- ゴールデン・グローブの話題を独占したオプラ・ウィンフリーの圧巻のスピーチ
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2018.01.09 Tuesday
どうも。
昨日はゴールデン・グローブだったわけですけど、今年はみんな黒い服を着て出たこと、そしてプロテストの意味を込めてそれだったので、レッドカーペットのファッション・チェックどころじゃなかったんですよね。それもあってか、今年のこのブログのゴールデン・グローブのアクセス、ちょうど例年、レッドカーペットの速報が稼ぐアクセス数の分だけ、そっくり落ちましたん。それはちょっと残念でしたけど、でも、こういう年もたまにあっても良いのかな、とは思いました。
でも、その分、今年は、もうこれしかないですね。こんな素晴らしい体験もできました。
オプラ!!
功労賞のセシルBデミル賞を受賞した、かなり長いスピーチだったんですが、もう、これ、今まで僕が聞いた英語のスピーチの中でも感動のデカイものでしたね。
これの後。「オプラ、大統領になった方がいいんじゃないか?」との呼び声まで今、本当にあがっているほど、それくらいパワフルなスピーチでした。これ、やっぱり、ちゃんと伝えた方がいいと思うので、ここに何を言ったか改めてわかりやすく書きますね。
オプラの話はドラマ風のストーリー・テリングになっていて、そこが掴むんですけど、話はこんな感じで始まりました。
「1964年まだ幼かった私は、ミルウォーキーにある母の家で、テレビで第36回アカデミー賞の中継を見ていました。すると、アン・バンクロフトが主演男優賞を発表するために壇上に上がりました。彼女は封筒を開け、歴史的な瞬間を5文字で告げました。【The winner is Sidney Poitier(受賞者はシドニー・ポワチエです)】と」
「すると壇上に上がったのは、これまで私が見たことのないようなエレガントな男性でした。ネクタイの色は白かったものの、彼の肌の色はもちろん黒でした。私は今まで黒人男性がこのように賞賛を受けた瞬間を見たことがありませんでした。私は何度も、この瞬間が幼い少女にとっていかに大きな意味を持つものであったか説明しようとしました。ちょうどそれをオンボロの椅子に座って見てた時に、母親が他の人の家の掃除から疲れて帰ってきたんです。でも、その時の私に言うことができたことというのは、シドニーが受賞作の「谷間のユリ」で言ったように、ただ”アーメン” "アーメン”、それだけでした。」
「時は流れて1982年。シドニーはこのゴールデン・グローブでセシルBデミル賞を受賞しました。あの瞬間が私の中で消えたわけではなかったのだなと、今、本当に思います。なぜなら、それと全く同じ賞を、私が最初の黒人女性で受賞するのを、多くの少女がまさに今、見ているわけですから!」
この瞬間にものすごい歓声が沸き起こりました。
この後、やはり、今回のテーマである「真実の告白のために立ち上がった女性」を讃えるスピーチを行い、「今宵を伝説の夜にして語り継がれるようになろう」と言ったようなことを言ったのですが、その後にもう一つ大きな話を行います。
「私はここで、是非みなさんに知っていただきたい名前があります。それはリーシー・テイラーという人です」。
「1944年、リーシーは若い主婦でした。彼女はアラバマのアッベヴィルの教会から帰る途中、6人の武装した白人男性に誘拐され、強姦され、路上で目と手足を塞がれました。彼女は、このことを誰にも言わぬよう脅しも受けました。しかし彼女はこの件を全米黒人地位向上協会(NAACP)に通報し、若い協会員だったローザ・パークスが捜査担当を務めました。しかし、まだ(南部の人種差別的法律の)ジム・クロウ法の時代です。犯人たちが追及を受けることはありませんでした」
「そのリーシーが10日前に亡くなりました。もうすぐ98歳だったんですけどね。彼女も私たちと同じ、乱暴なまでにパワフルな男性たちに牛耳られる時代に生きてきました。そして女性たちが真実を言っても聞き入られないと思われていた時代が続きましたが、そんな時代は終わったのです!」
と、ここでまた、大団円となります。
「リーシーには、彼女の語った真実が、まだ生き続けていることを知ってこの世を去っていてもらいたいです。きっと、そうだったからこそ、11年後、ローザ・パークスはバスの白人専用席に座る決意をさせた(そして、それが公民権運動自体にも火をつけた)のだと思うのです。今、ここにいるすべての女性たちは"me too"と声を上げることをし、すべての男性たちはそれを聞くことを選んだのです!」
このあたりはもう、大統領選のスピーチさながらの大興奮状態になっていましたね。
いやあ〜、すごかった。
オプラは、黒人や女性の偉人の話と歴史を絶妙なタイミングとコネクションでストーリーに盛り込み、そこから一つの大きな論旨を展開させるのが本当にうまいですね。これ、やろうたって、簡単にはできません。そこには一つ一つの事象に対する細やかで確かな理解が必要だし、それを作家のような話の運びで進めなければできないことですからね。僕も完全に脱帽でしたね。
今日のアメリカの報道では「オプラを大統領に」という声も本当に出てきています。まあ、こういう話術と政治の世界はまた別の話だとは思うのですが、ただ、現状での大統領があの人ですからね。少なくとも人道的な面においては、その資格はすでに大いに上回っているので、出馬することが恥ずかしいことなんかでは決してないと思いますけどね。