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2017年最初の3ヶ月のマイTop10アルバム(順不同)

JUGEMテーマ:洋楽好き♪

 

 

どうも。

 

4月最初のアルバム・リリースである金曜日が来てしまいましたが、その分はカウントしないで、今日はこれをやります。

 

 

 

2017年、最初の3ヶ月の個人的なトップ10アルバムですね。10枚中9枚が上の9分割に入ってるわけですが、さあ、どういう感じでしょうか。

 

今の時点ではまだ早すぎるため、順位はつけていません。では、行きましょう。

 

 

 

Culture/Migos

 

この3ヶ月は、とにかくヒップホップの強いタームでした。今回のピックアップの5枚を占めています。

 

まずはミーゴスですね。今はいわばトラップのブームの総決算的な時期だと思うんですけど、それの決定盤がこれですかね。ミーゴスの場合、トラップの典型的かつ最新のモードのビートに加え、クウェイヴォ、オフセット、テイクオフの3人のラッパーによる、独特かつ奇妙なマイク・リレー(かつ、変な合いの手、笑)がとにかく耳から離れません。2017年最初の3ヶ月の時代的空気を作った意味で大事だと思います。

 

 

HNDRX/Future

 

 続いて、これもトラップ・ブームの立役者のラッパー、フューチャーですね。彼が2週連続で不意打ちのアルバムをリリースして、どちらも全米初登場1位にしたことも無視出来ない事件でした。ラッパーとしての特徴がハッキリつかめないタイプではあるんですけど、このサウンドをアトランタで早くから展開していたこと、ミーゴスが使っているラップの技巧を先にやっていたことなど含め、シーンの代表格であることは間違いないです。2枚出たアルバムでいうなら、僕は2週目に出た、ヴォーカル・ナンバーが多いこっちの方が良い意味でポップで好きですね。

 

 

 

Gang.Signs&Prayer/Stormzy

 

今度は、アトランタから離れてロンドンですね。UKのヒップホップ、グライムのブームもここ最近、活気づいていますが、その真打ち的なラッパー、ストームジーのこれも素晴らしいアルバムでしたね。ハウス色の強くてファンキーなグライムっぽいトラックに、ストームジーらしい高速かつ超え裏返り系のインパクトの強いライムフロー、そして歌までしっかり歌えるエンタメ性が見事です。本国では大ヒット・アルバムですが、ワールドワイドに聴かれて欲しいですね。

 

 

Process/Sampha

 

こちらはヒップホップじゃなく、R&Bですけど、彼もロンドンのシーンを代表するシンガーです。サンファ。彼はドレイクのアルバムに2013年に参加したときから、すごく鼻にかかったスモーキー・ヴォイスで話題で、去年はソランジュの名曲「Don't Touch My Hair」でも印象的なバック・コーラスを聴かせてましたけど、満を持してのデビュー盤がコレです。彼の声質にあった、「無」のスカスカの空間を生かした、緊迫感溢れるオーガニックなサウンドが肝です。そのサウンドのアレンジの印象が強過ぎて、楽曲そのものがそのインパクトについていけてないところがやや気にはなるものの、あっぱれな1枚目です。

 

 

 

More Loife/Drake

 

そして、トドメはこれですね。ドレイクの、本当にペースの速い最新作。彼の場合、地元トロントの強力なクルーに支えられてシーンに浮上した人なんですけど、アトランタのトラップ勢とも共演するし、ロンドンのR&Bシーンとも接点を持つし。以前はフューチャーとも共作盤出してましたけど、今回もミーゴスのクウェイヴォや2度目となるサンファとも共演してます。「これ1枚で、今のヒップホップのシーンが大体わかる」みたいな、入り口になるすごくわかりやすく、かつ、曲の良さが目立つアルバムですね。特に今回は、彼のヴォーカル曲のレベルが軒並み高いですね。

 

 

 

I See You/The XX

 

 対して白人のロックなんですが、この3ヶ月はビックリするほど弱かったなあ〜。特にギター・ロックは惨敗に近かったと思います。その中で気を吐いたのがXXのこの新作ですね。ジェイミーXXのソロ作でのグルーヴを活かした、これまで以上にポップで開かれた作品ですけど、開放的になりながらもデビュー時から一貫しているメランコリーと緊迫感を一切失わないロミーとオリーのソングライティング。彼らがさらなる高みに入ったことを告げる傑作ですね。もう少し、リリース後のプロモーションの後押しがあるとさらに良いんですけどね。彼らくらいビッグになって行くと、そろそろそういうストラテジーが大切になってくると思います。

 

 

Spirit/Depeche Mode

 

 前にここでも特集したデペッシュ・モードの新作も快心作でしたね。エレクトロなのに枯れた表現ができる、世界で唯一のアクトだと思うんですが、その路線を確立しましたね。同時に歌詞は、これまでの彼らにない社会的、政治的な方向に向かったものでもあり、そこは賛否が別れるところではあるのですが、そのモチベーションがメロディやシンセに力を与えていることはまぎれもない事実です。あと、今回は英米ともに5位でしたが、イタリア、ドイツ、フランス、ポーランド、チェコで1位で、イタリアでは2週連続1位でフランス、ドイツでも2週連続トップ3。非英語圏での根強い強さもあいまってワールドツアー、成功しそうな気がしてます。楽しみです。

 

 

 

A Crow Looked At Me/Mount Eerie

 

続いて、シアトル近くのワシントン州のシンガーソングライター、マウント・イーリー。本当はこれ、入れたくなかったんですよ。なぜなら、これ、奥さんがなくなるところから、奥さんを失った家でポツンと虚脱状態になりながら生活している、彼の実話をドキュメンタリー・タッチで歌った作品だから。歌詞もすごく生々し過ぎて、ちょっと何回も聴くのはためらわれるんですが、ただ、これねえ、メロディとアレンジがとにかく美しいんですよ。その音楽面があるのでどうしても無視出来ないんですが、こういうことは自分だけでなく、誰にも起きて欲しくないですね。同時にこれがこの3ヶ月、白人のアーティストの中では最も批評的評価の高い作品だったんですが、これが筆頭に来るくらい、今のロック系の批評は内向きなのか・・と、その閉じた感じも好きではないですね。

 

 

 

Emperor Of Sand/Mastodon

 

インディ・ロックが「悪くはないんだけど、なんかアピール弱いなあ」と思う中、「もう、そろそろ、良くなって来るのでは」という予感が自分の中にあり、ラウドなものも最近多少意識するようにしてるんですが、その中で一番良かったのがコレですね。マストドンは以前からも気にして少し聴いてはいました。やっぱ、上塗り感のないソリッドなギター・サウンドに手数の意多いドラムは好きでしたから。ただ、これまではどこか僕みたいな非メタル系の人がアルバム全体を聴くにはしんどい瞬間があったんですけど、今回のアルバムはこれまで以上に音が削られていて、かつ、過去最大にメロディックでスクリームもほとんどなかったので、僕には非常に聴きやすく、ストップ・ボタンを押さずにフルで何回も聴けました。クリーパーってバンドも良かったけど、やっぱりクオリティではコレですね。ただ、音は良くても、ジャケ写はあいかわらず苦手なので、上の9分割からは外しました(笑)。

 

 

 

The Navigator/Hurray For The Riff Raff

 

 今回のリスト、「順位はない」と先ほど言いましたが、1位だけは存在します。これです!

 

 これはフレー・フォー・ザ・リフ・ラフという、女性のシンガーソングライターで、本名をアリンダ・セガーハといいます。彼女はプエルトリコからのブロンクスへの移民の子孫で、今はニューオーリンズで活動してるのかな。そこで彼女はフォークが一応軸ではあるんですが、そこにロックンロールっぽい要素を入れてみたり、彼女のルーツであるカリブ系のラテンのリズムを混ぜてみたり多彩なサウンド展開をしています。そのサウンドの上に、力強いアルトの歌声を聞かせていて、生で聴くと間違いなく迫力ありそうで、今、一番ライブが見たい人です。こういう人が今までなぜ埋もれていたのか謎です。今まで結構な数のアルバムが出てるのですが、今回、レヴューの良さが働いて、イギリスで76位まで上がっていますね。

 

 そしてこのアルバム、なぜ「今」を象徴している作品なのかというと、それは本作が「移民ライフ」を描いたものであり、ときにその疎外感をも歌っていることですね。このトランプの嫌な時代の中で生まれたある種の象徴的作品ですね。実はこうしたアプローチを行なった作品は批評の世界では、ほかにもリアノン・ギデンスやヴァレリー・ジューンという女性シンガーソングライターもいて、彼女たちもチャートに顔を見せるくらいの成功はしていますけど、その中でもこのアリンダが一番パワフルだなと僕は感じています。

 

 

・・と言った感じですね。

 

 

 ただ、4月以降、次の3ヶ月がむしろすごく楽しみなんですよね。今日はファーザー・ジョン・ミスティやフューチャー・アイランドの発売日だし、来週はケンドリック・ラマーの新作が突然出ることが決まったし、月末にはゴリラズ、6月にはLordeやフリート・フォクシーズがありますからね。さて、どうなるか。

 

author:沢田太陽, category:評論, 18:20
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