- 映画「お嬢さん」感想 とにかく絶句の衝撃作!ある意味で日本再発見かも・・
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2017.02.19 Sunday
どうも。
今日は映画レヴューではありますが、オスカーものではなく、これを行きましょう。
韓国の巨匠と言ってももういいでしょう、パク・チャヌク監督の最新作「お嬢さん」、こちらのレヴュー、行きましょう。
これはですね、「2016年世界最高の映画」という人がいつつも、その一方で、韓国がオスカーの外国語映画賞の同国の候補から外したり、あと他でも結構批判する人もいたりしたんですが、「2016年の世界で最も物議を醸した映画」と言っていいと思います。
実は僕これ、もう1ヶ月近く前に劇場公開で見てるんですけど、もう、あんまりにも衝撃で・・、言語化するのがすごく困難だなと思ったんですが、日本公開が後2週間くらいなので、ちょっと重い腰をあげて、語っておこうかなと思った次第です。
では、あらすじに行きましょう。
舞台は1939年。まだ韓国が日本に併合されていた頃の、韓国でのお話です。
スッキ(キム・テリ)はスリの一族の娘でしたが、あるとき、韓国に巨大な邸宅を構えた日本の華族の元に侍女として仕えることになりました。
そこには、大邸宅の外から出してもらえない、秀子お嬢様(キム・ミニ)がいました。お嬢様は、叔母さまが首つり自殺をしたことをトラウマに抱えています。この時点で、非常にヤバい雰囲気が、この邸宅内には漂っています。
ただ、スッキの侍女としての採用には裏がありました。それは日本人・藤原伯爵を名乗る韓国の詐欺師(ハ・ジョンウ)が、この華族の財産狙いで結婚して、秀子さまを日本の精神病院に入院させて、その間に財産を自分のものにしようとする計画で、スッキはそのためのスパイでした。それくらい、秀子さまは「ヤバい人」と思われていました。藤原伯爵は秀子さまに言葉巧みに近寄りますが、性的な部分でなかなか苦戦します。
本来なら藤原公爵のために動かなければならないスッキでしたが、秀子さまからたいそう気に入られ、他の侍女とあからさまな格差ができるくらいになっていました。一方、スッキの方も、そのうち思いが溢れ出てしまい・・。
(中略)
実はこの映画、3分構成で作られていて、黒澤明やタランティーノがよく使う、あの手法が使われているわけですが、第2部で話は、秀子さまの過去の話へと遡ります。
秀子さまは、この巨大な屋敷で、叔父の上月(こうづき)(チョ・ジヌン)と生活し、この叔父によって育てられます。ただ、その教育というのは、あまりに衝撃的なもので、それが秀子さまの愛する叔母が自殺する大きな要因にもなっていました。
そして、この教育というのが、あまりに衝撃的な内容なもので・・
・・と、ここまでにしておきましょう。
いや〜、これ・・
ヤバすぎです(笑)!
これですね、一応、日本の公式サイトと、一般に出回っているトレイラーを範囲にして語ろうとしてるんですけど、それでも十分、ある意味、危険でさえあると思います。
もう、第1部でほのめかされるスッキとお嬢様の関係ですが、これ、もう
「アデル ブルーは熱い色」が、単なる清純青春映画にしか見えないほどの濃厚さです(笑)。
いやあ、該当する写真がですね、ネット上にあると言えば、あるんですよ。ただ、僕自身、ちょっと自分のサイトに載せるには、ちょっと限界があるというかですね(苦笑)。
もう、ぶっちゃけ言ってしまえば、これだけで本当はお腹いっぱいなんですよ。このネタだけ描くのだけでも、かなりの社会的リスクを追う作品だと思いますからね。
しかし!
これが一番すごいのはそこじゃありません!
とにかく「衝撃の2部」を見ないことには話がはじまりません。
上にも書いた通り、上月のお嬢様への教育が壮絶なんですが、それがなんであるかは、下のトレイラーの1分10秒ほどにヒントがあります。ここ、ひとつのネタバレなポイントでもあるので、見たくない方はみないでください。
なんか、見たことあるでしょ?そのタコみたいなヤツ。これが本編中に何10倍もすごいわけです。
さらに
日本人的には、これ、視覚だけでなく、音声的にもキツいんです(笑)!
これ、僕、映画館で、日本人、僕しかいなかったけど、ひとりで赤面しましたもん!これ、思ったけど、この映画、欧米人とかだと、「なんと言っているのか」が字幕で見れると思うんですね。そこに、とんでもない内容のことが書かれていることで、「へええ」となるところだと思うんですが、そういう言葉が日本語として耳に飛び込んでくる瞬間が・・・これ・・・(笑)。
こう書くと、「なんだ、また韓国が日本をバカにでもしてるのか」と思って怒り出す人はいるかもしれませんが、それに関しては、そこはそんなに問題は亡いと言っておきます。この映画、だましにだまし合いが続く中で、それによって、そういう反日みたいなものは自然と消えています。もし、そういうのがあったら、もっと早くから問題になっていますしね。
ただ、日本のそのテの文化に、妙な感じに着目して作ったな、という感じはすごくあります。
こういうのって、平均的な日本人なら「あっ、それは聞いたことのある話だな」とか「それ、どっかで見たような」ということだと思うんですけど、こう、それが短時間に連発で披露されてしまうと、「日本のいつ頃の時代にそれがあったわけ?」という、そういうことについて勉強したい欲求さえ出てくるから不思議です。
特に、耳で、文で聞く方ですね。「一体、誰の使ってるんだろうな、それ」と思って、今もまだ気になってますからね。僕は谷崎潤一郎は大好きな日本の作家なんですが、文章に聞いた覚えがないし、江戸川乱歩とか夢野久作あたりかな、とか、いろいろ考えましたね。
ひとつわかったのは、日本がその方向性ではかなりの先進国だったってことですかね。アジアの国々って、キスシーンですら容認するのに時間がかかった国が多いですからね。1930年代の日本以外のアジアの国から見れば、それはかなりのことに映ったかもしれません。
ただ、前も言いましたけど、その件に関して日本をおとしめている感じは僕はしなくて、むしろその逆のことを感じましたけどね。それだからこそ、世界での大絶賛にも関わらず、韓国側がオスカーの推薦出さなかったわけだし。彼らの国民性を逆撫でるようなことはこの中で僕は感じられたし、それ言ったら完全にネタがバレるので、ちょっとここでは言えません。
そしてこれ、相変わらず思うんですけど
パク・チャヌクってマジですごい!!
彼の作品を知ったのは「オールドボーイ」からですけど、あそこでも近親相姦あるは、歯抜くは、舌切るはで「この人、大丈夫か?」と思う作品作ってましたけど、これはその次元さえも上回ってます。一時期のアルモドバルが、こういう「ようやるは」な作品作ってましたけど、今、だいぶ落ちついて来てるので、現時点ではちょっと、マッドさでは彼が世界筆頭格なんじゃないかな。しかも、ただ単にエログロというだけじゃなく、作品そのものにすごく意義がありながら挑戦的な表現に臨んでいるという意味でも。
あと、チャヌクの作品すべてに通して言える、あの黒で統一されたアートワークは今回も健在です。あれ見るだけで、彼の映画を見たと言う気にはなりますからね。そういう意味でも、最も特徴的な作歌性をもった現在の映画作家のひとりのような気がしています。
これ、濃い映画ですけど、見た後の喉越しもサッパリしてて良いし(そうじゃないとウケないと思う、笑)、僕的にはヤバい表現の連発によるスリルとカタルシスもあってお気に入りではあるんですが、
ただ
人前でこれが好きだとなかなか言いにくい映画でもあります(笑)。
やっぱ、なんかこう、照れがありますからね・・(笑)。
あと、最後に追記しておきますと、これには原作がありまして、しかも、韓国が舞台ではありません。これはイギリスのサラ・ウォーターズというミステリー系の作家の「Fingersmith」という、2002年に発表された小説の翻案です。この本、デヴィッド・ボウイが生前に「人生の100冊」で紹介していた本でもあったので、僕的にもすごく興味があります。日本でも「荊の城」のタイトルで出てる本でもあります。
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