RSS | ATOM | SEARCH
Apple Musicで話題のメタル・アルバムを4枚聴いてみた
どうも。

今日と明日は、Apple Musicを使った一種の実験企画です。

まず今日のお題は

話題のメタル・アルバムを4枚聴く!


こういうことが出来るのは、Apple MusicとかSpotifyのある世の中ならではだと思います。普通、僕の持つ趣味感覚だと、メタル系のアルバムを4枚も試し聴きなんてまずしないのですが、この数週間、世界各国のヒットチャートを見ていると、この時期にすごく話題盤が集中していて、ちょっと元気のなかった(と少なくとも僕には映っていた)ラウドロック系で、ようやっとコアファンではなく、一般浸透しそうな勢いのあるものが、新旧のバンドで出たなあ、と印象だったんですね。で、こういうときに、定額配信サービスだと、いざ思い立ったときに高いモチベーションで試し聴きできるのがいいですよね。こういうの、少なくとも10年前までだったら不可能だったし、つい最近でもYoutubeに音があっても、やっぱ音質の問題とか、曲間がつながったまま次の曲に行ったりするのってやっぱり抵抗がなかったと言えば噓になりますからね。腰を落ち着けてしっかりと試聴が可能、というわけです。

では、聴いたものをあげていきましょう。



まずはじめはブリング・ミー・ザ・ホライゾンの「That's The Spirit」。キッカケは彼らですね。ここ数週間、あまりにも彼らの話題をFBのタイムラインで聞いて、NMEもすごくプッシュしてて、あそこの読者が「来年以降のフェスのヘッドライナーに」まで言うので何事かと思って気になって聞いてみたのですが

たしかにいい!

今まで、「エモっぽいルックスのメタルコア・バンド」なイメージだったんですけど、今回、サビのとこあたりはベタにエモな感じは残してはあるんですけど、EDM的なシンセを導入したり、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジみたいな贅肉削ったソリッドなヘヴィ・ギターにしてみた曲があったりと、かなり音色にセンスのいいこだわりがある人たちなんだな、という印象を抱きました。


聴きようによってはリンキン・パークみたいに聞こえない訳ではありません。曲によってはぶっちゃけかなり似てるものもあったりもします。ただ、楽曲というか、曲調の引き出しがこっちの方が広いし、シンガーの抑制した時のコントロールも、このアルバムを聞く分にはこっちの方がうまいと思います。リンキン・パークが変化への欲求はあれど、壁に当たって超えられなかったところを、このバンドはより最近の音楽手法をうまくつかって乗り越えた感じですね。


そういう感じなので、イメージとしては、「リンキンとか、エモとか、前みたいに元気なくなったからなんとなく離れちゃった」といった感じの少し前のニューメタルやエモの、比較的軽めかつまだ20代くらいの人だったり、メタルやラウドロック体験がないUKロックのファンの人が聴いても「あら、案外行けるね」と、たとえばMUSEやロイヤル・ブラッドを聴いて抵抗がないようなタイプの人だったら思うんじゃないかな。コアなメタル・ファンじゃなくても「少し激しくても多少は大丈夫」な感じのロックファンなら、「こんなに才能あったのか!」と素直に思うような気がします。とりわけメロディはよく書けてて記憶に残りやすいので、そういうアピールはなおさら強いと思います。


聴いててですね、これ、グランジのときにいたシルヴァーチェアーというバンドの3枚目のアルバムを思い出しました。「Neon Ballroom」というアルバムだったんですけど、これがグランジしながら徐々にファンタジックなメロディとか、リズミックな実験とか入れはじめた作品で、これの次のアルバムではストリングス交えてファルセットで歌いはじめて、遂にはラウドな要素も消えて行ってしまったんですけど、このバンドも広い視点で音楽聴けそうなバンドなので、そういう方向に行きがちな雰囲気はこれを聴く分には感じますね。

今、これ、欧米圏のメディアでもすごく絶賛されている最中なんですけど、一般ユーザーの評価で「こいつらはメタルを裏切ってインディ・ポップになった」みたいなものが目立ちますね。そういう狭い了見だったから、ラウドロックって、ある時期からどれも同じような音圧の、自由度の少ない作品ばっかり出てたのにね。そういう風通しの悪さを解消する役割を果たせそうな力強い作品だと思いましたね。


では、次はこちらですね。



スウェーデンのバンド、ゴーストの「メリオア」というアルバム。彼らは2年前にいきなりロック・イン・リオに出演したときに知ったんですけど、そのとき、骸骨の教皇のコスプレしてたんで、「何だ、このイロモノ?」と思ってみてたものですが、2年経ってアルバム聴いてみたら、ものすごく良くてビックリしてるとこです!


彼らはデイヴ・グロールの最近のお気に入りバンドとして知られているんですが、いかにもデイヴが好みそうな、オーヴァー・プロデュースになりすぎない「低音弾いてるんだけど実は音自体は軽快」なリフを奏でるタイプのバンドで、ウザったくなりかねない圧ぬりのコンプレッサーとかを極力カットした音作りは、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミあたりが好みそうなアレンジでもありますね。


そう思ってプロデューサーのクレジットみたら、これ、手がけているのクラス・アールンドなんですね。この人、テディベアーズっていうスウェーデンのテクノ系のバンドの片割れやってる人(もうひとりは「Jerk It Out」っていうitunesのCM曲に使われたガレージロック・バンド、シーザーズのメンバー)です。たしかにテクノDJやってるようなタイプの人が、一番いい楽器の音色を編集感覚的に選んでそれをバンド・サウンドとしてひとつにまとめた感じですね。そういうこともあって、やってることはきわめて生音っぽいのに、音の響き自体に得も言えぬ編集感覚が働いてる感じがするんですよね。「せーの」で一発で録音したように見せかけつつ、実はきわめて音の粒子までこだわって作った感じです。


そうした「21世紀的なエディット技術」を70年代の、「悪魔のことは歌うけど、適度にハードロックで適度にプログレ」な感じのブルー・オイスター・カルトみたいなロックにあてはめてみたら、こういうのが出来ちゃった、といった感じの作品ですね。その意味ですごく通好みで地味な作品ですが、音色のセンスがすごくモダンなので、むしろハードロック免疫のない人の方がウケがいいかもしれません。このアルバムがあのピッチフォークで8点台獲得したのもわかる気がします。実際問題、ブリング・ミー・ザ・ホライズンみたいな、若めのリスナーにウケそうな扇情的なエモ・メロディも一切ないので、そういうタイプのメロが苦手なタイプの人でもこれは大丈夫だと思います。インディ・ロックのリスナーが聴くには、これが一番入りやすいんじゃないかな。


ただ、良くも悪くも洗練され過ぎた作りで、押しの強さには欠けるので、その点でBMTHには人気の点ではかなわないかもしれないなとは思いました。




続いて、今や大御所中の大御所、アイアン・メイデンの新作「The Book Of Souls」。


いわゆる、80年代までのオールド・スクールのメタルの実績者の中で、2000年代以降で一番勢いのあったバンドって、間違いなくこの人たちだったと思います。僕も2002年か03年に一回だけライブ見てますが、演奏力とショーの構成力は完全にプロフェッショナルでしたからね。しかも、40代突入してたのに、その当時の新作からの曲が増えてましたからね。元からの自力に、モチベーションの高さが合わさった感じで見てて頼もしい感じがしたものでした。


で、これが2000年代以降で、たしか5枚目だったかな。いわゆる、ブルース・ディッキンソンが戻ってきて、プロデューサーにケヴィン・シャーリーがついて以降、ずっと同じ布陣で作ってるんですが、それが彼らの表現的に最もふさわしいと判断してのものなのでしょうね。


で、そのシャーリーになってから、メイデンが初期の頃に売りだった、「作り込まない疾走感」を元に作られている感じがありますが、そのあたりが僕の抵抗感が少ない理由のひとつでもあるんですよね。今回のアルバムでも、ファスト・チューンはすごくロックンロールでカッコいいです。このあたりは、メタル云々関係なく、もっと聴かれていいとこだと思ってます。


ただ、この音色のまま、今のメイデンって、ものすごく長い曲をやるんですよね。8分とか、10分とか、13分とか。このあたりはですねえ・・、音楽でも映画でも、長尺なものが基本的に苦手な僕にはややツラいところもあります(汗)。ただ、この芸当を自信持って出来るのがメイデンだし、それをスカスカの疾走感のまま強引にやり遂げてしまう姿もワン・アンド・オンリーであることはたしかです。その美学を50代後半になっても「もっと良いものを作りたい」とばかりに攻めてる感じは見ていて好感は持てます。趣味的に必ずしもストライクではないものの、その姿勢には一目置きたいとは思っています。


そして最後はこれでシメましょう。




モーターヘッドの「Bad Magic」。フジロックでも話題になってましたよね、今年。


今回、驚いているのは、モーターヘッドのこのアルバムが、イギリスで33年ぶりのトップ10入りを記録して、アメリカでもキャリアハイの30位台を記録したことです。「エッ!一体何があったの?」と思って調べたら、この前作が、ドイツとスウェーデンでトップ10入りする快挙だったんですね。この2国でのヒットというのなにげにオイシイのです。なぜなら、ドイツで売れたらほぼもれなくオーストリアとスイスでも売れるし、スウェーデンで売れるとノルウェーとフィンランドもついてくるので。ヨーロッパで広がりのあるブロック圏で、しかもそれを2つ抑えられたのは大きかったんでしょうね。そこが英米に跳ね返ってきたわけです。


ただ、それがなくても、最近はデイヴ・グロールがモーターヘッドの熱烈なサポーターとして応援したり、レミーが「メタル界のキース・リチャーズ化」してて、70超えて、明らかに顔色も悪いのに、ステージではファストなロックンロールを聴かせるという、完全に「キャラ勝負」できる領域に入ってきましたしね。


あと、2000年代にAC/DCがあそこまでリスペクトを受けてビッグになっちゃったあと、「次は誰をリスペクトして再評価する?」となったら、モーターヘッドが最適だった、ということはあったと思いますね。代表作の「エース・オブ・スペーズ」をはじめ、30数年前から実際に「パンクスの好きなメタル」でしたけど、時代を経て、いろんな音の強度に慣れた後にこれを聴くと、もう「エッジの効いた普遍的なロックンロール」として広く聴かれやすいものになったのかな、という感じもします。


その今回のアルバムですが、やってることは基本的にいつもと同じです。ただ、世間の注目が集まっているタイミングで、「彼らからこういうのが聴きたい!」と思われていたことを期待を外さずにまんまやりきったのが良かったんでしょうね。それがアルバムの好評とセールスに直結したのだと思います。AC/DCが「ブラック・アイス」のタイミングでやれたことが彼らにも出来たんでしょうね。で、もっと言うならAC/DCの最新作が微妙に丸くなった観があった(まあ、いろんな諸問題もありましたから・・)ところが、こっちは疾走感に溢れて痛快で抜けの良い印象もあります。


これ聴くと、ラモーンズとAC/DCとモーターヘッドって、やっぱセットにして聴きたくなるんだよなあ〜。


・・ってな感じです。

ぶっちゃけ、「非メタルファン」的な観点からいろいろ語りましたが、逆に言えば、そういう人にも良さが伝わることも重要だとは思いますからね。あと、エモブームが終わったあとくらいからかな、どうもラウドな系って、ネットの批評メディアからもフェスからも対象から外されて、かつ、ジャンル内のフェスでも新しいヘッドライナー格が見えて来なかったから端から見てても正直気にはなってたんですけど、なんとなく、なんとかなりそうな気がしてきて良かったかな、とも思ってます。


 
author:沢田太陽, category:CDレヴュー, 13:04
comments(0), trackbacks(0), - -
Comment









Trackback
url: http://themainstream.jugem.jp/trackback/2429