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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第9回)ビートルズ

どうも。

 

 

今日はFromワーストToベストの第9回をやりますが、もう、いきなり最大のものやります。これです!

 

 

 

 

はい!ビートルズ!もう、いきなりやります。

 

 

もう少し、節目のときでも良いかなとも思いましたけど、ちょうど「いわゆる最高傑作」と呼ばれるところの「サージェント・ペパーズ」のニュー・ミックス盤が出たばかりだし、「9」というのはビートルズにゆかりのあるナンバーだし、ちょうどいいかなとも思いまして。そのかわり、今年はもう、ストーンズとかツェッペリンとかディランはやりませんけどね。

 

 

では、本国イギリスでのオリジナル・アルバムの13枚に僕がどういうランクをつけたか、見て行きましょう。

 

 

 

13.Yellow Sabmarine(1969)

 

 13位は「イエロー・サブマリン」のサントラです。

 

 これは「やはり」というか、同様の企画があった際、必ずワーストに選ばれがちなんですが、それは僕も同じでしたね。やっぱり、半分がジョージ・マーティン作のインストというのが「ビートルズの作品」として見たときに番外っぽくどうしても見えてしまうこと。そして、ビートルズの側の曲が、これまたどうしても、これまでのあまり曲に聞こえてしまう。その辺の弱さがこのアルバムはどうしても出てしまうんですよね。

 

 

12.Let It Be(1970)

 

 はい。厳しいの、わかってます。これが好きな人が多いのもよく知っています。ただなあ〜。いくらビートルズだといっても、録音状態が不備な曲ではさすがに「原曲の良さ」だけでカバーするのも限界があると言うかね。「ゲット・バック・セッション」の録音状況がせめてもう少し良ければ,もう少しランクをあげたと思うんですけど、なんかガンダムで言うところの「ジオング感」が強いと言うかね。完成して世に出されても、「未完成作品」の印象が僕にはやっぱりぬぐえないです。

 

 それと、やっぱ、フィル・スペクターの手による「ロング&ワインディング・ロード」は、今回のこの企画のために改めてキャリアの最初から聴き続けた課程において、最後に突然やって来る強い違和感として、どうしても残っちゃうんですよね。

 

 

11.Help!(1965)

 

 これも低いかな、とは自分でも思います。大事な曲は入ってるアルバムなんですよ。タイトル曲をはじめ、「涙の乗車券」に「イエスタデイ」。ただなあ。ビートルズにとって非常に短命に終わった「フォーク・ロック」のモードが目立つ作品ではあるんですけど、ディランを意識した「悲しみはぶっとばせ」以外のフォーク、カントリー系のチューンの印象があまり強くないというか、ビートルズに似合っているとは正直思わないんですよね。特にアナログのB面は最後の2曲以外は正直弱い。しかも、ほとんどオリジナルなのに。その辺りがなんか不満なんですよね。

 

 

10.With The Beatles(1963)

 

 このセカンド・アルバムは、こういう企画をやった際、割と下位に来やすいですね。それはやはり、キャリア初期の、空前のアイドル時にシングル・ヒットを連発していたというのに、このアルバムにはそのことを示すシングル・ヒットが全然入っていないから。時期でいうと「シー・ラヴズ・ユー」とか「抱きしめたい」の時期だったんですけどね。まず、その時点でかなり惜しいです。

 

 ただ、それでも、僕がこのアルバムをそこまで下に下げなかったのは、ビートルズのルーツの感覚がこの前作以上にわかりやすくなっているから。チャック・ベリーの「ロール・オーヴァー・ベートーベン」が入っているだけでなく、モータウンからのカバー曲が3曲もある。1963年当時の白人アーティストで、モータウンの曲をアルバムで3曲もカバーした人たちっていないんじゃないかな。まだ、スプリームスの大ブームの前でもあるし。そういうとこに、すごく彼らの鋭いセンスを感じるんですよね。

 

 

9.Beatles For Sale(1964)

 

 これ、一般的にはビートルズのアルバムの中で指折りの不人気作です。その理由の多くは、このアルバムの制作エピソードにありますね。この当時、世界的なビートルマニアの最中で多忙を極めていた頃で、レコード会社も「先にアルバムの発売予定を決めて、それに合わせて、あたかもノルマでもあるかのように作る」みたいな感じで、仕方なく、収録の半分近くをカバーで埋めざるを得なくなったんですよね。

 

 ただ、僕としては、そんな、ややもすると「やっつけ」な感じのアルバムであるにもかかわらず、その割に楽曲レベルがきわめて高いので、意外と好きなアルバムなんですよね。それはたとえば、独自シングル・カットだった「エイト・デイズ・ア・ウィーク」が全米1位に輝いたのをはじめ、青春ソングの名曲ですね、「ノー・リプライ」、「アイム・ア・ルーザー」「アイル・フォロー・ザ・サン」と、やたら曲が良いんですよね。加えてカバーのセンスもここだと、チャック・ベリーの「ロックンロール・ミュージック」とか、リトル・リチャードのマナーに則っての「カンサス・シティ」とか、すっごくロックンロールでカッコいい。作られた背景とか動機がどうであれ、結果がすごく良いアルバムだと思います。

 

 

8.Please Please Me(1963)

 

 記念すべきファースト・アルバムですね。ビートルズの第一歩というだけでなく、ロックンロール、ロックバンド、イギリスのロック文化にとっても第一歩の作品です。やっぱり、下には下げれないですよね。ただ、とはいえ、この時期だとアルバムの半分がカバー曲だし、いささか黎明期ゆえに、ソングライティングの幅も限られてるから、これより良いものがどうしてもさらに上に来ちゃいますけどね。

 

 それから、このアルバムだけだと、まだ「ビートルズの何がすごいのか」ということを、シングル・ヒットした曲ほどには雄弁に物語ってはいないですね。僕の持論だと、シングル曲のレベルが「ラヴ・ミー・ドゥ」だったり、ここで披露しているシュレルズのカバーみたいなドリーミーみたいな感じから、一気に「プリーズ・プリーズ・ミー」の次元に駆け上った、そこに最初のマジックがあるなと感じていて、このアルバムはそうした飛躍の対比みたいなものが見えて面白いなと、今回聞き返してみて思いました。ただ、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」「ツイスト&シャウト」的なものがあともう数曲あったらな、とは思うんですけどね。

 

 

7.Rubber Soul(1965)

 

 ここから先は、他のアーティストだったら余裕で1位のレベルですね。ちょっと次元が違いすぎる。ただ、そこをあえて言いたいこと、言いますね(笑)。

 

 

 7位は「ラバー・ソウル」です。このアルバムの何がすごいかというのは、ファーストから出た順に聞いて行けば一発でわかります。やっぱ、レコーディングのグレードが飛躍的にここであがっているんですよね。なんか急に音が圧くなっているうえに、楽曲構造そのものも3コードのロックンロールの域を超えた曲に発展してね。これ、当時リアルタイムで聴いた人はビックリしたろうなと思います。

 

 ただ、その後の耳で聴いた場合、このアルバム、メロウで感傷的な楽曲に代表曲が多いものだから、そうした時代背景のことを知らない人には「ポップスのアルバム」みたいな感じに聞こえてしまわないかな、ということですね。「イン・マイ・ライフ」「ひとりぼっちのあいつ」「ミッシェル」ってあたりが、もちろんすごくいいんだけど、良くも悪くもすごく今の耳にはお行儀が良すぎるというかね。「いいんだけど、これじゃブッ飛べない」というのが、僕が10代後半ではじめてこのアルバムを聴いたときの率直な感想でもありました。

 

 

6.Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band(1967)

 

 はい!言いたいことはよくわかってます。空気読めなくてスミマセン(苦笑)。

 

 いや〜、もちろん、50周年ですし、出たばかりのニュー・ミックスの出来も文句なしに素晴らしかったわけですけど、このアルバムが僕の中で特別だったことって、残念ながらないんですよね〜。

 

 もちろん、このあルバムが「1967年夏」という、特別な磁場にあったがゆえにひときわ輝いたのであろうということは僕も認めるし、当時に10代とかであれば、僕の意見も変わっていたかもしれません。だけどなあ〜。僕、どうしても、「シングル・カットを行なわない、アルバムのみで完結したコンセプト作」という概念の特別さというのが、今ひとつ理解できないんですよ。僕にとってみれば、「アルバム」というものには必ずシングル、もしくはリード・トラックというものが存在してほしいし、これが出て50年経っても「シングル・カットを行なわなかった名作」なんてものの方が数が圧倒的に少ないですよ。その意味で、このアルバムが今後のアルバム制作に直接的な影響を与えたとは思えないんですね。

 

 あと、これ、必ずしもビートルズの中で曲の出来が素晴らしいアルバムではない。個人的にポールの楽曲のレベルはすごくここでは高いと思うんですけど、ジョンのがなあ〜。1967年にジョンはキャリアを代表する曲を何曲も作ったのに、それがここだと「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」がそこに加わるくらい(ごめんなさい。「ルーシー」、そんなに好きじゃないです)で、「Being For The Benefit Of Mr.Kite」とか「Good Morning Good Morning」は正直弱いかな、と。せめて「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」をシングルじゃなくて、ここに入れてくれたらなあ。もちろん、ポールの「ペニー・レイン」込みで。

 

 あと、「音楽的実験性」という点に関しても、楽曲単位だと、この前後の作品ほどではない気がします。

 

 

5.Magical Mystery Tour(1967)

 

 というわけで、僕は同じ1967年の作品でも、こちらの方が好きです!

 

 それはやっぱり、ジョンの3曲、「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「愛こそはすべて」、そして「アイ・アム・ザ・ウォルラス」!1967年のジョン・レノンを代表する曲が3曲揃って入っている。その時点で、やっぱ、こっちの方が僕には魅力あるんだよなあ。

 

 加えて。ポールも「ハロー・グッバイ」に「フール・オン・ザ・ヒル」「ペニー・レイン」でしょ?素晴らしいじゃないですか!それだけで満足です。

 

  もしこれが仮に、「シングル3枚を足した、映画のサントラ」みたいな、いかにも「寄せ集めてみました」という簡易な作りでなく、映画ももう少しまじめに作ってさえいたら、確実にもっとレジェンダリーな評価になっていたはずです。でも、僕は断然こっちですね。

 

 

4.A Hard Day's Night(1964)

 

  そして4位は、初期のスタイルではやっぱりこれが一番上に来ますね。「ハード・デイズ・ナイト」です。

 

 キンクスの回でも同じような行動をしましたが、僕はですね、「まだアルバムの時代ではなかった」として、初期のブリティッシュ・ビートのスタイルを世界中の10代に浸透させた功績が大きなものであるにもかかわらず、除外しようとするようとする動きが本当に嫌いです。そんなことを言っていたら、その当時の作品のアルバムでの評価が不当なものにしかならなくなるじゃないですか。大体、初期のビートルズが存在していなかったら、世界中でバンド文化そのものが出来ていなかったのにもかかわらず、ね。なんかその事実を無視するのも嫌なので、最低限1作品は初期作品を上位にしたいのですが、ビートルズなら間違いなくコレですね。

 

 このアルバムがまず画期的なのは、この当時、1964年当時の時点で、全曲オリジナルということですけど、僕にとってはこの件の方が快挙ですね.そして、この3枚目のアルバムにして、ようやくシングル曲でのパワーと華が,アルバム収録曲全体で反映出来るようになった。そこも大きいですね。そして、映画の方でもそのことはしっかり堪能できますが、彼らが時代を象徴するスーパー・アイドルだったこと。この事実もまぎれなく表現されています。

 

 本当はトップ3に入れることさえ頭にあったんですけど、上3枚はそれでもあまりに外せない作品ばかりでしたね。

 

 

3.The Beatles(The White Album)(1968)

 

 2位と3位はものすごく悩んだし、僕の中ではまだ逆にしたい気持ちもあったりするのですが、今回のところは「ホワイト・アルバム」を3位で行かさせてください。

 

 ビートルズというバンドがすごいのは、ロック史上において、バンド内個人主義が確立していることですが、4人が全員ソングライティングをやってヴォーカルも取った、あたかも4人のソロ作が同時に並立するかのような作品を1枚にした意味でこれ、画期的だと思います。そんな作品、50年近く経った今でも他に聴いたことないですからね。しかもこれ、4人がそれぞれ自分の作りたいように作った作品であるにもかかわらず、揃えてみると不思議な統一感があるというかね。

 

 各々見て行くと、このアルバムはジョン、ポール、共にかなり振り切ってると思います。ジョンには「ディア・プルーデンス」「グラス・オニオン「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」「セクシー・セイディ」といった、ある時期から顕著だったけだるい系統の曲での名曲が目立つし、ポールにも「ヘルター・スケルター」「バック・イン・ジUSSR」みたいなロックンロールがあったかと思えば「ブラックバード」「ロッキー・ラックーン」といったアコースティックでの名曲もあったり。この2人がライバル状態で一番沸点の高いとこでぶつかりあったの、やっぱりこのアルバムかな。

 

 数少ない難をあえてひとつだけいうなら、ジョージ・ハリスンの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」以外の収録曲が弱いことかな。「サヴォイ・トラッフル」とか「ピギーズ」って、ファンしか知らない曲だと思うしね。

 

 

2.Abbey Road(1969)

 

 そして、僅差で2位は「アビー・ロード」ですね。

 

 「アビー・ロード」はどこが好きかというと、「ホワイト〜」から続く、「4人の個人主義」の形態は維持しつつも、それでも「同時に4人が一緒に揃って、バンドとして一緒に揃って作った作品でもある」ということですね。こっちの方は、「ソロ作の持ち寄り」色は「ホワイト〜」よりは薄いですから。

 

 そして、「4人が揃って、良い曲を自分で書いて自ら歌った」という意味でも、これが一番かな。率先したポールは「オー・ダーリン」「マッックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」に加え後述の偉業があるし、ジョンも、気持ちは離れつつある状態でも「カム・トゥゲザー」「アイ・ウォント・ユー」「ビコーズ」は作り得たわけだし。そして、今回はジョージが「サムシング」に「ヒア・カムス・ザ・サン」と、ビートルズのキャリア史上に残る名曲を第3メンバーにして最後に作りあげたことでも感慨深いかな。リンゴの「オクトパス・ガーデン」も2作の自作曲の中ではこれが1番です。

 

 でも、やっぱり1番の聴かせどころは、B面途中からの「You Never Give Your Money」(もしくは「Golden Slumber」)から「The End」に至る、ポールがまとめあげた、ビートルズが最後に力を合わせて完成させたロック・オペラですね。これに関しては、ポールが75歳になる今も元気でステージで表現し続けているうちに価値が上がって来ているようにさえ思います。この印象の良さで2位になったのかもしれないです。

 

 

1.Revolver(1966)

 

 そして1位は、やっぱ、どうしてもこれになっちゃうんだよな。「リボルバー」です。これがいわゆる、「ビートルズのグループ内個人主義」が芽生えた作品であり、かつ、一番実験的で刺激的な作品だと思いますね。

 

 

 このアルバムはまずジョンですね。サイケデリックな飛び方で言うと、当時、一番のポップスターでありつつ、アンダーグラウンドも含めて当時一番刺激的でもあったという。「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」と「アイム・オンリー・スリーピング」を最初に聞いたのは10代終わり頃だったと思うんですけど、「ビートルズって、こんな曲も書いていたんだ!」と、いわゆるテープの逆回転というヤツを聴いて衝撃を受けたものでした。あと、ポールは,一方でストリングス、一方でホーン・セクションをロック式に導入するという、「スタジオ技術よりは多彩な楽器類」な彼なりの進化を果たしている上に、「フォー・ノー・ワン」のような、後にいろんな人たちからも参考にされた「ピアノ・ポップにおけるビートルズ、もしくはポール」の手本みたいなものも作ってるし。

 

 

 そしてジョージはここではじめてインド路線(シタール自体は一つ前にも入れてはいましたが)の曲にトライしてビートルズの個性に異色なものを取り込むことに成功したのと、あと、やっぱ、このアルバムだとやたらとファズでビリビリいってるギターですね。そして、本来「オチ」になる部分のはずのリンゴのヴォーカルの曲、もちろん「イエロー・サブマリン」ですが、それまでがサイケデリックに飛びまくってるのが、このアルバム、すごいとこです。後、ジョージ同様、彼のドラマーとしてのプレイも、すごく手数が増えてグルーヴィーになってます。スタジオ技術の進化があったとは言え、ジョージとリンゴの、楽器プレイヤーとして特筆して見るものがあるのも、このアルバムの見逃せないとこだと思います。

 

・・と、考えると、こっちの方がやっぱ僕には「サージェント〜」より音楽的なパイオニアになってるとこも強いと思うし、ビートルズの内部個人主義の発揮も出来ていると思うし、曲ひとつひとつのレベルも高いと思うんですけどね。いくら当時、アメリカ盤が3曲さっぴかれてリリースされたという、60年代らしいマイナス・イメージの過去があったとは言えね。

 

 

 ・・といった、とこでしょうか。まあ、ビートルズくらいまでになると、リスナーひとりひとりにいろんな意見があると思うので、あくまでも「一意見」として、そんなに深くとらえないで欲しいんですけどね。

 

 

 次回ですが、今回も「サージェント・ペパーズ」にも象徴される「サマー・オブ・ラヴ50周年」も意識してのビートルズでもあったんですけど、次も「サマー・オブ・ラヴ」なチョイスだと言っておきましょう。

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 10:16
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