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映画「スリー・ビルボード」感想 ”あの人”の影さえ感じなければ最高の映画なんだけど

どうも。

 

 

オスカー関係の映画鑑賞、大詰めに入ってます。今日の時点で作品賞ノミネート作は9作中8作みました。

 

今日はこちらの感想を。

 

 

この「スリー・ビルボード」ですね。

 

これは、今回は日本の方がブラジルより1週間早く公開されたんですよね。僕が見たとこ、どうやら日本でも映画ファンの間ではかなり話題を呼んでいるようですけどね。

 

 

そういう映画なので、ここではあえていつものようにはあらすじは語らず、あえて感想だけを書きますね。

 

まず、これ

 

 

脚本と演技的には文句のつけようがありません!

 

 これ、着眼点が素晴らしですよね。「もし、街中の広告に、娘をレイプで殺された母のメッセージが書かれたら」という、通常、ありえないことを「もしも」の状態にして、そこで起こりうることを追う、というアプローチ。なかなかこんなことないから、「どうなるんだろう」とこっちも予測できずにただストーリーを追っかけるしかない。この過程は自分でも楽しかったですね。

 

 

 そこにプラスして、本来、主人公の側に立てば同情したくなるような内容の看板なのに、「ああ、こういう書き方をしたら、相手に伝わらず逆に責められることになるのか」とか、パッとじゃ気がつかない側面もうつしだしたりね。

 

 

 「なるほど。でも、それにしたって、やっぱミッド・ウェストのアメリカ人って、どうしようもなく保守的じゃないか?」とこっちが思ったら脚本家側の勝ちですよね。

 

 

 そこを

 

 

ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルが絶妙に演じてましたね。「アメリカの古き良き保守」みたいな、ガンに侵された穏健な心あるハレルソンに、マザコンで酒浸り、モラル感覚も崩壊したミッドウェストの今時のバカ野郎のロックウェル。「ああ、今の共和党みたいだな」と見てて思いましたね。

 

 

 そして、全編に渡って表現される、舞台の郊外っぽさと、土臭さ。これも、「今のアメリカに間違いなく残る、いや、それどころか強力でさえある」一面を映し出していましたね。

 

 

 あと、人物描写もメインの登場人物一人一人のフォーカスがちゃんとしっかりしていて、ドラマを複合的にしていたのもよかったですね。

 

 ・・と、これだけのお嘘が揃ったら、普通、「文句なくオスカーだよ!」と言いたいところ

 

 

なんですが!

 

 

この映画、一つだけ致命的な問題点があります。それは

 

 

 

それって、思い切り、コーエン兄弟の映画なのでは・・・。

 

 別にストーリーの内容面に関してどこをパクってるとかってのはないんですけど、「描き方」、「主題意識の持ち方」が完全に一緒ですよね。しかもそれを常連女優のみならずジョエル・コーエンの奥さんであるフランシス・マクドーマント主演で作っているのがモロ過ぎます!

 

 これなあ、仮に主演女優が誰であれ、「コーエンっぽい」という評価になっていただろうに、それを彼女で作ってしまっているからなおのことそう見えるんですよね。

 

 

 なんか、音楽の世界に置き換えると、「この曲、ビートルズに似てるけどいいよね」「レッド・ツェッペリンに似てるけどいいよね」「U2に似てるけどいいよね」というものが世の中にたくさんありますが、この映画がまさに映画版のソレです!

 

 

まあ、音楽の場合は、曲がにてると言っても、「アルバム全部通して似てる」なんてことはそうはないわけじゃないですか。だけどこれは、約2時間、ずっと似てるわけでしょ?そうなると、ちょっと見てて、やっぱり引っかかってはしまうんですよね。「ちょっと表現がいくらなんでも借り物過ぎない??」とはどうしてもおもってしまうんですよね。

 

 

 だからなんでしょうね。

 

 

監督のマーティン・マクドノーがノミネートされなかったのは。

 

 不自然だと思ったんですよね。だって、作品賞で1、2位を争う有力候補だったのにノミネートされなかったのって。それはやっぱり、僕が気になったところがきになる人が多かったからでしょうね。実際にオスカーの作品賞経験があり、アメリカの映画関係者にシンパが多いコーエンでそれとなったら、やっぱり意識する人は多いでしょうからね。

 

 また、そうじゃなくても、うちのワイフみたいに、「これ、コーエン兄弟の新作でしょ?」と、間違った情報を信じてた人まで実際いましたからね(笑)。

 

 

 ただ、そうであっても

 

 

「ミルドレッド・ヘイズ」が映画史に残る強烈な女性キャラクターであるのは紛れもない事実です!

 

 

 フランシス・マクドーマントって、すでに「ファーゴ」の女性警察官マージ・ガンダーソンを映画史に残る強烈な女性キャラクターにしてましたけど、それに匹敵する新しい記憶に残るキャラを作り上げましたね。

 

 

 これも、「欠点や間違いはどう見たってある」、必ずしも正しくはない人間像ではあるし、ストーリーの中の行為だっておかしなことをしている時も多々ある。だけど正義感の強さと、人間臭さはすごくある。これも現在の、ポリコレに走りがちな公正さを求めてつんのめってる人たちの象徴な感じなんですよね。

 

 

 そこを御説教臭くならずに、ユーモアたっぷりに楽しませて見せてるのが彼女らしいというかね。「さすがは名女優だなあ」と思って見てたし、ハレルソンやロックウェルとの絡みもすごいケミストリーで絶妙だなとも思いましたけどね。あっ、でも、ブラック・ユーモアたっぷりのコミュニケーションもコーエンの産物そのものなんですけどね(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:映画レビュー, 13:10
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