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海外進出アーティストが「洋楽っぽくなる」という印象の本当の意味

どうも。

 

 

ナンバーガールの話に続いて、日本の音楽の話になりますが、同時にこれ、国際的な音楽の話でもありますので、そこのところに着目して読んでいただけたらと思います。

 

 

というのも、ネット上でこういう話を聞いたからです。

 

 

 

 

ONE OK ROCKのインターナショナル・リリースの第2弾アルバム「Eye Of The Storm」がリリースされた際のファンの反応に「もはや洋楽って感じだよね」とネガティヴな声があった、というんですね。

 

 

それに対して「そんな感じだから、邦楽ファンは狭量なんだよ」という意見も起こっていました。

 

 

これに対して僕は「ん?」という印象を持ちました。「洋楽っぽいのは元からじゃん?」と。ONE OK ROCKってブラジルでもそこそこファンベースはあってですね、僕の直接知ってる知人でも「日本でこんなフォール・アウト・ボーイみたいなバンド、いたんだね」と言ってるのを僕との会話で2回聞いたことがあったくらいですから。2回くらいサンパウロにも来てて、1000人規模のハコ、埋めてますからね。さらに前作って、そんなに以前からの印象と変わってない印象で、英語メディアで音楽情報追ってても自然と情報が入っていたので、「ファンベース、地道に重ねられる感じなんじゃん」と思ってました。

 

 

なので、どういう意味かを確かめたくなって聞いてみました。そして意味がわかりました。

 

 

これ

アメリカのメジャー・レーベルが「こうしたら売れるよ」と考えがちな音

 

そして、こうも思いました。

これ、日本のアーティストがメジャーで海外進出するときに伝統的にやりがちなことなんだよな

 

ということですね。

 

 

なんか、今回のONE OK ROCKってラウドロックというよりは、むしろイマジン・ドラゴンズとかのイメージですよね。もいう一歩進めればバスティールとか、そんな感じの。それって、今のアメリカのロック系のラジオが好んでかける感じなんですよ。なんか「EDMをバンドでやる感じ」というか、そこにメロディ的にはフォーキーなテイスト入れるというか。あと、編集点多い感じね。一回、バックの音消してヴォーカルだけにして畳み掛けて盛り上げる感じとか特に。「グレイテスト・ショーマン」のサントラとか、そういう作りでしたね。

 

 

だけど、そうすることによって「えっ、今までの”らしさ”は?」という声もあるとは思うんですよね。例えばこれ、同じく「ポップになった」と言われるブリング・ミー・ザ・ホライズンとは似てるけど違うものなんですよ。BMTHの場合、彼らのセルフ・プロデュースなので、エレクトロの加減もハードの加減も自分たちで調節してやれている感じがするから筋は通って聞こえるんですよ。ところがONE OK ROCKの場合は、一人のプロデューサーに任せた作りになってるでしょ。そこのところで、なんかこう、「仕立てられちゃったかな」の感じが、なんかしちゃうんですよね。

 

 

そこのところを受けての、従来のファンたちの「洋楽っぽくなっちゃって・・」という距離感じゃないのかな、という気がしました。

 

 

ただですね、この違和感を感じたのは、僕はこれが初めてじゃなかったですね。一番最初に、これに近いことを感じたのは、もう40年前なのか、これ。

 

 

 

 

ピンク・レディの「Kiss In The Dark」。これは日本の特大アイドルだったピンク・レディが1979年から80年にかけてアメリカ進出した際のシングルです。これ、僕は小学校4年生の時でしたけどね。たいして好きだったわけじゃないですが、当時の日本のマスコミ、この2人一色だった時期ありましたからね。この時の彼女たちの進出プロジェクトって規模大きくて、アメリカのテレビのバラエティ番組のセミ・レギュラーみたいなことまでしてたんですよね。その結果、この曲が全米トップ40で37位だったかな。上がったので。まあ、それなりの成功といえばそうなんですが

日本での人気、急落したんですよ

それは、「日本での活動に穴を開けたから」というのが大筋の意見ではあったんですが、子ども心にこれ、違和感あったんですよ。「これまでの路線と、あまりに違わない?」と言うね。もちろん、この当時、「日本の歌謡ポップスなんて日本でしか通用しないよ」というのが社会通念としてはあったと思うし、「郷に入れば郷に従え」はある種当然だったのかもしれないです。ただ、いかにアイドルとはいえ、筋の通ったサウンド・イメージって、子どもながらに感じられていたものなんですよね。彼女たちの場合、ソングライター・チームもずっと同じだったし。だから、なんか「あ〜あ、変わっちゃったよね」と言うのはどうしても感じましたよね。で、この後、2年くらいして、ピンク・レディ解散しましたからね。

 

 

これと同じ轍として

 

この聖子ちゃんの1990年のアメリカ進出の「The Right Combination」もありましたね。これなんて、この当時、人気絶頂だったニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのドニー、今分かりやすく言うなら、マーク・ウォールバーグの兄貴ですよ。そのデュエットという、かなりの金額かけたデビューだったのに、これが全米で55位までしか上がらなくて、その後になんか頓挫しましたね。

 

 

これもねえ。それまでのイメージから、あまりにも違うことしちゃった感が強かったですね。仮にも日本で50〜100万人くらい、それなりの数惹きつけていた路線ってあったわけで、それをうまく英語仕様に転化すればよかったのに、と大学生だった僕は思ったものだったんですけど、まだ「日本のものなんて海外で通用しない」と思われてたのかなあ。彼女もこのあと、日本で以前ほどは・・という感じになりましたからね。

 

 

あと、ロックだと、これがありましたね。

 

 

 

 

ラウドネスの「Thunder In The East」ですね。このアルバムも1985年に全米チャートで74位まで上がるヒットになって、この次のやつがもう少し数字がよかったのかな。彼らも当時全米進出成功のイメージありました

これ聴いた時、「えっ、こんなバンドだったっけ?」という驚きはありました

 

彼らって、デビューした1982年頃って、イメージとしてはアイアン・メイデンとかに代表されるNWOBHMに近い印象だったんですよ。僕、当時、中学生でしたけど、そのあたりのメタルって「怖そう」という印象持ってて(笑)、見事にその感じだったんですよね。

 

 

ところが、このアルバムを耳にした時、「あれ?」って思ったんですよね。エラく聴きやすくなったというか、むしろ、ラットとかモトリー・クルーみたいな、カラッと(その当時の感覚で)聴きやすい感じになって。

 

 

 

 

ルックスも、この当時の典型的なヘア・メタルのバンドみたくなってますよね。今気がついたんですけど、アイライナー入れてたんですね。

 

 

確かにこの当時にメタルがイギリスで下火になって、大きなマーケットがアメリカに移ったから、という事情はありました。それは理解できるし、そこに対応したからその数字だったとも思うんですよね。日本でも、そこのところは理解されてたから、前述のピンクレディとかみたいに、日本で人気がガタ落ちする、みたいな印象もなかったです。

 

 

ただなあ。それがゆえに彼らは「時代感」と強く結びつけられた感は否めないかなあ、今の国際的なラウドロックの界隈からラウドネスという名前は聞かないですからね。逆に、日本のメタル界隈でバカにされてたはずのX JAPANの方が、特に海外仕様にしなくてもいつの間にか海外でファンベースができてて、2010年代前半の海外ツアーで人もかなり入って、イギリスでドキュメンタリー映画のサントラが全英チャートで27位まで上がったのと比べると、現状での国際的な認知度の差はかなり出来てるのは現実です。

 

 

この3つの例だけじゃないですね。オフコースの英語版リリースとかあったし、レベッカ解散後のNOKKOとか、さらに言えば荻野目洋子(!)とか、細かいのまで拾っていくと25年以上前まで、それなりに色々試みあったんですけど、なんか「かみ合わず、それまでの印象ともちょっと・・」というのが割とパターンとして続いてましたね。10年くらい前だったかな。宇多田ヒカルの「UTADA」名義の2枚目の方にもそれ感じましたね。1枚目はそうでもなかったけど。その根底には、「日本の音楽なんて、海外じゃ相手にしてくれないよ。だいたい、言葉も違うし」みたいな通念があったとおもうんです

 

 

が!

今や、時代が全く変わってしまった!

 

今、ストリーミングの時代になって、世界中の人たちがケータイからいろんな国の音楽が聞けるようになってしまった。そうしているうちに、「英語じゃなくてもいいと思ったら聞く」という人が飛躍的に増えてしまった。だから、Jバルヴィンとかマルマとかのコロンビアのレゲトン・アーティストでも、BTSとかブラック・ピンクとかのK-POPも、母国でやってるサウンドのイメージを変えないで国際的に成功できるようになった。それだけ、特に若い人の間で、「英語じゃなきゃ」という感覚は消えてきてるんですよね。

日本の音楽に対してでもそうですよ。以前にもここで書きましたけど、「Mitskiのファンサイトで、椎名林檎とかナンバーガールとか、1970年代のシティ・ポップとか密かに人気だよ」という事実があったりもします。その例じゃなくても、サンパウロでアジカンとかマキシマム・ザ・ホルマンとか、そこそこの規模のライブハウスで公演やって、「そこそこ人、入ってる」という話も聞いてるんですよ。もう、youtubeやストリーミングを介して「勝手に聞いてもらっている時代」に入ってるんですよね。

 

 

それを考えると、今回のONE OK ROCKって、「なんか、懐かしい感じのこと、しちゃったんだなあ」という感じでしたね。確かに、国際的に見て、彼らのやってるようなラウド系のロックって、一般目線で言えば人気落ちてることは事実です。でも、まだコアな層つつけばそれなりの人気も保てるものでもあります。今、特にその界隈って、「これからの若い、目玉になるバンド」って欲しいとこですからね。チャンス、あるはずなんです。そこを、この感じで来た、というのはどうなんだろうとは思います。

 

 

わかんないですよ。僕の感じ方の方が間違ってるのかもしれないし、もしかしたら何かがキッカケで火がついたりするかもしれません。「いや、誰かにやらされたんじゃなく、彼らから望んでそうしたんです!」という反論もあるかもしれません。おそらく、本人たちの意図としてもそうだったんだとは僕も思います。

 

 

ただ、今回の「もう、洋楽だよね」とそれまでのファンが感じた方向性はかなりリスキーだとは思います。そしてそれが、「だから邦楽ファンって、了見狭いんだよ!」ということでは必ずしもない気がしています。

 

author:沢田太陽, category:評論, 02:01
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