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映画「Hope Springs」感想〜現在最高のロマコメ女王はメリル・ストリープかも
 どうも。


今日は映画レヴュー、行きましょう。こちらです。




メリル・ストリープの最新主演作ですね、「Hope Springs」。メリルは今年「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」で2度目のオスカー主演女優賞をとったばかりですけど、それに続く最新作となります。こちらは、このポスターでも想像が出来るように、ライトタッチな大人のコメディになります。


では、あらすじに行きましょう。




オマハに住むケイ(メリル・ストリープ)とアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は結婚31年の夫婦。子供も大きくなり現在は2人で暮らしているのですが、2人はもう何年もセックスどころか体にふれあうことすらせず、寝るときも別々の寝室で寝ています。家庭内の会話も空虚で、アーノルドの興味はテレビのゴルフ番組だけ。アーノルドとしては「浮気もせず離婚しないだけマシだろ」くらいの意識です。




普段はお上品でお人好しのケイですが、そんな彼女でも、最近のアーノルドの態度には不満がたまっていました。そんなとき彼女は、立ち寄った本屋で見つけた、危機を迎えた夫婦仲の再建を専門とするカウンセラーの本を目にして立ち止まります。


ケイは、その本の著者、バーニー・フェルド博士がオマハから遠く離れた東海岸のメイン州で行っている、短期間での夫婦カウンセリングに申し込みます。




「なんだ、そんなもん。わしゃあ、知らんぞ!」。アーノルドはそう行って行くのを拒みますが、いざケイが先に空港に旅立つと、結局はノコノコとついて来ました。




そして、そこにはフェルド博士(スティーヴ・カレル)が待っていました。博士はアーノルドの非協力的な言動に振り回されますが、せいぜい眉毛を上げ下げするだけで、表情も口調も変えず、冷静沈着に2人への対応を行います。





そしてフェルド博士は2人にかなり大胆な注文をしはじめます。「夫婦仲を回復させるためには、まず体がふれあうところからはじめないと」。ケイは「ええ…、そんなことまでするんですかあ…。…う〜ん、できるかなあ…」と迷いながらもなんとかトライしようとします。一方アーノルドは、博士から言われることにいちいち反発しますが、なんだかんだでトライしようとはします。だが、ケイとアーノルドの体のふれあいはそう簡単には復活せず…。


…と、ここまでにしておきましょう。


まず結論から言いましょう。


映画としては「マーガレット・サッチャー」よりこっちの方が断然上です!


たしかにサッチャー首相という、歴史上に語り継がれる女性政治家を完璧に演じきったのは見事だと思うんですけど、あの映画はサッチャー像が監督の思い入れの中で完結しすぎていて、「じゃあ、一体サッチャーってどういう人だったの?」というのが、わかりそうでさっぱりわかんなかったよくわかんない映画だったんですね。そこを行くとこの映画はわかりやすいし、見ている人の共感も湧きやすいし、しかも最高の演技の数々を体験できます。


この映画、まず何がすごいか。それは


実質3人しか出演がないのに、見る者をひきつける。


熟年夫婦に担当医師、というストーリーの組み立て自体は予想はできるし、それだけに役者にかなりの演技力が求められます。この映画はそこを満点以上の演技でこたえてます。


「アメリカの頑固親父」を演じ慣れてるトミーはさすが。そして、普段は慌て者や変人をえんじるスティーヴ・カレルが、抑制の聴いた演技で新境地を開いているのも見事です。


ですが




やはり本作で魅せるのはメリル・ストリープ。


この人、キャラクターを作り込んだ役だったり、特殊な英語の訛りをしゃべったりする役があまりにすごいので(笑)、それで注目されがちなんですけど、こういう”フツーのオバさん”を等身大に演じさせても抜群にうまいんですよね。


今回は、すごくさえない、普段は自己主張をしない良い奥さん、でも、「そんな私だってまだ、ときめきは残ってるつもりよ」という、初老の女性の心境をすごくかわいらしく、共感が湧くように演じてます。


こういう役って、最近演じる人ってあんまり見かけませんよね。ハリウッドでもダイアン・キートンやバーブラ・ストライザントがたまにやる(でも感触違うんだよね)程度だし、日本だとその昔、八千草薫や佐久間良子がよくやってたタイプかな。今フランスだと、このポジションにカトリーヌ・ドヌーヴが座っちゃってますけどね。


でも、今名前をあげたそういう女優さんとも違って、メリルって、そこにさらに印象的な「もうひとひねり」を加えることが出来てるんですよね。それがこの映画での「エッチ」な部分。この映画、実はメリルにかなりエゲつない演技させてるんですけど、それに応えるメリルがとにかく可笑しいんです、これが(笑)。


スティーヴ・カレルが要求する指令が相当エゲつなく、メリルもここで「そんなのできないわよ〜」と一瞬なるんだけど、それでも素直にトライしようとはしてみて。ただ、周りに誰もいないのに、「誰か見てるんじゃないかしら」とソワソワし、もっと自然にやればいいものを本人に照れがあるもんだから、そのエッチな行為がかえって大げさに見えてしまう(笑)。こういうとこでの、映画を見ている人の目線との駆け引き、これがこの人、本当に上手です。実は上のバナナの写真もその一例なんですけどね(笑)。



これは僕、ジャンルとしては"ロマンティック・コメディ”に分類していいものだと思うんですけど、その観点で行くと、ここ3年で一番面白いロマコメでした。


そして、それはおそらくはこれ以来。




メリル自身の2009年のヒット作「It's Complicated」。日本でも「恋するベーカリー」で知られている作品ですね。これ、こちらでは非常に任期が高くて、ケーブルの映画チャンネルで何度もリピートされてますが、ここ最近のいいロマコメってこれ以来じゃないかなあ。


ここ最近のロマコメのジャンルって、たとえばケイト・ハドソンとかジェニファー・ロペス、ジェニファー・アニストン、キャサリン・ハイグルあたりが該当すると思うんですが、もうこれがことごとくつまんない!なんか、方程式の方が話が展開する前から出来上がりすぎてしまっていて、鑑賞者が一番感じたいところの「共感してひきこまれる人間性」だったり、共演男優とのケミストリーだったりが全然見えてこないんですよね。


メリル・ストリープって人は、別に若い人に説教をかますキャラじゃないと思うんですけど、この人は今作とこの映画の2作で、「ロマコメに必要なものは何か」というものを身を持って表現してくれていると思います。メリル本人自身は「還暦超えてもロマコメの主演ができるなんて自分は恵まれてる。その昔は、あのベティ・デイヴィスほどの大女優でさえも、この年だと怖い老女の役をやらなくてはいけなかったのに」と「It's Complicated」の公開当時に語っていたんですけど、彼女はその「恵まれている」という状況からさらに自分を女優として進化させ、「還暦過ぎた女性が出来る役」というものを次から次へと開拓して行っているような気さえします。


今の20〜40代のロマコメ女優は、もっと心してかかんないといけないと思いますね。ここんとこ、さっき名前をあげた女優は全然ダメで、本来優れた”ロマコメ女王”だったリース・ウィザースプーンもいまひとつだし。今、唯一このジャンルで期待できるのは、ミラ・クニスくらいじゃないのかな。


それにしても、ここ5〜6年のメリルって本当にすごいですよね。還暦前後にして、どれだけ人々の記憶に残る役をものにしたことか!「プラダを着た悪魔」のミランダ・プリーストリーを皮切りに、「マンマ・ミーア」のドナ、「ダウト」の怖い修道女、「ジュリー&ジュリア」のジュリア・チャイルド、「恋するベーカリー」のジェーン、そしてマーガレット・サッチャーに今回のケイ。役柄がひとつひとつ全部違って、それが全部印象に残るものになっているわけですからね。この人はどこまで進化するんだろうなあ。



ちなみにこの映画、「プラダを着た悪魔」で組んだデヴィッド・フランケル監督作品。メリルとしても組みやすい監督だったような気がします。それもあり、日本公開も堅い気がしますが、これは見た方が良い。思わぬ掘り出しもの見つけたような、そんな気分になれますから。
author:沢田太陽, category:映画, 03:20
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-, 2012/08/26 1:25 PM









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