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映画「The Big Sick」感想 傑作!ロマンティック・コメディの生まれにくい時代に

どうも。

 

今日、こっちは祝日なのですが、2日続けて映画レヴュー、行こうかと思っています。

 

まず最初はこちらです。

 

 

 

 これはもう、半年くらい楽しみにして待っていた作品です。「The Big Sick」。こちらのレヴューです。

 

 この映画の評判はサンダンスの時から耳にしていて、アメリカで公開が始まるや短館規模でかなりのヒットになって、拡大になって、全米映画興行成績でもトップ10に入るほどの話題になった作品です。

 

 今回のこの映画、主役は、知っている人は少し知っている程度、僕も顔なじみはあったんですけど、「えっ、主演なの?」と驚いたくらいの知名度の人。その人の作品がどう話題になったのでしょうか。

 

 

 まず、あらすじから行きましょう。

 

 

 

 舞台はシカゴ。主人公のクメール(クメール・ナンジャーニ)は、友人たちとともに、スタンダップ・コメディの夜の舞台に立っていました。

 

 

 彼は、ある夜、自分のスタンダップの回で、話している途中で声をかけてきた女性と知り合います。終演後、「ああいう時に声をかけるのは良くないんだよ」と彼女に注意します。

 

 

 

 その彼女、エミリー(ゾーイ・カザン)は、ちょっとつかみどころのない不思議な女性でした。知り合って恋に落ちても、なかなか急いで愛に突っ走らせすにクメールに色々ルールを課します。それは、同じくワケアリのクメールにも都合が良かったのでした。

 

 

 

 クメールはパキスタン移民の子供で、基本は一人暮らしでしたが、たまに実家に帰らなければなりませんでした。それは、お母さんが薦める見合い相手との、家族くるみでのデートがあるからです。パキスタン系の家族の場合、見合いは絶対なのです。

 

 

 

 クメールは、そもそもは高い教育を受けている人で、本当は医者にされるところでしたが、今は弁護士を目指して勉強し、「コメディは趣味」ということになっていました。そんな環境の中、クメ−ルには白人のエミリーなど、家族が受け入れてくれるワケがないと思っていたからです。それほどまでに、ママの言うことが家族の中で絶対になっていたのです。

 

 

 

 そんなクメールでしたが、エミリーのことを愛さずにはいられなくなってきます。クメールは彼女のことを知っていきます。それは彼女が心理学を学んでいること。そして、過去には実は離婚歴があること。ただ、そんなことは気にならないほどに彼女のことを愛していくのですが、ある日、エミリーは、クメールの部屋に女性の写真がたくさんあるのを見てショックを受け、せっかく上手くいきそうだった恋愛が壊れてしまいます。

 

 

 

 それからしばらくして、クメールはエミリーの友人から、彼女が急病で倒れたという話を聞きます。入院先の病院に行くと、エミリーは変わらずクメールに釣れなく接しますが、たがて意識不明に陥ってしまいます。

 

 

 

 しばらくして、エミリーの両親が駆けつけますが、なかなかクセモノのこの両親(レイ・ロマノ、ホリー・ハンター)を前にクメールもタジタジとなり、そこからちょっと不思議な数日間が始まります・・。

 

 

・・と、ここまでにしておきましょう。

 

 これはですね。

 

 

 アメリカでも、ここ最近になって、ようやく名前と顔が知れはじめたコメディ俳優ですね、クメール・ナンジャーニ。彼は、この上の写真の、HBOのドラマ、「シリコン・ヴァレー」の中に出てくる、コンピューター・ナードの一人として有名になった人です。だから、この映画も彼が主役と聞いた時に「えっ、もう、そんなことに!?」と僕も驚いたほどです。このドラマでも、彼、インパクトに残る役ではあるんですけど、脇役でしたからね。

 

 そういうことが起こるのは、この映画が彼が自分自身の実体験をもとに、自ら脚本を書いて作ったからなんですが、それを

 

 

今や本当にアメリカン・コメディの大仕掛人ですね、あのジャド・アパトウがプロデュースを買って出たところ、ことが大きくなりました!

 

 いやあ、彼の才覚って、本当にすごいですよ。10年ほど前には「俺たちニュースキャスター」とか「40歳の童貞男」とか「スーパーバッド」とか、典型的な野郎コメディ、ブローマンスを作っていたのに、2010年代に入ってクリステン・ウィグの「ブライズメイズ」、エイミー・シューマーの「エイミー・エイミー(Trainwreck)」、そしてドラマの「Girls」と言った女性コメディを開拓し、そして今度は移民系コメディアン。ちゃんと時代の先を読んでコメディの可能性を開拓していますよね。

 

 

 そして、この映画自体が、アパトウの注目に値するほど、本当に完成度が高いんです!

 

 まず、何に驚いたかって

 

 

 このクメールとエミリーの2人のケミストリーですよ!

 

 クメールは、映画初主演とは思えない、堂々とした演技っぷりでしたね。愛する彼女が病気になる際のシリアスで献身的な演技も、普段のちょっとトホホで情けないところも、本当にうまくやれてた。いくら自分が書いて、実生活に基づいた話だからって、なかなかここまで演じることは難しいですよ。

 

 あと、パキスタン移民であることを自虐的に描いたところ、これも昨今のアメリカ社会の姿を如実に表してうまいなと思いましたね。

 

 

 

 実際、クメールは、先にインド系のコメディアンとして成功したアジズ・アンサーリやハッサン・ミナージュとともに早速比較されていますが、いずれの人たちも、インド系ということを逆手にとって、それを巧みに笑いに転化させていますね。とりわけインド系と言うと、民族的にやはり本来すごく保守的で、それゆえに西洋社会の観点から見たらすごく古臭く、時としてダサ区さえも見えてしまう瞬間に少なくないんですが、すでにアメリカで生まれ育った彼らには、そのインドとアメリカの文化の距離感というのが客観的にわかるし、彼ら自身も、「必ずしも自分や他にもそうじゃない人はたくさんいるのに、古臭い伝統にとらわれている民族性と思われて困る」という感覚を、すごく自虐的に表現しますね。アジズがネットフリックスでやってるドラマ「Masters Of None」もまさにそういう内容で、なんか「インド版ウディ・アレン」みたいで本当に良いものです。

 

 

 この映画でも、そこんとこはしっかり描かれてますね。とりわけ、クメールの場合、インドではなく、「パキスタン」ですからね。そこのところの微妙な違いを、かなりお約束的なステレオタイプの国民性ギャグを頻繁に駆使してますね。

 

 

 であると同時に、パキスタンといえば、どうしても「アルカイダの活動拠点」という印象も持たれてますよね。その辺りで、すごく差別と偏見にあって苦労している姿も、さりげなくですが、しっかりと描かれています。

 

 

 そして、もう一人注目が

 

 

 ゾーイ・カザンですよ!

 

 彼女、5年くらい前から若手の注目女優として見られていましたけど、ようやくハマる役が見つかったというか、コミカルな役やらせて、こんなにうまかったんだと思いましたね。あと、その笑いの中に、どこか憂いの隠せない、そのあ青い目の感じ。これがすごくゾクゾクッとさせるものがあります。

 

 

彼女って、私生活では

 

 

かの、現代の怪優ポール・ダノの奥さんですよ!そういえば、「ルビー・スパークス」って映画で共演してましたけど、あの時点で実は結婚してたんだそうですね。なんか、今回の映画見て、ダノの役者としての影響が彼女にも生きるようになったなと思いましたね。

 

 それから、この映画、脇役もすごくいい。特に

 

 

ホリー・ハンターは絶品だったなあ〜。

 

もう、彼女も50代後半かな。もうすぐ孫ができるくらいの役をこの人がやったのは初めて見たし、そこまで老けた役ってやったことのある印象ってなかったんだけど、ものすごくリアルに、かつ、ちょっとクセのある娘の、さらにクセのあるお母さん(笑)の役を、ユーモアと人間味、その両方を巧みに演じてましたね。ぶっちゃけ彼女、この演技でオスカーの助演女優賞にノミネートされても、全くおかしくないし、むしろ積極的にされるべきです。

 

 

 あと、彼女のダンナ役のレイ・ロマノも良かったですね。彼は「Everybody Loves Raymond」っていう90年代のテレビ・ドラマの主役で、どっちかというと純朴な役柄の人だったんですけど、ここでの「朴訥だけど、なんか変な人」を、これまでに泣き意外性を込めながら演じてましたね。

 

 

 あと、クメールの両親とお兄さんの家族たちもすごく笑えるし、スタンダップ界の友達たちもいい感じでしたね。「サタディ・ナイト・ライブ」のキャスト・メンバーでもあるエイダン・ブライアントっていう、ちょっと体の大きな女優さんがいるんですけど、彼女も友人役でいい味出してましたね。

 

 

 ・・というふうに、コメディとして、ロマンスとしてなかなか見ごたえのある映画なんですが、同時に

 

 

 これだけの要素が揃わないと、今、ロマンティック・コメDHいは難しいんだなあ〜

 

とも痛感しましたね。

 

 これ、見ててですね

 

 

 もう、本当に愛さずにはいられない、大好きな映画です。「世界に一つのプレイブック」。これを思い出さずにはいられなかったんですけどね。

 

 

 これも、精神的な障害を負った2人のラヴ・ロマンスで、なかなかトラブルありの、一筋縄ではいかない話でしたよね。今回の「Big Sick」も、一方は病気、そしてもう一人はあまり一般に知られていない国からの移民という、これくらい極端なセッティングがないと、今、ロマンティック・コメディって成立しないんだな、と思わされましたね。

 

 

 あるいは、ホアキン・フェニックスの「her」ですね。あれも、人間とコンピューターのOSの恋の物語じゃないですか。そういう、特殊な設定じゃないと、古くからの伝統のあるロマンティック・コメディが描けない時代なのかあ、と思って、見ていてワクワクはするんだけど、同時に寂しくもありますね。

 

 

 あと、ちなみにこの映画、何気にグッとくるのがラストです!ネタバレさせたくないので、あまり言えませんが、ニヤリとしますよ(笑)。

 

 

 これ、日本でも公開されて欲しいんですけどね。有力候補ではないですけど、批評はかなりいいし、オスカーでも推す声上がってるから、少しくらいノミネートされて欲しいんですけどね。そしたら、公開に近づけるとも思うので。

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 13:13
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Comment
今年もよろしくお願いします!
本作、日本でも2月に公開です!ほんとに嬉しい!早く観たいです(^^)
haru, 2018/01/04 11:37 AM









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