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時を超えるアンセム

どうも。

 

 

おとといの、短い投稿に言った一言に、なんかコメント欄、ツイッターで随分反応をいただいてしまったみたいですみません(苦笑)。

 

 

今日の投稿でも、本当は映画のことでも書いて言わずに行こうかなと思ったんですが、「気になって仕事が手につかない」とおっしゃった方までいらっしゃったので、その答えを教えないとマズイなと思い、お答えすることにしました。

 

 

答えは、タイトルにつけたことですね。はい。

 

 

それもショックだったんですけど、さらなるショックはというとですね、僕がそう言っても、「わからない」と言われ、「もしかしてアレのことですか」と訪ねていらした方がお一方しかいなかったことですね。「ああ、もはや、そういう認知なんだ」と思ってですね。

 

この件に関しては、「あいつが批判してるぞ」みたいな感じではあまり捉えられたくなかったので、迷ったんですよね。その判断自体は「尊重しないといけないのかな」とも思ってるので。ただ、「そう思っても、やっぱり釈然とはしないよね」という気持ちがあるので、感じたことを素直に書きたいと思います。

 

 

「雑誌の方向転換」というのは、運営上、とても大事なことではあります。人の生活もかかっているわけですからね。それに昨今は洋楽、ロックの不況に加え、出版業自体が苦しいわけです。これは国際的にもそうです。NMEだってSPINだって、英米のあれだけ大きな影響力を持ったロック媒体だって今やウェブ・メディアですからね。そういう状況で事業を回転させていくのは大変なことは僕にもわかります。それは自分も小さいながらも紙媒体やってたので理解できます。

 

 

 ただですね。「続けるにしても、アイデンティティは?」という問題はどうしてもあるわけなんですよ。それが寿命の長いメディアであればあるほど。僕は今回の、この表紙に関しては、「そこの部分が死んでない?」とどうしても思わざるを得なかったんですね。

 

 

 「ロックを今、一番聞いてるのは高齢の層」。確かにそうです。実際に今、世界で部数稼いでいるのはクラシック・ロック系の雑誌です。「Classic Rock Magazine」とか「MOJO」とかね。だから、その層にアピールする、そういう役割を担うメディアが存在するのも大事なことです。あと、「ロックそのものの規模が縮小しているのに、今さら、イデオロギーとか、”今”を届けるのが理想だ、とか言ってる場合か」ということも理解できます。「いいだろ。とりあえずは洋楽やってるんだから」というのも、わかります。邦楽混ぜたことが結果、命取りになってしまった雑誌も僕もいくつも知ってますからね。

 

 

 だけど、この雑誌の場合、「洋楽」ということ以上に「ロックそのものに対しての批評精神」というところへの共感で成り立っていたと思うんですよね。「そこが死んだら、この雑誌の魅力って一体何なの」と本当に思いますからね。

 

 

 その歴史は長いですよ。僕の個人的な体験から言っても30年以上はあるわけですから。僕は、もともとがアメリカン・トップ40のファンで、「硬派のロック」「インディのロック」というものに触れたのは、実はかなり遅いんですね。だから、中学生の時に初めて、人に勧められて渋谷陽一さんの番組聞いた時に「僕の知らないものばかりかける」「ジャーニーが産業ロックだとなんかエラそうだな」とか思ってですね。それ以来、自発的に番組聞いたことがないんですね、実は(笑)。大学の時も、同じサークルに、この雑誌の熱心な読者の派閥みたいなものがあって、年々そっちの方が強くなってましたね。その時も、「なんかバカにされてる、俺?」みたいな気持ちはありましたからね。

 

 

 でも、92年にグランジとかヒップホップの波が起こって、自分の人生における「リアルなパンク体験」が起こった時に、初めて「渋谷さんのやりたいことがわかった」と思ったんですね。「ロックを長く聞くことによって批評の価値観ができて、その上で伝えたいバンドとか音楽がある」。それがわかったから、それまでのことも理解できたんですね。僕はそこからスピンとかローリング・ストーンの方を読み始めたので、結局ロッキング・オンを買ったのはカート・コベインの追悼号だけだったんですけど(苦笑)、それでも、媒体として一定のリスペクトは抱くようにはしていました。

 

 

 だから、それくらい、敷居高かった、少なくとも高く見えた存在だったんですよ、ロッキング・オンって。「ヌルいロックなんて、お呼びじゃない」みたいな雰囲気、ありましたもん。少なくとも、ボン・ジョヴィ表紙にできる雰囲気なんて、全くと言っていいほどなかったですから。

 

 

 だからこの際、調べたんですよ。ボン・ジョヴィがキャリア史上で最も人気だった1987年から89年までのロッキング・オンの表紙。こうでしたね。

 

 

1987
ブルース・スプリングスティーン
プリテンダーズ
スタイル・カウンシル

アニー・レノックス(ユーリズミックス)
スタイル・カウンシル
プリンス
U2
デヴィッド・ボウイ
エコー&ザ・バニーメン
ザ・スミス
スティング
ミック・ジャガー


1988
アズテック・カメラ
ブルース・スプリングスティーン
U2
ミック・ジャガー
モリッシー
スタイル・カウンシル
テレンス・トレント・ダービー
プリンス
ジミー・ペイジ
ブルース・スプリングスティーン
ブルース・スプリングスティーン&スティング
キース・リチャーズ

 

1989
U2
ガンズ&ローゼズ
プリンス
イギー・ポップ
モリッシー
ガンズ&ローゼズ
ニュー・オーダー
デヴィッド・ボウイ

ペットショップ・ボーイズ
ローリング・ストーンズ
ジェフ・ベック

テレンス・トレント・ダービー

 

 

こんな感じですよ。ストーンズ、スプリングスティーン、デヴィッド・ボウイ、スティング。当時の若い衆でU2、プリンス、スタイル・カウンシル、ザ・スミス(モリッシー)、ニュー・オーダー。今見ても、一貫性わかるでしょ?中にはイギー・ポップなんて大胆すぎる表紙もあって!これで当時、BURRNに次いで洋楽雑誌の売上、2番目とかだったんですからね。この直後の90年1月には、まだシングルが全英トップ10に1枚入っただけのストーン・ローゼズなんて、当時の感覚からしたらものすごい大抜擢かつ時代の先を読んだ仰天的なものものあったりするんですよね。

 

 

それを覚えているからなあ、ボン・ジョヴィ表紙は納得いかないんですよね。あの当時、例えばBURRNなら年に2.3回あったボン・ジョヴィなんて仮想的だったんじゃないのかな。少なくとも、あの当時にロッキング・オンの読者が「ボン・ジョヴィ好き」と言える空気はなかったし、せいぜい「ガンズとメタリカならカッコいい」という人がいたくらいでしたよ。僕の大学時代の友人の感覚からしたら、それが普通でしたね。

 

 それに今回の号、それだけじゃなくて、TOTOとデフ・レパードの取材まであるんでしょ?これも渋谷さん自身が「産業ロック」と言って批判する対象になってたバンドなわけで。特にTOTOですよね。ジャーニーやフォリナーと並んで代表例でよく出されてましたから。

 

 だから、クラシック・ロック雑誌化するなら、それまでのバックナンバーに忠実なことをするべきだと思うんですけどね。そうしないと嘘くさくなっちゃうじゃないですか。だから、ある世代より上の人にとってはこれ、間違いなく衝撃のはずなんですけどね。事実、フェイスブックでもこのネタ、実は触れているんですが、僕より年上、もしくは同世代は一様に同じ反応でしたからね。

 

 

 なので本来、この表紙、もっと物議醸しておかしくないはずなんですけど、上記のことを忘れた人が多いのか、あるいは、あの雑誌がそこまで鋭角的なものだったことを知っている若い人が少なくなったのか、話題になっていないこと、これがなおさらショックでねえ。

 

 まあ、確かに、「昔っぽくはないな」と言うのは、あの雑誌がリンキン・パークとか表紙にしてたときにも思ってたことですけどね。あるいはニュー・メタルのことを「ヘヴィ・ロック」とか独自の言い回しで表現して、「自分たちはメタルを紹介しているわけではありません」みたいな態度とってた時とかですね。「なんでロッキング・オンがああいうの褒めて、俺が今、リンプ・ビズキットとか叩いて嫌われてるんだ」とか、思ったことありますもん(笑)。あと、僕、2004年の年末に、クロスビートでエミネムの「アンコール」に酷評書いたことがあるんですけど、その時に、あの当時のロッキング・オンの編集長だった人から名指しで誌上ケンカも売られたりもしてですね。この時も「それ、昔だったら、あなたの雑誌の方があの凡作を叩くべきなのでは?」と不思議な気分になりましたからね。

 

 

 そういう期間が長くなってるからなんですかね。あと「JAPANでもGLAY表紙にしてたじゃん」みたいな意見とかも見かけたりもしてるから。まあ、それでもGLAYとかV系の表紙の際って、別にそれで他の同系のアーティストを扱ったわけじゃないし、雑誌で築いてきた路線を壊すまで行くまでじゃなかったと思うんですけど、今回の場合は、昔だったら批判の対象にしていたアーティストを複数フィーチャーしたわけでしょ?僕的には、一回で済んだそれよりも、よほど根が深いことだと思ったんですけどね。

 

 

 この前の月の年間ベストが「あまりにも・・」という話は聞いてて、僕も「あちゃあ・・・」と思ってたんですけど、そっちの方が話題になってて、こっちがそうでもないというのに、なんか時の流れを感じるというか、「寂しいなあ」と思いますけどね。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:音楽ニュース, 17:31
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