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ロックの落ち込みが思っている以上に深刻な7つの理由

どうも。

 

 

これ、こないだから書こうと思ってなかなか難儀だったネタでしたが、ようやくまとまりそうです。

 

 

実は今年に入って、「ちょっと、ロックはなんとかしないと本当にヤバいんじゃない?」と思っていました。僕がこないだ選んだ「今年最初のトップ10アルバム」も半分がヒップホップだったでしょ?あれがまさにその象徴でもあったわけなんですけどね。特にアメリカね。ここが今、本当にロックの場所として心配です。

 

 

では、なぜ「ロックがちょっと危ない」と思うのか。ちょっと例を挙げてみたいと思います。

 

 

〆Gに入り、アメリカでヒットらしい作品がない

 

 いやあ〜、本当にこれ、問題ですよ。

 

 今年に入って、アメリカで本当にヒットがないんですよ。たとえば、ここ数年も、年に何曲かはそれでもシングル・ヒットってあったんです。去年も、ルーカス・グレアムとトゥウェンティ・ワン・パイロッツという「それがロックと思われてもなあ」みたいな曲が売れてましたしね。

 

 それが今年に入ってからは、まだ該当するヒットがありません。ヨーロッパだと、アデルの市場を狙ったラグス・アンド・ボーンマンが売れてはいますけど、あれでさえアメリカでは全然ウケてないですからね。

 

 そして、アルバムもパッとしませんね。上位で目立って売れたのThe XXの新作だけで、あれだって、2ヶ月でトップ200から落ちた。こないだ、デペッシュ・モードとスプーンが同時に初登場している週があったけど、それだってデペッシュ・モードが初登場5位から翌週は94位、スプーンも17位から107位というチャート・アクションぶりです。で、しかも、それが、ロックで目立ってよかったチャート・アクションでさえあったわけだから。

 

 今、他のジャンルだったら、こんな急降下の仕方はしません。ヒップホップだってカントリーだって、ある程度チャートの上位に入った作品はゆるやかに下がって行きます。これはアメリカにおいて、ロックが一般的な音楽的話題になっていないことを現しています。

 

 

◆USにはローカルなロックシーンが根付いていて・・」の神話の根本的な間違い

 

 

「大丈夫だ。アメリカのインディのロックはローカル・シーンに根付いているから。少なくても草の根的なファンがしっかりついているんだ」。そういう説は80sとか90sのときとかもあったし、ちょうど10年くらい前かな。まだインディがすごく調子がよくて、ピッチフォーク・メディアみたいなウェブ・メディアが盛んな頃には日本でさえ、そのような言い方がされていました。実際、全米トップ10に入る、地味ながら優秀なアーティストが結構いましたからね。

 

 

 だけど、そういう、たとえばウィルコとかスプーンとかモデスト・マウスとかシンズみたいなカリスマがひととおり当たって、ピッチフォークからアーケイド・ファイアとかフリート・フォクシーズ、ボン・イヴェールみたいな本当に飛び抜けた実力を持っている人たちのタマが尽きた後、正直苦しい状況なのが実際のところです。アダルト系のラジオ局が興味持ってくれたアラバマ・シェイクスくらいなものでしょう。出たばかりのファーザー・ジョン・ミスティの新作は売れそうですが、それでも、せいぜいそのくらい。あと、インディ系のウケのよいメタルのマストドンかな。

 

 

 それどころか、今年に入ってから、何年か前にピッチフォークで話題になったバンド、大苦戦ですよ。僕も作品的には良いと思ったダーティ・プロジェクターズとかリアル・エステートは、配給先のドミノが何かあったのか、前者はビルボードに入ってこなかったし、後者も100位止まりと、大幅にチャート実績を下げました。ジャパンドロイズとかフォクシジンとかクラウド・ナッシングスとか、そういうのも全然売れてない(というか、作品も個人的にはう〜ん・・)。なんか、あの系のインディ・バンドを後押ししていた流れが完全に底をついた感じになってますね。

 

 

 そういうUSインディを持ち上げてた人たちって、UKのシーンを軽視する傾向が強かったんですけど、案外こっちの方がしぶといんじゃないかと僕は思ってます。実際、The 1975とかキャットフィッシュ&ザ・ボトルメンとか、しぶとく長く売れてるわけだし、アルトJとかフォウルズも人気は安定してるし。去年出たブラッサムズもこれに続きそうな売れ方してるし、今年中に出るロイヤル・ブラッドも続きそう。こっちの方が、「数は少なくなったけど、ロックファンに大事にされている」感じが見てて感じられるんですよね。こういう事実は見逃さない方が良いと思います。

 

 

H禀哨瓮妊アの絶賛をヒットと混同してはいけない

 

 

あと、ロックファンが現状の危なさを感じ取っていない大きな問題として「批評メディアでの絶賛」。これがあると思います。

 

アメリカだと前述のピッチフォークをはじめ、今ならたとえばコンシークエンス・オブ・サウンドとかステレオガム、ペースト、イギリスだとそこに新聞のガーディアンとかインディペンデント、ドラウンド・イン・サウンドとかが着いて来るのかな。そういうのを読むと、毎週のように主にインディ・ロックの作品で絶賛作品があいつぐわけです。あれを立て続けに見ると、あたかもロックが流行っているかのように見えるのですが、それこそが大きな錯覚です。

 

 そういう作品が、今だとチャートのトップ10に入ることさえ快挙で、数週後にはトップ100にさえ姿がないのが今や普通です。つまり、固定ファンのパイがあまりにも小さいんです。批評なんて言っても、その小さなパイに勢いを何割か増にしているだけにすぎません。

 

 それに批評的な点数がいくら良くても、そこに売り上げがついてこなければ、フェスでも演奏するステージも時間帯も、上にあがってはいけません。その意味で、ロックバンドとはいえ、セールスはすごく大事なんです。ほめるレヴューを読むと、そういう現実が忘れられる可能性が強まる。気をつけないといけないところです。

 

 

ぅ献礇鵐詈け・差別化し過ぎたことで、音楽的に窮屈になってしまったインディ・ロック

 

 あと、ロックの世界で行なわれた、過剰な棲み分け。これもロックの現状を弱体化させる一因になっていると思います。

 

 現在、インディ・ロックが、ロックフェスへの出演の中核をロックでになってるところがあります。おそらく、多くの人が気がついているように、今現在、ラウドロック系は完全に切り離されたものになっていますよね。たしかに、あまりにもある時期、インディ・ファンとラウド・ファンの行動様式が全く相容れない、共有が難しいものになっていた事実はあるし、それよりはヒップホップやEDMの方が食い合わせが良い。そんな感じでフェスも発展していきました。

 

 後、これに加えて、ちょっと甘めのシンガーソングライターなんかも「これはアダルト・コンテンポラリーの方があう」、ちょっと古めのテイストのアメリカンのものなら「これは最近のカントリーで対応できる」なんて感じでいろいろ切り分けていったわけです。でも、そうなったことで「一体、ロックってなんなの??」と、事情をよく知らない人にとっては実態のわからないものになってしまった。

 

 それに加えて,ロックの二大勢力だったインディとラウドも、先にラウドがコケて、インディが今ヤバい感じになっている。実際、フェスもかなりの部分、ヒップホップとEDMに助けてもらってるのが現状ですからね。こうなってしまってはロックの「切り分け」の意味なんて何もなくなってしまいます。切ってしまった分、ロックそのものが弱まったわけだから。ヒップホップとかEDMとかに、そういう「こんな音だからフェスに適さない」みたいな選り好みなんてないでしょ?それをロックがやってしまっているわけです。

 

 あと、本来、「インディだからこそ、音楽的に自由」のはずだったインディ・ロックが、こういう切り方をしてしまったことで、皮肉にも音のイメージが限定されてしまい、自由さがなくなったんですよね。これも音楽的な魅力を損なわせる原因にもなっていると思います。

 

 

ゥ蹈奪にまつわる一般的情報があまりにも年寄り過ぎ

 

 あと、最近のロックが不調の理由に、「ロックにまつわる情報があまりに年寄り向き」というのもあります。

 

 

 そのひとつが、特に去年顕著でしたけど、レジェンドの訃報ですね。これが多くありすぎるために、ロックがすごく「過去のもの」に見えてしまう。あと、もうひとつが、デザートトリップ・フェスティバルみたいな、60歳超えたアーティストばかりを集めたレジェンド・フェスですね。今年も別なものをイーグルスとフリートウッド・マックがやるみたいですけどね。こういうのって集客は間違いなく良い訳です

 

が!

 

 もう、こういうのをやってしまったら、若い層にとっては「ああ、こういうのは自分たちのジェネレーションのものじゃないな」としか見えなくなってもしょうがないと思います。だって、その子らにとっては、「そういうイベントに行くのは、自分たちのじいちゃんばあちゃんばかり」なわけですから。

 

 

 日本だとまだ、祖父母で洋楽ロックを聴く層って、そこまで多くないから実感が湧かないかもしれませんが、英米圏だともはや、その代が60、70年代ロックに夢中だった世代、というので普通です。実際、そのテのレジェンドのライブに欧米圏で行った場合、日本で体感するよりももっと年取って感じますからね。日本みたいに「ある年齢過ぎるとロック・コンサートに行かない」みたいなこと、あちらだとないですからね。

 

 

Ε蹈奪勢が「ストリーミング」を利用した「ゲーム」ができない

 

 あと、最近の人気アーティストが得意な「ストリーミングを介したゲーム的プロモーション」をするのが、ロック勢はすごく苦手ですね。

 

 ここ最近、特にヒップホップのアーティストは、抜き打ちで突然新曲なり、ニュー・アルバムを、ちょっと数が過剰じゃないかと思えるほどに突然発表します。ドレイクあたりはこういうリリースをするのが当たり前になってるし、その作品を「ミックステープ」だの「プレイリスト」だのといって、何の差別化があるのかよくわからないんだけど(笑)、そういうのを若い子たちに「カッコいい!」と思わせるのに成功している。あと、彼の親友のフューチャーも突然、2週連続でアルバムを発売して、それを全米初登場1位にさせている。

 

これに限らず、ヒップホップ勢は最近、「ミックステープ」と称したアルバムの類いを年に何枚も出す傾向があります。これは、「何枚リリースしようが、買う予算を気にしなくてよくなった」という、今現在のストリーミングに対応した発売方法なんですね。で、これが今、キッズたちのあいだで流行ってしまっている。「おい、○○が新しいのドロップしたけど、聴いた?」みたいな感じで、子供たちにとってはそれが話の共有のもとにもなるわけで。これは今の若い子たちには大きなことです。

 

 ところがこれを、今のロック勢はなかなかできません。彼らも「アルバムを突然出す」というとこまではできますが、「短期間に何枚も発表する」というのが出来ません。それは彼らが、「アルバムを出したら、そこからは長期のツアー」とスケジュールがガチガチに決められているために、そうした突発的な行動ができにくくなっているためです。

 

 でも、そういう活動ペースだと、今の子供たちの話題にはどうしても入って来にくくなる。そこもひとつの問題です。

 

 

Шの若い子たちも、彼らなりに頑固だ

 

 そして、今の若い欧米のキッズも、悪い意味で頭が固くなってるとこ、ありますね。フェイスブックの、この世代のコの書き込み見てると、「ロックなんて年寄りが聴くんだ」みたいなことを割と平気で言いますもんね。ヒップホップとEDMばかり聴く類いの子に、これ、顕著ですね。

 

 実際問題、子供にロックが入りにくくなってるのは事実です。最後に子供がロックに接点持てたのって、10年くらい前のエモ・ブームだったと思うから。日本だとまだ、子供がロック聴いてるホッとする現状が海の向こうから見ててもわかるんですけど、これがアメリカで特に死につつあります。ブラジルもそうとうヤバいですからね、このへん。

 

 ただなあ〜。いつの世もそうなんですけど、「テクノロジーに頼った音」に慣れて育った人って、いったん壁にぶち当たったら、リアルタイムの音楽、聴けなくなる傾向が強いんですよねえ。僕はエイティーズの育ちですけど、同世代がまさにそうだったから(笑)。彼らは打ち込み音に強く育ち過ぎて、90sに生音回帰になったときに全然ついていけなくなった。オーバー・プロデュースされた音に耳が慣れ過ぎてしまったんですね。あと、デジタルの音でも「好きだった感じのものがもうない」とか言いはじめてね。今、ヒップホップとかEDMを「進んだ音楽」としてイキがって聴いてる子であればあるほど、これに陥るだろうと思っているし、そのタイミングが来るのは案外早いだろうなとは思っています。

 

 

・・と、これが今のロックに関しての窮状ですね。

 

 

 これを打開するものがなにかは、ちょっと今、見えない感じですね。てっとり早いのだと、こういうのかな。

 

 

 

ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズのソロ・デビュー・シングルですね。これがボウイの物真似なんで、しかもプリンスの曲名でソレをやるという、ロックファンからしたら冒涜にも見えるこの行為なんですけど、これがですね。

 

 

 

 このように非常に良く出来てるんですよ、悔しいことに(笑)。

 

 

 ソングライターが書いた曲ではあるんですけど、音といいコンセプトといい、良く出来てるんですよ、これが。曲調は完全にジギー・スターダストの頃のバラードだし、歌詞も「ファイナル・ショーへようこそ」なんてまんまジギーだし。コンセプトも、「今のこの危機から逃げて解放される準備をしようじゃないか」って、今のハリウッドとかヤング・アダルト小説みたいな「ディストピア」のブームを逆手にとった感じもあるし。ここまで時節を上手く読み取った曲もなかなかないですよ。

 

 

 これ、たとえば、彼の1Dでの仲間だったザインのファンからは「ザインの方がもっとモダンなR&Bをやっている」と、また、予想通りに頭の固い感想がかえって来てもいるんですけど、でも、これで、女の子のファンの何分の、何10分の1でもロックに目覚めたら、言うことないですよね。1Dなんて全世界に1000万人は軽くファンいるはずですけど、1割でも100万人にはなるわけですからね。そういうキッカケになればいいなと。

 

 

 ただ、悔しいのは、「どうして今の若いロックバンドが、こういうあざといことしないんだ!」ということですね。逆にこういうことをやったら、「セルアウトに走った」なんて、メガネづらのナードなインディバンド聴くような人たちから叩かれたりしてね。そういうのが、すごくくだらないのになあ、と思うんですけどね。

 

 

 でも、このあたりがなんかヒントになってくれたらなとは思ってます。僕としても、アイドルじゃなくて、れっきとしたバンドがロックを蘇生させて欲しいですからね。

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 18:58
comments(6), trackbacks(0), - -
Comment
今年出たロックのアルバムだとTemplesの2ndがイチオシです。あとはThe xxやSpoon,Dirty Projectors、デンマークのCommunionsやUKのSundara Karmaのデビュー・アルバム、ジザメリの復活作、エイミー・マン、太陽さんはあんまりだったみたいだけどJapandroidsやCloud Nothingsも良かった。
でも仰る通り、残念ながらThe xx以外はセールス的にコケてるんですよね(苦笑) 若い子達にロックのかっこよさをいかに伝えるかが現状の課題だと思います。
とはいえもうすぐGorillazやKasabianの新作も出るし、今年のロックは豊作だと思いますよ。
j-ramone, 2017/04/12 12:38 AM
豊作なのにこの惨状ってのが
ロック目線での問題なんじゃないのかな
42731, 2017/04/12 8:09 PM
内面から出てきたものを音楽で表現してる人達に売れる売れないで評価することに意味があるんでしょうか。
私はmyspaceやsoundcloudで世界中で20人しか聞いてないものにワクワクしたものです。
それに昔は売れたらセルアウトなんて言われてませんでしたっけ?
インディks野郎, 2017/04/13 12:09 PM
>GorillazやKasabianの新作も出るし

でしょ?指摘した通り、今年はイギリス勢の方がロックの売る上げや注目度的には恩恵受けそうな気がしてます。

>豊作なのにこの惨状ってのがロック目線での問題

はい。ロックだけに特化すれば、「良い年じゃないか」と思えない訳では決して亡いんですけど、全体で俯瞰してみた場合、そう思う人が世の中多くないのが問題なんです。客観性は必要かと。


>売れる売れないで評価することに意味があるんでしょうか。

あります。売れるものが亡いと、産業全体が成り立たないし、況してや巨大なリスナー人口を持っていたことで知られる音楽です。ある程度、売れることで産業支えないと、「終わった文化だ」と思われたら、世間一般に与える文化イメージとしてダメージです。少なくとも、僕はそういうのはイヤですね。


>それに昔は売れたらセルアウトなんて言われてませんでしたっけ?


それは場合によりけりですね。これまでと明らかに方向性を曲げたりして、何にも刺激のない方向性で売れたら、そりゃセルアウトでしょ。だけど、「本来受けてしかるべき、もっとたくさんの人が聞くべき」クオリティを持った音楽が売れたら、素直にうれしいだけですよ。

大体、「セルアウトだ」なんて言ってカッコがつくのは、そういうものをバカにできるくらいにロックが売れているときです。ニルヴァーナが売れたことを恥じるようなことを言って説得力があったのも、1000万枚売れた立場で言ったからであって、10万とか1万くらいしか売れないような人が言っても、説得力はありません。

僕自身でいうと、僕が良いと信じたものなら、どんどん売れてほしいと思うタイプですね。良いものは、みんな知ってくれた方が嬉しいに決まってるので。



太陽, 2017/04/13 12:34 PM
確かに沢田さんのおっしゃる通り今年はUKロックの勢いは凄いですが、USロックもArcade Fire、Vampire Weekend、Grizzly Bear、The Killers、Fleet Foxes、Foster The People、Beck、Queens of the Stone Age、St. Vincentと、これだけの新作がリリースされます。Grizzly Bear以外は好セールスも期待できると思うので、ここからUSロックも勢い付くと思うのですが。
逆にこれだけの面々が新作を出しても影響が無ければ、いよいよロックも後がないですね。
k.k, 2017/04/13 3:02 PM
相変わらずシーンの考察が、ロッキ〇〇オンやス〇〇ザーあたりの人達と比べて50倍は深いですね。

ハリーのシングルも相当いい曲ですね!
わっほ, 2017/04/14 7:36 PM









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