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映画「バイス」感想 「こんなアメリカに誰がした」第2弾は痛烈なチェイニー批判

 

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どうも。

では、予定が1週間遅れましたが、オスカー関連映画のレヴュー。作品賞ノミネート作の中ではこれがラストですね。これです!

クリスチャン・ベール主演の政治風刺映画「バイス」。これ、いきましょう。オスカーでは8部門と、かなりの数ノミネートされた本作ですが、どんな映画なのでしょうか。

早速あらすじから見てみましょう。

話は1960年代。若かりし日のディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)が大学をドロップアウトしたところから始まります。彼は、大学時代のカノジョで、彼よりはるかに成績優秀だったリン(エイミー・アダムス)との生活で肩身の狭い思いをしていました。

そんな彼は1969年、ホワイト・ハウスでのインターンの仕事を見つけますが、そこで当時のニクソン大統領の経済アドバイザーをしていたドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)と出会います。元軍人で、調子の良い物いいの彼に惹かれたチェイニーは彼の部下になり、そこで政治家としての出世コースを歩むことになります。そしてニクソン退陣後のフォード大統領時代には若くして大統領補佐官にもなります。

ただ、フォード退陣後に彼は心臓病を体験。体調面に不安を残します。それでも彼は下院議員として成功した後、ブッシュ政権で国防長官を務めるなどして出世します。

その後、石油掘削機の大企業のCEOを務め、政界の引退をしようとしていた矢先の2000年

ジョージ・ブッシュJr(サム・ロックウェル)に声をかけられます。いかにも頼りなさそうなブッシュ大統領の息子から彼は、大統領選での副大統領候補の依頼をかけられます。体調面に不安があり、さらには娘がレズビアンということで、共和党関係の選挙で勝つ自信もありませんでした。

ただ、いざ大統領に当選すると、頼りないブッシュをよそに、チェイニーは実験を握り始めます。それは、あの2001年9月11日を機に・・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。

これはですね

父ブッシュで国防長官、ブッシュJrで副大統領を務めたアメリカ政界の大物ですね、ディック・チェイニーの伝記です。それを

クリスチャン・ベールが激太りする仰天演技で演じていて、それだけでかなり話題になりました。

クリスチャン・ベールって

「ファイター」でオスカー受賞した時は、もう、「拒食症にでもなったのか」ってくらい、骨と皮に痩せて、今度はこのふと利用でしょう?もう、ほとんどロバート・デニーロの域ですよ。体、大丈夫なのかなあ。

このように、ベールのことがとかく話題のこの映画ではあるんですけど、

この映画はやっぱり、監督のアダム・マッケイあってのものです。彼って

もう、僕の心の映画でもある(笑)伝説のコメディ、「俺たちニュースキャスター」の監督であり、ウィル・フェレルとコメディ・サイト「Funny Or DIe」の設立者として知られていますが、ここ最近は、ちょっと難しい角度から、現在のアメリカを風刺する知的コメディに活路を開いています。僕が受ける印象は

こんなアメリカに誰がした!

まさに、そんな感じですね。

その第1弾は、この「マネー・ショート」。ここではリーマン・ショックの原因となった不動産バブルの崩壊がいかに起こったかをブラック・ジョークを交えて風刺していました。クリスチャン・ベールはここでも出てきて

スラッシュ・メタル狂いの経済学者という、謎の役を演じてました(笑)。今回の「バイス」はこれでマッケイが気に入ったから実現したものだと僕は信じてます。

そして今回、チェイニーだったわけですが、いや〜、これ

大事なのは、あらすじの後です!

いや〜、ここからがキツいのなんの!これ、風刺の域を超えて

個人攻撃の域に入ってますから!

これ、最初はですね、「サタディ・ナイト・ライブ」で言うところの「Weekend Update」という、レギュラーのニュース・コーナーの拡大版みたいなノリで、それはそれでいいかなあとも思っていたのですが、この前半との落差が後半すごいんですよ。

このスティーヴ・カレルが演じたラムズフェルド国防長官なんて、本当に悪魔みたいな描かれ方ですからね。ちょっとビックリしましたね。

アメリカの映画界って、もちろんリベラルとか左多いし、この映画はそういう人たちからは大歓迎されたんだと思います。僕自身も本来、そちら寄りなので痛快な気持ちもしたことはしたんですけど

右側の人たちからしてみれば、これ、僕が数年前にこのブログで大酷評した「アメリカン・スナイパー」見てるのと同じような気分になっちゃったのかな、とも思いましたね。ちょっと、左的な視点に偏りすぎた気がして、僕自身、途中で笑えなくなってしまったのは否めません。ちょっと行き過ぎですね、これは。ただ、マッケイも賢いから、それさえ自虐ネタにしてましたけどね。

 ただ、まあ、以前から言われていたことではありましたけど、911からイラク戦争までがどういう過程を経て、いかに戦争が起こり、それでアメリカが実際のところどうなったかがハッキリ把握できたのはいいことだったと思います。特に

ジョージ・ブッシュJrは絶妙でしたね。昔、僕、Jrのことは忌み嫌ってたんですけど、これを見ると、僕が嫌うべきはチェイニーやラムズフェルドであり、彼では決してなかったんだな、ということがわかります。それくらい、彼、言葉は悪いですが、「無能」だったんだなと。そこんとこ、サム・ロックウェル、見事に演じてました。

ただ

エイミー・アダムス、この役でのオスカー・ノミネートは必要なかったかな。ちょっと印象薄いです。素晴らしい女優さんではありますけど、この演技なら「クワイエット・プレイス」のエミリー・ブラントや、「ファースト・マン」のクレア・フォイがノミネートされるべきだったと思います。

 これで、オスカー作品賞ノミネート作は全てみましたが、僕の個人順位はこんな感じです。

1.女王陛下のお気に入り
2.ブラック・クランズマン
3.アリー スター誕生
4.Roma
5.グリーン・ブック
6.ボヘミアン・ラプソディ
7.ブラック・パンサー
8.バイス

「バイス」、行きすぎじゃなかったら、もう少し上だったんですけどねえ。でも、この8作で嫌いな作品、一つもないです。この3年、嫌いな作品賞ノミニーはないですね。

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 22:16
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