RSS | ATOM | SEARCH
2017年7〜9月のマイTop10アルバム(順不同)

どうも。

 

 

今日はこれをやりましょう。

 

 

今年になって、3ヶ月ごとにやっています、10枚の個人ベストを10枚選ぶ企画。7月から9月をやりますけど、この3ヶ月は今年に入ってから間違いなくベストですね。では、早速行きましょう。今回も例によって順不同です。

 

 

 

Lust For Life/Lana Del Rey

 

 まずは7月リリースのラナ・デル・レイのこの4枚目から始まりましたね。彼女はゴシックなバロック・ポップ路線は最初からすでにしっかりと確立されているため変化は難しいところがあるんですけど、今回はウィーケンド、スティーヴィー・ニックス、ASAPロッキー、ショーン・レノンとの積極的なコラボで、R&B方面だったりフォーク方面に曲の幅を広げて、さらにトランプ政権下で感じる不安や憂鬱から、メッセージがポジティヴな生への希望に転じて曲の生命力が強まった。今、最も首尾一貫したオリジナリティを持つ多作家アーティストの彼女がワン・ステップ確実に進化したのを僕はすごく評価しています。

 

 

 

Science Fiction/Brand New

 

 この3ヶ月は、この前の半年とガラリと違って、ロックを聴くのが本当に楽しかったものですが、その口火を切ったのが8月18日にリリースされた、ブラン・ニューのこのアルバムですね。彼ら、今もファンベースはポップ・パンク〜エモ系なんですけど、2作目のアルバムからとにかく暗く、今回はSEに精神病棟でのクリニックの様子が組み込まれていて、曲調もほとんどピンク・フロイドとか、アリス・イン・チェインズとか、そういう淀んだ出口の見えにくい、緊迫した暗さが漂っています。半分くらいアコースティックなんですけどね。その張り詰めた心情を表現するのに、ギターのメロディとフレージングが絶妙な役割を果たしてるんだよね。ギター・ロックであることにすごく意味がある作品だとも思いました。

 

 

 

American Dream/LCD Soundsystem

 

 引退宣言撤回のジェイムス・マーフィーのLCDサウンドシステム7年ぶりのアルバムでしたけど、いやあ、全くブレない!さすがですね。彼とか、エイフェックス・ツインのアルバムを聴くという作業って、もう、その一音一音の音の高級素材を聴くこと自体がすでに一つの”体験”だったりするんですけど、その最高のエレクトロのグルーヴに乗る、切れ味鋭いポスト・パンク・ギターに、トランプ政権下の社会の保守化に警鐘を鳴らすブラック・ユーモアに溢れたポリティカルなリリック。なんか、25年くらい前にU2が「アクトン・ベイビー」でやってたようなことを今。ジェイムス・マーフィがやってる感じですね。こういうのが出てくると、ロックもまだまだ安心できるんですけどね。

 

 

 

Sleep Well Beast/The National

 

そしてLCD の翌週にはこのザ・ナショナルですよ。彼らは本当に遅咲きのインディ・バンドだったんですけど、それを逆手にとるように、中年男性の色気とダンディズム、セクシーさを表現できるバンドになってますね。そういうのが表現できた人って、歴史的に見てもそんなに多くないですよね。ブライアン・フェリーとか、ニック・ケイヴとか、そんなもんじゃないかな。それでいて、昔からのポスト・パンク的なキレの良さも健在で、そういう曲では、もうキングス・オブ・レオンとかインターポールみたいなバンドが初期に持っていたキレをまだ表現できてもいるしね。この2週前に出たウォー・オン・ドラッグスの新作があまりにもエイティーズ風のAORでちょっと拍子抜けしちゃったとこがあったんですが、やっぱ、「尖ると尖ってセクシー」ってことで言えば、やっぱ断然こっちですね。あと、相変わらずメロディとヴォーカルの説得力が素晴らしいです。それから、猫も杓子もエレクトロな昨今で、自分たちにふさわしい形でカッコよく電子音をキメてるのもカッコいいです。

 

 

 

Concrete&Gold/Foo Fighters

 

 そして、ザ・ナショナルが出た翌週がこのフー・ファイターズ。今回、フー・ファイターズは、弟分のジョッシュ・ホーミ匹いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとリリースが3週しか違わなかったんですね。最近、もっぱら批評的にはQOTSAの方がフー・ファイターズよりは圧倒的に良い印象があったのでデイヴ、キツいかなと正直思っていたんですが、フタを開けてみたら、僕はこっちの方が圧倒的に好きですね。これ、ビックリしました!というのもQOTSAの場合、行き着いた方向性自体はすごく良くて、2007年の「Era Vulgaris」っていう、XTCがハードロックやったみたいな路線で良かったんですけど、曲そのもののキレがなんかもう一つかな、と思ったんですよね、今回。あとマーク・ロンソンがプロデュースでかんだ割にはその面白さがあんまり発揮されている感じがしなかったというか。逆にデイブの方が、アデルのプロデューサーとして名を馳せたグレッグ・カースティン使って、サビでハモッタリとか、エフェクトを多用してギターやベースをゆがめたりとか、いじりたい放題で、デイヴもそれを楽しんでるのが感じられて痛快でしたね。それでいて「The Sky Is A Neighborhood」とか「The Line」みたいな、歌い出しとサビがものすごくハッキリした彼ららしいアンセムもちゃんとあるしね。あ、カースティンのギターのアレンジが良くて、何げにスプーンみたいな、後期ビートルズ的な渋さも出てたりもして。なんか、これから後の彼らのターニング・ポイントにもなりそうな気がしてそこも好きなんですよね。

 

 

 

Vision Of A Life/Wolf Alice

 

 あと、出たばかりのウルフ・アリスのセカンド・アルバムですね。ここ最近、イギリスからビッグ・ムーンとか、マリカ・ハックマンとかいい女性ロッカー出てきてますけど、ここの紅一点のエリー・ロズウェルの方が一枚上だし、やっぱ華がありますね。生真面目な音楽性を難しく見せない技があるというかね。彼女、一本気でストレートなロックンロールができて、それが一つの売りにもできるタイプでもあるんですが、それと同時に、そこだけに凝り固まるでなしに、エレクトロを使った曲も十分にポップにこなすこともできる。なんか見てて、初期のPJハーヴィーが持ってた柔軟性を思い出すんですよね。今のご時世、どっちかに絞って才能発揮できる子ならいくらでもいるんだけど、それだけじゃやっぱり見てて限界感じるし、面白くないじゃないですか。エリーを見ていると、この先もまだまだ面白い方向に才能を広げていくことができそうな気がして楽しみなんですよね。

 

 

 

All We Know Of Heaven, All We Know Of Hell/PVRIS

 

 次の2枚はあんまり選んでる人いないと思うし選んだ僕自身が驚いています(笑)。まずはPVRIS(パリス)。この人たちは、メタルコアのバンド出してるレーベルの、ゴス系のエレクトロ・バンドなんですけど、本国のアメリカではそんなでもなかったのに。イギリスで2枚目のこのアルバムで4位のヒットになって注目されています。僕、これ、なんかすごくツボついてきたというか、なんか「ホールジー+ガービッジ+エヴァネッセンス」みたいな、なんかいびつなミクスチャーぶりがなんか気になるんですよね(笑)。後、ヴォーカルで曲も作ってるリン・ガンって女の子のヴォーカリストの歌いっぷりと、アンセミックなメロディメイカーぶりもすごく光るものがあってですね。なんか、スマパンの「アドア」あたりにありそうな曲を歌ってくるというか。そういう点ですごくスターになれる逸材だと思うんですけど、これがラウドロック界隈だけでしかまだレヴューされてないのはなんか解せないです。割と絶賛されてるんですけどね。

 

 

 

Broken Machine/Nothing But Thieves

 

 あと、前衛初登場で2位になったこのナッシング・バット・シーヴスも僕、面白いと思ったんですね。この人たち、デビューの時はなんかすごくMUSEのバッタモノっぽく感じてたんですけど、今回聞いてみると、最近の本家より全然いい曲かけてるし、そういう次元を超えたオリジナリティ出せてきてますよ。彼らの場合、やっぱりウリはヴォーカルのコナー・メイソンで、彼のヴォーカル・レンジとパワー活かせる曲が書けたらそれなりにかなり武器になるし、実際にそれができてるからかなり聞き応えのあるアルバムになってるのにね。「Amsterdam」とか「Sorry」「Soda」とアンセミックな曲もゴロゴロしてるしね。PVRISもそうなんだけど、「ポップで売れ線」とか判断してレヴューの対象から外されているような印象を覚えるんですけど、でも、たかだかこの程度のポップさで過剰に売れ筋意識して相手にしない、今のロックの批評媒体もどうかと思いますけどね。いい時代だった90sですら、売れて批評にも上るロックでこういう感じのもの普通にたくさんあったのにね。イマジン・ドラゴンズがロック代表として売れてる現状考えたら、それより全然健全ですらあると思うんですけどね。

 

 

 

Aromanticism/Moses Sumney

 

 ただ、最後はR&B2枚でシメましょう。今回はヒップホップは考えたんですけど外しました。ただ、歌もので外せないものはあって、その一つがカリフォルニアから出てきたモーゼス・サムニーという新人ですね。彼のサウンドはいわゆる「フランク・オーシャン、ソランジュ以降」と呼べるもので、凝ったコード進行のもと、時間軸をぶった切って、古めかしいホーンやストリングスもエレクトロも全部つぎ込んだようなケイオティックな美しさが、この新世代のR&Bのウリかなと思っているんですけど、このモーゼスに関してはそれがもはや当たり前で、彼の場合すごいのは、その次元すら超越して、シガーロスとかジェフ・バックリーの域までチンじゃってる事ですね。ここまで複雑かつ雄大な事ができるニューカマーというのもそうはいません。今年のサプライズ・リリースだし、このまま成長したらどうするんだろう、と思ってゾクゾクします。

 

 

 

Trip/Jhene Aiko

 

 そしてラスト、タイラー・ザ・クリエイターにしようか、これにしようか、散々迷ったんですが、日系人女性R&Bシンガー、ジュネイ・アイコのこのアルバムでシメようかと思います。彼女、名前自体は5年くらい前から知ってて、その頃からアルバムが全米トップ10に入るくらい売れてはいたんですけど、今回も全米で5位、イギリスで50位台のヒットですね。これも、サウンド的には「フランク・オーシャン以降」な感じの曲が今回すごく目立っていてですね、とりわけフィストカフスっていうソングライターが絡んだ曲がすごく幻想的でいい曲です。印象派、って感じでね。「これ、なんでもっと注目されないんだろう」と思っていたら、彼女、ラナ・デル・レイの今度の全米ツアーのオープニング・アクトに決まってますね。彼女と、カリ・ウチスっていう、これも来年、かなり力入れて押されそうなラテン系の女性シンガーがいるんですが、この2人がラナの前座っていうとこで、ラナのセンスの良さを改めて感じてるとこでもあります。

 

 

 でも、今回、自分で選んでみて、結構意外なものが選外になって自分でも驚いてます。だってこの3ヶ月って、アーケイド・ファイアもあったし、HAIMもあったし、QOTSA、ウォー・オン・ドラッグス、ザ・キラーズと目玉続出だったのにですよ!でも、正直、今、名前を挙げたものならば、ちょっと入らなかったかな。ぶっちゃけ、アーケイド・ファイアとHAIMに関してはガッカリしてます。

グリズリー・ベアとかエヴリシング・エヴリシングとかもそうかな。ホラーズはわりに良かったけど、トップ10まではいかなかったかなあ。

 

 

 あと選外だったものの、候補に考えたものとしてじゃ

 

 

Flower Boy/Tyler The Creator

Mura Masa/Mura Masa

To The Bone/Steve Wilson

Hippopotamus/Sparks

Antisocilites/Alvvays

 

 

 このあたりもよく聞きましたね。

 

 

 次はもう、年間ベストを具体的に考えないとけないですね。10、11月のも加わるから選ぶの大変そうですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 13:27
comments(0), trackbacks(0), - -