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U2「ソングス・オブ・イノセンス」レヴュー〜発売方法ばかりが記憶に残りそうな嫌な予感
どうも。

やっと聴きました。これのレヴュー、行きましょう。




U2の新作「Songs Of Innocence」ですね。

このアルバム、世間的には、「事前予告なしの、itunes限定フリー・ダウンロード」みたいな触れ込みでしたね。

ただ、事前予告なしにいきなりダウンロードで発売というのは、2007年のレディオヘッド以降、もう何件かやられていることで決して珍しいことではもうないし、このジャケ写自体も、カニエ・ウェストの去年のアルバム「Yeezus」もあったし、その昔、システム・オブ・ア・ダウンの未発表曲集だかにこういうのがありましたしね。

あと、「U2とitunesとのタイアップ」というのも、ちょうど10年前の「Vertigo」を思い出させるものでしたね。あの頃のitunesは右肩あがりで、まだitunes storeは日本には上陸してなかったんですよね。そういうこともあって、そのときはカッコよくもみえたものでした。

ただ、今やitunesもspotifyとかパンドラに押されっぱなしで良いとこなく、U2の方も2009年のアルバム「No Line On The Horizon」がキャリア史上はじめての失敗作になり、そのあとのツアーもボノのヘルニアの手術で中止になったりと、イメージとしては落ちてる状態でした。


そんな中、itunesとU2が組むというので、正直な話、なんとなく、「大丈夫?」な予感はしてました。


で、僕の聴いた感想は・・

う〜ん・・・・

ひとつだけわかりやすく前作よりいい点を言うと、楽曲自体はわかりやすくなっています。その前のアルバムは、「実験的なことをやってみよう」とした割に、どこか実験的なのかよくわからず、ただ曲がわかりにくかった、という作品に映ってしまっていました。今回はそこの反省があったのか、1曲1曲はわかりやすく作られていると思います。

ただ、聴いててですね、たとえて言うと


90年代以降のマイケル・ジャクソンのアルバム聴いてるみたいな気分になりました

と、いう喩えはですね、直接的に言いますと、

中身自体は自分の手癖で、それを外部の有名プロデューサーが料理してくれるのをただ待っている

厳しい言い方すると、そういうアルバムにしか聞こえません。

プロデューサーの名前自体はビッグです。デンジャーマウスにポール・エプワースにライアン・テッダー。デンジャーマウスはブラック・キーズやベックであて、エプワースはブロック・パーティとかのポストパンク・リバイバル系のあとにフローレンスやアデルであてた人です。それだけなら、まだしも、今回はそこにワンリパブリックの中心メンバーで、マルーン5とビヨンセであてて有名になった人ですよ!ここにまず違和感がありましたね。なんで、U2ともあろう方が、そんな産業ポップス系のプロデューサーとかと組んじゃうわけ?なんか、それじゃ昔、ボン・ジョヴィやエアロスミスがデスモンド・チャイルドとかジム・バランスとかの職業ソングライターと組んでポップなロック・アルバム出してたのと同じ感覚じゃないか!


しかも、そのライアンの名前がプロデュースに多い。彼のプロデュースの場合、基本的に自分が作曲にかかわっていることがほとんどなので、今回のU2もソングクレジットは自分たちだけど、どう考えてもライアンが作曲に関与していないとは考えにくい。加えて、せっかく、デンジャー・マウスにせよエプワースにせよ、アルバム1枚でトータルでまかせられるプロデューサーなのに、それをいたずらに分担させる意味が正直なところわからない。それじゃ、ある時期からのR&Bシンガーのアルバムみたいじゃないか。なんでそんな寄せ集め的なアルバムを、これまで立派にトータルに素晴らしいアルバムを数々作ってきたU2がわざわざ作らなくちゃならないのだろう。それはクレジットを見たときに思いました。


そして、そのいや〜な予感はあたりました。

冒頭の「The Miracle」でのいつになくアグレッシヴなギターを聴いた時は、「おっ!」と一瞬思いました。このときは、2004年の「How To Dismantle The Atomic Bomb」をより力強くした感じのアルバムも期待できるのかな、と思いました。

しかし!

そこから先は、皮肉にもコールドプレイのパクリ返しみたいなアダルト・コンテンポラリー曲の連続

ここで一気に退屈しちゃいましたね。2曲目でいきなりテンション、落ちました。それがしばらく回復することなく、何曲か進んだ時点で、「こりゃ、苦しいなあ」と思わずにいられなくなりました。U2の場合、2000年代にコールドプレイ、キラーズ、キングス・オブ・レオンとフォロワーが出てしまったがために、彼らの歌メロや歌い回しが使い古されてしまった感がどうしても否めなかったのですが、少なくとも2〜5曲目の楽曲は、そうした次の世代の楽曲に飲まれた感じが否めません。新鮮さがないだけじゃなく、「こういう曲だったら、やっぱ本家が一番だよね」と言わせる力強さが残念ながらないんです。


ようやく6曲目の「Volcano」で初期っぽいパンキッシュな頃のサビでのギター(それをバックにしたボノのファルセットも良し)や、7曲目「Raised By Wolves」でのちょっと変則的なリズムや楽曲構成は独自の色(これもサビが初期っぽい)が出ててそこは面白くなってきたんですが、そこからがまた面白くない。


9曲目のアナログ・シンセにディストーション・ギターを噛ませた噛ませた「Sleep Like A Baby.Tonight」は耳を引く曲ではあるんですが、それもどっちかというと、デンジャーマウスのアレンジに助けられただけで、曲そのものは正直おもしろくない。そして、通常、U2ってアルバム・クロージング・ナンバーって余韻の残る強い曲を持ってくるんですけど、11曲目の「Troubles」も、リッキ・リのバック・ヴォーカルという話題性はあるものの、これも特に何かが残るという感じでもない。


概して言えることは、U2自身からメロディやサウンドで伝えたいものが伝わってこないことです。なんか、すごくコラボレイターに助けてもらうのを待っているような感じに聴こえるんですよね。それがなんか聴いててガッカリなんですよね。U2の場合、初期から、スティーヴ・リリーホワイト、ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワといった才人たちと組んで来ています。ただ、U2の才能が彼らに喰われることはなく、彼らはあくまでU2のよきヘルパーに過ぎませんでした。「ヨシュア・トゥリー」でのアーシーなアメリカン・ルーツロック的方向性なり、「アクトン・ベイビー」以降3枚のエレクトロ路線なり、「All That You Can't Leave Behind」での成熟なり、「How To〜」での成熟があったうえでのロックンロール回帰なり、それらにはすべて、U2が主導を握った明確な意思表示が感じられました。


ところがこのアルバムは、そうした彼ら自身が進みたい方向が見えず、ただ単にロックでの流行を後追いしたもののようにしか聴こえない。U2はもうかれこれ30年近く聴いてますが、そんなU2の姿見たの、これがはじめてなんですよね。そこがなんかガッカリなんですよね。特に冴えを感じないのがボノですね。エッジのギターに関しては、まだプロデューサーにいじりがいがあったのか、通常のあのギシギシのトーンにいろんなヴァリエーションを加えることができてるんですけど、肝心なボノのメロディが手癖になってるうえに、新しいことをやろうとする姿勢が感じられないんですよね。


もう、U2といえば、存在自体がかなり大きなブランドだし、今回の発売法もかなりの話題を呼びました。ほめてる媒体もあります。そういうことで今作はとりあえずはチャートでも1位を獲得するし、場合によってはシングル・ヒットも出るかもしれません。その意味でこのアルバムのツアーで、彼らが「懐メロ・サーキット」のバンドへと堕すことはかろうじて避けられるでしょう。

しかし!

もし、これがあともう1作続いたら、いくらU2でもさすがにキツいです!


U2のキャリアというのは、結成して35年くらいになりますけど、致命的な失敗作や才能の停滞がないまま、ずっとアーティストとして成長してこれた、本当に希有なバンドだったんですね。なので僕自身も彼らのバンドとしてのコンディションやクリエイティヴィティの維持に関しては本当に頭が下がる思いだったし、80年代に10代を過ごした元少年としては見守って行きたい共感できるバンドであり続けてたんですよね。それだけに「U2にもついにこういう日が来ちゃったかあ」と思うと、なんかすごく淋しい思いが去来してしまいます。

そんなわけで、今回のU2、100点満点で僕が点数出すとしたら


55/100点


何曲かはキャッチーで耳に残るので、そこでかろうじて50点以上はやれますけど、でも、これ、彼らの持ってるレベルからしたら、点数はかなり下げないとダメだと思います。こんなもんじゃない。


それにしても、ローリング・ストーンはなんで★5つつなんて出したんだろうな。「アクトン・ベイビー」以来の傑作だって?だとしたら、世界を制したU2がほぼ180度に近い別アプローチで自身に新たな挑戦を挑んで来たあの衝撃だった名作の意味さえわかってなかったってことだよ。


結果的に、「ああ、itunesとタッグしたね」ということ以外は、あまり思い出してもらえないアルバムになっちゃうんじゃないかな。


 
author:沢田太陽, category:CDレヴュー, 12:21
comments(3), trackbacks(0), - -
Comment
新アルバムについて他の方の感想を知りたくて
探ってましたが…私も全くの同意見と点数ですね

…確かに前作よりは聴き易いんですけど
´ΝО奮阿曚箸鵑描亜杭遏孱硲圍庁腺腺臓廚
焼き直しアルバムって感じが〜…
爺(ジジ), 2014/09/28 12:02 PM
通りすがりです。

そんなー。
U2も無料で頑張ってるのに。
なにもかも、ダメだしっぱなしですね。涙目。
まあ、、、たしかに、U2はアクトンベイビー以降は55点が妥当だけど。笑

でも、ある意味、マーケティングで良い結果出ましたね。
某韓国・朝鮮人や、某ヒカキンと同じで、無料でも御奉仕でも、
嫌な物は、とにかく嫌なんですね。大笑
無料だろうが、有料だろうが、その個人にとって、
心底良いと感じる商品にだけ、人は賞賛するって意味だし。
金の力だけでは、ビジネスありきでは、人は人を支配出来ない。
気持ち良いですよね。こういう結果は。

たしかに、成金権化のホリエモンが、1億円の本を無料で世界配信したって、
ほとんどの人が拒絶するでしょうしね。大笑


ところで、本題。
「raised by wolves」って曲。
このブログに来た、きっかけでもあるんですが、
サビが、どこかで聴いたようなフレーズなんですよね。

これって、カヴァーとかパクリじゃないんですね。
オリジナルか〜。
コープランドの「chin up」も、そんな錯覚に襲われる曲で。
ニルヴァーナの「something in the way」も。

結局、どっかで過去のヒット曲とメロって被ってるって意味なのかなー?
この錯覚って、なんなんでしょうね?不思議。
マコト, 2014/10/17 11:13 PM
興味深く読みました。

かなり同感です。

前に出したシングルの「invisible」を聴いた時に
嫌な感じがしました。

なんだ、またこんな感じの曲か。。
チャレンジしてる感じは皆無な曲。

出る出るといわれている新作もまさか。。。

嫌な予感が当たりました。

根本的なU2のアイデアは枯渇してる。。。

ひとつ希望を言えばなんでこんなアルバムをU2は作ったのか?

この疑問はアクトンベイビーを初めて聞いた時に感じたことでもあったので。

そこは次回作でわかるのかな。
sk, 2014/10/20 12:55 AM









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