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映画「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」感想〜これぞアレクサンダー・ペイン節!しょぼすぎて最高!!
どうも。

オスカー作品賞ノミネート映画、残すところあと2本です。

8本目はこの映画です。



今のアメリカのインディペンデント出身監督の良心的存在のひとりですね。アレクサンダー・ペイン監督の新作「ネブラスカ」。こちらのレヴューを行きましょう。


アレクサンダー・ペインは前作「ファミリー・ツリー」でゴールデン・グローブのドラマ部門で受賞したりだとか、2004年の「サイドウェイズ」でオスカー当日まで受賞の重力候補と見なされるなど、ここ最近は批評家筋のみならずアワードでもおなじみの存在です。果たして今回はどんな感じか。




まずはあらすじから行きましょう。ウディ(ブルース・ダーン)はアメリカ中西部に住む高齢者です。彼は、自分が宝くじにあたったと思い込み、半券と賞金を取り替えるために、主催元のネブラスカまで行くと言い張ります。しかも彼は運転免許をかなり前になくしているので、徒歩で行こうとしていました。



しかし、彼の家族の一員は誰も彼が宝くじに当たったとは信じません。「父さん、よく読んでみなよ。こういうのは最近の詐欺によくある手だよ」とウディの次男のデヴィッドは優しくウディを扱おうとします。



そんなウディに対し「まったくアンタって人は、あきれるばかりだよ!」と、口うるさく毒舌家の妻ケイト(ジューン・スキッブ)はウディに呆れ、激しくののしります。



そんなウディには長男でローカルのニュースキャスターをつとめるロス(ボブ・オデンニック)もお手上げ、といった具合です。しかし、そんな父に対し、デヴィッドは哀れみの感情とともに「じゃあ、俺がネブラスカまで連れてってやるよ」と主張し、みずからが運転する車での旅行を提案します。デヴィッドはローカルのスーパーでステレオを売るセールスマンで、つい最近、うきあってた恋人に逃げられたばかり。なにかと人生の負け犬扱いされる存在のデヴィッドでしたが、その分、心は優しく、「父さんがここまで言い切るんだから、せめて現地に行って外れたのを確認させてあげたら」と思ったのでした。



その道中でウディは突如体調不良で苦しんだり、気まぐれな言動でデヴィドを次々と困らせます。道の途中、ウディは自身の故郷となる地域を数10年ぶりに横切ります。「恥ずかしいから、宝くじのことは言うなよ」とデヴィッドはウディに懇願しますが、意気揚々のウディは「わしゃ、宝くじで100万ドル、当てたんじゃあ」と、親戚や、親交の途絶えていたかつての友人たちに言いふらします。そして、もはや付き合いもなくなっていた親戚や友人たちは、単に「なんとかしてその金が手に入らないか」という、いやしい気持ちのみでウディに近づこうとします。



旅行はいつしか「親戚リユニオン」の様相を呈し、いつのまにかケイトやロスも途中に一時参加するものとなりました。ウディの宝くじでの夢は「軽トラックを買って、昔、意地悪な友人に奪われた耕耘機を取り戻す」という実に些細なものでした。それを知り、「その程度の夢ならせめて・・」とデヴィッドたちは思うようになり・・。


・・と、ここまでにしておきましょう。

この映画ですが

なんじゃそりゃ?

って話でしょ(笑)。これ、ただ単に「宝くじ、あたったかどうかをボケた父ちゃんと確認しに行く」だけの話です(笑)。ぶっちゃけ、どこの村で、いつ、どこで起こってもおかしくない話です。しかし、そんな話でも


見方と、キャラ設定を面白くするだけで、オスカーの作品賞や監督賞にまでノミネートされるほどの作品になるのです!

そこがすごいですよね〜。別段、そこに特別な、「こんなことって、あるんだ!」みたいな劇的なドラマがあるわけじゃなく、下手したら自分の身の回りでも普通に起きそうな笑い話が、こんな風に2時間も時間をかけた、中身のしっかりある映画になるわけですからね〜。

そして、それこそ



アレクサンダー・ペイン映画の真骨頂なのです!

この人の映画って、基本いつも、主人公になる人に特別な人はいません。ズバリ、「これだったら自分の人生でも映画の主役になるんじゃないだろうか」くらいの錯覚を起こさせてしまうくらい、ものすごく「フツー」の人が主人公、ならびに登場人物です。


そして、話自体も、劇的な起承転結があるわけじゃない。淡々と進んで行くうちに「おい、なんだそりゃ(笑)」な脱線やオチがあって、気がついたら淡々と終わってる・・というパターンが常です。そして、その話がショボければショボいほど、逆説的に面白いのです。



大体、この人の映画は出世作からして、「些細な題材」ですからね。この写真の映画は1999年に公開された「Election」という作品ですが、これなんてただ、高校の生徒会長を選ぶ選挙の話ですからね。この選挙で、他に誰もなりたいわけでもない生徒会長にリース・ウィザースプーン扮する最高にウザい女生徒が立候補し、最後、大接戦となったところで、彼女のことを嫌いなマシュー・ブロデリック扮する先生が彼女に投じた票を1票ゴミ箱に捨てたことで落選してしまうんですね。で、それが発覚したことで先生は学校を追われ、数年後、街で偶然彼女を見かけたときに、彼女が乗ってる車に飲んでたスムージーを投げてぶつけて走って逃げてそれで終わり・・という、なんともユル〜いコメディでしたからね。


その後、ペインは「アバウト・シュミット」「サイドウェイズ」「ファミリー・ツリー」と話題作を次々と作って、いずれも市井の人々を題材にしたささやかな題材のコメディだったわけですが、今回の「ネブラスカ」、ことエンディングの「なんじゃこりゃ〜」なショボさは「Election」以来です(笑)。でも、これが案外、心があったまる良い締めくくりなんですよね。

あと、ペインの映画は登場人物の設定が可笑しいですが、この映画では



奥さん役の、このおばあちゃん、ジューン・スキッブがとにかく素晴らしかったですね。やたら、やかましいという、ただそれだけで見てて可笑しいんですけど、いざ、話し始めると、昔の自分の自慢話を「その昔、男の子はみんなアタシのパンツを狙ってたんだよ」みたいなことを平気で大声でしゃべるような人です(笑)。この女優さんは、ペインの映画では「アバウト・シュミット」で突然亡くなっちゃうジャック・ニコルソンの優しい奥さん役だった人なんですけど、それとはガラッと違う演技を見せています。これで夫役のブルース・ダーンと共にオスカーにもノミネートされています。

あと



今回の映画の収穫は、この息子役のウィル・フォルテですね。彼は2010年まで、「サタディ・ナイト・ライヴ」のレギュラーをつとめていた人で、「イケメンなんだけど面白い人」的な役回りをしていました。その後、音沙汰がなかったのですが、こういう形で華やかに出世しました。この「ルックスはいいんだけど、なんかうだつのあがらない不器用ないいひと」な役って、通常のパターンならオーウェン・ウィルソンとかポール・ラッドがやりがちなポジションなんですけど、ここに「そういう演技が出来る人がもう1人いる」ということをアピールできたのは良いことだと思います。


あと、印象に残るシーンで言えば、ウィル・フォルテ扮するデヴィッドと兄のロス(演じるのは「Breaking Bad」のソール役の人)が、お父さんのために、昔盗まれた耕耘機を人目を盗んで取り返すシーンがあるんですけど、ここ必見です!なぜかペインの映画には、たとえば「サイドウェイズ」でポール・ジアマッティが友人の不倫エッチ現場で忘れてきた財布を取りに行かされたり、「ファミリー・ツリー」でジョージ・クルーニーが、瀕死の重体の奥さんの元不倫相手の尾行をコソコソ隠れてやったりなど、「バレたらどうしよう」みたいな顔しながら忍び込みを敢行するシーンが定番化してるんですが、今回もまたしても出て来ます。しかも、そのシーンのオチがまた見ものです(笑)。


今回の「ネブラスカ」、前作の「ファミリー・ツリー」がジョージ・クルーニーが主役だったのと比べるとキャストに事前知名度がないために、ついつい見逃されやすくなってしまっているのですが、こと、「アレクサンダー・ペインらしさ」という作風面に限ったことで言えば、より本来の彼らしい、彼の固定ファンなら確実に満足できる出来だということを記して、ここは締めくくろうと思います。
author:沢田太陽, category:映画レビュー, 11:32
comments(1), trackbacks(0), - -
Comment
記事拝見しました。
映画はとても面白かったです。
私は自分のダメ父がトラウマで、どうしても口うるさいジューン・スキッブ演じる役の人に感情移入してしまいました。この人が金をたかろうとする親戚にぴしっと言い返せてすっきりしました。また、この人のおかげでwペギーさんが幸せになれてよかったな、とも思いましたよ。
ファミリー・ツリーも前に見ました。
他の作品も見てみようと思います。
ままま, 2017/04/05 10:38 AM









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