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映画「華麗なるギャツビー」感想〜もしかしたら2013年最大の過小評価映画かも
どうも。


今日は久々に映画レヴュー、行きましょう。これです。




「アメリカ文学界最高峰」とも言われることのある文芸作品「華麗なるギャッツビー」の最新映画化ヴァージョン、これで行きましょう。


このオリジナルとなった小説「華麗なるギャッツビー」は、ヘミングウェイなどと並び称される、いわゆる「ローリング20s」と呼ばれる1920年代に台頭したスコット・フィッツジェラルドによるものです。

この作品は、サイレント映画の時代も含め、過去3度映画化されてまして、一番有名なものだと、1974年のコレですね。




ロバート・レッドフォードとミア・ファーロウ主演によるこのヴァージョンですね。この映画は70年代当時大ヒットして、僕の大学生ぐらいまではレンタル・ビデオ屋さんに行っても結構必ずあるもののひとつでもあったのですが、ただ、この大ヒット・ヴァージョンでも映画ファンの間では「駄作」として有名になっている残念な映画でもあります。僕もこのヴァージョンは大学のときに見てますが、ハッキリ言って、今回のヴァージョンを見たことでやっと記憶が蘇ってきたくらい、ハッキリ言って印象にも残りにくいイマイチな映画でした。


ただ、それは言い換えると、「映画化にはプレッシャーの伴う普及の名作文学」と言うことにもなるのですが、果たして、今回のバズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ主演ヴァージョンはいかがでしょうか。


では、あらすじに行きましょう。


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ストーリーは1920年代前半、ウォール街で働く青年ニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)の回想ではじまります。


ニックはニューヨーク郊外のロング・アイランドに住んでいたのですが、その隣の大邸宅では、ニューヨークの名士やセレブが夜な夜な集まってド派手なパーティを開いていました。その邸宅の主は新進の若手事業家のジェイ・ギャッツビー(レオナルド・ディカプリオ)でした。人は彼のことを「第一次大戦で活躍した戦争の英雄」、いや、はたまた「ドイツ兵のスパイだ」という人までいます。要は、どうやってその地位を手にしたのか、ほとんど知られていない謎の人物ということです。

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ニックはロングアイランドの別の高級住宅地に住むいとこのデイジー(キャリー・マリガン)に誘われ、そこでデイジーの夫トム・ブキャナン(ジョエル・エドガートン)と知り合い友人関係となります。ですが、そこで出会ったモガ系美女のジョーダンに、トムが売春婦のマートル(アイラ・フィッシャー)を愛人としていることを告げられます。


そうしているうちにニックは、面識のなかったギャッツビーから突如パーティのインビテーションを受けます。

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そこに行ってみると、当時これ以上のものはないんじゃないかと思えるくらいの豪華なパーティが行われておりました。ニックはギャッツビーと知り合いますが、このパーティの場でジョーダンから、実はギャッツビーとデイジーが1915年頃に中西部にあるデイジーの邸宅で出会い深い恋仲に落ちていたことを知らされます。ギャッツビーは中西部出身の第一次大戦に参戦した軍人でした。


その後、ニックとギャッツビーは親交を深めて行き、ギャッツビーも少しずつではありましたが、自分の素性をニックに見せ始めます。それによると、どうやらニューヨークに大邸宅を買ったのは、戦争からの帰りが遅れている間にトムに結婚されたデイジーに近づきたかったがためのようです。戦争からは文無しで帰って来た彼ですが、何らかの方法でのしあがり今の地位を築いたようです。

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トムが浮気していたことも知っていたニックは、デイジーとニックを近づけるように画策します。このニックの助力により、ギャッツビーの邸宅でデイジーはギャッツビーと再会し、デイジーの中に忘れかけてた思いが蘇ります。一方のギャッツビーも、これまでの冷静さが嘘のように取り乱してしまいます。


ギャッツビーはデイジーに「愛していない男のところに戻らないで、僕と一緒になろう」とデイジーに迫りますが、そう言われてすぐに実行できるほどの強い意志を持っていないデイジーは優柔不断な態度を示すばかりでした。ただ、密会はその後も続いて行き、それをトムも勘づくようになります。そしてトムはギャッツビーの素性もいつのまにか把握もしており・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。



これですね、実は批評的にはそこまで評判の高い映画ではありません。僕が通常、全米映画興行成績で参照にする批評のバロメーターによると、Metacriticで55点、Rottentomatoesで44点。単刀直入に言って、評価としては「普通」か、もしくは「やや悪い」という感じであります。


さらに言ってしまえば、この作品、今年のカンヌ映画祭のオープニング作品に選ばれているのですが、そこでもブーイングを受けてしまっています。


・・と聞かされれば、事前にそこまでの期待は本来できないはずです。なので、僕も最初、そこまで大きな期待をしてませんでした。


ですが!


意外と悪くないじゃん、これ!!


というのが、僕の率直な感想でした。


ぶっちゃけ、褒められるポイントもむしろ多かったのも事実です。それをあげていくと


1.3Dがビックリするほどきれいだった!


実はこれ、今回3D作品だったりしますが、当初「文芸作品なのになんで3Dなの?意味あるの?」と思って半信半疑で3Dメガネをかけましたが、いや〜、これ、ビックリしましたね!これ、3Dであるのと、ないのとでは大違いです。

『1920年代のアメリカ』というのは、20世紀が最初に迎えた、いわゆるバブル経済の時代で、この時代にラジオ、映画、音楽、プロ・スポーツなどの大衆娯楽文化も一気に花開き、マッシヴな大衆消費カルチャーが促進されるんですが、そうなると成り上がりの金持ち連中の華やかさも桁外れになっていくんですね。そんな「1920年代の輝き」を今回の3Dは、それを生々しくリアルに、かつ美しく開花させています。美術的にもファッション的にも一気に進化した時代ですからね。そのリアリティが21世紀の現在のテクノロジーで、風化しない形で、当時の人が肌身で感じた「進化の実感」を具現化させられていたのは素晴らしいことだと思いましたね。


2.役者のチョイスも、演技もほぼ完璧だった。


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あと、これは是非強調しておきたいのですが、演技的には文句ない映画でしたよ!よく、レオが絡む映画とかだと、評判が悪かったりすると、「やっぱりディカプリオが悪いからじゃないか」みたいなところに帰結しがちですが、レオはこの役にはピッタリだったと思います。


レオの場合、実際のところ、批評的にも演技力を評価されていることの方がむしろ多いのに、肩に力の入った熱演型のせいでオスカー審査員に好まれないために誤解されてますが、今回のような、「成り上がりにも、愛した女にも一直線」みたいなキャラを演じさせて、今彼ほど説得力のある役者さんもそうはいないと思います。彼のウィーク・ポイントになりうるその演技こそ、この映画に求められているような気が僕にはしました。


と言うのも、上に書いた1974年のヴァージョンのロバート・レッドフォードの演技が物足りなくてね。やっぱ、レッドフォードの場合、「明日に向かって撃て」みたいな映画に出てるとは言え、根本的に「汚れ役ができない」体質がモロに出てしまって、ギャッツビーをやるには泥臭さの足らない、ただの洗練された男になってしまってましたからね。やはり彼には、同じ74年に公開されたバーブラ・ストライザンドとの「追憶」で見せたようなソフトな優柔不断男みたいな役の方が何10倍も適役ですね。


74年ヴァージョンの場合、最初に配役が望まれていたウォーレン・ベイティに断られた時点でやはり失敗だったんだと思います。ベイティだったらほぼパーフェクトだったのにね。やっぱ、さわやかなだけじゃ、この役はできません。





あと、キャリー・マリガンのデイジー役もピッタリでしたね。キャリー・マリガンって、これに限らず他の作品でもそうなんですけど、「強い女性像」を演じることはあまりなく、ほとんどが「心の弱さ」を繊細に、壊れそうに演じるのが得意な女優さんですよね。だからこそ、ここでの、強い意志を持って決断できない、かつ、上流家庭で甘やかされて育ったゆえの流されやすい雰囲気も持っているこのデイジーを演じるにはピッタリだったと思います。今の20代前半くらいの女優さんって、正直にハッキリ強気で物を言うジェニファー・ローレンスみたいなタイプ(僕は本音言うと、こういう方が好みではありますが)の方が目立ってますしね。これも、74年ヴァージョンのミア・ファーロウより断然上です!やっぱミア・ファーロウの場合、良い女優さんではあるんだけど、イメージとしては「ローズマリーの赤ちゃん」をはじめとしたエキセントリックな芸風や、ヒッピーのイメージの強い人だっただけに、「上流階級の箱入り娘の心の揺れ」というのは見ていてどうにも説得力がなかったんですよね。



あと、ニック役のトビー・マグワイアも、「ピュアなナード」役がピーター・パーカー以来板についていてピッタリだった上に、トム役のジョエル・エドガートンの嫌われ役には持ってこいの傍若無人ぶりもすばらしかった!20年代の娼婦役が容姿からしてピッタリだったアイラ・フィッシャーもプラスして、この5人に関しては完璧な配役と期待通りの演技だったのではないか、と僕は思います。


3.音楽のセンスが素晴らしかった


これは人によっては実は減点ポイントでもあったはずなんですが、音楽的にはお見事でしたね。音楽担当をまかされたジェイZの曲が随所に流れていたのをはじめ、奥さんのビヨンセがエイミー・ワインハウスの「バック・トゥ・ブラック」を歌い、他にもフローレンスやラナ・デル・レイといった、レトロでシックな雰囲気にも合う女性シンガーの声が効果的に流れて来てたのには「よく考えられてるなあ」と思い、見ながら感心しましたね。


このように、ほめられるポイントも多かった映画のように僕は思いましたが、でも、たしかに、「これは嫌な人には嫌な映画だろうなあ〜」とも同時に思いました。それは。



古典的な文学名作に、モダンな要素をくっつけすぎた。


ズバリ、ここに尽きるんじゃないかと思います。特に「ギャツビー」の場合、これまで映画化されて評価されたことのない作品です。下手にモダン化してわかりやすくするとかでなしに、「真っ正面から見応えのある本格作にして欲しかった」と願った人の方が多かった、ということでしょうね。


それは特に、後半になればなるほど濃くなる重厚な人間ドラマを見たりすると、「せっかく良い映画になったのに、前半のモダンな社会描写がギミックになって映画を台無しにしてしまっている」と、前半のパーティのシーンとニューヨークの街の描写の妙に21世紀の現代にも通じてしまう感じがかえって邪魔に見えてしまったんでしょうね。そういう人にとっては、「1920年代にヒップホップなって鳴ってるわけないだろ。馬鹿にするな!」みたいな気分にもなったんじゃないかな。


でも、それは仕方がありません。だって監督したのが




バズ・ラーマンなんだから!




もっとも彼は90年代に、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を現代の設定に置き換えて作り、そのときも一部でさんざんな言われ方をした人ですからね。もっとも今回の「ギャッツビー」の場合は現代に置き換えたわけでなく、20年代をそのまま表現してたわけですけど、でも、だからなおさら、明らかに現在の音楽をそのまま100年近く前に使ってしまったりとか、テクノロジーがはるかに遅れた世の中でド迫力のカー・チェイスを演じたりするのが「子供だまし的」というか、バカバカしく見えてしまったんでしょうね。



おそらく配給側も、ラーマンがこういう作り方をしてしまったので、本当なら去年のオスカー・シーズンだった昨年末の公開だったところを今頃までに延期してしまったんでしょうけどね。


やったことは確かに滑稽だったかもしれません。ただ、それでも、上に書いたように、映画の基軸となるところで長所は意外と多い映画だし、たとえそれが「ありえない」ことだとは思いつつも、「現代的なモチーフ」の20年代での生かし方もよく考えられていたと思います。


今回の映画で、ジェイZとビヨンセの夫婦をフィーチャーしたのだって、それが現在のニューヨークの「繁栄」「華やかさ」「成り上がり」の象徴こそがその夫婦だったからであり、それを当時と対比させることによって、若い映画ヴューワーに訴えたかった、という意図があるのはすぐに感じられましたからね。


もしかしたら、そうした「現代の世界との対比も示したい」だとか「20年代のカッコよさを今の時代にもわかりやすく伝えたい」みたいなラーマン自身の表現欲求を抑えた方が素直に良い作品になったのかもしれませんね。でも、仮にそうしてたら本当に良い映画になっていたのかな?
奇しくもラーマンの映画で最も批評的にもウケたのが、文学とか関係なしに徹底してミュージカルに徹した「ムーラン・ルージュ」というのもやや皮肉ですが。そんな風に考えると、「創作」という行為って本当に難しいんだな、と改めて思いました。


う〜ん、それでも僕の中では、「過小評価映画」のような気がしてならないんだよなあ〜。ある程度時間が経ってから見たら、少なくとも今よりは評価があがってるのでは、と思います。それくらいラーマンから強い制作意図を感じさせる作品であることは間違いないし、それはMetacriticで同じくらいの点数になってしまった他の映画より何倍も強く感じるのでね。
author:沢田太陽, category:映画レビュー, 07:28
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Comment
レビュー、読まさせて頂きました!

実は先程、なんとなくレンタルした「ロミオ&ジュリエット」を観て、
すごく感動してレオナルド・ディカプリオについて調べていました!

このレビューを観て、私も素直に観たいって思いました♪
ありがとうございます。
それにして、すっごく詳しいんですね!
とても細かく書かれていて、びっくりしました!
優衣, 2013/08/15 2:36 AM
僕もよかったと思う。
ギャツビーが登場する瞬間はラーマンにしか出来ない業だし、その直後のパーティ終了の感じがロミオジュリエットとまったく同じで笑ってしまったが。
レオの演技は彼のBEST3に入る!
幸, 2014/02/26 2:02 AM









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