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サブスク解禁のユーミンのオリジナル・アルバム38枚を全部通しで聴いてみた

どうも。

 

 

本当はここでやる予定はなかったんですが、facebookでやったらすごく反応が良く、「ブログでもやれ」という声があったので、やることにします。

 

実は、この3週間ほど、音楽生活でこういうこと、やってました。

 

 

9月24日にサブスク解禁されたユーミンのオリジナル・アルバム38枚を全部通して聴いていました。これ、1日に2枚ペースでほぼ毎日聴いてましたね。

 

 

 なんでやろうかと思ったかというと、「なんとなく、できそうな気がした」からなんですよね(笑)。というのも、1998年に最初にキャリア包括ベストが出た時に、それが結構好きだったのを覚えてて、あの時に、昔そんなに好きじゃなかったユーミンの印象が変わってたので。そこから、また聞いてなかったんですけど、今回の解禁で「これはいい機会だ」と思って、聞いてみることにしました。それに、日本の音楽レジェンドってまだまだ解禁少ないから、このユーミンを機にドドッと出始めたら面白いことになるなとも思っていて。いちいちTSUTAYA行って、アルバム全部借りるのもやっぱ骨じゃないですか。それがケータイいじるだけで全部聴けるのなら、そっちの方が良いに決まってます。

 

 

 で、やってみたら、あれよあれよでアルバム、全部聴けちゃったんですよ!これは自分でも驚きましたね。全部が全部良い

と思ったわけでは決してなく、「ちょっとこの時期、ツラいなあ」と思った時期もあったんですけど、でも、飽きずに聴き続けることができましたからね。

 

そして

 

 

上の写真のようにアルバム10選も選んでみました!

 

 

 10選に関しては順位はなく、1回だけの試聴で今回は決めてるので、単純に「またリピートして聴きたくなったもの」を直感的に選んだだけなので、そんなに深く考えて欲しくはないのですが、ただ、自分なりにバランスをとって選んだつもりです。

 

僕が聞くに、ユーミンって、以下の6期に分かれる感じがしました。

 

 

⑴荒井由実期(1973-1976)

⑵松任谷初期(1978-1980)

⑶松任谷シティ・ポップ全盛期(1981-1985)

⑷シンクラヴィア・バブル期(1986-1993)

⑸脱バブル期(1994-2001)

⑹21世紀(2002-)

 

 これで2枚ずつ選んで、引き算すれば10枚選べるなと思っていたんですが、意外にも(6)の時期が思いの外に気に入って3枚選んだら切れなくなってしまい、それで、個人的に全然好きになれなかった(4)の時期をゼロにして(笑)選んでみました。

 

 

 (1)の時期は文句なしに素晴らしいですね。はっぴいえんどから流れる、日本流のウェストコースト・ロックみたいな感じで。ただ、ユーミンの場合、ピアノのコードの使い方が独特なので、その範疇から飛び出て、スティーリー・ダンとかトッド・ラングレンの作品にも通じるエッセンスが感じられますね。そこが好きだし、この当時の音楽リスナー、そのセンスにビックリしたんじゃないかな。

 

 この時期からはデビュー作の「ひこうき雲」(73)と3rdの「コバルトアワー」(75)を選びましたが、別に「ミスリム」(74)、「14番目の月」(76)が嫌いなわけではなく、全部良いです。

 

 

 (2)の時期は松任谷に改姓してからの78年から80年の作品。この時期、毎年年2枚もアルバム量産してたんですよね。よく音楽マニアで「ユーミンは荒井の時期こそ最高だ」という意見を耳にします。確かにその時期が素晴らしいのは僕も認めるんですが、「松任谷からは聞けない」という意見には僕は反対で、むしろ、この(2)の時期がアヴェレージで一番クオリティ高い作品出してたと思います。この時期は音楽的にも(1)のテイストを強く保持しながら、、アレンジにも幅が出て、サウンドもさらに多様になりますからね。歌詞も、彼女得意の、シチュエーション・ドラマの設定が巧みになって、そこでの感情移入に秀でた曲が目立つようになりましからね。

 

 ここからは「紅雀」(78)と、これ、カルトな名作なんですが「時のないホテル」(80)ですね。後者、暗くていいんですよ。ちょっと異色な感じもあって。ただ、この時期も「Olive」「悲しいほどお天気」(ともに79年)もすごくいいです。ただ、一般人気の高い「Surf&Snow」(80)は、のちのユーミンの悪い癖にもなる「広告代理店」っぽい歌詞がちょっっとキツいかな、というのがありますね。

 

 

 (3)は、いわゆる「ユーミン・ファン」からの人気が最も高い時期ですね。81年の「守ってあげたい」のビッグヒットから、1985年の「DA DI DA」までの時期。このころ、ユーミンは「FMの寵児」で、秋のアルバム・リリースは日本の音楽界のお祭りみたいになっていた時期ですね。当時、小6から高校だったんですけど、僕の3つから5つ上の世代の人にとっては、「大人に背伸びするための音楽」な感じでしたね。

 

 この頃はもう、当時”チョッパー”とも言われていたスラップベースをビンビン言わせた、今でいうシティ・ポップバリバリの時期ですね。あれがビンビン言いすぎるとちょっと鼻にもつくんですけど、それがさほど気にならないほど、この当時のユーミンのコード使いとメロディの洗練のされ方、ドラマのリアリティは見事でしたね。当時、大人っぽすぎて敬遠してた曲もあるんですけど、聞き返すと「この曲の気持ち、わかるなあ」とか思うようになっていたりもしますからね。

 

 ここからは、これが最高傑作なんじゃないかな「パール・ピアス」(82)と定番曲の多い「No Side」(84) ですね。この時期は捨てアルバムはないんですけど、アッパーで「真珠のピアス」、チルで「夕涼み」がある分、「パール・ピアス」、最強かなと。

 

 

 で、(4)がねえ、本当に苦手なんですよね。この時期は、当時最新の「シンクラヴィア」って機材使って、最新のデジタル・サウンドになってるんですけど、これの音作りが過剰で、今聞くと一番古臭いんですよね。さらに、この当時、ユーミン、バブルの寵児になるでしょ。当時、大学生でしたけど、バブル嫌いの僕としては辛い時期ですね。

 

 あの頃、ホイチョイ系の映画とかCMとかにやたら曲が使われたせいもあるんですけど、ユーミンの歌詞の、さっきも言った「広告代理店性」が強化された時期でもあるし、後、サウンドもゴテゴテして、素の良さが生きなくなってますね。90sにはハウスなんかにもトライして、これが似合ってなくてですね。スラップベースのビンビンが鼻についたのもこの時期です。あと、今振り返るに「Alarm A La Mode」(86)から曲のひらめきが落ちてますね。

 

 この時期で一枚選ぶとしたら「Delight Slight Light Kiss」(88)ですね。あの「♪どーして、どーして」の「リフレインが叫んでる」は、「これ、実はユーミンなりのメタル?」と思えるところがあったり、スラップベースがビンビン言わなくて曲もしっかりしたのが多いので、この時期で唯一好きなので最初は10枚に選んでたんですけど、最終段階で外しちゃいました。

 

 

 そして、(5)の時期なんですが、(4)よりは確実にいいです。バブルの終焉を意識して、曲作りが移行してますね。大きかったのが94年の「Hello My Friend」の特大ヒットですね。久しぶりに、彼女らしい曲をかけて、それがヒットにつながったというか。この曲、Spotifyで最も聞かれてる曲なんですよね。いいことだと思います。

 

 この時期から、例えばシングルでも「最後の嘘」とか「Sunny Day Holiday」とかいい曲は出るようになってて、それで98年に僕がベスト盤を買う理由にもなりました。ただ、この時期、シンクラヴィアやめて、シンプルなサウンド・プロダクションに戻ったのはいいけど、「ロック、アーバン、ワールド・ミュージック、時々春よ来い」みたいな、フォーマットめいたアルバムの作り方で、どれ聞いても同じような作品が続くんですよね。この傾向が2001年まで続きます。

 

 この時期だったら、「Hello My Friend」が実質2曲入ってる「Dancing Sun」(94)ですが「スユアの波」(97)もいいですね。

 

 

 で、大いに気に入ってしまったのが(6)、2002年から今に至る時期です。2002年に彼女は「Winter Of Wings, Shade Of Summer」という7曲入りアルバムを出して、それを「心の内のリゾート作」として出したんですけど、これがすごく良くてですね。ここから、(5)の時期のような、方程式みたいなアルバムの作り方もやめて、より、バンド・サウンドを主体にした、ソリッドでまとまりのある方向にシフトしてますね。

 

 アルバムとしては「Winter〜」を一歩進めたような「Viva! 6X7」(04)、「Road Show」(11)、そして最新作の「宇宙図書館」(16)ですね。忙しくなって、日本の音楽聴けてなかった時期なんですけど、良いの作ってたんだなあ、と目から鱗が落ちましたね。

 

 この中で特筆すべきは、「Road Show」ですね。「一つの恋が終わる時」は、この少し前から彼女が表現してたコールドプレイっぽい曲がベストに出たものだし、そして「ダンスのように抱き寄せたい」というのは、キャリア後期の傑作ですね!これ、すごく涙腺刺激するんですよ。「年を重ねた熟年夫婦のラヴ・バラード」なんですけど、これ、シチュエーション・ドラマを超えて、ほぼユーミン本人の正隆氏に宛てたリアルな本音なんじゃないかと思えてね。このころは声の衰えも指摘されてる頃ですけど、老いた声で歌うからなおさら説得力があってですね。これ、よく聞いてます。

 

 あと「宇宙図書館」は表現がすごく若いですね。60過ぎて、バンド・サウンドに軸足おきながらエレクトロに触手を示すあたり、感覚若いです。このあとの展開次第では、このアルバムから(7)の時期に入れるかな。そんな予感さえします。

 

 

・・といった感じですね。僕のブログの読者さんにどれだけアピールするのかわからないですが(笑)、広く音楽ファンとして、「日本のポップスのマスターピース」として、ちゃんと聞かれることをすごく期待したいし、このユーミンのサブスク解禁にどんどん他のレジェンドも続いて欲しいなと思ってるとこです。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:Spotify, 18:52
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