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ライブ評「U2ヨシュア・トゥリー30周年記念ツアー(2017.10.21サンパウロ・モルンビ・スタジアム) もはやライブを超越!”名盤再現”ならぬ、全身感覚に訴えた”名盤再構築”

どうも。

 

では、お待ちかね、U2のヨシュア・トゥリー30周年記念ツアーのレヴュー、行きましょう。

 

これ、当初は、行こうかどうしようか迷ってたとこなんです。僕の中で、1987年に出たこのアルバム、彼らの中で決して一番に好きなアルバムではなかったから。「でも、こうやってせっかく南米で観れるチャンスがあるからなあ」と思っていたところ、ワイフにこの話を振ったら、「そんな貴重な”一生に一度級のチャンスを逃せるわけがない」と背中を押してくれ、フェイスブック上の友人の後押しもあり、行くことに決めました。ただ、今回、サンパウロ一箇所のみの公演だったので、チケットの争奪が本当に大変でした。トライした最初の公演はもう速攻で売り切れ。追加公演1回目の際も、ネット販売はどうしようもなく秒殺で、プレイガイド販売に賭け、早朝からチケットセンターの本部に並ぶこと5時間かけて、根性で獲得しました。そのあと、2回追加が出たんですけど、計4公演、すべて売り切れ。凄まじい人気ぶりです。僕らの方でも今回は、ワイフも、彼女の兄夫婦も行きましたからね。

 

 

 この、骨の折れるチケット獲得合戦を体験してから思い入れはさらに上がり、行くのがすごく楽しみなライブとなっていました。

 

 

 この日ですが、幼いこども2人をワイフの両親に預け、午後7時になる少し前に会場のモルンビ・スタジアムにつきましたが、67000人入るこのスタジアムの前には長蛇の列。また、全国各地から来たことを示す、いろんな企業の長距離バスが所狭しとスタジアムの周辺に置かれ、ワイフ曰く「いろんな国の方言が飛び交っていた」と言います。

 

 

 そして中に入って座席に着いたんですが、こんな感じでしたね。

 

 

 アリーナには横長のステージがズトンッでしたね。僕らは今回、ちょうどこのステージが真正面に見えるスタンド席だったんですけど、これだけパノラマ風に横に広いと、引きの絵でしっかり左右対象に包括的に見えるのはかえって得した気分になりましたね。すごく見てて、風光明媚な感じがしました。

 

 そして、この写真を撮って間もなく、豪華なオープニング・アクト、ノエル・ギャラガーがスタートしました。

 

Noel Gallagher&The High Flying Birds  1.Everybody's On The Run 2.Lock All The Doors 3.In The Heat Of The Moment4.Riverman 5.Champagne Supernova 6.Holy Mountain 7.Half The World Away 8.Little By Little 9.Wonderwall 10. Don't Look Back In Anger 111.AKA What A Life

 

 今回のノエルの前座、結構、もう長いですね。ヨーロッパ・ツアーは全部一緒だったし、南米も10月入ってからメキシコ公演から、コロンビア、アルゼンチン、チリ、そしてブラジル。ブラジルだけでも4公演ありますからね。

 

 南米は基本的にオアシス強いので、客はU2目当てとはいえ、半分強のお客さんはしっかり聞いてましたね。ノエルの選曲的には、かなり勝負に来てるなと思いましたね。ソロの1stと2ndからはほぼベスト選曲できてましたし、6曲めには来月出る新作からのニュー・シングルやってましたね。なんかサビの部分がリッキー・マーティンの曲みたいな、ビーチボーイズノリの異色曲ですけどね。

 

 そして、オアシス楽曲もかなり勝負に行ってましたね。個人的には「シャンペーン・スーパーノヴァ」や「ハーフ・ザ・ワールド・アウェイ」は嬉しかったですね。1995年の、一番脂乗ってる時の曲ですから。あと、さすがに「ワンダーウォール」「リトル・バイ・リトル」そして「ドント・ルック・バック・アンガー」あたりはブラジルでもよく流れてる曲だったりするので、あちこちから一緒に歌う声が聞こえてきてましたね。そこのところはさすがです。

 

 そして、最後はマンチェスター・シティ熱烈サポーターだけあって、今、同チームで活躍中の20歳のセンターフォワード「ガブリエル・ジェズスにこれを捧げるよ」と言って、ソロ転向後最大の代表曲の「AKA What A Life」でシメました。

 

 

 オアシスの代表曲も多めで、なかなか聴かせるライブだったと思いますね。ただ、ああやって聞くと、というか、最近、リアムのソロ・アルバムも出たこともあって、やっぱり声のところでなんか物足りなさというか、地味さを感じてはしまいますね。それは今後、ずっと避けては通れない道なのかなとは思いましたけどね。

 

 

 ノエルが終わった頃に午後8時30分。さすがにこの時間ともなると、スタンド席には人がギュウギュウ詰めになてる手前、もう、身動きできないものになっていました目・このブレイクの時に食事しに行きたかったんですけど、もう席を立つ余裕すらなくなっていました。

 

 そして、9時を少し回ったくらいのところで、ウォーターボーズの「Whole Of The Moon」がかかり、照明が消えた時点で、U2のライブはスタートしました。この日は曇っていたので名月は見れませんでしたが、ちょうどU2と同世代のウォータボーイズのこの名曲を聴いてると、U2が若い頃、どういうシーンから登場し、どう期待をかけられていたのかがフラッシュバックしますね。いい選曲だと思います。

 

 

1.Sunday Bloody Sunday 2.New Year's Day

 

 スタートは1983年の、彼らの出世作「War(闘)」から。僕もここからU2を知ったものです。事前にセットリストを見てきてるから驚きはないんっですけど、あの、「Sunday」のドラムのイントロから、エッジによる、あの鋭角的で哀愁を帯びたフレーズが入ってくると、、やはり熱いものがこみ上げてきます。そして、ボノの声量の安定した咆哮。オリジナルから半音下げているアレンジとはいえ、それでもハイトーン・シンガーとしての醍醐味は十分味わえます。そして、つくづくもこの2曲を聴くと、彼らがそもそも最初に世界のロックシーンに躍り出ることができたのは、このロックンロールのパフォーマーとしての圧倒的な力量と、スケールの大きな楽曲ゆえだなと、改めて思う次第。パンク/ニュー・ウェイヴって、あのクラッシュが1982年に全米トップ10に入って、スタジアムで全米ツアーを行っていただけでも快挙のように言われていたものでしたが、U2がそのすぐ後に続けることができたのも、パンク/ニュー・ウェイヴのカルチャーから生まれたバンドの中での、その早くからの桁外れな音楽的実力ゆえだったんだなと、この2曲の演奏を聴くに改めて思わされますね。

 

 ただ、この時点ではモニターに彼ら自身が大写しされないので、ほとんど「影」しか見えない状態です。

 

3.Bad 4.Pride(In The Name Of Love)

 

 そして、続いては1984年の「アンフォゲッタブル・ファイア」から。この辺りは、「ヨシュア・トゥリー」に至るまで、彼らがどんなバンドだったかを伝えるものですね。「ヨシュア・トゥリー」への導入としては綺麗な入り方だと思うし、ドラマを作るにはもってこいの流れですね。

 

 そして、「Pride」の合間だったか前だったかでボノが語り始めます。彼は前日、サンパウロにある、コパン・ビルって言って、ブラジリアの建築行ったので有名なオスカー・ニーマイヤー建築のビルに言ったとのことですが、「そこから国全体を眺めたんだけど、なんて美しい国なんだ」とブラジルを褒め、そこで「キミたちにもそのうち、この美しい国にふさわしい政治家を得るよ」と言って、観客を沸かせました。ちょうど今、ブラジルは政治大混乱期で、ボノが支持していた左翼政権の労働者党が元大統領を筆頭とした汚職大スキャンダルの最中にあるんですが、ボノは、この党やルーラっていうその元大統領の名前を一切出したり、肩をもったりすることなく、良心的にブラジルに見合ったメッセージを送っていたのはさすがだなと思いましたね。

 

 

 そして、「ヨシュア・トゥリー」の本編登場を思わせるキーボードのイントロが流れ始めると、ステージが

 

 

 このように真っ赤に光り始めました!本当はもっと真っ赤に染まってたんですけどね。そして、その写真で黒く見えてる、縁の黒のブツブツ、これが電球でして、これが激しく点灯し始めてそれから

 

 

5.Where The Streets Have No Name

 

 

 

 横長の巨大モニターがここで映像を初めて写し始めます。曲はご存知、「Where The Streets Have No Name」ですが、この道が観客の僕らの目線で、進行方向にちゃんと動いていくので、その瞬間、「おお〜っ」という大歓声が一斉に上がりましたね。この転換は本当に鮮やかなものでした。

 

6.I Still Haven't Found What I'm Looking For

 

 

 そして続く「I Still」では、今度は砂漠に浮かぶヨシュアの木の映像に。この映像がですね、本当に美しいんです!僕が25年くらい前にNHK入った頃、ハイヴィジョンっていう、巨大な画面の視聴形態の開発をあの会社がやってて、「走査線が従来の2倍以上

だから、ものすごい高画質なんだぞ」と言われたものですが、あの時の映像の鮮明さを思い出しました!風景一つとってもハイパー高画質のアートですよ、これは!

 

7.With Or Without You

 

 そして、彼ら最大のヒット曲でもあるこの曲では、今度は渓谷を空撮した雄大なショットで。

 

8.Bullet The Blue Sky

 

 そして、この曲で初めて、演奏するU2の姿が中央に映し出されます。両端で、戦争に対しての批判のテーマに合わせ、アメリカ星状旗の前で陸軍のヘルメトをかぶる動作をするいろんな人たちを映し出します。

 

9,Running To Stand Still

 

 そして、スローバラードのこの曲は、付帯映像一切なしで、誠実に曲を奏でるU2の姿がモノクロで浮かび上がります。

 

10.Red Hill Mining Town

 

 そして、この曲はここだけの独自アレンジ。画面には、軍楽隊の演奏が映し出され、このホーン部隊の演奏とともにこの曲が聞かれました。

 

 この曲の終わりで一度ボノがMCを入れ、後半に流れます。

 

11.In God's Country

 

 この曲では、今回の象徴にもなっている、ヨシュアの木のイラストが、パノラマ画面の中で、いくつもの色にカラフルに光り続けましたね。

 

12.Trip Through Your Wires

 

  当時、U2史上初の本格的なアメリカン・フォークと謳われたこの曲ではボノがイントロでブルース・ハープを披露し、画面はその演奏を写しながらも、田舎の民家の壁を塗る、セクシー美女を映し出します。

 

13.One Tree Hill

 

  ゴスペル・コーラスも導入したスローなこの曲では、画面は赤く光る惑星の姿が映し出されます。

 

 

14.Exit

 

 アルバムの中で最も地味なこの曲は、ひたすら演奏する彼らの姿。

 

15.Mothers Of The Disappeared

 

 そして、今回のこの「ヨシュア・トゥリー」再構成、最大のクライマックスは実はこの曲でした!

 

 これまで、そこまで知られた曲とは言いにくかったんですけど、チリやアルゼンチンで70〜80年代に頻発していた子供の誘拐事件の被害者の母親たちによる献身的な活動を歌った荘厳なこの曲では

 

 

 

このように母親(役)たちの姿が映され、持ってるロウソクが一つずつ消えていく、という演出です。この曲に「オー、オオー」というコーラスがあるんですが、この部分が会場中でアンセミックに歌われます。こう言うフレーズを合唱するのが大好きなブラジル人は、曲が終わっても合唱をやめません。こうして「ヨシュア・トゥリー」再構築は、母たちを祝福するポジティヴな力強さとともに大団円の興奮とともに幕を閉じます。

 

16.Beautiful Day 17.Elevation 18.Vertigo

 

 

そして、あまり待たせることなく、巨大画面は虹色に光り始め、そこからアンコール。その初めは「Beautiful Day」! 「Mothers Of The Disappeared」の多幸感の陶酔状態を引き継げるのはこの曲しかありません。このあたりの、ポジティヴなエネルギーの昇華の巧みさ、この点においてはU2は本当に巧みですね。

 

 ここは「その後のU2」な趣ですね。2000年代の彼らを代表する3曲のヒットがエネルギッシュに披露されます。「Elevation」も「Vertigo」も、そうじゃなくても、ここ10数年の彼らのライブで定番でアゲアゲになる曲ですが、前からの流れが絶妙なので、特に盛り上がりましたね。

 

 

19. You're The Best Thing About Me 20. Ultraviolet(Light My Way) 21.One

 

 そしてアンコール第2弾は、彼らの新曲「You're The Best Thing ABout Me」。この曲は、今回のツアーの、9月の全米第2弾からプレイし始めたんですけど、これ、久々にいい曲です。サビ終わりでちょっとひねるとこがいいんですよね。

 

 この曲がストレートなラヴ・ソングということもあるんですが、ここでボノが、「素晴らしい女性たちを大いに称えようではないか」との呼びかけのもと、「アクトン・ベイビー」後半の名曲、「Ultra Violet(Light My Way)」へ。この高揚感がまた素晴らしいい!

 

 

 

 ここでは、婦人参政権に貢献した人、公民権運動で戦った人、あのノーベル賞少女のマララさんといった、歴史上に活躍した女性たちの写真が曲中で紹介されたんですけど、その中にブラジル人女性もたくさん紹介されたんですよ!ブラジル音楽の女性のパイオアニアのシッキーニャ・ゴンザーガ、ブラジル芸術のパイオニアのタルシラ・ド・アマラル、「ブラジルのマザー・テレサ」のイルマ・ドゥーセ、ドメスティック・ヴァイオレンスの法律に彼女の名が冠せられた活動家のマリア・ダ・ペーニャ、そして、黒人の今のトッPう女優のタイース・アラウージョ。「なんで、U2、ここまでブラジルのこと、知ってるんだ?!」となって、会場、大盛り上がりでした。

 

 そして、この祝福のオーラの絶頂の中、最後はこの流れにふさわしい厳粛なバラード、「One」で心の中に静かな高揚感を残し、ショウは幕を閉じました。

 

 

 いや〜、もう、「ロックのライヴ」という次元を超越した、壮大な「ステージ・アート」でしたね!!

 

 最近、「発売から○周年」みたいなライブはいろんなところで頻繁に行われますけど、ただ演奏で再現しただけなものが普通な中、U2のはさしずめ、その名盤を軸とした「新たなアート」を、深い思慮と、映像、聴覚を可能な限り駆使して、音源の次元を超えた新しい創造物として完全に転化してましたね。

 

 あと、「ヨシュア・トゥリー」だけにとどまらず、あのアルバムの持つヴァイタルなエネルギーを、他の曲に乗り写させてポジティヴな活力を爆発させるあのクリエイティヴなエモーション。あれにもただ脱帽するばかりです。

 

 U2というバンドがいかにして伝説になりえたか。その答えを僕は改めて目撃したような気分になりましたね。

author:沢田太陽, category:ライヴ・レヴュー, 19:10
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Comment
こんにちは。初めまして。いつも愛読しております。
貴重なライブレポートありがとうございます。
ところで12月1日にはU2の新譜がリリースされる予定ということで、もしもお時間と体調が許しましたら、U2のベスト〜ワーストをやっていただきたいです。どうぞご一考くださいませ。よろしくお願いします。
bonoxylove, 2017/10/26 8:59 AM









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