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全オフィシャル・アルバム From ワースト To ベスト (第10回)グレイトフル・デッド その1 22〜11位

どうも。

 

 

今日はFromワーストToベスト、行きます。

 

前回のビートルズが「サージェント・ペパーズ」の50周年にちなんだものだったんですが、あのアルバムが現象となった1967年の夏は「サマー・オブ・ラヴ」と呼ばれ、音楽やアートはサイケデリック・カルチャーの影響で飛躍的な芸術的進歩を遂げ、遂には当時の世相にも物申して「世の中がロックで変えられるんだ」といった時代の空気感まで生んだ季節でした。

 

 

 きょう16日はその象徴的なイベント、サンフランシスコ郊外で行なわれた「モンタレー・ポップ・フェスティバル」から50年なんですね。そこで伝説のジミヘン、ザ・フー、オーティス・レディング、ジャニス・ジョプリンなどの歴史的名パフォーマンスも生まれたわけなんですけど、今回はそのモンタレーの出演者でもあり、サンフランシスコでのフラワー・ムーヴメントの頃のシーンの代表格だったこの人たち行きましょう。

 

 

 

 

はい。グレイトフル・デッドですね。

 

デッドって、そのサイケデリックなイメージとか、フリー・フォームのライブとか、デッドヘッズとか、クマさんのイメージでレジェンド化はしていますが、「代表作がよくわからない」と言う典型的なアーティストじゃないかなと思うんですね。僕も以前はそういうイメージ持ってたんですけど、幸いなことに僕にとってのデッドの先生みたいな人が何人かいたおかげで90年代の終わりから2000年越えたくらいまでに結構凝ってた時期がありまして。今回はそのことを思い出して、ちょっとやってみようかと思います。

 

なお、デッドですが、「ライブ盤聴かなきゃはじまらない」タイプのバンドでもありますので、今回はルールを少し変えて、バンド側がオフィシャル・リリースとしてカウントしている22枚のアルバム、ライブ盤を9枚含みますが、これらをランク付けしてみました。

 

では、行きましょう。早速22位から。

 

 

22.Dylan&The Dead(1989 US#37)

 

 ワースト・アルバムはボブ・ディランとの1987年のライブ盤ですね。「ディランとデッドの共演」というとレジェンド同士ですごそうですが、なんてことはない。これ、デッドがただ、ディランのバックバンドつとめただけってことだけですよ。しかも、デッドらしいプレイが特に聴かれるわけじゃなし。デッド側に取ってオイシい側面がほとんどありません。実際、デッド・ファンの中でもこれ、不人気ですね。

 

 

21.Go To Heaven(1980 US#23)

 

 ワースト2位は1980年のスタジオ・アルバムですね。このアルバムは、2代目キーボード・プレイヤーのキース・ゴッドショーという人(その直後に死亡)とその人の奥さんでバック・ヴォーカルをやっていたドナ・ゴッドシャーが抜け、3代目キーボードのブレント・ミッドランドという人が入ってのアルバムでしたが、結局何がしたいのかよくわからないままに終わってしまった感じですね。本人たちはなんとかバンドを立て直そうと、このアルバムの後にツアーはしっかりやったんですけど、このアルバムからの曲がとにかく印象に残らないです。悪い意味で「普通」のアルバムです。

 

 

20.Built To Last(1989 US#27)

 

 これがデッドのスタジオ録音での最後のアルバムですね。この一つ前のアルバムがデッド史上最大のヒット作になっているんですが、勢い落としちゃいましたね。なんか,先述した3代目キーボードのブレント・ミッドランドのポップ趣味が強くなり過ぎて悪い意味でのチープなエイティーズ・サウンドになっちゃってるんですよね、これ。特に最初の方でそれがキツくて、それで聴くの萎えますね。ただ、中盤から出てくるバンドのNo.2、ボブ・ウィアのソウルフルな歌いっぷりのさえるブルージーな曲の出来がよく、そこから引っ張るんですけどね、これ。ただ、結果的にこれがスタジオでの遺作になる中心人物ジェリー・ガルシアにとっては、なんかあまりキレの良さを感じないアルバムになってますね。

 

 

19.Steal Your Face(1976 US#56)

 

 1976年発表の2枚組のライブ盤ですね。実はこのアルバムだけ、ストリームのサーヴィスやってません。これは、デッドが一時期やってた自主レーベルでの作品でもあったので、CD化に際しても聴きにくい作品でもありました。これ、1974年の、彼らが活動休止を宣言した際の「しばしのさよなら」の公演(そしてすぐに撤回、笑)のライブなんですが、今ひとつ演奏に覇気が感じられないというか、「調子良くなかったのかな、やっぱ」と思わせる作品ですね。この当時彼らは、ライブの経費がkさむことと、初代キーボードの”ピッグペン”ことロン・マッカーナンが亡くなったショックを引きずっていた頃でもあったんですけどね。

 

 

18.History Of The Grateful Dead Vol.1(1973 US#60)

 

 これは1973年、彼らが最初に所属したレーベル、ワーナー・ブラザーズでの最後のアルバムです。ベスト盤みたいなタイトルですけど、これ、ライヴ盤です(笑)。そんなに悪いアルバムではないんですけど、ただ、その前に出たライブ・アルバムのヴォリュームがドッシリだったこともあって、11曲収録でもなんか短く聞こえちゃうし、カバー曲があまりに多すぎるのも(普段からライブでは多いですけど、それでもね)ちょっと「そこまで偏らなくても」とは思うんですよね。

 

 ただ、それよりも、「これ、レーベルとの契約消化のために無理矢理こしらえたでしょ?」というのが見える感じが順位を下げる最大の要因になってるかと思います。

 

 

17.Dead Set(1981 US#29)

 

 これはデッドが1981年に出した2枚のライブ・アルバムの一作ですね。会場の一つになったサンフランシスコのウォーフィールドは僕も1回行ったことあります。これは、その前に出たライブ盤と基本同じライブのものの中で、通常のロックでのフォーマットの演奏を収めたものです。ただ、普通のヴォーカル曲が多過ぎて、彼ららしい醍醐味であるロング・ジャムの類いが聴かれないんですよね。なんか普通のライブに終わってしまってます。せっかく、収録曲そのものは多かったんですけどね。

 

 

16.From The Mars Hotel(1974 US#16)

 

 このアルバムは、デッドの自主レーベルからの第2弾アルバムであると同時に、キース&ドナ・ゴッドショー夫婦を迎えての2作目でもあります。実はこの一作前でかなりドラスティックな冒険をやってたりするんですけど、このアルバムはそこまで冒険的なことはやらずにアーシーでややファンキーなテイストに収めてます。ただ、その泥臭さの中にちょっと洗練された妙味があり、聴いててなんか、この当時のリトル・フィートを思い出すんですけどね。・・と思っていたら、後年、その印象が正しいと思えることが起こります。

 

 

15.In The Dark(1987 US#6)

 

 これは商業的に最も成功した、1987年のアルバムですね。この中からはシングルになった「Touch Of Grey」も全米トップ10ヒットになっています。僕もこれはリアルタイムでよく覚えてます。僕の中で過去の歴史になっていたバンドが急にヒットを出したので驚いたのと、ジェリー・ガルシアのモジャモジャの白髪が年齢(当時45歳)よりも随分年上に見えて、必要以上に古い世代のバンドに映ったものでした。

 

 このアルバムですが、これまでのデッドにない軽快なポップ感のあるアルバムですね。それを人は「エイティーズ」と呼ぶのかもしれませんが、そこまでオーヴァー・プロデュースの作品でもないところが嫌みになりません。曲もコンパクトでわかりやすい曲が多く、70sっぽい土臭さが少なくなった分、あの当時のリスナーに聴きやすかったのかな、という印象があります。特にセルアウトな印象も与えてなく、むしろファンの間では好意的に受け止められてます。

 

 ただなあ。今の耳で聞いちゃうと、逆に、特に強調すべき特徴もそんなにないアルバムなんだよな、これ。通して聴いてみて、そこまで強い印象に残らなかったんですよね。これ、スタジオにして7年ぶり、ライブ盤からでも6年ぶりと、当時のファンの渇望感を刺激するものがあったのと、時代にあったサウンドになったことで需要にハマったのかな、などとも思いますけどね。

 

 

14.Reckoning(1981 US#43)

 

 1981年に出た2枚のライヴ盤の最初のヤツですね。こっちはアコースティック・セットの楽曲を集めた作品です。

 

 その前にかなり洗練された方向性に行っていたデッドからすれば、かなり落ち着いたシンプルな内容のライブなんですが、このときに70s初頭のカントリー、フォーク路線の曲、またはそれに近いタイプの楽曲を多くやってるんですよね。もしかして録音された1980年という時期から考えたら「古くさいことを」と思われたりしたかもしれないのですが、デッドの時期でも楽曲が最も脂が乗っていてファンも多いモードの曲調ですからね。そういうのって、特に後から追って聴くと耳によく聞こえますよね。今回、これの順位が高くなったのはそうした理由です。

 

 

13.Blues For Allah(1975 US#12)

 

 先述の、1974年のゴタゴタによる活動休止を撤回して作ったアルバムですね。そのスッキリシたバンド側の気分が伝わったのか、全米アルバム・チャートで最高位12位と、この当時での彼らの自己最高を記録したアルバムにもなりました。

 

 この2つ前にガラッとイメージの変わるアルバムを作って、1つ前でやや戻したんですけど、今度はまたガラッとオシャレな方向に行ってますね、これ。1曲目の「Help On The Way」はカーティス・メイフィールドとかスティーリー・ダン思い出すアーバン・ソウルな曲だし、代表曲にもなった「Franklin"s Tower」もルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」を意識した曲でしたしね。そう考えると、これ、なかなか強力なアルバムです。

 

 ただ、間にインストが入ったり、組曲になったりという展開が、僕はあんまり好きじゃないんですよね。そこが先にあげた2曲ほどのインパクトがないというかね。それでこの順位になったんですけどね。

 

 

12.Shakedown Street(1978 US#41)

 

 ワーナー〜自主レーベルと来て、最後まで在籍することとなるアリスタに移籍後2作目ですね。先に「リトル・フィートの感覚が」ということを書いたんですが、このアルバム、プロデュースが、そのリトル・フィートのフロントマン、ローウェル・ジョージです。彼は1979年に亡くなっているので、晩年の仕事、ということにもなります。

 

 やっぱり、「ファンキーで洗練されて」ということで言うなら僕は先の「Mars Hotel」よりもこっちの方が好きですね。ただ、僕がこのアルバムに印象がいいのは、ここからシングルになった「Fire On The Mountain」という曲がすごく好きだからですね。なんていうんだろう。AORにちょっとソウルとレゲエをほのかに入れた感じがすごくクールというか。彼ら得意のファルセットのハーモニーが最も生きた曲のひとつでもあるし。この曲に代表されるように、70年代の、特にキース・ゴッドショーがキーボード弾いてた時代のデッドはオシャレなんです。

 

 

11.Without A Net(1990 US#43)

 

 毎回11位は基本、「過小評価アルバム」枠なんですが、今回僕が選んだのは、オフィシャル・アルバムとしてはラストになる、1990年リリースのこのライブ盤ですね。

 

 これ、何がいいかって、デッドのライブの臨場感がダイレクトに伝わってくることなんですね。オフィシャルのデッドのアルバムって、曲間の歓声をフェイドアウトしてつなげたものが多く、実はそれでちょっと萎えるところもあるんですが、このアルバムに関しては編集がすごくうまくてですね、フェイドアウトしないで上手く続けてるから、ひとつのまとまったライブ聴いてるような気になるんですよ。ちょうどCDの時代になったこともあって、ある程度まとまった時間、連続して聴けるようになったことで、そういう聴かせ方ができるようになったのかな。アナログの時代だと、盤面に時間的制約がありましたからね。それが証拠に曲の長さ的にも10分台の曲が5曲もあってね。それも「ああ、デッド聴いてる」と言う気持ちにならせる理由にもなります。

 

 あと、「90年代にさしかかる頃になっても、ライブバンドとしてのデッドってやっぱりさすがだな。これだとさすがにレジェンドになるわな」と思わせる貫禄のライブをこの時期にやっていたことが伝わるのも良いです。たしかに、晩年のイメージが悪かったりしたらそれこそ過去の遺物になって、伝説にまではならなかったでしょうからね。ジェリー・ガルシアの存命中に機会があれば見たかったなと思わせるパワーがこの盤にはありますね。

 

 ちなみに3代目キーボードのブレント・ミッドランドも、このライブ盤が出る2ヶ月前に急逝してます。歴代の3人とも亡くなってるとはなあ。

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 09:58
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