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映画「マンマ・ミーア ヒア・ウィー・ゴー!」感想 なぜABBAの曲が、ミュージカルにふさわしいのか

どうも。

 

 

では、今日は映画レヴュー、行きましょう。現在、映画界のみならず、世界の音楽界でも話題沸騰。これです!

 

 

 

2008年の大ヒット・ミュージカル、「マンマ・ミーア」の続編「マンマ・ミーア ヒア・ウィ・ゴー!」。こちらの感想、行きましょう。

 

もうイギリスのチャートに至っては、この映画のサントラが1位になったのみならず、前作のサントラも、ABBAのベスト盤もトップ10に返り咲くという、もはや”現象”と呼ぶ以外にないことまで起きています。もちろん、映画も大ヒット中なんですが、今回は一体、どんな感じだったのでしょうか。

 

 

早速あらすじから見ていきましょう。

 

 

 

 

 前作から時は流れて10年後。今度はソフィー(アマンダ・サイフリッド)が母ドナ(メリル・ストリープ)のホテルを切り盛りする番です。ホテルは新装再オープンという形をとりましたが。

 

 

 そんなタイミングで、婚約者のスカイ(ドミニク・クーパー)は「ニューヨークで仕事ができたんだ。一緒に暮らさないか」と言い出します。さらにはソフィー自身の妊娠も発覚します。

 

 

 ビジネス・パートナーのフェルナンド(アンディ・ガルシア)と再オープンの準備を必死にやってきていたソフィーですが、

 

 

オープン日を直前に、ドナのバック・ヴォーカリストだった親友、ターニャ(クリスティーナ・バランスキー)とロージー(ジュリー・ウォルターズ)は来てくれたものの

 

 

 あの「3人のパパ」のうち、駆けつけてるのはサム(ピアース・ブロスナン)だけで、ビル(ステラン・スカースガード)とハリー(コリン・ファース)は駆けつけられないとか。

 

 

 「こんな時にママだったら」とソフィーが思ったところから

 

 

 話は、ドナの若き時代の話に変わります。ドナ(リリー・ジェイムス)は当時から歌が大好きで、学校の卒業式がもうすでに彼女のコンサート。そんな彼女は卒業後にヨーロッパを放浪する旅行に出かけますが

 

 

 

 そこで若き日のハリー、ビル、サムに出会って、恋に落ちていきます。

 

 

 旅の途中で、学校の親友だったターニャとロージーも駆けつけます。

 

 

ドナは住みついたホテルで彼女たちとステージ活動を行っていくことになりますが・・。

 

・・と、ここまでにしておきましょう。

 

 

 この映画、純粋にすごく楽しめるんですが、今回、僕、ABBAに関して大きな「気づき」がありました。それは

 

 

ABBAって、「歌詞の力」でミュージカルになったんだな、と。

 

 

 前作を見たとき、それ、そこまでは気がつかなかったんですけど、聞こえてくる歌詞を、字幕を見ながら読んでいくとですね、いろいろと発見があるんですよね、これが。

 

 

 その一つ目が、彼らって、すごく「気持ちが鼓舞される曲」を作るんです。それがいろいろあるんですが、やっぱ「ダンシング・クイーン」が最大例ですね。あれ、一見、普通のダンスフロアの女の子のことを歌っているようで、実はかなり力強い青春賛歌です。

 

「You're the dancing queen,young and sweet only seventeen」

 

このqueen, young,sweet, seventeenっていう、若い女性のみずみずしさを連想させる言葉が数秒間の4小節に4つも叩き込まれている上に

 

「Feel the beat from the tambourine」と続く。甘いみずみずしさの後に、すごく絵の想像できる肉感的な表現を具体的な楽器のイメージまで添えていることからすごく躍動感が湧くんです。で、

 

「You can dance」って戻るでしょ。ここでいう「Can」って、「キミなら間違いなくできるよ!」っていう、かなり強い意味なんですよね。なのでつまり、これ、裏返して言うと「若い今にこそ、かけてみようよ!」って曲だったんですねえ。その時代のディスコ・ブームにあてつけて、なんとなく作っただけの歌ではなかったわけです。この曲がタイムレスな名曲になったのは、こういうとこだったのか、と改めて唸りました。

 

 

 で、二つ目が、彼らの歌には「告白調の曲が多い」んですよね。なんかイメージとしては、1日の終わりにつける日記とか、信心深い人なら寝る前の神様に捧げるお願いというか気持ちの吐露というか。そういうのが目立ちます。「I Have A Dream」とか「Thank You For The Music」とか。そういう曲歌う時の、気持ちのディテールも細かいんですよね。

 

 

 3つ目が「ドラマをすごく端的な言葉で表せる」。ここも見事です。例えば「Knowing Me, Knowing You」というのは、「私のことを知って、あなたのことを知流。そうやって(現実に)向かい合って、終わりにしましょう」という、男女の別れの歌だったりします。あと、末期のヒットに「One Of Us」という曲があるんですが、これも「(私たちの)片方は泣いて、寂しいベッドで横になって天井を見つめてる。こんなところにいたくないと思いながら。そして、(あなたからの)電話が鳴るのだけを待っている」という、つまりは男の元から去った女性の気持ちを歌った曲なんですね。これ、ABBAの夫婦カップルが離婚した後の曲で、この曲の入ってるアルバムで解散したんですけど、これかかった時に、「子供の時に聞いたあの曲、そういう意味だったのか」とわかって、ちょっと劇中で泣きました(苦笑)。

 

 

 4つ目は、「言葉のセンスがすごく洒落てる」。例えば「恋のウォータールー」って、彼らの大ヒット曲があるんですけど、これだけだと意味わかんないでしょ(笑)。ウォータールーというのは、ナポレオンがイギリス征服を狙った際に負けた戦いなんですけど、つまり「ナポレオンでも勝てないくらいに、あなたみたいな魅力的な人を好きにならずにいられない」という曲なんです。それを由緒ある世界史の知識と結びつけるセンスはかなり大胆だと思います。あと、ABBAの曲はどれも韻の踏み方が綺麗で鮮やかなんですよね。

 

 

 ・・そういうことに、いちいち感動しながら、僕はこの映画を見てました。今までABBAって「メロディが命」だとばかり思っていたんですけど、「歌詞なんだなあ、肝は」と思いながら、そのリリックと絶妙に合う映画のシーンを見ながら「なるほどなあ。だから、ミュージカル、成立するのかあ」と思いましたもんね。

 

 

 家帰って、そのことを、ネイティヴ・スピーカーのうちのワイフに言ったら「全く、その通り。でも、それ、知らなかったの?」と言われましたね。それを受けて、「それは多分、社会問題歌ってたりとかしてなかったり、ロックのジャーナリズムでそういう風に語られてなかったからだよ」と言ったら「確かにディスコのグループで、歌詞に意味があるとは、考えにくいかもしれないね」と言われました。

 

 

 で、こうも思いました。「鼓舞」「告白」「ドラマ」。こう言う歌詞の要素があるから

 

 

この人の音楽も長く売れて、ミュージカルになりやすいのか、と。

 

 

 そして、「この先、曲を使ってミュージカルになるかもしれないアーティスト」として

 

 

 この辺りを思い浮かべもしましたね。いずれも要素がすごく当てはまる気がしてね。

 

 

 で、長くなっちゃいましたけど、内容に戻りますと、

 

 すごく楽しいです。

 

 が、

 

 ストーリーがちょっと未整理です!

 

 

 というのはですね、リリー・ジェイムスが出てくるところが具体的な設定がしてあって、1979年なんですね。でも、それでいくと、ソフィーが生まれるには、ちょっと年齢が合わないんですよ。アマンダ・サイフリッドって1985年くらいの生まれだから6年くらい時間が空くことになる。そう考えると、設定がすごく不自然なんですよね。

 

 

あと今回は

 

 

シェールがドナのお母さん、という設定で出てくることになっているんですが、これも計算、おかしいです。だって、メリルと実年齢、3つしか違わないんですよ、彼女(笑)。ちょっと、この辺りの計算の感覚がおかしくて、そこが不恰好になってるのは、気になっちゃいましたね。

 

 また、

 

 

 今回、リリー・ジェイムス、すごく頑張っています。彼女、「ベイビー・ドライバー」でちょっとだけ披露した歌声聴いても、歌えるのわかるんですけど、歌に、ちょっと小ムスメっぽい感じを出した演技に、すごく力を発揮してましたね。もう、ハリウッドの主演クラスに上がっていくでしょう。

 

 けどなあ。一番肝心な

 

 

この人の出番が少ないのがなあ〜。

 

 

 見てて思ったのは、ABBAの曲がこの映画に不可欠なように、メリルもこの映画に非常に大きな生命を吹き込んでいたんだということが改めてわかりました。そこはやっぱ、どう考えても寂しかったですね。

 

 

 今回の映画、その話の展開から、これと比べられてますね。多くは言いません。

 

 

 これ以上は言いませんが、僕もその通りだと思います(笑)。

 

 

 でも、楽しかったし、ABBAをもう一回、歌詞カード読みながらじっくり聴き直したい欲求が出たことを考えると、やっぱり成功だったんだとは思いますよ。

 

 

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 13:28
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