストでもNMEが8位とか、ローリング・ストーンで26位、ピッチフォークで32位とか、届く人には結構届いていることもわかり、次作以降の期待もさらに高まるのでした。

 

2.Aromanticism/Moses Sumney

 

 

 

 そして2位はいきなり新人アーティスト、来ました!モーゼズ・サムニーです。

 

 彼のことは9月の末くらいから評判を耳にし始めて、出たばかりの際にダウンロードして聞いたんですけど、まあ〜。とにかくビックリしましたね、これは!今回の年間ベストに関して、僕は「フランク・オーシャン、ソランジュ以降のR&B」という言い方を頻繁にしているんですけど、これもそのライン上にあるとはいえ、もうその次元さえ超えてますね。これ、まるで、「21世紀突入以後のレディオヘッドがR&Bにトライしたらこうなった」みたいなノリですよ!もう、ギターとドラムの音色の使い方がモロですね。加えて、彼はファルセットの名手でもあるんですけど、裏返った際の声の伸びと神秘性がジェフ・バックリーとかシガーロスを思い出させます。曲によっては、そういう感じからいきなり全盛期のスティーヴィー・ワンダーが混ざるみたいな感じもあったりして。すごく浮遊感溢れるファンタジックな感覚ありますね。これ、どっちかと言ったら、R&Bのファンより、レディオヘッド・ファンをはじめとしたインディ・ロック・ファンの方がこれは刺さるんじゃないかな。

 

 だいたい、このアルバムのリリース元自体が、アメリカのインディ・ロックの人気レーベルのジャグジャグウォ−ですからね。その時点ですでに普通のR&Bではないのはわかるんですけど、これはあまりにも異形というか、黒人アーティストの一般イメージから出てくるとはちょっと思えないですね。

 

 しかもこの人、今時本当に珍しい、出自がほとんどわかんないんですよ。だいたい、かなり話題になったのにウィキペディアのページがないし、アルバムのクレジット探すだけでも結構骨なんですよね。わかってるのは、カマシ・ワシントンが参加した、というのと、拠点がLAってことくらいで、このかなりの完成度を誇る楽曲のアレンジを彼自身がやったのか、あるいはプロデュースに才人が存在するのかとか、そういうことがわからないんですよね。

 

 この謎解きの部分も含めて今後見てみたくなる、ものすごいニューカマーの誕生だと思います。

 

 

 

 では、行きましょう。沢田太陽が選ぶ、2017年間ベスト・アルバムTop50、第1位になったのはこのアルバムでした!

 

 

1.American Drem/LCD Soundsystem

 

 

はい!LCDサウンドシステムの「American Dream」でした!!

 

 これ、なんで1位なのかというとですね、まず一つは単純な話、13位までに入った候補と並べて一斉にもう一回聴いた場合に、これが一番カッコよかったからですね。その直前までは僕もこれが1位になることを予想してなかったんですけど、聞かせる力が潜在的にすごくあったアルバムだなと感心しましたね。

 

 で、「なんでカッコよく聴こえたのか」ということですけど、まず音色が「もう、これやられたらさすがに目がなくなるよね」というくらいに音色がカッコいい。エイフェックス・ツインとかジェイムス・マーフィーの作品って、どんなにエレクトロの音が世に浸透しようとも、他では絶対に聞けない鮮度の鋭角的な音を出すし、今回のアルバム、7年ぶりだったわけですけど、「ああ、これはやっぱり他では聞けないな」と思えるものでしたからね。それに加えて今回、ポストパンク・ギターが要所要所でキラーになってるでしょ?もう、ポストパンク・リバイバルの時代でもないですけど、やっぱりジェイムスの場合、あれが入ることですごくカッコよくなるし、ちょうどロックも今の状況だとまだ「この先」を示すものが明確にない状態ですから、これ、エレクトロの視点でも、ロックの視点でも、現時点ではやはりハイブリッドなものですよね。さらに今回のアルバムは、かのデヴィッド・ボウイに「君はなぜ活動休止なんてしたんだい?」と言われたのが発端となって作られた作品でもあり、意識してかしないか、サウンド・スタイルがベルリン三部作〜「スケアリー・モンスターズ」のボウイみたいにもなっており、いみじくもジェイムスなりのトリビュートにもなっているなとも思えましたね。

 

 

それからリリックですね。ジェイムスは類い稀なサウンドメイカーであるだけでなしに、社会風刺能力もある優れたリリシストでもあるんですけど、今回はそんな彼がこれまで以上に自分の鬱などを主題としたこれまで以上に内省的な心情を見せつつ、それでいて、トランプ政権誕生による世の閉塞感もしっかり表現している。でも、それでも「American Dream」という言葉をあえて標榜することの勇気。言葉の一つ一つがすごくリアルでもあるんですよね。聞いてて「本当はU2がこういうアルバムを作るべきなんじゃないか」と「アクトン・ベイビー」の頃など思い出しながら考えたりもしました。

 

 

 今思えば、「時代の流れに乗っていた」という意味では、2007年の「Sound Of SIlver」にはかなわないでしょう。あれは世がインディ・ロックからニュー・レイヴ、EDMへと変わっていく瞬間に出た時代の変わり目のサウンドであり、ニューヨークでの温楽シーンの拠点がマンハッタンからブルックリンへと遷都して行く瞬間を捉えたものでもあり、カルチャー・シティとして繁栄を築いていたニューヨークに対する憧憬と皮肉も絶妙に表現した、時代とともに生きた見事なアルバムでした。今回はそういう波はジェイムスには本来なかったとは思うんですが、自らの持つ才能と実力で7年の空白を物ともせず、もはやシーンにとって不可欠な重鎮として時代を再びモノにした文句なしの傑作だったと思いますね。このアルバムが今年の多くの媒体の年間ベストでケンドリックやLordeと匹敵してこぞって上位にあったのも大いに納得、というか当然でしょう!

 

 

 

author:沢田太陽, category:2017年間ベスト, 01:14
comments(3), trackbacks(0), - -
Comment
面白かったです!
来年もぜひ!
(アーケイズはなんだかんだで好きでしたがw)
81 till I die, 2017/12/17 10:30 AM
ありがとうございます!
興味深く拝見しました。
それなりの音楽好き, 2017/12/17 11:44 AM
ランキングお疲れさまです
来年も楽しみにしています
個人的にはRapsodyやFKJ,Residenteのアルバムをよく聞いてました
kkjj, 2017/12/17 7:40 PM









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