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itunesチャートで世界のヒットをチェックする毎日(3)〜よく見ると、その国のロック史まで見えてくる

どうも。

 

 

今日は、こないだからしている世界のitunesチャートの話の続きをしましょう。

 

 

前回は、世界のチャートの最新の動きの話をしましたが、今回はその国で古くから人気のある物に関してお話ししましょう。

 

 

僕がitunesのチャートの面白いと思うところは、それが公式のナショナル・チャートよりも、新作よりカタログが強い、ということです。つまり、「どういう旧譜がその国で人気あるか」までがわかることです。

 

 

 新作で入っている物がうまっていないと「その国のチャートはいい加減なんじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、僕の味方は逆です。逆に、「世の中、そんなにみんながみんな、新作に感心もって聴いてるわけがない」と思ってます。ある程度、古くからの物が入っている方が自然だと思います。

 

 

 そして、そこでロングセラーになっている作品から、その国で昔からどんなものが流行っているかも伺えるのがいいです。たとえばブラジルだと、僕がここで何度か紹介している、レジァオン・ウルバーナという、80年代のブラジリアン・ロック・ブームのときの最大のバンドのベスト盤が、リードシンガーが亡くなって20年経つのにベスト盤がいまだに売れ続けています。ついこないだ20回忌だったので、今はまたトップ10に入っていますね。かっこいいですよ。スミスとU2とREMの要素があって。

 

 

 その他にも、彼らの弟バンド的存在のキャピタル・イニシアルも入ってるし、ライバルだったパララマス・ド・スセッソ、また、映画「シティ・オブ・ゴッド」でも曲のかかる、ブラジリアン・ロックの父、ハウル・セイシャスやブラジリアン・ソウルの父チン・マイア、ブラジリアン・ロック・クイーンのヒタ・リーのベスト盤も100位内のランクイン常連です。彼らの方が、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、ミルトン・ナシメントといった、日本のブラジル音楽ファンにも知られたアーティストの旧譜よりも定番化してチャートに入っています。実際、巷で耳にする量も、今紹介した人たちの方がありますからね。

 

 

 あと、同じような傾向はアルゼンチンにもあります。ここにはソーダ・ステレオっていう、キャリア初期がポリスみたいで後期がニルヴァーナみたいな、それはそれは80〜90年代に巨大なバンドがあったんですけど、彼らのベスト盤も、アルゼンチンだけでなく、メキシコから南のほとんどのスペイン語圏の国でず〜っと100位以内どころか、国によってはトップ10に入り続けていますね。チリでも、ロス・プリシオネロスという、これも80年代のバンドのベスト盤が入り続けてます。

 

 

 これは社会的背景の問題があります。南米って、どこの国もそうなんですけど、80年代の半ばに、「キューバみたいにならないよう」としてアメリカが後ろ盾した右翼軍事政権が終わって民主政治が戻っているんですよ。ロックバンドが流行り出したのはその直後からなんです。それがちょうど、世界でライブエイドがあった頃で。あの頃のロックの「愛と平和のメッセージ」って、国のリアリティで結構切実だったんですよね。だから、その頃に活躍したポリス(スティング)にせよ、ダイア・ストレイツにせよ、フィル・コリンズとか、その頃のアーティストのベスト盤もこう言う国だと売れますね。あんまりイメージとしては必ずしもカッコよくない(特に僕はダイア・ストレイツは苦手です、苦笑)んですけど、それも事実なんでね。

 

 

 

 これと全く同じことは、この当時、社会主義が崩壊中だったロシアやポーランドといった国々にも言えることです。ロシアだったらキノーっていう中国系ロシア人の人がやってたジョイ・ディヴィジョンみたいなバンドがあるんですけど、このバンドのベスト盤も延々売れ続けてますし、その頃に活躍した80s半ばから後半のロシアン・ロックがいまだロングセラーになっていますね。あと、さっきも言った、ライブエイド系のバンドもいまだにこういう地域では強いです。惜しいのは、旧ユーゴスラヴィアですね。ここにもデカいシーンがあってロシアに匹敵する規模だったんですけど、これがクロアチアとかセルビアに細かく分裂したことで、その影響力がよくわからなくなっています。クロアチア、セルビアにはどうやらitunesがないっぽいですし。

 

 

 あと、社会情勢に関係なく、英米以外だと、80年代から「ロックがビジネスになりはじめた国」というのが多いんですね、これが。それは主に先進国で目立ちますね。オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、そして日本です。60sのビートルズとかストーンズの台頭時にバンド文化が根付いた国って意外と少なくて、英米以外だと実はせいぜいオランダくらいで、あとは日本でGSがあったのと、オーストラリアとスペインでそこそこの規模のがあった程度です。あと、フランスとかブラジルだと、アイドルのアレンジがロック調とかで、ドイツ、イタリアはプログレが来るまでロックはほぼ不毛に近いです。

 

 

 こういう国々というのは、70年代まではバンドよりもむしろフォークシンガーのヒットが目立って、ハードロックやプログレのバンドがアンダーグラウンドで存在する、というパターンが目立っていたんですけど、パンク〜ニュー・ウェイヴを機にバンドが増えて、結果的に80sの初頭からバンドブーム、というパターンがすごく目立ちます。

 

 

 ちょうどいいことに、この頃にMTVのブームがあって、この頃にオーストラリアとドイツのバンドに関しては英米圏でも積極的に紹介されていたんですね。実は僕が、「英米以外のロック」というのに興味を抱いた最初の瞬間がこの時期です。そして、このあとのライブエイドですね。これが実はロックの存在を世界的に広める決定的な役割を果たしていたわけです。なので、これらの国々でも、その当時のブームの先駆けになったようなバンドやソロ・アーティストのベスト盤や現在の作品が上位に入っています。オーストラリアではコールド・チゼル,フードゥー・グールズ、それからもちろんインエクセス、ドイツだと実はネーナがいまだに現役で強く、そのほかにもハーバート・グローネマイヤーっていう「Uボート」の俳優だった人(歌、メチャクチャうまいんですが)とか、あと廼偉バウテンとかアンダーグラウンドな物の影響力もあるから、この国のニュー・ウェイヴは掘りがいあります。フランスだとテレフォンっていう、ブリティッシュ・ビートとパンクの両方の良いエッセンスを持っているすごいカッコいいロックンロール・バンドとか当時のニュー・ウェイヴ系、イタリアだとこの頃まではまだ「ロックシンガー」がバンドより強くてヴァスコ・ロッシとかズッケロといった人が人気ある頃ですね。スペインだとオンブレスGとかメカーノ、ちょっと90sに入ってますけどエローエス・デル・シレンシオですが、彼らは軍事政権下の南米のスペイン語圏に輸入されて、そこで需要が強かったんですね。その影響で、軍政も何も関係なかったはずのメキシコで大きなロックシーンが90年代に入って出来ることにもなります。

 

 

 あと、90sに入る頃から、北欧が本格的に強くなりますね。これまで単発的なアーティストの輩出の仕方だったスウェーデンが、インディ・ロックから、ヘヴィ・メタルから、ダンス・ポップから、エレクトロまで、どこのシーンでも層が厚くなったんですが、そこに引きずられるようにデンマークとノルウェーも国内のシーンがすごく充実します。アイスランドもここに加わって来ますが、あそこは人口が33万人しかいないのでチャートが調べられません(苦笑)。

 

 

 それから90sの終りくらいから、東南アジアとかトルコでロック人気が出ます。トルコはドイツに移民する人が多いんですけど、ドイツがラムシュタインの成功の影響でニュー・メタル強いんですね。その影響がトルコのものには感じられます。あと逆に中国は80s後半に北京でシーンが芽生え始めたのに広まらず、韓国はR&Bやヒップホップの方がロックより人気でそっちの方が広まっちゃった感じですね。今のK-Popにそれ、顕著ですけどね。インドはボリウッドのサントラのみです。

 

 

 あと、中東とアフリカだけがどうしてもポップ・ミュージック史がはっきりわからないのですが、それ以外の地域で上述したようなものは、今は大概、ストリーミング・サービスで聴けます!大物として僕が名前をあげたようなバンドは、ほぼ全カタログあるほうがほとんどです。チャートで名前調べて、グーグルにかけてみたら、今は類似するアーティストも読めるし、大概のアーティストはウィキの英語版でバイオとディスコグラフィー調べられるし、ヴィジュアルはyoutubeで確認できますからね。本当に便利な世の中になったものです。

 

 

 こういう知識蓄えるだけ蓄えたら、英米視点に偏りすぎの今のロック史、書き換えたもの、作るのが今、個人的に将来的な夢ですね。

 

 

author:沢田太陽, category:個人話, 12:48
comments(1), trackbacks(0), - -
Comment
書き方のポリシーだと思うんですけど、海外の名前は原名で書いたほうがいいんじゃないですか?
特にこういうよく知られてない人たちの場合、アルファベットなら気になった時ダイレクトにストリーミングの検索にコピペして聴けますからね。ましてや太陽さんのカタカナ語翻訳、え?ってことが時々あるので。
sako, 2016/10/26 11:29 PM









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