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沢田太陽の2017 年間ベスト・アルバムTop50  40-31位

どうも。

 

では、2017年間ベスト、今日は

 

 

こんな感じになった、40位から31位行きましょう。なかなかバラエティに富んだと思ってますけども。

 

では、40位から行きましょう。

 

 

40.Carry Fire/Robert Plant

 

 

40位はロバート・プラントの「Carry Fire」。

 

僕の場合、レッド・ツェッペリンはロバート・プラントのソロ・アルバムまで含めて重要だという、捉え方をしています。とりわけ、2002年に発表した「Dreamland」というアルバム以降はどれも良い。というのは、ここから現在につながる「一人フィジカル・グラフィティ」状態が始まったというか、フォークとブルーズを基調に、そこに若干のワールド・ミュージック色を加えたロックンロールというか。とりわけ、ジャスティン・アダムスっていう、今の彼のバンドのギタリストと組むようになって、こういう路線が自在にできるようになりましたね。

 

 路線が固定されているので、あえてこの前の作品との違いについて語る必要もあまりないのですが、安定して「彼らしい」作品を提供し続けてますね。今回も変わらないのだけれど、「プラント、聴いた」という気分にはしっかりさせてくれますからね。表現方法の違いこそあれ、ポール・サイモンがやり続けていることを、音楽の構成要素の配分の違いで表現している感じもありますね。

 

 プラントといえば、ソロで活動し続けている傍らで、ずっと「ツェッペリン再結成待望論」を囁かれる人ではあるんですけど、2000年代に入ってからのソロでの作品のクオリティ考えても、オリジナル曲でペイジやジョーンジーがここまでの曲を書けるとも正直思えないので、このままそっとしてあげた方が良いのではと思います。

 

 

39.V/Horrors

 

 

39位はザ・ホラーズの5枚目のアルバム。

 

いわゆる、イギリスの「ポスト・アークティック・モンキーズの世代」って、不遇というか、生き残った人、少ないんですけど、The XXとフォールズほどビッグにはなっていなくはあるのですが、ホラーズは安定した固定ファン層をつかんだカルトなカリスマ化してますよね。立派だと思います。あの初期の、「一発屋?」とも思われた猥雑で刹那的な感じ(あれはあれで好きなんですが)から、よく脱皮できたものだなと思います。

 

 ある時期からはヴォーカルのファリスのバリトン・ヴォイスを生かした、メランコリーかつメロディックな路線に転じていましたけど、今回はミドル・テンポの曲の説得力が素晴らしいですね。あの、独特のモワッとしたアンビエントなやや重い感じを生かしつつ、そこに乗るメロディとファリスの声の艶やかさが光りますね。ある時期からイギリスのインディ・バンドも「困ったら、エレクトロに手を出しちゃえ」みたいな安易な方向性が見て取れてそれが嫌だったりもしたんですけど、このアルバムは、そうした手法に頼らず、あくまで、「ホラーズだから表現しうること」に徹している感じで、そこが彼らの孤高のオリジナリティを磨いているな、とも思いましたね。

 

・・と思って聴くと、最後の数曲だけ、ちょっとエレクトロっぽいので、そこがやや浮いて統一感を失うんです(苦笑)。これさえなければ、30位以内に入れてたんだけどなあ。いや、ラストのシングルにもなった「Something To Remember Me By」、いい曲なんですよ。エレクトロやらせてもセンスはあるのは認めるんだけど、なんか違和感は残るんだよなあ。

 

 

38.Flower Boy/Tyler, The Creator

 

 

 

38位はタイラー・ザ・クリエイター、4枚目のアルバム「フラワー・ボーイ」。

 

この人は、オッド・フューチャーがLAのアンダーグラウンドで話題になった2011年から注目されてた人で、ラッパーとは思えないボーッとした風貌とユーモアのセンスで個性も抜群なんですが、なぜかこれがアルバムになると、途端にフツーというか、なんか潜在能力を活かしきれていない不完全燃焼な感じが残って、どうも聞くのがもどかしい人でもありました。

 

 それが今回、ようやく、そのかねてからの将来性への期待に応えるアルバムを作りましたね。今回はトラックが、まさに「フランク・オーシャン以降」とでもいうべき(本人自身も参加)、コード進行とアレンジに凝ったかなりソフィスティケイトされたものになっています。だいたい、しょっぱなの曲からクラウト・ロックのCANの「スプーン」をサンプリングしたりもしてますしね。しかもタイラーは今回これらのトラックをちゃんと自分で手がけてるんですよね。前からトラックは自前で自給できる人ではあったんですが、「ここまで出来るようになったんだ」と思うと、嬉しい手ごたえを感じますね。

 

 あと、本当のところはまだ明確ではないですが、このタイトルといい、ジャケ写といい、自身の性的指向をほのめかしている感じも、作風のアイデンティティにつながったとこもあるのかな、とも思いましたね。

 

 

37.To The Bone/Steven Wilson

 

 

37位はスティーヴン・ウイルソン。

 

 この人のことは、このアルバムが8月にいきなり全英3位に上がるまでは知りませんでした。この人のやってたポーキュパイン・トゥリーというモダン・プログレバンドのことは、彼でなく、元ジャパンのリチャード・バルビエリがキーボードで参加していたバンドという認知で、ヨーロッパ圏では2000年代にかなり人気のあるバンドだったことも知ってはいたんですが。プログレにそこまで思い入れがなかったこともあり、ノー・マークだったんですが、このアルバム、イギリスで3位になったばかりでなく、ドイツ2位、オランダ4位、フィンランドは1位で、フランス、イタリア、スペイン、オーストラリアで軒並みトップ30、アメリカでさえ58位まで上がっていて、プログレ・ファンのコミュニティの広さを改めて思い知りもしました。

 

 その中心人物だったスティーヴンの、これが5枚目のソロ作です。ただ、プログレと言っても、もちろん長い曲もあるんですけど、大半は別に組曲とかでない、オーソドックスな曲構成だし、ラッシュとかジェネシスの70年代を思い起こすようなメロディックな曲ではあるんですが、彼はいわゆる90sのブリットポップのアーティストとほぼ同世代ということも影響してるのか、別にそうしたUKロックが好きな人でも全然余裕で入れる敷居の低さがあります。その、コンテンポラリーなポップ感覚をしっかりと保ちながら、しっかりプログレらしい変拍子やメロディ・センスを使い、時にダイナミックな長い曲(このアルバムでの最長は9分台)もやる、という感じで、プログレに偏見がある人であればあるほど入りやすい感じになっています。

 

 この人のことを知ったのは、少なくとも僕にとってはロックの視界を広める意味で意義あるものだったと思っています。

 

 

36. Gang Signs&Prayers/Stormzy

 

 

36位はストームジー。

 

去年に引き続き、イギリスはUKヒップホップ、グライムのブームだったんですが、その中で商業的な面で牽引者となったのはストームジーでしたね。元々、彼が最近のシーンでは筆頭人気に見られ、今年の初め頃、満を持してのアルバム・デビューで期待されたものでしたが、リリースと同時にシングル・チャートにダウンロードでたくさんの曲が入ったのも印象的でしたね。

 

 このアルバムですが、こと、「エンタメ感」においてはグライム・ブームの中でも最高でしたね。UKヒップホップの一つのお家芸でもあるハウス色の強いトラックに、彼自身の声を裏返しながら捲したてる高速ラップ、そしてヴォーカルまでできる器用さ。こうしたヴァーサタイルな感じは、他の同系のラッパーにはない多彩さでしたね。こうした面はすごく楽しめました。

 

 ただ、その勢いが今年の後半まで持たなかったこと、必ずしもUKヒップホップの今年最高のアルバムに選ばれることが少ないのは、ややパターン化した作りが課題だからかな。このアルバムを聴いてて、ハウスっぽいトラックに戻る瞬間というの3回は出てくるんですが、「もしかして、同じ曲、3曲やってない?」と思えるくらい、ちょっとワンパターンなんですよね。こういうとこでの切り抜け方を覚えると、文句なしの傑作が今後作れるかな。

 

 

35.After Laughter/Paramore

 

 

35位はパラモアですね。

 

 このアルバムは、世界の結構いろんな年間ベストにランクインしてますね。それがインディ・ロックのメディアでまで目立つんですよね。そこまで高い順位ではなかったりもしますけども、50位以内にはなんとか入ってたりして、どこのメディアも無視していない存在になってますよね。

 

 僕にとっても、これは微笑ましいアルバムで、彼らが昔のエモ・スタイルにこだわらず、音楽的に意欲的に成長を続けていることが証明されて嬉しかった1枚です。でも、ぶっちゃけ言うと、その変化って、今作からではなく、2013年の前作にはもう始まっていたんですけどね。前作の「Paramore」ってアルバムでもう彼ら、すごくヤーヤーヤーズを意識したような曲を何曲も既にやってたし、ストリングスやフォークも試したり、脱エモならもうあの時点でやってたんですよね。僕自身も、今作は好きだけど、実は前作ほどじゃないのも事実です。それは今作に、前作で言うところの、シングルでも大ヒットした「Ain't It Fun」みたいな決定的なキラー・チューンがなかったから。あの曲はヘイリーがファンキーな16ビートでも乗れることを示した重要曲でしたけど、あれに匹敵する曲まではなかったかなあ。

 

 でも、ストロークスとか、ヴァンパイア・ウィークエンド、フォールズみたいな、軽快なギターとダンス・グルーヴを主体としたインディ・ロック・スタイルという、統一したアイデンティティが感じられたのは良いと思います。これはひとえに、今のソングライティングの要のギターのテイラー・ヨークの手腕だと思いますが、これにきちんと対応出来るヘイリーも見事。あと、彼女にとっては、ニュー・ファウンド・グローリーの元ダンナとの決別を示唆するアルバムでもあり、そこが「再スタート」感をより深く印象付けてもいますね。

 

34.Hopeless Fountain Kingdom/Halsey

 

 

34位はホールジーのセカンド・アルバム。

 

僕の場合、毎年、アイドルというかポップものは必ず1枚はどこかに入れるようにしているのですが、今年はストレートなアイドルで良い盤がないので、エレクトロとポップの狭間にいる彼女の作品をあげてみました。なんかすごく過小評価されてる印象のある彼女ですが、いいですよ。デミ・ロヴァートみたいな、どう音楽頑張っても面白くない人とか、ケシャみたいに「頑張ったのかもしれないけど、どうにもセンス悪いよ、やっぱ」みたいなもの(最新作、評価されすぎだろ)より、よっぽど選ぶ価値があります。だって、そりゃ、そうですよ。いくらポップと言ったって、こっちはLIDOとかキャシミア・キャットみたいな、ちゃんとしたエレクトロのプロデューサーついてますからね。クオリティはもともとある程度は保証されているわけです。

 

 あと、今回いいと思ったのは、彼女、チェインスモーカーズの「Closer」のフィーチャリング・シンガーとして当てて、もっと俗っぽい方向でいくのかなと思っていたら、案外そうじゃなく、あくまでも正統派なエレクトロ路線で来たので、そう簡単にセルアウトしそうな感じがしません。それゆえか、1位を取ったアメリカでも売れ方は地味です。でも、2作連続でトップ50圏外でアルバムが延々とチャートに残り続けてヒットを続けているし、カットしたシングルもセカンド・シングルの「Bad At Love」がアルバムのリリース半年後にトップ10入り目前の位置まで上がるなど、地力のあるところ見せています。ファンベースの作り方としてはすごく理想的だし、今後に向けてすごく楽しみです。

 

 

33.Turn Out The Lights/Julien Baker

 

 

33位はジュリアン・ベイカー。

 

 

まだ22歳になったばかりの、テネシー州の大学生なんじゃないかな、まだ。女の子のシンガーソングライターなんですけど、今、名門インディ・レーベルのマタドールが高い期待をかけている人です。この一つ前のアルバムの配給をマタドールが買った時に少し話題になって、その際に僕も聞いたんですけど、その時はそこまでピンとこなかったんですけど、ある程度、しっかりしたアレンジが施されるようになると、さすがにグレードが上がりましたね。すごく聞き応えのあるアルバムです。

 

 基本はアコースティック・ギターやピアノの弾き語りで、そこに流麗なストリングスが加わるみたいなタイプなんですけど、どの曲もキメは、ジュリアン自身のサビでの、圧倒的な声域を生かしたハイトーンの歌い上げですね。このダイナミックな声のレンジで「おおっ!」とリスナーの耳を引きつけます。ズバリ、この魅力だけで彼女、かなりデカくなれると思います。マタドールと言わず、世が世ならもっとデカいメジャーのレーベルと契約してたらものすごいスターになった可能性もありますが、アーティスト寿命考えたらマタドールの方が良かったでしょう。でも、みんなが知るのにそう時間はかからないと思います。若干、その得意技に頼りすぎて連続して聴くと単調にも聞こえるんですが、そこを克服すればもっともっといい作品が作れる気がしています。

 

 このコ、年代が年代なんで、出自はエモであることは公言してるんですが、エモもブレイクした際のイメージがちょっとネガティヴな印象があって損してるものですが、The 1975といい、彼女といい、良い遺伝子も確実に出してるものでもあります。

 

32.More Life/Drake

 

 

32位はドレイクの「More Life」。

 

今や世界で5本指に入るヒットメイカーになったドレイクですが、このアルバムも出てすぐにダウンロードで話題になり、収録曲が英米のシングル・チャートを独占する事態が起きました。もうチャートの基準も変わって、ああいう独占は見られなくなりましたが、ストリーミング時代の混乱が引き起こした一つの事象として記録には残る出来事でしたね。

 

 このアルバムは、今の彼のサウンドのスタンスを示したものですね。彼がデビューの時から拠点とするトロントの馴染みのプロデューサーたちと、盟友フューチャーが拠点とするアトランタのトラップ勢、そしてロンドンのグライムと、現在のヒップホップの都とでもいうべき3拠点を結んだ、「現在ヒップホップ入門編」みたいな、すごく一般向けにいい意味で入りやすいアルバムですね。ただ、このアルバムで一番良いのはヴォーカル曲で、シングル・ヒットもした「Passion Fruit」はドレイク史上でも屈指の名曲だし、2018年のブレイクの期待のかかる、結局カノジョかどうかはわからないんですが、ロンドンのジョージャ・スミスとのデュエット「Get It Together」あたりですね。

 

 このアルバム、前作の「Views」よりは全然いいアルバムだし、もっと評価されていいアルバムでもあるんですけど、一つだけ気に入らないのは、彼のこのアルバムの呼び名ですね。 なんだ、「プレイリスト」って。前も「ミックステープ」と言って、通常のアルバムと何が違うのかがよく分からないアルバムを出してましたが、そういう「アルバム」という名義を使わないがゆえに、作品の品位を微妙に落としている感じは正直好きじゃないですね。「なにカッコつけてんだよ」みたいな感じでね(笑)。まあ、その気取りも、彼らしいといえば、らしいんですが。

 

 

31.How Do We Get So Dark/Royal Blood

 

 

31位はロイヤル・ブラッドのセカンド・アルバム。

 

このアルバムに関しては一部で「期待はずれ」みたいな声も聞きますが、総体的に見ればそんなことないと思います。少なくともイギリスではフェス期間中に出て全英1位になってしばらくチャートの上位に君臨していたし、国際的にも上々と言えるヒットでした。その後もイギリスではアット・ザ・ドライヴ・インを従えてヘッドライン・ツアーをやり、アメリカではクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのオープニング・アクトで全米ツアーもしたり。なににせよ今、メタリカからも、フー・ファイターズからも、トム・モレロからも、QOTSAからも「次代の期待株」として目をかけられてるのはデカいです。やはり彼らの場合、マイク・カーによる、ベースとギター一体型のあの魔法の楽器が健在な限り、しばらくライブ・アクトとしては無敵なのが大きいですね。

 

 このアルバムも、そんな好評のツアーにおいて、代表レパートリーになってるし、今後のキャリアにおけるライブでもセットリストの中核になることも目に見えるので、僕はその観点から良い評価を下しています。やっぱ、将来的にはフェスのヘッドライン・クラスになって欲しいのでね。ただ、「ライブやフェスに行かない」という人たちに対しても説得力のあるアルバムを次くらいで作る必要もあるかな、とも思いましたけどね。あのマイク・カーの必殺技に並ぶような、ドカンとした何かがアルバムに欲しい。次あたりで、面白いプロデューサーと共演してみるのも一つの手だと思いますね。ジョッシュ・ホーミとか、やってくれないかな?

 

 

author:沢田太陽, category:2017年間ベスト, 00:42
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