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最近好きな本〜『Americanah』〜ビヨンセも注目のアフリカ女性作家の必読傑作!
どうも。

僕が、去年の(日本での)夏から外出の際に電車の中で読書をはじめたことは、たびたびこのブログでも書いていますが、それが今やつもりにつもって31册の本を読み終わっています。


前までは「小説を10册読んだ」ということで、それを報告する記事を書いていたんですが、つい昨日読み終わった、ごくごく最近の小説があんまりにも素晴らしいので、今回はその1冊を紹介します。これです!




この、題して「Americanah」(アメリカナー)。この小説はですね。




この人ですね、ナイジェリアの36歳の女流作家、チママンダ・ンゴシ・アディーチェ。彼女の作品です。


僕がこの人のこの小説に関して知ったのは去年の12月のことです。ちょうどビヨンセのニュー・アルバムが突如リリースされて話題になっている頃、その中の「Flawless」という曲の中で、このチママンダのフェミニズムに関するスピーチがサンプリングされた、という話を聞いたときからでした。




この曲の途中で入ってくるスピーチ、これの声の主がチママンダ、というわけです。

そして、このアルバムが話題になりはじめているちょうどその頃に、ニューヨーク・タイムスで「今年のベスト・ブック」の記事の特集記事があって、この小説が筆頭格で「今年のフィクションの5作」に、ピューリッツァー賞を後に取ることにもなるドナ・タートの「Goldfinch」などと一緒にピックアップされていました。そして、この「AMericanah」自体も、ことしの3月にピューリッツァー賞と並ぶアメリカ文学の重要賞「全米批評家協会賞」(National Book Critic Circle Awards)を受賞しました。これえ僕の好奇心がグンと上がりました。

そして今年の5月のこと、僕はこの小説を、家から比較的近い大型の書店に1冊だけアメリカからの輸入で入荷されていたのを手に取り、そのままレジに持って行って衝動買いしたわけです。


そして、読んでみたらこれが


本っ当に素晴らしい!!!


僕、さっき名前をあげたピューリッツァー賞受賞の「Goldfinch」も読んではいたんですけど、断然こっちの方が話に入り込みやすく、大いに共感出来るないようでしたね。今の世の中に現在進行形でこんな傑作を読むことができるんだ、と思うと、なんか嬉しくて誇りを持ちたくなったものです。


この本ですが、一体何の話かというと、ナイジェリアのミドルクラスの若者の90年代から2010年代までの現在の姿を描いたものです。主人公はイフェメルという女性で、彼女の幼少時から現在に至るまでの話です。

イフェメルはナイジェリアの首都ラゴスで、中の上くらいの家庭環境の中で育ちます。彼女のベスト・フレンドはオビンゼという、ちょっと文系で内向的な雰囲気のある男性で、女一手で彼を育てる大学教授のママの子供です。イフェメルとオビンゼは、高校の頃から恋仲で、将来の結婚さえ約束する仲でした。2人の関係は、情報通のオビンゼがイフェメルを引っ張る感じでした。ウィル・スミスの演技での出世作となる黒人ドラマ「Fresh Prince Of Bell Air」や「コスビー・ショウ」などの90年代当時のテレビの黒人番組の情報について、オビンゼはかなりの知識を持っていました。彼はアメリカに強い憧れを持って育ちます。


やがて2人は同じ大学に入りますが、その大学がキャンパスの内乱で、長引くストの影響で授業ができなくなってしまいます。イフェメルはこのタイミングで、当初そこまで気が進まなかったアメリカの大学の交換留学プログラムにひょんなことで合格し、はからずもアメリカで住むことになります。

一方のオビンゼはアメリカでの生活を強く希望するもビザが上手くとれず、かわりにイギリスに渡りますが、そこで不法侵入者扱いになり、国外退去の憂き目を見てしまいます。そのあいだ、イフェメルは、アメリカ暮らしでの慣れないことに落ち込み、引きこもりになりがちな時期があって、そのタイミングでオビンゼとの連絡も絶ってしまいます。ただ、イフェメルは大きな恋愛をいくつか経るうちに出世して行き、遂には「非アメリカ黒人の視点から見たアメリカ」というテーマのブログを立ち上げたところこれが大ヒットしてしまう・・という人生を歩むことになります・・・。

・・といった感じですね。


これ、何が優れてるかというと、以下の点においてですね。

1.ナイジェリアのミドルクラスの生活状況を知ることができる

2.クリントン政権時代以降のアメリカでの黒人問題の扱われ方について知ることができる

3.「セックス&ザ・シティ」的な、女性視点での知的で洗練されたスタイリッシュさがある

4.コメディとして優れている。

5.ロマンス小説として優れている。

6,青春小説として優れている。


文化研究的にはもう、1,2の要素としては素晴らしいのひとことですね。

申し訳ないとは思いつつも、僕らはアフリカというとどうしても「飢餓」だとか「部族社会」だとか、そういうものを思い浮かべてしまいがちです。先日も200人の少女がテロ集団から誘拐されて世界的な話題を呼んでいましたが、それに象徴される治安的に不安な要素とか、そういうものを思い浮かべがちです。しかし、アフリカの中でもGDPの高いナイジェリアの都市部となると、それなりに生活は都会化されていて、大学に行くような子供を持つ家庭ではそれなりに裕福だったりする。そして、そうした状況は90年代には既にあった。そういうことが客観的にわかったのは僕としても非常に勉強になりましたね。


加えて、イフェメルがアメリカに渡ったのはちょうどクリントン政権時の1990年代半ばのことです。その頃にはヒップホップが音楽界で一番の人気音楽になっていて、ハリウッドの黒人俳優の台頭が著しくなった頃。黒人の地位は一気に上昇し、公民権運動以前のような露骨な攻撃性を持つレイシストは表向きにはさすがにいなくなった。話の後半にはオバマ氏が大統領に選ばれるところまで描かれていて、それが黒人社会にとってどういう意味を持つものなのかもちゃんと書かれている。一般的に見れば黒人たちにとっては良い時代ではあるんだけど、しかし、それでも黒人立ちにとっては、マイノリティとして受けてしまう偏見などはそれでもどうしてもある。特にそれは、アフリカにいる頃には生活環境が黒人ばかりなので「人種問題」などについて悩むことのなかったイフェメルが、人種についての問題を意識せざるを得なくなるまでに厳然としてある。

決して激しいタッチではないけれど、人種問題的には改善はされた世の中において、黒人が正直なところどういう立場に置かれ、どう思って生活しているのか。その本音が淡々と説得力を持って描かれているのは興味深いところです。


このように、この本、社会観察上、きわめて参考になる側面がある一方で、娯楽作としても優れているんですよね。登場人物間でのやりとりと言葉のリレーがウィットとユーモアに富んでいます。中でも印象的なのはイフェメルの大好きな伯母さんで、アメリカに先に住むことでイフェメルの人生の指針のひとつにもなるアブジャですね。彼女はお医者さんになるほどの才女でファッション・センスも洗練されている、進歩的な女性の憧れ的存在ではあるんだけど、ナイジェリアの軍人の愛人になって子供を生みシングルマザーになったり、経済感覚が案外かなりいい加減だったり、直感で調な連れてアメリカに住むようになったり、とかなり面白い人です。彼女をはじめ、登場人物にひとくせ、二癖ある人が少なくありません。


そしてこれ、ロマンス小説としても、青春小説としても優れています。高校生以前の子供の時代から、紆余曲折や挫折もあった20代を経て、今30代を迎えている。その社会的かつ心理的な過程の描き方が見事です。そしてイフェメルが辿るロマンティックな恋愛の数々。そして、それは最終的にはかつてのピュアで初々しい恋の相手だった・・・ってな感じです。


これ、多分にチママンダ自身の半生を描いた作品で、それゆえに説得力の強い作品になっています。今のアフリカの知的な女性のアメリカ社会、そして祖国ナイジェリアの現在に対する本音がユーモアと巧みなストーリーの組み立てで描かれています。


そんなわけでチママンダは今、アメリカ黒人、アフリカ黒人の両方の女性たちからの強いリスペクトを受ける立場にもなっています。それは前述したビヨンセの件でもそうなんですけど




ここに来て、この小説の映画化権を、先日「それでも夜は明ける」でオスカーの助演女優賞を受賞したケニア出身の女優、ルピタ・ニョンゴが買った、という話が浮上してます。そして制作も、「それでも〜」を手がけたブラッド・ピットの会社がやるのでは、という説が流れています。たしかに僕も、「ルピタは何かしら絡むかもしれないな」とは思っていました。同じアフリカから出て来て世界的に有名になった女性同士、というのもあるんですけど、ルピタの場合、親が国で有名な政治指導者でもあるので、金はかなり持ってるはずなんですよね。そんなこともあり、この話が出て来ても何の不思議もないし、むしろ自然のことのようにも感じます。


これ、仮に映画化でもすれば、これまたかなりの期待をかけられることになるでしょうね。でも、それに値する作品だと僕は信じてます。これだけ、生きた時代を象徴している文学作品もそうは存在しませんからね。


というわけで、この小説、僕的に非常にオススメです。これ、日本語訳出ないのかな。チママンダの場合、過去の作品は日本語訳、出てるんですけどね。
author:沢田太陽, category:文学, 13:05
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