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レディオヘッド新作「A Moon Shaped Pool」を聴いた
どうも。


いやあ、もちろん、聴いてますよ、これ。





レディオヘッドの新作、「A Moon Shaped Pool」です。今現在、itunesで販売、配信だとApple MusicとTIDALで、ロンドン時間の8日午後7時から解禁となりました。僕もApple Musicを介して聴くことができました。


いや〜


最高です!


ここまでいきなり満足度の高いレディオヘッドのアルバム、久しぶりですね。


前も言ったように「イン・レインボウズ」もかなり好きな作品なんですけど、あのアルバムは最初が当時としては画期的だった「ダウンロード先行発売」で、「価格はあなたが決めて」なんてやったものだから最初が好きになれなくて、アルバム的にも聴きこんで好きになったものです。「キッドA」以降のアルバムは他はどれも「良いんだけれども、もうちょっと・・」とどこか注文をつけたくなるところが残ったものだったんですけど


今回、注文つけたいところがありません!


そんなアルバムということになったら、「ベンズ」や「OKコンピューター」以来じゃないかな。いやあ、本当にすごいアルバムですよ。


まず、何が良いか。ズバリ、曲です。全曲通じて、ここまでメロディ的に優れたアルバム作ったの、いつ以来なんでしょう?たしかに前述の「イン・レインボウズ」も良い曲の集まったアルバムではあったけれど、今回ほどではなかったですね。


 しかも、「歌のアルバム」と言っても、感傷的な甘ったるさが一切なく、どの曲でも実験がほどこされているのがいかにもレディオヘッドらしいんですよね。今回、先行シングルとなった1曲目の「Burn The Witch」に象徴されるストリングスや、もうひとつのシングルで2曲目収録の「Daydreaming」のような生ピアノの音が全体通じてかなりフィーチャーされているんですが、ストリングスはデジタルっぽくカット&ペイストされているし、ピアノの響きは、クラシックの現代音楽でいうところの、ドビュッシーとかサティみたいな「印象派以降」の趣きがあって、鋭角的な神秘性が染み出たものになっていますね。このあたりのアレンジの妙はジョニー・グリーンウッドによるところが大きいかな。



 こうした印象は3曲目の「Decks Dark」、6曲目の「Glass Eyes」えも続きますが、4曲目の「Desert Island Disk」8曲目「The Numbers」は、レディオヘッドの曲の中にかねてから感じられたブリティッシュ・トラッド・フォーク色を濃厚に生かし、それを未来系に発展させた感じがあり、7曲目「Identikit」9曲目の「Present Tense」ではレゲエやサンバといった、これまでのレディオヘッドからは感じられなかった南国風のグルーヴを感じさせます。特に前者でのエド・オブライエンのレゲエ・カッティングのフィーリングを活かしたギター・ソロは秀逸です。それでいて、トムが「キッドA」の頃からやりたがっているクラウト・ロック〜エレクトロニカを背後にした歌ものも5曲目「Ful Stop」10曲目「Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Theif」でしっかり生きているし。歌に力を入れたアルバムでありつつ、それらのメロディを支えるアレンジでのアイディアがしっかり多様な価値観を表現出来ている点も光ります。クラシックに、フォークに、南国リズムにテクノロジーって、まるで「フィジカル・グラフィティ」の頃のレッド・ツェッペリンみたいな多様さですからね。音楽表現的にかなりの高みにさしかかっていることがハッキリとわかります。


 また、歌詞的にも今回非常に興味深いポイントがありましてですね。それは今作に「トム・ヨークのブレイクアップ・アルバム」とする説が結構目立つんですよね。トムは昨年、23年連れ添った奥さんのレイチェル・オーウェンと離婚しているんですが、そのことを彷彿させる歌詞が目立ちます。


 たとえば「Daydreaming」では「夢見る者は学ばない。取り返しのつかないことになっているのに」「人生の半分、お互いのために仕えて来た」というかなり直接的な言葉が出て来ます。そう思ってポール・トーマス・アンダーソンの手によるこの曲のビデオを見ると、リアル過ぎて胸につまされます。うつろな表情で様々な場所で見つからないものを探した末に最後、洞穴ですからね。


 また、その次の「Decks Dark」でも「人生に暗闇が立ちこめる」と歌われますし、「Glass Eyes」では「この愛が醒めて行くのを感じるんだ」ですしね。そして極めつけはラストの「True Love Waits」。この曲は2001年のライブ盤「I Might Be Wrong」にライブ・ヴァージョンで収録されていた曲で90年代からライブで披露されていたことで有名な曲だったんですけど、今回、ようやくしかるべきアレンジが見つかったこともあって、遂にスタジオ録音盤が登場したわけですが、奥さんと一緒になって比較的日の浅いときに作られた「本当の愛は待ってくれる」なんて曲でアルバムをシメているところに、今回のこのアルバムでのトムの生々しいエモさがにじみ出ています。ここまで自分の私の部分に赤裸々だった彼って、ちょっとないかもしれませんね。



 あと今回、この「True Love Waits」のほかに「Burn The Witch」(「ヘイル・トゥ・ザ・シーフ」のアウトテイク)、「Ful Stop」「Identikit」(共に「キング・オブ・リムズ」のツアー時に披露)、「Present Tense」(2009年のトムのソロ・ライブで披露)と、古くから存在していた曲を多く収録しているんですが、それだけ、時間をかけて練られた曲が多かったことも、今回のアルバムの美しさの理由にもなっているのかもしれないですね。


 ボブ・ディランの最高傑作のひとつに数えられる作品に「血の轍」という、1975年の作品がありますが、さしずめこのアルバムはレディオヘッドにおけるソレなのかもしれないなと、歌詞の面では思わせますね。それが、先述した、ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」の頃(奇しくも,これも75年作だ)のようなバンドの円熟期ならではの多様性・熟成を持って作られた感じかな、と僕は感じています。そう思わせるだけでも、やはりキャリア円熟期の傑作に数えていいんじゃないかと思いますね。
 
author:沢田太陽, category:CDレヴュー, 11:56
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