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アーケイド・ファイア「Reflektor」を聴いた
どうも。


やっぱ、このアルバムのレヴューをやっておかないといけないでしょうね。


今年秋のロックの最大のリリース。もちろん、これです!





アーケイド・ファイアの「Reflektor」、こちらを語ることにしましょう。


このアルバムですが、さすがに事前期待値がものすごく高まっていましたね。過去3作はいずれもその年のリリースのベスト作クラスの評価が続いた上に、前作がグラミー賞の最優秀アルバムなわけでしょ。ちょっと前までの「インディでの期待の逸材」がもういつの間にか音楽界のひとつの頂点とも言える賞まで取ってしまったんだから。


そんなわけで、今回は所属のレーベルも金の掛け方が違いましたね。前作「The Suburbs」のときも、発売タイミングでマジソン・スクエア・ガーデンで発売記念のライブやって、それをテリー・ギリアムにライブ映像をとってもらうなどしてましたが、今回も、もう「これでもか!」というくらいに期待が入りまくっている。まず、アルバム発表の告知の時点で日にちからデザインに謎を施し、プロデューサーは今をときめくジェイムス・マーフィー(LCDサウンドシステム)、そしてミュージック・ヴィデオの監督はひとつをアントン・コービンに撮らせ、もうひとつにはボノ(U2)、ジェイムス・フランコ、ベン・スティラー、マイケル・セラといった豪華セレブ・ゲストが出演し、今シーズンの幕開けの会の「サタディ・ナイト・ライブ」で最初の新曲お披露目・・・。扱いが破格に特別クラスになっております。


これまで「Merge出身のインディのバンド」のイメージを持っていらっしゃる方には「なんで急に」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、僕としてはそんなに不思議なことではありません。彼らのあの、「クラシック音楽とパンクの両方理解出来ないとできない」パフォーマンスの圧倒力から考えれば今のポジションは決しておかしなものではないし、加えて、「カナダの素朴なバンド」のふりして実は野心がかなり強いバンドなのもわかってたし。そうじゃないと、前作の時点で発売タイミングでMSGでライブやったり巨匠クラスの映画監督のテリー・ギリアムに映像撮らせたり、さらにはグラミー賞で演奏したり、なんてことは引き受けたりしないでしょ。この前の最新の曲だった「ハンガー・ゲーム」の主題歌に近い曲だったわけだし。今回のこの出方も含めて、シーンのトップになる気なんて満々でしょ。ただ、それが、「酒とバラの日々」であるか「とことんまで最高の芸術を求めるアート肌」なのかの違いだけであって。僕も、こういう人がロックスターになるんだとしたら、それはもう大賛成です。


で、今回のアルバム、聴きました。今回のアルバムは、各媒体のアルバム・レヴューを総合したMetacriticのレヴューの合計は全40レヴューで点数では80点。これがどういうことかと言うと、1stの「Funeral」が90点、2ndの「Neon Bible」3rdの「Tge Suburbs」で87点、それに比べたら、80点なんで十分高くはあるんですけど、中には批判的なものもあった、ということです。今回の40のレヴューのうち、実は60点未満の厳しい評をのせた媒体が6つあったんですね。こういうことは、これまでの彼らにはなかったことなので、僕は個人的にそれにビックリしていました。

で、そういうことがなぜ起こったのか。聴いて確認しようとしました。そして、その意味がなんとなくわかりました。


この「Reflektor」ですが、アーケイド・ファイアのこれまでのことを何も知らなければ、素直に素晴らしい作品だと思います。ジェイムス・マーフィーのエレクトリックでエッジィなグルーヴ・センスがうまく生きてますね。彼の関連作品を聴いていつも思うことですが、ディレイのかけかたとシンバルの「バシシシ」っていう鋭い響きはカッコいいですね。あと、今回はスネア・ドラムの硬い音も、これまでのアーケイズにはないリズム感ですね。そういうところは、ジェイムス・マーフィーの起用効果がしっかり出たと思います。

で、そのマーフィーの作り出す、それだけで十分作品の強い個性になりえている葵の紋章みたいなサウンドに負けず、アーケイズはアーケイズで、しっかりいつも通りの生身のグルーヴもしっかり前に出せてると思いましたね。フューチャリスティックなサウンドを使いつつも、しっかりとフィジカルだからこそ可能な肉感性もしっかり現している。それは冒頭のタイトル曲の従来からのトーキング・ヘッズ路線でもそうだし、「We Exist」でのソプラノ・サックスの響きしかり、「Here Comes The Night Time」のラテン・フレイヴァーのピアノとダブル・パーカッション。「Normal Person」でのフリーキーなギター・トーン、「You Already Know」でのモータウン調のカッティング。このあたりのリズムと時間軸の折衷感覚で言えば、僕は初期の、まだブライアン・イーノがメンバーにいた頃のロキシー・ミュージックの雰囲気に見えます。

そして「Here Comes The Night 2」〜「Awful Sound」〜「It's Never Over」でチルアウトしながら抑制の効いた彼ららしい美メロを展開しているのもうまいと思いましたね。それプラス、彼らの場合、このタイプの曲を聴くと、ウィン・バトラーのメロディ・メイカーとしての高い資質がよくわかります。アップの曲も含め、彼のメロディとリズムの臭覚の良さと楽曲が弛緩しないようにまとめあげる手腕もたいしたものだと思います。そして終盤をもう一度グルーヴで盛り返して、最後は混沌で終わる。この辺りの流れは見事です。アルバムとしてのトータル力はしっかりある作品です。メロディにも1度聴いたら忘れない、名人的な上手さがあると思います。


・・と、これまでのことを何も考えずに、ただこの作品にだけ注目して聴けば、このようなポジティヴで興奮するカタルシスは十分得られる作品ではあります。


しかし!


このアルバムに唯一「困った点」があるとしたら、それは「過去の個性や印象からのつながり」、ここに絡めとられて、新しい路線に違和感を持つ人が予想されることです。やはり今作の場合、これまで以上に電子音グルーヴを前に出し、全体の楽器の音数を減らしている作品であるので、これまでのようなホーンやストリングスなどを駆使した多彩なアレンジがやはりどうしても減ってしまっているんですね。加えて、これまで以上に「静」の部分での抑揚が弱いために、これまでの作品に比べたら、テンポ感も曲調の表情もややバラエティさには欠けますね。この楽曲ひとつひとつの多彩さの面も、彼らのキャラクターを語る意味での力強いアピール・ポイントになってましたから、それがあまり感じられずに淋しい思いをした人もいたでしょうね。


あと、「ウィンとレジーナの2人以外」の存在感がこれらの新曲からはあまり感じられないんですよね。ぶっちゃけ、この夫婦がマーフィーとノリで結託してそのままの勢いで作ったな、という印象を今作では受けます。まあ、今は彼らのキャリアの中でも最も勢いのついている頃なので、その「勢い」のままでも十分押し切れる作品であったのは確かです。ただ、削り取ったところには惜しい部分も多い、ということです。


それに加えて、元々「大所帯」というのをウリにしてたところが、シンプルになったがゆえに一部のメンバーに手持ちぶさたな感じがしてしまうんですよね。正直、幾人かのメンバーをレイオフしているかのようにも感じられるんですよね、「瞬時の勢いと創造力」で今のタイミングは十分乗り切れていますが、「今後このバンド、どうするんだろう」といった将来的な方向性が見えにくいことでしたね。そのヒントが見えないままで終わってしまったのはちょっと残念な気もしましたね。このアルバムが、一時の勢いだけの特別なタイミングで出したものなのか、それとも今後に繋がりうる何かのはじまりを意味するのか。そこが非常に見えにくい作品でもあります。


・・ということもあり、反対派の突っ込みどころもわかる作品でもあります。

あと、それに加えて、このアルバム自体が持つシーンにおける意味合いみたいなものも、ちょっと見えにくいところがあるんですよね。たとえばダフト・パンクの「Random Access Memories」だったら「EDMを終わらせる」みたいなところでドラマがあるし、アークティック・モンキーズの「AM」には「ハードなギター・ロックでの実験性にあえて挑む」みたいなものが見えるんですけど、このアルバムがシーンで何にあたるのか、それが見いだしにくいんですよね。


ズバリ、「アーケイド・ファイアというバンド史」という意味においては、純粋に良い、耳の印象にも強く残る曲が多いアルバムなので、「ライブのセットリストに多く加わる姿が見える」という意味では立派な作品だし、間違いなく大ヒットもするだろうから「代表作」には十分なりうるはずです。でも、逆に、これが当たってしまうことでここからの曲がメインになり、前3作までにあった良さがライブの面で徐々に削られていくことにならないか。その危惧は僕の中に少しあります。その意味で、今度のアルバム、旧作の曲とまじえてツアーでどう表現するかがかなり重要になってくると思います。


ということをふまえ、僕の今作、点数をつけるとするならば


81/100


こういったところですね。★★★★よりちょっとだけ点数高いけど、★★★★☆には近くない、といったところでしょうか。年間トップ10的なところで言えば、それは確実に入るとは思いますが、さっき言ったダフト・パンクとアークティック、そしてボウイの後にはなりそうな気がしてます。
author:沢田太陽, category:CDレヴュー, 11:42
comments(2), trackbacks(0), - -
Comment
このブログに影響されてか「最近、女性ソロシンガーの音楽をちゃんと聴いてないな」と思い、とりあえずアデルとガガのCDを借りてきました。店舗や街中でBGMとして流れていて、すでに知っている曲ばかりだったのでビックリしました。歌ってたのお前らだったのか!!と(笑)
グラミー賞を獲ったarcade fireのアルバムも聴いてみましたが、僕には合いませんでした。北米系の音楽は何故か苦手でして…。

→ボカロについて
史上最高のボカロライヴと言われている「最後のミクの日感謝祭」というDVDを購入したのですが、個人的にはこれ、もの凄い衝撃でした。entertainment showとして楽しめるだけでなく、僕のボカロに対する認識や理解や興味を一気に深めてくれました。
まず、歌い手と作り手と聴き手の関係性が、従来の音楽とは根本的に違う。これ、ボカロを理解する上で物凄く重要だと思います。CDでもダウンロードでもなく、動画サイト(ニコニコ動画)で盛り上がっているシーンというのも関係しているかもしれません。
あと意外だったのは歌詞ですね。生身の人間では伝えられないものや、威力が半減してしまうものがたくさんある事を知りました。
long3, 2013/11/05 11:02 AM
沢田さん、いつも楽しく読ませていただいています。
沢田さんの今年のベストアルバム・トップ10みたいなものも書いていただけるとありがたいです。
自分は貧乏なので(恥)、新譜はもっぱら某動画サイトで聴いていますが、ダフトパンクとボウイ、そしてもちろんアーケイズが良かったです。
点数は95点くらいかな・・・。
ベストトラックは"Reflektor"です。

PS 以前書かれていたパルプのライブレポートの続きが読みたいので、お時間に余裕がある時にまたお願いします。それでは、お体に気をつけて。
ねいまーる, 2013/12/21 2:53 AM









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