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映画「キャプテン・フィリップス」感想〜海賊がマジこわいです。
どうも。

今さっき、この映画を見終わったばかりです。やっと見れました。




今年度のオスカー候補のひとつとの呼び声も高いトム・ハンクス主演「キャプテン・フィリップス」。こちらのレヴュー、行きましょう。


日本でも金曜から公開なんですよね。ブラジルでは既に4週目なんですが、ここ3週ほど「見に行こう」として不都合な事情がことごとく重なり見に行けず、結局、日本と同じ公開タイミングで見に行くこととなりました。


では、早速あらすじに行きましょう。


もう既に公開中の映画なので、詳しくは書きません。これは2009年、アフリカのソマリア沖に物資を運んでいた貨物船の船長、リッチ・フィリップス(トム・ハンクス)が、簡易の船に乗って襲ってきたソマリアの海賊たちに船を乗っ取られ、船にあった全財産3万ドルを奪われたあげく、海賊たちの運転する潜水艦に誘拐され、生死をさまよう恐怖の体験を味わう・・・。といったお話です。


これですね。結論からまず行きましょう。

こういう映画としては、すごく良かったです。


実は僕がこの映画に行くのに二の足を踏んだのは「評判聞いてなかったら、自分から見に行くタイプの映画じゃないよな」とどこかで思ってるフシがあったからです。「トム・ハンクス」という主演チョイスは、ある時期からのハリウッドの「右派」(政治的な意味ではないですよ。あくまで「保守」とか「安全」という意味です)という感じがして、低予算系やインディに味方したいタイプの僕としては惹かれるタイプでは決してないし、監督のポール・グリーングラスも、「人間ドラマを丁寧に作るタイプ」であることはわかっているものの、やはり基本はアクションの人だと思っているし、本来ならマット・デイモンや最近のデンゼル・ワシントンが出そうな映画の監督さん、というイメージが僕にありました。


ただ、これは、「スーパー・リアリズム」とでも言うべき、おどろくべきリアリスティックな略奪&誘拐事件の描き方ですね、これは!特にこの人たち



海賊団がマジでこわすぎ!!

もうね、この顔つき、目つき、ガリガリの体型、いかにもヤク中のヤバい口調、アフリカ訛りのモゴモゴした英語。全てがあまりにもソマリアのギャング団でした。彼らがまるで、本当の誘拐事件を録画したモニター・カメラの映像のような所作とテンポでフィリップス船長に絡み、脅し、暴行を加えるわけです。しかも、恐喝してピストルこめかみに近づけるときの迫力が、もうこれ、本職にしか見えないんですね。これはもう、本当によく指導したものだと思います。僕はトム・ハンクスの主演男優賞ノミネートより、彼らにまとめて「助演男優賞」のノミネートをあげてもいいんじゃないか、という、桁外れの迫真の演技でしたね、これは。


そのあたりはやはり



あの、911事件で墜落した飛行機を描いた「ユナイテッド93」を、センチメンタルな感情を差し込まずに、それがあたかも本当に起こったことのように、完璧に「疑似ドキュメンタリー」として描ききったポール・グリーングラスだけのことはあります。



ポール・グリーングラスという人は、ドキュメンタリー的な手法とテクニックをアクションに昇華させるのがうまいですね。こういう感覚があのマット・デイモンとの「ボーン・シリーズ」でも生きていたんだな、と今にして思います。アクションやサスペンスのジャンルを作り事の世界で終わらせずに、見る人の目にリアルに迫ることを求めているような、そんな感じがします。

美術の世界で「スーパーリアリズム」という手法がありますけど、それを映画の世界で最も応用出来てる監督さんがこの人なのではないかな。


今のアクション映画の監督さんで彼のようなタイプもいない(マイケル・マンが近いと言えば近いけど、もう少し”男のロマン”的なタイプか)し、これはこれで立派な個性として今の映画界にアピールできることだと思うし、この立場からオスカーへのノミネートに名乗りをあげることも充分にアリだと思います。

ただ!

それでも、「今年のベストの映画」とまでは思わなかったんだよなあ〜。

その理由のひとつは、これは監督の資質というよりは、僕自身の映画の好みの問題ですね。僕の場合、やはりノン・フィクション的な題材よりは、やっぱりどこかオリジナルな「物語」を見たい、という気持ちの方がどうしても強いんですよね。そこのところで、「見応え」はすごくあるんだけど、もっと一から作り上げたものの方が好きなんですよねえ。


あと、同じアクションものでも、「Gravity(ゼロ・グラヴィティ)」でアルフォンソ・キュアロンがやったような実験的な手法の方が僕はよりそそられましたね。あの映画には、出演者がたった2人しか出て来ない上に、「宇宙でもし災害が起こったら」の部分はすごくリアリティがあったんだけど、宇宙を背景にしての事故風景に関してはまだ未知の世界ではあるし、そこのところの創造力を膨らませて物を作っている感じがしたんですよね。そこは単なる「正確な写実」とは異なるそれ以上のクリエイティヴィティがあったように思いました。

そして、僕的にもっとも惹かれなかったのは音楽でしたね。これが何かすごくアクションものの「ステレオタイプ」みたいなスコアというか。ここのところが「24」あたりのアクションもの見ているのと正直変わらないというか。「これ、監督がデヴィッド・フィンチャーだったら、もっと面白い音楽つけられてただろうなあ」などと、クライマックスのシーンを見たときに本音として思っちゃいましたからね。

そして



トム・ハンクスはたしかに大熱演ですごくうまかったです。

しかし!

「新しい」とか「彼にとっての新境地」とまでは思わなかったのも事実です。

最初は落ち着いていた物の、徐々に極限状態に達し・・みたいな、船長の気持ちの動乱を表現するには最適な演技をしたとはたしかに思います。ナイス・ジョブだと思います。ただ、「意外性」だとか「ここから彼のキャリアがガラリと変わって行きそうだ」みたいな感じがしない。既にオスカーの主演男優賞を2回も取っている彼のような俳優であれば、そういう切り口がないと、ノミネートまでは進めても、受賞までにはいたらないでしょう。


彼の場合、オスカーをもう1度狙うのであれば、もう少しインディ寄りの監督の作品に出てみることですね。たとえばジョージ・クルーニーなんかは、メインストリームな映画に出つつも、コーエン兄弟やアレクサンダー・ペイン、ウェス・アンダーソン,ジェイソン・ライトマンのようなインディ感覚の監督の映画にも積極的に出て演技の幅を作品のたびに広げてる印象があるんですけd,トム・ハンクスって、今、「触れ幅の見せ所」みたいなものが「トイ・ストーリー」のウッディくらいしかないでしょう。しかも今となってはそれさえ定番化しているわけで。その意味で今回の役も「うまい」とは思ったし最後まで全く退屈はしなかったんですけど、「これ、他の役者だったらどう演じたのかな」という想像はしてしまいました。


まあ、いずれにせよ、オスカーのノミネートは堅そうですけどね。ただ、「受賞」にまでこぎつけられるカテゴリーまでは正直見えない作品ではありました。
author:沢田太陽, category:映画レビュー, 11:04
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