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最近の意外なフェイヴァリット(2)ロザリア 世界的に流行るかも!?モダン・フラメンコの新星

どうも。

 

 

昨日はサンパウロではワン・デイ・フェスがあってLordeなど、結構豪華なライヴを見てきて、そのまま帰ってソファーに突っ伏して寝てました。その報告は日本時間での日曜のポストで。

 

 

今日は、昨日に続いて、「最近発見した意外なフェイヴァリット・アルバム」二つ目行きましょう。これです。

 

 

 

この、ロザリアという女性アーティスト。アルバムは「El Mal Querer」。タイトルがスペイン語であることからもわかるように、スペインのアーティストなんですが、ジャンル、なんとフラメンコです!

 

 

このようにパッと見はアイドルっぽい雰囲気もあったりするんですが、まずは聞いてみましょう。

 

 

これが一番キャッチーですかね。今回のアルバムは彼女のセカンド・アルバムなんですが、かなり斬新なアルバムです。フラメンコをヒップホップやEDMを通して表現した、かなり実験的な作品です!

 

 

 この曲なんて、フラメンコのハンドクラップのリズムを、これ、多分ループで繋げてグルーヴにしてるんだと思うんですが、これをバックトラックにしてR&Bのように聞かせています。

 

 

このトラックそのものでも、かなり技ありで、路線的にはカミーラ・カベーロあたりが次のアルバムのヒントにしそうな感じもあるんですが

 

 

 

 この子、彼女は25歳なんですが、彼女の場合、ヒップホップやEDMの取り入れ方があまりポップでなく、それこそLordeみたいに、音数をかなり絞って、ちょっとオルタナティヴな雰囲気も漂わせているのも特徴です。

 

 

 彼女は最近、このアルバムがピッチフォークで8.8ポイントを獲得してベスト・ニュー・ミュージックに選ばれたのでそれで知った方ももしかしたらいらっしゃるかもしれないんですが、僕に関して言えば、半年くらい前から知っていました。それは同じくスペインのガールズ・バンド、ハインズが「最近のお気に入り」としてロザリアの名前を挙げていたからなんですね。その時に「えっ、フRタメンコなの!?」と驚きましたからね。

 

 実際、スペインだと

 

 

老舗のロック・メディアがアルバム前に大プロモーションを行うほど、「ロックファン、インディ・ファンでも評価するフラメンコ・アーティスト」として認知されている人です。

 

彼女、今、スペインでは大ブームで、今回の上のアルバムがアルバム初登場で2位になったのに伴って

 

 

去年の2月に出た、このデビュー・アルバムもトップ10返り咲き、9位まで再浮上する事態になっていますが

 

このデビュー作が、路線がぜんぜん違う!

 

これも驚きなんですよね。

 

 

 

 

こっちはかなりストレートに、トラディショナルなフラメンコです。この曲のように全編アコースティックで、彼女の”声”そのものがかなり強調されています。ロザリアは声にすごく特徴があって、声質はすごく今時の女の子みたいな感じで、トーンで言えばアリアナ・グランデを思わせるような感じではあるんですが、それでいて、ちゃんとジプシー・キングスのような「♩アアアアアアアアア」みたいなビブラートきかせて延々と伸ばすような、スペイン伝統音楽の基本はかなり抑えてる雰囲気があるんですよね。基礎がありながら、しっかり、今っぽく聴かせることができている。デビューの時の評価は多分、そんな感じだったのかな。

 

 

 で、今回のセカンドで、「フラメンゴ以外のリスナー」に、その実力を知ってもらうべく、モダン・アレンジで作ったんだと思うんですが、プロデュースについたエル・ギンチョと云う人がどうやらかなりの才人でして、今時のクラブ的なテイストで聞かせながらも、彼女の”生歌”を強調すべく、下手にシュガー・コーティングしてないんですよね。実際、2曲くらい、ほとんどバックトラック無しで、声だけ聞かせているような瞬間さえありますからね。

 

 

 あと、彼女の場合、全ての曲でソングライティングやってます。ほとんどの場合がプロデューサーと2人の名義なので、ベーシックな部分は彼女が書いてるかと思われます。

 

 

 彼女、もうすでに英語圏への進出、本格的に始まってもいまして

 

 

 

このようにイギリスで、BBC定番の音楽プログラム「Later With Jools」でも先月にパフォーマンスを行っています。

 

 

最近、アメリカのマーケットでも、コロンビア産のレゲトンが売れたり、カミラ・カベーロの「ハヴァナ」とかカーディBの「I Like It Like That」みたいなラテン・フレーヴァーの曲が大ヒットしているし、ロザリアが受容される土壌、かなりできてるような気がしてます。ぶっちゃけ、最初からポップ向けにコーティングされていたシャキーラより、音楽的バックボーンがはっきりしていて、エッジがある点でも、僕個人的にはすごく好感持てます。

 

 

 僕の年間でもかなりいいとこ行く気がしています。昨日のバーブラだと「トップ50のどこかに」という感じでもあったんですけど、このロザリアに関しては、25位より下回ることはないですね。10位台かなあ。さらにハマれば逆転でトップ10もありえてしまうような感じでもあります。ワールドカップの頃に「非英語圏のロック・アルバム101」という企画をやりましたけど、その「102」に加えたい気持ちが強い作品でもあります。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:アルバム・レヴュー, 17:07
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最近の意外なフェイヴァリット(1)バーブラ・ストライサンドのプロテスト・アルバム

どうも。

 

 

おとといから年間ベストのリスニング初めています。トップ10はもう候補は決めてて来週前半には確定しますね。

 

 

ただ、年間ベストは50位からのカウントダウンなので、そこからが大変なのです。そこで色々聞かないといけないのでね。12月の頭までに決めないといけないので。

 

 

で、その50位以内のピックアップ候補も聞いてるんですが、最近、そこに入りそうな、面白い意外なものを2枚発見したので、今日と明日で紹介しようと思います。

 

その一つが

 

 

 

この、バーブラ・ストライサンドの新作「Walls」ですね。僕が彼女をアルバムで聴いたのって、20数年ぶりだと思うんですけど、これ、面白いんです。

 

 

これねえ、何が面白いかというと。

 

おそらくポップ・ミュージック史上、最もコンサバな音楽で構成されたプロテスト・アルバムだから!

 

 

音楽的には、ストリングスを主体としたバラードという、この人でしかない作品で、お上品過ぎて時にトゥー・マッチにもなるのですが(苦笑)、でも、歌詞をかなりハッキリ歌う人なんで、英語がクリアに入ってくるんですよ。そこで歌われている内容が「おおっ!」と耳をひきつけるのです。

 

 

 

これがシングルになった「Dont Lie To Me」。いかにもセリーヌ・ディオンが歌いそうな曲調なんですが、ここで歌われている歌詞というのが、まあ、このオフィシャルのビデオ見てもらえばわかるんですけど、かなり強烈な、ドナルド・トランプに直接的に宛てた内容なんですね。

 

 

Kings and queens, crooks and thieves
You don't see the forest for the trees
Hand and heart, on our knees
You can't see what we all see

How do you sleep when the world keeps turning?
All that we built has come undone
How do you sleep when the world is burning?
Everyone answers to someone

 

王様に女王様、そして泥棒

木を見て森を見ずとはあなたの事

手や心、地面に跪いて感じられるようなことを

あなたは見ることができない

 

世界が動いている最中にどうやったら眠れるの

私たちが築いたものはまだ出来上がってもいないのに

世界が日の車の中、どうやったら眠れるの

もう、みんなが答えを知っている

 

・・という感じですね。

 

 

他の曲でも、タイトルl曲の「Walls」は、もうそのもの、トランプがメキシコ国境に築く壁のことです。

 

 

あと、カバー曲もあるんですが、それが例えば、ジョン・レノンの「イマジン」にルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」を挟んだものだったり、バート・バカラックの名曲でジャッキー・デシャノンでヒットした「What The World Needs Now」、そしてバーブラ自身が1962年のデビュー当時から歌っている1920年代のスタンダード曲のカバー「Happy Days Are Here Again」のセルフ・カバー。どれもかなり明確な意図を持った選曲です。アルバムのシメが「幸せな日々はまたやってくる」でポジティヴに終わってるのも好感持てます。

 

 

基本を成すのはどれも、「世界の問題は憎しみでは解決しない。愛だ」ということが、もう、これでもかと繰り返されて歌われます。ただ、それを構成する楽曲が、どれもストリングスたっぷりでスローなんですよね。しかもプロデュースがウォルター・アファナシエフという、もうコンサバもコンサバな音楽趣味の人です。彼、マライア・キャリーの初期のバラードのほとんどを手がけてるような人ですからね。歌詞見なかったら、多分、聞いてなかったと思います(笑)。

 

 

 ただ、この違和感が逆に心地よいというか、「今の時代らしいな」と思うんですよね。今のこの世の中、基本人権無視したファー・ライトの勢力に怒る人なんて、もう、音楽の趣味とか関係ないですよ。誰もが腹立てていいことだし、そのプロテストの手段も様々でいいじゃないですか。要は自分自身の表現に素直になればいいわけで。

 

 

 あと、バーブラもそうだし、ツアーの先々で世界中の極右政治家批判を繰り返す元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズもそうですけど、年齢にして75歳超えてるんですよ!そういう人たちが、プロテストの声をあげてるのがすごいというか。年齢的に、後先もう考えないでやってる感じもすごいと思うし。「残り、決して長くない一生で、思い残すようなことしないで生きる」みたいな開き直りが、こういう行動に走らせている側面はあると思います。その意味、若い人より表現が過激になっちゃうのかな。でも、それでいいんだと思います。

 

 でも、バーブラの場合、これも思い出しましたね。

 

 

 

 

この映画「追憶」ですね。1973年から74年にかけての大ヒット映画で、テーマ曲は彼女最大のヒット曲でもあるんですけど、この映画で彼女が演じたケイティ・モロスキーって、第二次世界大戦時に社会主義活動に燃える政治運動家なんですよね。そんな女性の人生の一面を、甘いラヴ・ロマンスで包んだのがこの映画なんですけど、今回のアルバムって、よくよく考えたら、まんまこの映画の世界だな、と思った次第でした。その意味では彼女、ずっと一貫性はあるんだよなあ、とは思いましたね。そういう意味でも興味深かったです。

 

 

 

author:沢田太陽, category:アルバム・レヴュー, 20:01
comments(0), trackbacks(0), - -
アークティック・モンキーズ「Tranquility Base Hotel&Casino」1回目の視聴後

どうも。

 

 

 

今、まさにこのアークティック・モンキーズの新作「Tranquility Base Hotel&Casino」のアルバムの最後を待たずして文章を書き始めているんですけど

 

最高じゃない、これ?

 

これ、目にしたレヴュー、賛否両論が目立つんだけど、少なくとも僕は「否の立場」にはなれないな、これ。

 

 

だって、やってることすごいよ、これ!これ、言うなれば

 

アークティック・モンキーズ版「ペット・サウンズ」だもん、これ!

 

しかも、その本家と音楽的に同じことやってるわけじゃなく、アレックス・ターナーが自分の人生で影響を受けた音楽要素をもとにこれをやってるって感じですね。

 

そこには、例えばヒップホップだったり、60sのバロック・ポップだったり、ニック・ケイヴだったり、そういうので構成された、ダークでゴシックなペット・サウンズ。すごいよね。そんなもん、聴いたことない(笑)。

 

でも、ロックって、そもそもそういうものじゃないですか。少なくとも、僕が子供の時って、それで普通でしたよ。「自分が影響を受けた音楽で、新しいサウンドを作る」。それって、ロックが当たり前にやってきたことなんですよ。何かのフォーマットに則ってやるものではない。

 

 で、これを書いてて思い出したんですけど、僕、「AM」の感想でも実は同じこと書いてるんですよ。あのアルバムはすごくストレートなロックンロール・アルバムなんだけど、他のバンドで聞いたことのないような独自のアレンジのフィルターを通してのものだった。だって、未だにあれと同じようなロックンロール・アルバムって少なくとも他の若いバンドからはその後に出てきてないはずですよ。

 

 それを今回は、「ペット・サウンズ」とか中期ビートルズがやったような、「トータル・アルバム」の方法論で実践してみた感じですね。しかもこの、「ストリーミングの時代」ってことで他のみんながより1曲1曲の楽曲単位の方に目と耳が行きがちな時代に、「1曲が全体のピースの1部」みたいなアルバム作るって、すごく時代にケンカも売っている。面白いじゃないですか(笑)!

 

 

 で、決して、ギター・ドリヴンなロック・アルバムじゃないんだけれど、でも、同時に、エレキギターの存在なしではできないアルバムにもなっている。そこも気に入っているポイントです。これ、今も昔も同じなんですけど、「ロックで革新的なものを作りたい」ってことになった場合、どうしてもエレクトロとか電子音使ったものに走りがちで、人はどうしてもイメージで「そういうものこそ新しい」と思いがちです。しかもそれが、耳に聞き馴染みにくいポップ・ソングのフォーマットから逸脱していればしているほど実験的に聞こえるというか。「キッドA」期のレディオヘッドみたいなヤツですね。だけど、このアルバムがとった方法論って、編成楽器的にはそういうデジタルな電子音とかに頼ったわけでも、アヴァンギャルドな楽曲構成にこだわったわけでもなく、伝統的なポップ・ソングのフォーマットを残して実験的なことをやっている。そこがちゃんと普遍的なポイントになっているし、アレックス自身のロックへのこだわりを垣間見せた瞬間でもあるのかな、と思います。

 

 

彼らくらいの大きなバンドになると、「こういう音を鳴らしてほしい」というリクエストを勢いしがちな人、確かに多いだろうとは思います。その意味で好きになれない人というのも出てくるんだろうとは思います。だけど、そういう人でも、「今を生きるロック・アーティストとしての高い志」、それだけは理解してあげてほしい、そしてそれをわかった上で聴いていただきたい高度なアルバムということは忘れないでほしいなあとは思います。

 

 

まだ1回聞いただけだから、歌詞の吟味ができていませんが、そこでまた印象が変わるんだろうなあ。もう、午前3時なので2回目は起きて以降ですが、早くも次のリスニングが楽しみです。

 

 

author:沢田太陽, category:アルバム・レヴュー, 14:46
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