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沢田太陽の2018 年間ベスト映画 Top 10

どうも。

 

 

では、昨日のポストで予告したように、映画の年間ベストをやろうかと思います。

 

 

今まではですね、映画はあんまりやる気なかったんですね。というのはやはり、映画って国によって公開時期が全然違うし、日本とブラジルでも全然違う。で、僕の場合、今年は子守が忙しかったこともあって、家から遠い短館系でしかやってない、ヨーロッPやアジア系の映画をたくさん見損なっていて、そこもすごく悔いが残るところなんですよね。

 

ただ、今年の場合、幸いだったのは、「いい映画がたくさん思いつくくらいにあった」ということなんですよね。

 

では、今回はささっと行きましょう。トップ10はこんな感じです。基準はブラジルでの2018年の公開に合わせています。

 

 

こんな感じでした。

 

では、今回はカウントダウン的に手短な言葉でササッと行きます。

 

10.ブラックパンサー

 

 

10位は、もう世界のどこでも大ヒットした「ブラック・パンサー」ですね。これに関しては、もう、「黒人にスーパーマンは演じられない」とするハリウッドで100年くらい前からある定説を、黒人のアート美学と現状の最高の黒人映画スタッフを集結させて、最高の形で覆した意味でもう歴史的に大きいですね。マイケル・ジャクソンの「スリラー」の時みたいな高揚感があります。そのオーラがあるから多少の映画的なアラも許せちゃうほどのカリスマティックな勢いがあります。ただ、外せない作品ではありつつも、今年リリースのブラック・ムーヴィーでは僕のトップではなかったですね。なので、この位置です。

 

9.アリー/スター誕生

 

 

9位は現在日本で公開中ですね。「アリー/スター誕生」。これはレディ・ガガとブラッドリー・クーパーの想像を超える高い歌唱力と演技力に多くの人が釘付けになってますけど、僕的には、何度も映画化された定番作なのに、そこにLGBTや人種の問題といった今日的なソーシャル・イッシューのエッセンスや、今日のアメリカの音楽業界に対して一石を投じるリアリティ溢れる批評性を感じさせる点ですごく計算された、「今の時代に生きる古典」として息吹が吹き込まれたのがいいですね。この「解釈の力」によって、これ、傑作になってしまっていますね。

 

 

8.Love,Simon

 

 

8位は「Love,Simon」。これは軽いタッチで描かれた青春映画ですけど、ティーン・ムーヴィー好きとしては入れたい一作。これは主人公の少年が、葛藤がありながらも徐々にゲイであることをカミング・ストしていく作品で、メールのやり取りで心を惹かれた「カレ」を探し求めるお話。その、たどり着くまでの過程がひねりがあって退屈させないし、その間に起こる友人たちとの対立のシーンなんかを見ていると、「それこそ、青春らしい姿だよね」と微笑ましくなります。普遍的な要素も強くありつつ、新鮮さが感じられるのが良いですね。

 

 

7.レディバード

 

 

7位は「レディ・バード」。これは昨年の映画賞でも多くの賞をとり、オスカーでも高く期待された作品でしたね。”インディの女王”、まだ35歳に成ったばかりの女優、グレタ・ガーウィッグのほぼ自伝的な内容の。遠隔地の大学に行くことになる女の子の18歳の日常を描いた作品なんですが、もう、それこそ誰にでも起こりうるような話を、主演のシアーシャ・ローナンの説得力溢れる演技と、話のユーモア、人生教訓に溢れた深い言葉さえあれば、日常の些細なことで立派なドラマになりうることを証明した意味ですごく大事な作品だし、こういう日々のディテールから何から鋭くかぎとること自体に今後の「物語作り」の将来がかかっているのだなと強く思わされました。

 

 

6.犬ヶ島

 

 

6位は「犬ヶ島」。今年、というかここ数年は、まだ息子と娘が小さいので彼ら用の映画を多めに見ている時期なんですが、その中でも結構良いの多いんですよ。ピクサーの「リメンバー・ミー」、つい先日見た「メアリー・ポピンズ・リターンズ」、そしてギャグ・アニメ「ティーン・タイタンズGO!」まで良かった(笑、マジです)んですけど、やっぱり1作選ぶならこのウェス・アンダーソンの奇妙な一作でしょうね。この、黒澤明と、「AKIRA」と第二次世界大戦を奇妙にミックスさせた、子供向けの作品という(笑)。で、しかも犬の話というね。どうやったら、こういうの思いつくんだろうなあ。ウェスに関して言えば、新作があるたびに子供に映画館で見せ続ける監督になるでしょうね。ただでさえ、ワイフが「ラシュモア」以来の大ファンでもあるので。

 

 

5.フロリダ・プロジェクト

 

 

5位は「フロリダ・プロジェクト」。アメリカの新型のプア層の現状を描いた作品としては、フランシス・マクドーマントの「スリー・ビルボード」がパッと上がりやすいんですけど、どうもコーエン兄弟のモノマネ感が引っかかるそれよりは、僕は断然こっちの方が好きなんですよね。自分の住宅が持てず、安モーテルで違法の商売でその日暮らし。しかも幼い子供もいるのにドラッグまみれの生活。これがアメリカの現実なのかと思うとリアルにゾッとさせられるわけなんですが、キュートな、まだ7歳くらいの女の子のヒロインの、まだ何も知らない純粋無垢さがこの映画の救いだし、「これが、そのうち汚される瞬間が来るんだなあ」と思うと怖くもある作品でしたね。

 

 

4. The Hate U Give

 

 

 

4位は「The Hate U Give」。これは日本ではまだ未公開の映画ですが、素晴らしいです。今年は「ブラック・パンサー」を筆頭に、おそらくは25年ぶりくらいに黒人の意識の高揚を目的とした映画が目立った年なんですけど、この中でこれは、今の黒人の最新の現実を描いた作品として見逃せませんね。これはヒロインの幼馴染の青年が、白人警察官から乱暴な取り締まりを受け、誤解されて射殺された事件のあと、不利な裁判展開が予想される中、まだ未成年のヒロインが抗議運動を起こす話なんですが、こういうのを見ていると2012年のトレイヴォン・マーティン事件が黒人コミュニティにとっていかに傷跡の大きな事件だったかがうかがえます。25年くらい前に「ボーイズ・ン・ザ・フッド」と云う似たヴァイブの黒人青春映画の名作があったんですけど、思い出しましたね。そしてヒロインを演じるアマンドラ・スタンバーグの成長ぶりが嬉しい。あの「ハンガーゲーム」にでてた小学生の女の子、順調に成長してますよ。

 

 

3.ファントム・スレッド

 

 

3位は「ファントム・スレッド」。ランクインしている映画はやっぱり最近の時勢を反映してソーシャル・イッシューを扱ったものが多くなりがちなところは自分でもあるんですが、ポール・トーマス・アンダーソンの映画がすごいなあといつも思うのは、彼は逆にそういう類の映画を一切作らないところですね。時代を無作為に選んで、ただある人の人生のストーリー・テリングを行う。で、その話の中に「一体、何が言いたかったのだろう」という想像の余白を見る人に必ず残して、100人100様の感想を抱かせる。この、1950年代の、一流デザイナーの不思議なラヴ・ライフを描いた一作も同様ですね。本当にイン対策になるのかはわからないですが、現代の名優ダニエル・デイ・ルイスは「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」以来のPTA映画でのケミストリーを見せていますが、その奥さん役の、静かな笑みを浮かべながらも実は怖い奥さん役の女優さんがすごくきになる映画でもありました。あと、アートワークの豪華絢爛さが優雅で目に眩しい作品でもありました。

 

 

2.ブラック・クランズマン

 

 

2位は「ブラック・クランズマン」。3本目のブラック・ムーヴィーなんですが、僕がそもそも黒人映画好きになったキッカケというのが他でもない、スパイク・リーの影響なんですよね。「ドゥ・ザ・ライト・シング」、「ジャングル・フィーヴァー」、そして「マルコムX」。大学生の時に見たこれらの映画を通じて、僕はヒップホップや60s、70sのクラシック・ソウルにもずいぶん凝ったものでしたけど、そのスパイク・リーが、久々にその得意の主題に真正面から戻ってきたのはやはり嬉しかった。しかも、「ブラック・パワー」の70年代前半の時代で、彼が本来得意とするえげつないブラック・コメディだったのが嬉しかったですね。黒人なのに電話で姿を偽ってKKKに入党し、代わりに親友のユダヤ人をKKKアジトに送って、その行動をスパイさせる。基本的にすごく笑えるのに、最後の方はどこかゾッとしてしまう。この味こそ、スパイク・リー・ジョイントです。ファンとしてこう言う映画を本当に何年も見たかったです。しかも主人公、そのスパイク・リー映画の主演常連の一人だった、かのデンゼル・ワシントンの息子でもありますからね。ただ、スパイクがこう言う映画を作らないといけない時は、黒人差別の問題があるという意味でもあるので、そこはちょっと複雑でもあるのですが。

 

 

では1位に行きましょう。これです!

 

 

 

1.君の名前で僕を呼んで

 

 

1位は「君の名前で僕を呼んで」。今年はいい映画、多かったんですけど、もう、これは自分の中で別格の位置を占めますね。これはLGBT映画というよりは、イノセントな少年の心情を描いた美しき青春ロマンティック・コメディであり、うるわしき文学作品でもありますねこの表現、何度か使っているんですけど、名作小説家つ映画の「ベニスに死す」の美少年タジオが別のタジオを見つけてその美しさに魅了されるような作品ですね。あと、舞台となったイタリアの片田舎の風光明媚な美しさと、所々にオブジェで出てくる帝国ローマ時代の石造彫刻の肉体的な凛々しさが、このゲイ・ロマンスを美しく盛り立てるのもいい。さらに言えば、これ、1983年が舞台というのも絶妙なんですよね。なぜなら、この年にエイズの症例が初めて世に発表されているわけで、ゲイたちがそういうことを恐れず(もちろん別の社会的な恐れはあったはずですが)に男を愛せた最後の時代でもあったわけで。しかも、ティモシー・シャラメ扮する主人公がこの映画でミドル・ティーンの設定のはずなんですが、僕とまんま同世代でもあるんですよね。その意味で、なんか自分にとってはどうしても避けて通れないものがあったというかね。劇中でかかるサイケデリック・ファーズの「Love My Way」が僕の1983年の日本での生活で巷でかかりこそしませんでしたけど、「時代の雰囲気」を彩る意味で違和感は全くないし、自分の中2時代を思い出して、劇中でこれが耳に入るとゾクゾクッとなったものでした。もう、これは何度見てもいい、「人生の100本」入りした映画ですね。

 

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 12:16
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年間ベストに見る、2018年の音楽傾向

どうも。

 

 

年間ベスト・アルバム、非常にたくさんの方にお楽しみいただいたようで光栄です。去年よりもだいぶアクセスも増えてます。すごく嬉しいです。あと、ワーストも。やっぱ反響あるんだなあ、あれ。幸いなことに、トップ10のツイッターでの「いいね」がワーストの2倍以上になったことにはホッとしてますが(笑)。

 

では、今日は、その年間ベスト、まあ、僕のだけでなく、他の媒体でもいろんな年間ベスト出てますけど、それらを通して、2018年の音楽シーンを改めて振り返ってみましょう!

 

 

まず、最初は、これですね。

 

 

^掬歸に女性の年

 

 いや〜、本当にそうでしたよね。僕も、The 1975が大逆転で1位さらっていくまで、女性アーティストでトップ5独占してたくらいなんですけどね。これ、今年に限った話でなく、例えば2012年にラナ・デル・レイでてきたり、13年にLordeとHAIM、14年にセイント・ヴィンセントが最高のアルバムを出したり、去年だってLordeの2枚目とかウルフ・アリスがあったりしたわけでしょ?そういう意味ではこの流れ、ずっと続いてるんですけど、今年はそれが特に顕著でしたよね。

 

少なくとも

 

 

この6人に関しては、とにかく圧倒的でさえあった!

 

僕の年間でも、ジャネール・モネエを除く5人がトップ10入り、ジャネールだって31位だったわけですからね。

 

で、便利な世の中でして、今、世界の名だたる有名媒体が選んだ年間ベストにポイントをつけて総合的に順位にしてくれるサイトがあるんですよ。それが

 

 

このAlbum Of The Year、略してAOTYというサイトなんですけど、このバナーをクリックすると、今、12月18日時点で86媒体の年間ベストの得点を合計した総合ベストが出てくるんですが、それを見ていくと

 

1位ジャネール、2位ミツキ、3位ケイシー、5位がカーディB、6位がRobyn、9位がクリス!

 

 

ねっ? もう、「独占」でしょ?

 

「なんでそうなるか?」と言われると、僕が思うに、リリースした当初の時に媒体の盛り上がりを覚えているからです。もう、6人が6人とも、いろんな媒体が、「もう、アルバム、最高なんだって!」という興奮が抑えきれてなかったですからね(笑)。で、聞いてみたらどれも最高で・・・ということだったんですよね。

 

 

で、これだけじゃありません。以下もまだ女性続いてます。10位にソフィー、11位に意外なまでに高く入ったアリアナ、12位、これも意外に高いコートニー・バーネット、13位に僕が選ばなかったティルザー、16位にノーネーム。女性のソロが16位までに10ですよ!

 

 だからですね、思うんですよね。

 

 2018年の年間ベストを選ぶ際に、トップ10に「女性ゼロ」だなんて、今年は絶対にありえない!!

 

 

 まあ、何かにあてつけて言ってたりはするんですけど(笑)、日本でもこういう才女タイプの女性をもっと積極的に紹介していかないと、これからの時代、洋楽にはついていけなくなる危険性、ありますよ。だいたい、ブリット・ポップの頃から、洋楽ロックファンというかメディアというか、「男尊女卑傾向」、ありましたからね。これ、「男のファンが女性アーティストに対して」の場合もあったし、「女のファンが女性アーティストに」の場合もかなりたくさんありましたね。僕、実例で結構覚えてますけど。だけど、その体質を変えていく努力はやっていかないと、本当に行き詰まると思いますよ。

 

 

 というのはやはり

 

最近のインディ・ロックでいい素材、これもほとんど女子だから!

 

 

一人はもう言うまでもなくミツキ。もう、彼女のことはさらに別枠で訴えてもいいくらいに思っていますが、彼女は「アメリカン・アジアン・インディロック」の筆頭格でもあります。今年、他にそんなに多くリリースなかったんですけどね。

 

 

そして他には

 

 

僕の年間でそれぞれ4位と13位、AOTYでも共に20位台だった、97年、99年生まれのサッカー・マミーとスネイル・メイルのSMコンビに

 

 

マタドール・レコーズでのソロですでに実績のある94、95年生まれの3人、左からフィービー・ブリッジズ、ジュリアン・ベイカー、ルーシー・デイカスの3人が集まったボーイジーニアスもあった。ルーシーはソロでもAOTYで30位台に入る健闘を見せてます。

 

だって、これの他にだってドリーム・ワイフもあったし、ペイル・ウェイヴスとかスーパーオーガニズムとかもあったわけじゃないですか。

 

 来年だって、もう1月からシャロン・ヴァン・エッテン、ジェシカ・プラット、ガールプールと楽しみなリリース続きます。年内にはエンジェル・オルセンも出るんじゃないかな。さらに、インディではないですけど、期待のティーン・ガール、ビリー・アイリッシュだってアルバム、出るでしょうし、もうかなり当たりそうな予感、出してますからね。

 

まあ、これ、日本だけの問題じゃなく、世界各国のロック系のラジオの問題でもあったりしますけどね。ロック系のラジオ局もかなり男尊女卑がひどく、なかなか曲をかけてもらえませんからね。ただ、男性の若いので魅力が薄くなってきている時代にそんな意地を張って才能あふれる女性を聞かせることができなくなったら、それこそ文化の破壊ですからね。なんとかしてほしいものです。

 

 

▲◆璽謄ストの国際化

 

 あと、これはサブスクの時代に連なる現象でもあるんですけど、もう今や「世界のどこに属していようが、ヒットは出せる」、そんな時代です。

 

 

 上の最初の写真の6人のうちの2人、クリスティーン&ザ・クイーンズのクリスはフランス人、Robynはスウェーデン。そして僕の年間15位に入れたゴーストもスウェーデンのバンド。この3つに関しては、今年、このブログでサッカーのワールドカップの際にやった企画、「非英語圏の100枚のロック・アルバム」に何もそれぞれの過去作を選んでいます。あの企画はひとえにこうしたことの伏線としてやったものですから。

 

 そして今やそこに、コレですよ!

 

 

ロザリア!

 

もう、僕はこのスペインのフラメンコ・ガールに今夢中でかなり上位に早速選んでますが、AOTYの年間でも、11月にリリースされたスペイン語のアルバムなのに、20位前後に入ってて、やっぱりビックリする人はしてますね。

 

 

これ、本当に流行ってほしいんですけどねえ〜。

 

 

これに対して

 

 

Jバルヴィンを筆頭としたコロンビアのレゲトンや、BTSを筆頭とした韓国のK-POPは、こういう年間ベストではさっぱりですね。Jバルヴィンは幾分あるんですけど、BTSに関して80いくつのリストの中でギリギリ100位にランクインしたのが一つあっただけ。こういうとこで内容をちゃんとアピールしておかないと、現在のブームというのが、リッキー・マーティンが流行ったラテン・ポップのブームの時みたいに、何も残さないで終わるような可能性につながりかねません。せっかく、非英語圏から上手い具合に台頭しているわけですから、クオリティで唸らせる段階に入っていかないといけないような気がしてます。

 

 

チャートでの大成功と裏腹の、R&B/ヒップホップの不安要素

 

 

ここ数年、絶好調だったR&B/ヒップホップですが、チャートのところでも言いましたけど、僕は正直、今ひとつだったと思っています。年間見てても、カーディB、トラヴィス・スコット、プッシャTの3つだけかな。商業面と批評面で両方成功したアルバムと言えるのは。僕もこの3つなら文句一切ない、素晴らしいアルバムだと思いますけどね。

 

 

ただ、一つは巡り合わせの問題でもあって、今年はケンドリックも、チャンス・ザ・ラッパーもアルバム出さなかったじゃないですか。あと、僕はどうしても役者以上の評価がまだできないチャイルディッシュ・ガンビーノも結局はあのシングル曲だけでしたしね。こういう、「良質面での主役」というのが出ないと、やっぱ盛り上がらないわけですよね。あとUKヒップホップでも、去年みたいなJハスとかストームジーがアルバム出してないし、彼らに続くスターも出ませんでしたしね。

 

 

 あと、これも既に言ってますけど、やはりエモ・トラップ、マンブル・ラップ系のネガティヴなイメージの悪さですね。これがだいぶ足引っ張ってます。リル・ザン、テカシはワーストに入れましたけど、リル・ヨッティとかコダック・ブラックも風当たりは強いし、XXXテンタシオンも物故者になったから外しただけで生きてたらワーストに入れてたと思うし、ポスティは確かに良くはなったんだけど、それは「ワーストに選ばれなくなったレベル」での話であって(笑)、ムーヴメントとしてポジティヴに評価するようなことでもないですしね。実際、今作でさえもまだかなり叩かれてますからね、彼は。

 

 

 そういうこともあって、今年はR&B/ヒップホップのベストには、かなりオルタナティヴなものを選ぶ傾向が目立ちましたね。僕個人的には、ノーネイムやアンダーソン・パクとカリ・ウチスを選んでますけど、ブラッド・オレンジやジ・インターネットも入ってて目立つ名前でしたね。

 

ただ、日本のメディアやその系のファンのチョイスを見てると、エラ・マイとかジョージャ・スミス入れてる人、結構多いですね。ただ、僕はその二人に関して言えば、ハッキリ過大評価だと思ってます。ジョージャはまだ経験不足ゆえに曲が一本調子。エラ・マイは自分で曲作らない上に、ヒット曲とそうでない曲との出来の差が激しい。彼女ら二人が今回の欧米の年間ベストで活躍していないのは、そういう理由からだと思うし、少なくとも僕はそう判断してます。

 

 あと、今年の年間ベスト見ていて驚いたのは

 

 

 

ティエラ・ワック。アール・スウェットシャツ、ヴィンス・ステープルズの3人、評判いいアルバム出したんですけど、どれもアルバムの収録時間の曲の長さの平均が1〜2分なんですよ! なんかハードコア・パンクのアルバムみたいですけどね。これ、ヒップホップの新しい流行になったりするのかなあ。僕はこの流れに関して言えば、正直まだ違和感があるので、ちょっとまだ判断を保留しますけど、面白い流れだとは思います。

 

 

ぅ蹈奪の今後

 

そして、最後は、そこはやっぱり僕が語ることなので(笑)、ロックでシメますね。

 

今年、ロックで目立ったというのは、一つはもう上で話したように「インディ・ロック・ガールズ」ですけど、もうひとつが

 

 

やっぱり、アイドルズとシェイムという、イギリスからイキのいいパンクバンドが2つ出てきた。これは朗報です!やっぱり、ロック、行き詰まったら、こういう「ロックンロールの原点」みたいなタイプのバンドに戻るのが一番です。僕も野郎に関しては、アメリカの大学サークル・ノリのmyspace時代のバンドに本当に辟易してたし、実際に圧倒的に華に欠けたそういうバンドたちのせいでシーンが地盤沈下したことは否めないですからね。才能あふれる女の子じゃなかったら、こういうガツンとしたヤツらの台頭を僕は求めたいですね。

 

 

 それから

 

 

 

理想的な形でのものではなかったにせよグレタ・ヴァン・フリートの成功や、そしてそして、当初の予想をはるかに上回る、「ボヘミアン・ラプソディ」の世界規模での大成功! これによって、クラシック・ロックの需要が世間で大きいことがハッキリと世に示されました!そういうこともあって、70sのハードロック・スタイル、今、真正面から説得力とクオリティの高さを持ったバンドが出てきたら、そのバンド、時代を制することができますよ。話題性があるうちに誰かが不意に飛び込んだら爆発しそうな気がしてるんですけど、ただ、そういうバンドが今どこにいるかが問題です(笑)。

 

 

そしてそして

 

 

やっぱThe 1975ですよ!
こうした「原点回帰」の方向性じゃなかったら、逆に彼らみたいに「全方向対応」みたいな包括方が強いと思いますね。今回のアルバムでやっぱすごいと思ったのは、エイティーズ好きな層にも、レディオヘッドとかの90s以降のインディ・ロックの層にも、トラップやEDMのミレニアム・キッズの層にも、全部に訴えかけてましたけどね。このアルバムでもうNMEとSPINでは年間1位。そしてシングルでは「Love It If We Made It」がなんとピッチフォークの年間1位。11月30日発売なので、年間は思ったより入ってはなかったんですが、それでもバンドなんだから、こfれだけ抑えられてば十分でしょう。もう、これからのロックの頂点争いは、彼らとアークティックの間で、ということになる気がします。
こういう「ポップ・キッズや上の世代にも訴える全方向」を今できるバンド、希少ですよ。強いてあげると、シャレ込みでパニック・アット・ザ・ディスコですけど、あっちの場合はインディっぽいクールなところが抑えられない点がアレなんですけど(笑、でもだんだん好きになってきてます)、1975がこの方向性打ち出した後に、いいセンス持った新しい才能が出てき始めたりすると面白い流れになるんですけどねえ。ただ、その代わり、かなりの才能ないと難しい話ではあるんですけど。
・・といった感じでしょうか。
今年もまた、Spotifyに僕の年間ベストアルバム50のプレイリストを作っています。50 Best Albums Of taiyo Sawada In 2018でけなくすれば出てきます。それこそ「Love It If We Made It」でスタートです。いい曲多いので、よかったらぜひ!
author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 19:11
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沢田太陽の2018 年間ベスト・アルバムTop50  10-1位

どうも。

 

では、お待ちかね、沢田太陽の2018年間ベスト・アルバム、いよいよトップ10の発表です。

 

 

ズバリ、こうなりました!

 

 

 

 

さすがにトップ10ともなると、ジャケ写見るだけでワクワクしますけどね。どれも本当に大好きです。

 

 

では、早速10位から行きましょう!

 

10.Chris/Christine And The Queens

 

 

10位はクリスティーン&ザ・クイーンズ。

 

もう、このクリスに関して言えば、僕は一昨年に、本国フランスから2年遅れでヒットしたファーストの時からとにかく大好きです。よりインターナショナル展開するであろうこのアルバムは楽しみで仕方がなかったんですけど、見事に期待に応えてくれました!前作は、おフランスらしい優美なソフィスティケイトされたアーティなエレ・ポップを聞かせてくれていたんですが、今回はそのオシャレ路線から一転、80sのちょっとR&Bテイスト寄りのサウンドに、バッサリ短く切った髪と同様(これでかなりLGBTウケが良くなってます)にたくましく進化。前作で、その吐息交じりの発声がズルいくらいにセクシーだったフランス語も、ちょっと聞き取りにくくはあるものの果敢に英語へと変わっていきました。ただ今回も前作同様、ダンスのコアグラフは完璧で、オーディオ・ヴィジュアルの総合勝負ということに変わりはなく、ダンスの指揮力に至っては前作より上ですね。トータルなセルフ・プロデュースの力に長けた、今、世界でも希少な、本物のアーティストだと思います。あえて注文をつけるならば、彼女のメロディメイカーとしての実力を高く証明した「Girlfriend」「Doesn Matter」「5 Dollars」と並ぶ前半に比べると後半がややパワー・ダウンしてるところですが、それが乗り越えられるようだと、その時はもう世界一ですね。

 

 

9.Astroworld/Travis Scott

 

 

9位はトラヴィス・スコット。

 

 もう今となっては、世界各国の誰もが取り入れたがるがために、トラップも急速に大衆的な音楽になりつつあるこの頃ですが、そんな中、「だからこそ、もう一歩先に」とトラップを進化させたいという強い意識を感じさせるのがトラヴィス・スコットのこのアルバムですね。しかも、今のR&B/ヒップホップのオールスター・チーム的な布陣で。ミーゴス、21サヴェージ、スウェイ・リー、ジュースWRLDといった若手から、ドレイク、フランク・オーシャン、ウィーケンド、さらにそれ以外からもスティーヴィー・ワンダー、ジョン・メイヤー、ジェイムス・ブレイク、さらにテイム・インパーラのケヴィン・パーカーですからね!トラックメイカーもドレイクでおなじみBoi 1daやNinteen85、ビヨンセでおなじみHit Boy、さらにトラップの売れっ子のマーダビーツにワンダガールまで。トラヴィス・スコットって、これまで「ゲストは豪華だけど彼自身の姿がよく分からない」と批判も受けてきましたけど、ここまでキュレーションがうまければ文句ないですね。しかも今回の場合、「遊園地を奪われた子供の気持ち」というイノセンスをモチーフにサイケデリックで未来的なトラックを作るというコンセプトもしっかりしています。彼のやり方だと金かかって仕方がないかとは思いますが、オールスターにこれだけクリエイティヴな意味があるのなら支持したいですね。

 

 

8.Tranquility Base Hotel & Casino/Arctic Monkeys

 

 

8位はアークティック・モンキーズ。

 

これは5月のリリース時に非常に物議を醸した作品でしたよね。だけど、ここでも反論させてもらいましたけど、未だに僕はそれ、理解できてません。だってこれ、路線そのものは、中期ビートルズにビーチボーイズにバロック・ポップという、ラスト・シャドウ・パペッツの構成要素に、ヒップホップとニック・ケイヴとデヴィッド・ボウイ混ぜて、それを60sのトータル・アルバム風に作りたかったって感じじゃないですか。しかも曲調そのものだって3rdの「Humbug」よりは断然わかりやすく、ポップで良質な曲も揃えていて。だからリリース直後にファンが一斉に拒否反応起こして、不要なマイナス・イメージ作って足引っ張ったのは非常にマズかったですね。メディアの批評まで彼らにしては不当に低い点で。それがリリース半年経った今、どうなったかというと、年間ベストで結構上位で健闘してるんですよね。前作「AM」ほどじゃないけど、「年間ベスト総合サイト」の「albumoftheyear」でもトップ10前後の高さで、同じ日にリリースされて点数が圧倒的に良かったビーチハウスよりむしろ順位、上ですよ。それだけに、すごく悔やまれます。ただ、そこも含めて、やはり非凡なアルバムなんですよね、豪速球タイプだった「AM」から巧みな変化球へ。こう言うレンジが見せつけられるのも今、彼らくらいじゃないですか。その意味ではやはり、今のロックには不可欠な「真打ち」です。

 

7.Honey/Robyn

 

 

7位はRobyn。

 

Robynというと、もう2000年代の半ばから、「ニュー・レイヴ」の界隈ではすごく人気があって、2010年の2枚のEP「ボディ・トーク」は本格的なエレクトロのファンにコアなところですごく愛されたロングセラーでした。ただ、その後、途中、ロイクソップとの共作アルバムはあったものの音沙汰なし。「どうしたんだろう」と思っていたんですが、今年、ようやく戻ってくれました。しかも、さらに成長した姿を見せる形で!冒頭の、先行シングルにもなった「Missing U」は「これぞRobyn!」という感じの会心の1曲だったんですが、今回もこれまで同様、テディベアーズのクラス・アールンド主体の作品ではあるんですけど、2005年のセルフ・アルバムや「ボディ・トーク」がどちらかというとキレの良いアッパーなチューンが目立っていたところ、このアルバムは若干ダウン・テンポで、より全体の流れとつながりを意識した、これまで以上に表情豊かなアルバムです。その理由としては、活動が止まっていた理由にもなっていたスウェディッシュ・エレクトロの盟友クリスチャン・フォークの死と、今回から製作陣に加わったメトロノミーのジョセフ・マウントの力が大きかったかな。でも、やっぱり今作はRobyn自身の声かな。眉間に皺寄せて、喉から懸命に振り絞られるあのキュートなハイトーンが彼女の魅力ですけど、その痛々しい声の紡ぎがこれまで以上にソウルフルで胸を打ちます。

 

 

6Joy As An Act Of Resistance/Idles

 

 

6位はアイドルズ。

 

イングランド南部ブリストル出身の5人組の彼らですが、アイドルズを抜きに今年のロック、いや、ロックンロールは語れません。コッテコテのブリティッシュ・アクセントでのぶっきらぼうな歌い方に、怒涛のスピードに乗せたヒリヒリするようなフィードバック・ノイズ。そして、垂直にポゴ・ジャンプしながら、人差し指立てながらサビで合唱したくなる欲求不満のアンセム。かようにも、原初的かつ直情的な「初期パンク」の衝動性を持ったもの聴くの、一体いつ以来なんだろう。しかも、多少、ルックスは良くないながらも(笑)、イギリス国内のパブに長時間たむろしてそうな、ワーキング・クラスのちょっとクセのある大人たちが集まっている感じも、この歌を歌うにはすごくリアル。彼らとか、シェイムとかを聞いてると、パンクやポストパンクが本来どういうところから生まれたのか、改めて思い出されます。ロックが行き詰まった時に戻る場所があるとしたら、やはりこういうところですよ。まばゆいばかりの才女で溢れた今のロックシーンにおいて、野郎で対抗する(別に競争でもなんでもないですが)には、これくらいのパワーがないと、やっぱりダメだと思います。また、この前年に出たアルバムでの直情ハードコア路線から、楽曲のスケール感がグンと上がっているところにも強い伸びしろを感じさせます。今、最もライブを体験したい、リアルに熱いバンドです。

 

 

5.Invasion Of Privacy/Cardi B

 

 

5位はカーディB。

 

ヒップホップは僕の場合はこれが今年の最上位になります。カーディは今年、このアルバムもそうだし、フィーチャリングでも引っ張りだこだったから、どうしてもポップなイメージがついちゃって、ややもすると本格評価をする人が減りがちなところもある人なんですが、僕はこの人、ちょっとビックリするくらいの才能感じたんですよね。まず、驚いたのは、この人、ラップのフロウがトゥパックにソックリなんです。シングル曲聴いてた時点で、「どこかで聞いたあるんだよなあ、この感じ」と思った時に「そうだ!」と思ってトゥパック聴いたらやっぱりそうで。エモーショナルで人をやる気にさせるリリックを、独特なリズムと抑揚でスケール感膨らまして、バックのトラックに乗りやすいポップさを作るあの感じ。これ、全く同じこと、ケンドリック・ラマーのエージェントの社長も言ってるのでなまじ嘘ではないと思っています。これが根底の武器にあるからか、トラップでも、ラテン・ダンス・ポップでもバラードでも、どれが来ても軸が全くブレないんですよ。もうすでに今の時点で、トラップの時代が終わっても全然大丈夫な雰囲気さえ作り上げているのも立派です。スピードとかワード・プレイに関して言えばニッキ・ミナージュの方が上だとも思うんですけど、フロウと曲の記憶の残り方に関してはカーディの比ではないですね。しばらく彼女の時代、続く気がします。

 

 

4.Clean/Soccer Mommy

 

 

4位はサッカー・マミー。

 

僕は「良し悪し」と「好き嫌い」は似て非なるものだと思っていて、こういうベスト企画みたいなものは「良し悪し」で判断しているつもりですが、実は「好き嫌い」だとこのアルバムが一番かもしれないと思っています。サッカー・マミーことソフィ・アリソンはテネシー州ナッシュヴィル育ちの、1997年生まれの21歳。人生最初のスターがアヴリル・ラヴィーンでテイラー・スウィフトも普通に好きな子だったようです。前回紹介したスネイル・メイルが生粋のインディっ子だったのに比べると、そこまでマニアックな音楽に凝った形跡もありません。なんですが!いざ、曲を歌いはじめてみると、とにかく曲のセンスが抜群にいい!なんか無意識のうちにギターを抑える指が絶妙に洒落たコードを抑えている感覚があるというか。あと、周囲のセンスも絶妙なのか、なんかダイナソーJRを女の子っぽくキュートにしたようなギラー・アレンジあるし。あと、リリックも、まだ彼女と世代の近いスクール・ライフでのリアリティを描く才が巧みで、甘酸っぱい恋物語でのロマンティシズムや強気な女の子の気持ちをテンポ良いライムで畳み掛ける力もあったり。歌唱力など、まだミュージシャンとしての経験の浅さは伺えますが、天賦の職業作家の才能はものすごく感じるので、今後、その方面で大成する可能性もありです。いずれにせよ、インディ・ロックの枠を超えた活躍を期待したいです。

 

 

さあ、いよいよトップ3! 第3位は

 

 

3.Golden Hour/Kacey Musgraves

 

 

3位はケイシー・マスグレイヴス。

 

これも今年大絶賛のアルバムですけど、これは衝撃のポップ作ですね!少なくとも、これまでのカントリー・ミュージックの歴史で、ここまで実験的なアルバム、なかったですからね。インディ・ロックの世界では決して珍しくはない手法ではあるんですけど、やはりサイケデリックなアレンジとか、後期ビートルズ風の生スネアのディレイとか、ボコーダーとか、エレクトロのリズムとか、ディスコのビートとか、そういうものが一緒くたになったカントリーはさすがに聞いたことがない。しかも、ケイシーの書く楽曲そのものはカントリーのマナーを決して裏切っているわけでもなく、伝統楽器のバンジョーなんかもしっかり鳴らされているわけで。これ、カントリーどころか、現状のインディ・ロックよりも断然刺激的だったくらいです。本作をプロデュースで支えたの、ダニエル・タシアンと言って、2000年代にザ・ビーズという、地味渋なインディ・ロックバンドがあったんですけど、その中心人物。本作で一躍引っ張りだこのクリエイターになると思いますが、彼とケミストリーを起こして好ポップ・チューンを連発したケイシーのソングライティング能力にも脱帽です。そしてケイシー、「本当はテイラーにこそ、こうなって欲しかったんだけどね・・」と思っている、音楽にうるさい殿方たちのハートも、これで確実にわし摑みしたものと思われます。

 

 

続いて行きましょう。第2位は

 

 

2.Be The Cowboy/Mitski

 

 

2位はMitski、ミツキです!

 

いやあ、これはですね、結構感慨深いものがあるんですよ。僕の年間ベストというのは、基本「インターナショナル」で中学生の時からずっと来ているのですが、「邦楽」とカテゴライズはできないものの、それでも人生のある時期まで日本国籍のあった日本名も持つ人が2位になったのなんて初めてですよ。そしてもちろん、僕のこんなちっぽけな年間ベストだけじゃない。かのピッチフォークで1位になったのをはじめ、世界の名だたる年間ベストで軒並み上位(6媒体で1位、24媒体でトップ10)ですからね。やっぱり僕の職業柄、大坂なおみも勿論嬉しかったですけど、Mitskiの快挙の方が断然嬉しいことは否定できないですね。

 

じゃあ、Mitskiの何がそんなにすごいのかいうと、彼女の人種のことが国際的には色々言われますけど、それ以前にやはり僕は音楽的な才能の方が先だと思います。まずはソングライターとして非常に多彩なこと。インディ・ギターロックから、フォーク、(やや

)エレクトロ、バラードとどんなタイプでもキラーのメロディが書ける。この才能、かのイギー・ポップが絶賛した話はご存知ですか?そして、元がクラシックやってた人なのでポップ・ミュージックの通常の曲展開をいじってたり、とりわけ2コーラスめ以降を大胆に削ったりするももかなり刺激的です。そして、その上での、「USインディ・ロックにおける女性マイノリティの代表」ですね。彼女を筆頭にジャパニーズ・ブレックファストのミシェル・ザウナー(韓国系)とか、ジェイ・ソム(フィリピン)をはじめとしたエイジアン・インディ・ガールのブームの筆頭格になり、その血筋が「孤独・疎外感」をテーマにした彼女自身のリリックに説得力を与えているのも強みです。もう、ビルボードのアルバム・チャートでも52位まではすでに上がっているんですが、今回の年末でのこの盛り上がりで次作での期待感はハンパないものになるでしょう。その時は日本でも盛り上がって欲しいんですけどね。

 

 

ちなみに、ミツキのこのアルバムがですね、

 

 

11月29日の時点までは1位でした(笑)!

 

 

前も言いましたよね。その時までは「女性がトップ5独占」って。そう言ってた時の順位は「1位ミツキ、2位ケイシー、3位カーディ、4位サッカー・マミー、5位ロビン」の順だったんですよ。それが最終日の11月30日で崩れてしまったがために、上のように順位、いじりました。もう、独占することに意味がなくなってしまったから。

 

 

「どうせ、あれなんだろ」と言う声が聞こえてきそうですが、1位はこれでした。

 

 

1.A Brief Inquiry Into Online Relationships/The 1975

 

 

 

はい(笑)。勿論、The 1975でした。

 

「そんな、たった1日判断だけで、年間1位にできるものなのか」。そう思われる方もいるでしょう。ええ。でも、厳密にはですね、「たった1日」どころの話ではなかったですね。もう11月30日の配信開始直後の1回目のストリームの、まだ聞き終わらないうちから「あっ、もう、これが圧倒的に1位だね」と決めたから、正確には1時間以内でしたね(笑)。でも、選んで後悔も何も全くないですね。それは、「僕がこれがとにかく好きで好きでたまらない」からでは厳密にはなく、他の、2位から10位までに入ったアルバムとは、もう、「志」の時点で明らかに何かが1枚も2枚も違う、ただならぬ何かを感じたからです。

 

 その最大の理由は、彼ら自身が確信犯的に「名作を作るモード」になりきっているからです。そんなことを思いつく心境そのものがかなり図々しいんですが(笑)、それをやりきってしまうからすごいんです。その一つとしては「現状のロック以外の他ジャンルの音楽や、過去から未来のあらゆる音楽をジャンルに関係なく自分に可能な限り取り入れる」という無軌道な音楽精神があるんですが、彼らはインディ・ロックリスナーだけでなく、EDMやトラップにしか興味のないミレニアム・キッズに向けてもこれを正面から届けている。売れるために媚びるのでもなく、「そういう人たちは自分のリスナーにはならない」と切り捨てるのでもなく。前作では、今日のバンドがルーツに持たない「忘れ去られた80sの隠れたポップの宝」を再発見しようとすることで一部上の世代(僕とかのことです、笑。他にも結構知ってるけど)を味方につけましたが、そのソングライティングのセンスは今作もしっかり軸として残せてもいる。誰にも背を向けてないんです。あとはそこに、「ネットの世の中に抱える社会とコミュニケーションの問題」という現代的なトピックを彼らなりに咀嚼して、その一大音楽パノラマの主題にしているのも見事です。そこまでのことが考えられて制作されたアルバムが他に見当たらない。1位で当然です(笑)。こういう姿勢がロック界で受け継がれれば未来は明るいんですけどね。

 

 

・・というのが今年の僕の50枚でしたけど、楽しんでいただけたら幸いです。

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 02:22
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沢田太陽のワースト・アルバム2018

どうも。

 

 

では、リクエストにお答え(笑)して、ワースト・アルバムの発表に行きましょう。

 

 

いやあ、それにしても、クロスビートでの僕のワーストのコラムがそんなに読まれてたのには驚いてます(笑)。いつだったか忘れたんですけど、あれは、その昔にHard To Explain手伝ってもらってた杉山仁くんがクロスビートの編集に入った何年か後に、彼から「太陽さん、適役ですから」とか言われてはじめたんですよね。「なんだ、その適役というのは(苦笑)」と思いながら毎年選んでたわけなんですけど、何回選んだかな。記憶にあるのは、エアロスミスのすごい久しぶりのアルバムをワースト1に選んだときかな。普通に友達に「あれは、ひどかったなあ」と音楽談義するときみたいなノリで選んでただけのつもりだったんですけど、「あれ、読んでました」とか、結構言われること多いんですよね(笑)。なので、今年はクロスビートの年間、少なくとも僕は依頼されてないし、出るとも噂も聞いていないので、ここでやらさせていただきます。

 

 

本題に入る前に、まずは、「ワーストまではいかないけど、期待はずれだった」、そういうアルバムのリストを書いてみましょう。

 

 

(10 Disappointing Albums Of 2018)

Boarding House Beach/Jack White

High As Hope/Florence & The Machine

Scorpion/Drake

Superorganism/Superorganism

Anthem Of The Peaceful Army/Greta Van Fleet

The Now Now/Gorillaz

Delta/Mumford&Sons

My Dear Melanchory/The Weeknd

Ye/Kanye West

Culture !!/Migos

 

こんな感じですかね。もっと、あるような気もしますけど。

 

 

ジャック・ホワイト某誌年間で1位だったんですって?彼のことは大好きですけど、これはちょっとこねくり回して考えすぎというか、「時間経てば好きになるかな」と思ったんですけど、そうはならなかったですね。フローレンスは、世界のヘッドライナー勤めてる期待の人物のアルバムではなかったですね。なんかコンサバな女性シンガーソングライターみたいでつまんなかったです。ドレイクも期待したんですけど、ちょっと発表ペース落としたほうがいいですね。いい曲もあるだけに惜しいです。スーパーオーガニズムは、オロノちゃんの存在ゆえに日本でのハイプが高いのはわかるんですけど、「全員で曲を書くのが現代風」とか言う割に曲が全部同じなのはなぜなんだという疑問が僕の中で消えません。GVFは期待してて、それでもTop50、考慮したんですよ。でも、なんかEPの時の勢いが薄れた気がして。もっと気にせずZEP然としてよかったんですけどね。ゴリラズも、ちょっとアイデア切れかなあ。グッド・バッド&クイーンもいいけど、ソロかブラーやったほうがいいかなあ。マムフォードは曲のモチベーションが感じられなかった。すごくありきたりなアレンジばかりで。ちょっと心配です。ウィーケンドとカニエはこんな中途半端な感じでなく、ちゃんとアルバム作って欲しいですね。カニエはプッシャTとキッド・カディだけに良い曲あげちゃいましたね。

 

 

そしてミーゴスは、もうほとんどワーストでした。1回選んで外しましたんで。何がいけないって、「周囲が働かせすぎ」。量産できることを見せつけたいんでしょうけど、本人たちもトラックメイカーも追いついていないし、フィーチャリングも、ソロもやらせすぎ。昔のウータン・クランのラインを狙ってるのかもしれませんが、無駄に大量生産された無個性なトラップ楽曲が増えるだけだし、せっかくあったトラップの勢いが、音楽にうるさい人の間で落ちている一因にもなってましたからね。

 

 

では、お待ちかね、ワースト、行きましょう。

 

こんな感じになりました!

 

 

 

はい。こんな感じです(笑)。普通に、目の動き通りに、左上からが1位で、右下が10位です。クロスビートのスタイルにならって、1位から10位の順に手短に行きましょう。

 

 

1.Total Xanarchy/ Lil Xan

 

1位はリル・ザンですね。これはひどかった!エモ・トラップとかマンブル・ラップと言われてる人たちって若いキッズ(それも非黒人多し)には人気あるけど、アメリカのヒップホップ系メディアのフェイスブックのコメント欄見てても、ものすごくディスがひどくて、白人のインディ・ロック・メディアがもてはやすような「ヒップホップは今がいい時代」みたいな雰囲気、実はあんまりありません。結構、不満溜まってる人が多いです。今年の年間とか見ててもカーディとトラヴィス・スコットとプッシャT以外はほとんど、かなりオルタナティヴな方向に振り切ったものをベストに選ぶ傾向目立ってましたからね。

 

 その原因を作ったマンブル・ラッパーの中でも最悪なのはリル・ザンですね。トラックはどこにでもありそうなトラップで、いざ、ラップ始めたかと思うと、「イエ!イエ!」「オーライ!オーライ!オーライ!」とかで「てめえ、早くラップしろ、ふざけんな!」と軽くイラッとします(笑)。エモ・トラップ、概して嫌いではあるんですけど、まだリル・ピープにはそれなりにひたむきさは感じるし、ジュースWRLDは音楽的だし、リル・ウージはポエティックだったりするんですけど、彼にはそういう肯定的な要素が感じられません。よってワーストです。

 

 

2.Dummy Boy/6îx 9ine

 

2位も同じ感じですね。テカシ69。この人も借り物感バリバリのトラックがまず鼻に尽つし、ただガナり立ててるだけというか。あと、彼に限らず、エモ、マンブル系の人の最近のV系化がすごく気になりますね。アメリカで言ったら、80s後半から90s前半のヘア・メタルね。こういう、ファッション性とゴシップ性ばかりが先行して、曲が画一化するような感じになると、大概、ブームの寿命、あと数年です。時代の徒花カウントダウンは始まっているかと思います。

 

 

3.Revival/Eminem

 

3位はエミネムですね。これは厳密には去年の12月のアルバムですが、僕の場合は11月までが対象期間で始まりは前年12月なので、これもカウントされます。僕はエミネム、オールタイムだと非常に尊敬していて、このアルバムでもトランプ批判のところはすごく好きです。しかし、そんなにフィーチャリング・ヴォーカル立てて「スタン」みたいな曲ばかりにしなくてもいいのでは・・。あと、このアルバムで彼、最近のヒップホップ、ちゃんと聞いてないのがバレバレでしたね。この次の「カミカゼ」はそこのところは修正されてましたが、それでもまだまだですね。マシンガン・ケリーに「俺は45歳だけど、20代のお前よりまだ売れてる」と言ってましたが、実績はリスペクトしますが、最近の音楽、聞きましょう!

 

 

4.America/30 Seconds To Mars

 

4位は30セカンズ・トゥ・マーズ。これに関してはですね、とにかくジャレッド・レトですね。彼が俳優として、オスカー受賞したり大活躍なのはわかるんですが、それだけに「俳優の仕事、忙しいんだったら、無理して音楽活動する必要、ないんだからね」と云う感じのアルバムですね。これも非常に借り物感の強いEDMアルバム。ジャレッド本人は「僕はデペッシュ・モードやニュー・オーダーが好きだから、この路線はアリだ」といった記事を読んだんですけど、とてもそんな高尚なものには聞こえないし、どう聞いてもかなり安っぽいEDM路線。その発言を裏付けるのなら、せめてスマッシング・パンプキンズの「アドア」に近い感じに聞こえさせないと。あと、どうも、このあと、このバンド、続くのかなあ、とも思わせましたね、これ。

 

 

5.Mania/Fall Out Boy

 

5位はフォール・アウト・ボーイ。EDMに手を出して失敗というなら、こっちの方がさらにひどいですね。「もう、そんなのEDMでさえやってないよ!」とツッコミたくなる手法のオンパレードというか。元からこの人たち、音を敷き詰めて作るタイプのオーヴァー・プロデュース路線ですけど、それも悪い方に出てますね。せっかくフュールド・バイ・ラーメン、去年のパラモアは素晴らしかったし、今年のトウェンティ・ワン・パイロッツやパニック・アット・ザ・ディスコも彼らなりに奮闘してたと思ったんですけど、レーベルの稼ぎ主が一人足引っ張ってましたね。

 

 

6.Man Of The Wood/Justin Timberlake

 

6位はジャスティン・ティンバーレイクですけど、これは非常に謎なアルバムでしたね。タイトルやジャケ写からは「カントリーのアルバムでも作るのか」という感じだったんですけど、なんか本人がそのコンセプトに途中で飽きて投げ出したのか、いつもの曲も足されたら、これが変にアーティスティックな志向に行き過ぎて、よくわかんない複雑な曲になってしまっているという。彼のこれまでのアルバム、すごく好きなんですが、やっぱアイドルが自信もって自分で全てをコントロールしようとする際にこういうこと、起こりがちです。誰か親身になって、軌道修正させるべきでしょう。

 

 

7.Golden/Kylie Minogue

 

7位はカイリー・ミノーグ。これも非常に「姫・ご乱心」のアルバムでしたね。ダンス・ミュージックとカントリーの融合。なぜ、そんなことになってしまったのか。「これからは、こういう音が流行るのよ、カイリーちゃ〜ん」とか言って、スタイリストか誰かがそそのかしたとしか思えないですね、これ。次はフロアに戻っていただきたいですね。

 

 

8.Love Is Dead/CHVRCHES

 

8位はCHRCHES。これはもう、「ガッカリ」の意味合いでは最大ですね。ものすごく期待してたのに。セカンド大好きだったのに。今時、こんな「ブレイクを狙ってセルアウト」したのを感じさせるアルバム、ないですね。80年代じゃあるまいし。特に「Miracle」って曲がどうしても許せない。ヴォーカル・インの時点で嫌な予感がいたんですけど、サビ前で後ろの音抜いてサビで盛り上がるって、エイベックスじゃないんだから。これでだいぶインディの支持基盤失ったと思うし、期待したほど売れなかったから次どうするか。なんとかしなかったら、僕の方こそ「ラヴ・イズ・デッド」ですね。

 

 

9.Simulation Theory/Muse

 

9位はミューズ。ここ2作ほど、パッとしないアルバム続いてましたけど、これもだなあ。今作は、その昔の、大げさでドラマティックな彼ららしい「なんじゃこりゃ、ドッヒャー」な感じの曲展開を狙ったようにも聞こえるんですけど、曲が付いて行ってないから、なんかそれも不発というか。昔の「New Born」やら「Appocalypse Please」 やら「Super Massive Black Hole」とか随分濃い曲でしたけど、あれはやはり曲そのものが良いから成立していたドッヒャーだったんだなと改めて思った次第でした。

 

 

10.Always Ascending/Franz Ferdinand

 

そして10位はフランツ・フェルディナンド。彼らをここに入れるのは断腸の想いもあるんですけど、なんか聞いてて悲しくてですね。その昔、それこそHard To Explainやってた初期とかにはあんなに輝いてて、年間ベストのトップ争いしてたようなバンドが、今やそういうとこに全く引っかからなくなってしまった。調べたところ、70媒体くらいでてる年間ベストで2つか3つ、しかもそこでも50位にも入らないような感じで。ひとえに曲にひらめきがなくなってますね。ニック・マッカーシーのカッティング・ギターなくなった時点でかなりキツいとは思ったんですが、「何を今更」なエレクトロもどうかと思ったし。なんか、昔の最多勝投手が中継ぎピッチャーに降格して細々現役続けてるような感じがしてなんか悲しいですね。

 

 

・・といった感じでしょうか。では、16日、年間ベストのトップ10、発表します!

 

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 19:14
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沢田太陽の2018 年間ベスト・アルバムTop50  20-11位

どうも。

 

 

では、年間ベスト・アルバム、いよいよトップ20に入ってまいりました。行きましょう。今回はこんな感じです。

 

 

 

僕自身の思い入れもこの辺りになるとグンと上がってくるんですけどね。では20位から行きましょう。

 

 

20.Singularity/Jon Hopkins

 

 

20位はジョン・ホプキンス。

 

このアルバム、一つ大きな快挙をやっています。それは、アンビエントのエレクトロのインスト・アルバムで、全英チャートのトップ10に入っていることです。確か7位だった気がするんですけど、すごいことだと思います。確かにひところ、BBCでも一般のヴォーカル曲に混じってよく流れてましたけどね。僕は自分の中でエレクトロの優先順位というのはさほど高くはないのですが、エレクトロが最高だった90sに20代を通過したこともあって幸いにして名盤とたくさん出会えて自分なりの判断は出せるくらいにはなっているんですけど、このアルバムはそうした90sのエレエクトロの精神性が感じられる、ストイックで非常に美しいアルバムだと思いますね。全編通して鋭角的な電子音で、EDM以降の媚びた仕掛けもなく、ひたすらメロディと、大きな展開力だけで聞かせるアルバムなんですけど、そこになんか、そこはかとなく聞き手にそれぞれのストーリーを描かせる余白があるような感じがあるというかね。エイフェックス・ツインやボーズ・オブ・カナダの名作群を聞いていて思い出しましたね。こういう遺伝子が絶えることなく、今後も受け継がれていくことを僕は望みたいですね。

 

 

19.Dream Wife/Dream Wife

 

 

19位はドリーム・ワイフ。

 

これも今年の、とりわけ初めの方によく聴いたアルバムです。彼女たちはロンドンを拠点にしたフィーメール・ロック・トリオで、ちょっとカッコよさ気なギターとベースのお姉さんを左右にして、90sのティーン・ムーヴィー・クラシック「クルーレス」のアリシア・シルヴァーストーンを思わせる、アイスランドからやってきたフォトジェニックなブロンド・ガール、ラケルの舌っ足らずのセクシーなヴォーカルのコンビネーションが魅力です。この見かけの時点でかなり華があるんですけど、やってるのはかなり正統派なインディ・ロックンロールでして、いわゆる「ザ・ストロークス以降」の世代のタイプのバンドしては、ソリッドなギターも、ちょっと無機質なリズムの取り方も、ストロークス・フォロワーの中でもかなり出来がいい方だと思うし、そこに彼女たちなりのアイデンティティがちゃんと付与できているところも好感が持てます。今年は、この後に続々出てきますが「インディ・ロック・ガールズ」の当たり年だと思っているんですが、彼女たちも欠かせない存在です。所属レーベルのラッキー・ナンバーでも、彼女たちと、スペインのザ・ハインズと、ニューヨークのサンフラワー・ビーンと今年セットで売り出してましたからね。その中から誰が今後抜け出すかにも注目です。

 

 

18.Freedom’s Goblin/Ty Segall

 

 

18位はタイ・セガール。

 

今年のUSインディの男性を語る際に、このタイ・セガールの存在は欠かせません。僕の目から見ても「内気な大学サークル・ノリの男子バンド」はこのシーンでもかなり淘汰されたように見えるんですけど、タイは、ある時期のジャック・ホワイトやらライアン・アダムスと同じように、ひたすら楽曲を量産することによって存在をアピールしています。今年、これを筆頭に3枚リリースしていますからね。で、このアルバムもそうなんですけど、なんか、この人、「一人サージェント・ペパーズ」とか「一人ホワイト・アルバム」とか、そういうことして遊べそうな、愛すべきロック・バカ的体質がありますよね。メロディのセンスと音の録り方がマシュー・スウィートを思い出させるからですけど、ヒップスターみたいな感じじゃなくて、ああいうちょっとマッドな天才肌、個人的にはインディからもっと見たい気がしています。もう少し大きくなって、どうもここ最近考えすぎちゃってるのか、作品が伸び悩んじゃってるジャック・ホワイトをいい意味で刺激するような存在になって欲しいんですけどね。ちなみにタイとレーベルのドラッグシティ、このアルバムが出てから数ヶ月後に、ようやくストリーミングへの音源解放を始めましたが、それも音楽界にとっては非常にグッド・ニュースでした。

 

 

17.boygenius EP/boygenius

 

 

17位はボーイジーニアス。

 

ここ数年のアメリカでのインディ女子の強さには舌をまくばかりですが、このボーイジーニアスなんて、その象徴ですね。ルーシー・デイカス(右のブルネット)、フィービー・ブリッジズ(左のブロンド)、そしてジュリアン・ベイカー(真ん中のブラウン)という、いずれもここ数年でデビュー作を出して好評だった女性シンガーソングライターが夢の共演ですよ。実際、レーベルのマタドールもそういう打ち出し方してたんですが、全く期待に違わない出来でしたね。落ち着いたアルト声でソフィスティケイトされたインディ・ギターロックを歌うルーシー、ちょっとしゃがれたか細い声でフォーキーで時にフリーキーな「今日的な女ニール・ヤング」といった趣のフィービー、そして小さな体から驚異的な高音の伸びによるダイナミックな歌世界を聞かせるジュリアン。この3人の音楽性が一切の引き算なくプラスされ、さらには完璧な3声ハーモニーまで奏でられたら、もう言うことないですよ。これ、一回の企画で終わらせるんじゃなくて今後も続行希望ですね。「50年前のクロスビー・スティルス&ナッシュへの現代女性からの回答」みたいな存在にすでになれているから。そして3人とも1994〜95年生まれと非常に若い。いずれも本当に楽しみですよ。

 

 

16.Daytona/Pusha T

 

 

16位はプッシャT。

 

この6月に、カニエ・ウェスト絡みのリリースが5タイトル連続で続きました。いずれも7曲で統一されたものでしたが、もう、その中だったら、圧倒的にプッシャT。ズバリ、これしかないですね。このプッシャTは2000年代前半にヴァージニアのラップ・デュオ、クリップスのひとりとしてデビューし、ファレル・ウィリアムズ(当時ならネプチューンズ)のプロデュースでデビューし評判高かったんですよね。とりわけプッシャTはその後も「過小評価ラッパー」として長らく語られても来ていましたけど、ようやく、その実力に見合った評価とヒットをこれで記録しました。かねてから、こと「ドラッグ・ディーリング」の話を面白おかしくさせたら天下一品の評価だったんですけど、そんな彼の個性を、カニエが久々に得意のフレーズ早回しによる御囃子と、オールド・ソウルのサンプリングを微妙にカッコ悪く聞こえさせる手法で、プッシャのラッパー・イメージを巧みに掴むと同時に、カニエ自身がここのところ忘れかけていた、彼自身の初期の、まだユーモアに富んだラップとキャラクター・イメージを巧みに蘇らせていましたね。最近、いろいろ試すカニエですけど、ラッパー・デビュー時からのユーモア精神にあふれたサンプリングでの得意技、やはりこれに関しては10数年経とうがやはりベストなものに変わりはない。それがわかっただけでもかなりの収穫でしたね。

 

 

15.Prequelle/Ghost

 

 

15位はゴースト。

 

いわゆる”メタル”の中では、この数年、このバンドが一番好きですね。彼らの場合、そのコスプレ的な格好と「教皇がどうたらこうたら」のワケわかんないコンセプトのせい(笑)で、真正面から聞かれる機会というのをファン以外の人たちから勢い失いがちなところがあると思うんですが、僕は彼らを見つけた前々作の時から、その音楽に対しての重箱の隅というか、極めてマニアックなセンスに血眼ですね。彼らって、「見かけはあんななのに、曲は激しくもなく、キャッチーでもないじゃん」と思う人も少なくないかと思うんですが、それこそ”元祖ヘヴィ・メタル”、ブルー・オイスター・カルトのスタイルなのです。1970年代初頭、「サイケデリックでちょっとハードで、なんとなく安心できない気味の悪い音楽」をやっていたBOCについた呼称こそヘヴィ・メタルであり、今となっては忘れられているそんなところに目をつけるところが僕的なツボだったりもするんですが、彼らの場合、その発展のさせ方も面白い。このアルバムなんて、ボストンとかスティクスみたいな、70s半ばの「産業ロックという名のアメリカン・プログレ」みたいだし、そこに曲によっていきなりディスコとかサックス・ソロの要素足したりで「なんだこりゃ」感を増幅させてるのも面白い。この音楽性で、世界で10カ国くらいでトップ10入っているからすごいです。もっと注目されていい異質の存在だと思います。

 

 

14.El Mal Querer/Rosalia

 

 

14位はロザリア。

 

これは2018年の最大の衝撃の一つですね。だって、これ、”フラメンコ”ですよ!フラメンコと言ったら、やはりイメージとしては伝統音楽か、堺すすむの「なんでかフラメンコ」(大好きなんです、笑)のイメージしかなく、まさかポップ・ミュージックとして聞く日が来るなんて、夢にも思ってませんでしたからね。しかもこれを、もう見かけは完全にアイドルな可愛い女の子が、R&B聞くようなすごくカジュアルな感覚で、あの「オーレイ!」なハンドクラップとか、「アアアアアアアアアア、オオオオオ」という、ジプシー・キングスまんまの長いヴィヴラートのかかった歌声を差別化のアクセントにして、ものすごくポップに聞かせているわけですからね。「こんなこと、できるんだ」と、僕はとにかく驚きましたね。しかもこれ、フラメンゴに関して付け焼刃感が一切なく、仮にそのトラディショナルな世界だけでやっていたとしても第一人者になったであろう(この前作はこれとは対照的なアコースティック!)、基礎値がちゃんとあるのも見逃せないところです。それでいてライブ・パフォーマンス見たら、ジャネット・ジャクソンみたいなこともやっていたりして、創造性の拡張がすごいことになっています。国際的な売り出しかけるの来年みたいなんですが、これはスペイン発の世界的なセンセーションになるような気がしています。

 

 

13.Lush/Snail Mail

 

 

13位はスネイル・メイル。

 

スネイル・メイルは、まだ今年19歳になったアメリカン・ガール、リンジー・ジョーダンのバンドなんですけど、先ほどから何度も言うように、2018年は本当に女の子の年で、彼女たちがインディのロック・シーンを支えていてくれたと言っても過言ではありません。このスネイル・メイルも、リンジーの鮮やかなソングライティング能力と、ピクシーズくらいの時からUSインディのアイデンティティの一つとして脈々と受け継がれる、鋭角的な2本のギターのアンサンブル、これが見事です。この年で、曲の展開がここまで錬れることに素直に感服しましたね。その秘訣はどうやら、彼女の幼い時からの音楽リスニング体験にあるようですね。彼女のインスタグラムを覗いてみるとわかるんですが、リンジー、中学生くらいの時から、地元ボルチモアのライブハウスにやってくるインディ・バンドのライブにはことごとく通っていたようで、その頃からビーチハウスやらスクリーミング・フィーメールズやらプリースツやら、かなり通なものを見に行ってて、バンドもその頃からやってたようです。そういう、USインディ・ロックをカジュアルに聞いて育ったような彼女みたいな存在が、ちょっと停滞気味の今のシーンを変える原動力にならないものか。僕は期待しています。

 

 

12.Songs Of Praise/Shame

 

 

12位はシェイム。

 

「ロックのシーンが停滞した時に、一番効くのはなにか」となったら、やっぱり、「純度の高い本物のロックンロール」が一番です!この南ロンドンから出てきた5人組の、まだ20歳そこそこの若さのシェイムはまさにそんなバンドです。初期エコー&ザ・バニーメンを思わせる、ダークな中に鋭いエッジを併せ持つロックンロールを、若き日のジョー・ストラマーみたく、音程も気にせずにぶっきらぼうに歌いきる。そんなストイックなロックンロールの追求ぶりが彼らはすごく魅力的です。それでいて、初期のオアシスみたいなメロディックでアンセミックな曲を作る力もあってですね。いくらメディアの注目が遅れたからと言っても、これほどの力を持ったバンドが、なぜまだ最高位たかだか32位の位置に収まっているのか、本当に不思議でならないし、これが現状のロックの悲しいとこだと言わざるを得ないです。ただ、シェイムを筆頭として、現在のサウス・ロンドンのインディ・シーンが盛り上がり始めているのは事実だし、ここを起点にUKロックが息を吹き返したりすると本当にいいんですけどね。そういう期待感を持ったバンドが、今年は彼らと、トップ10に入れたもう一つのイキのいい存在と2つ見つかっているのはすごくポジティヴなことです。

 

 

11.Heaven And Earth/Kamasi Washington

 

 

11位はカマシ・ワシントン。

 

彼が現在のジャズに果たしている役割、本当に大きいですよね。60〜70年代、評価高くないけど、僕のリアルタイム体験からして80sもそうだったかな。マイルス・デイヴィスがジャズ以外のファンにアピールしているようなことを、今のカマシがやっている気がします。実は誰よりも実験的だったりするのに、そういう風に思わせることなく、極めて美しく敷居の低いフレーズ(あの、トレードマークになってるゴスペルのハーモニーは絶品!)と、ファンクからヒップホップからヴォーカル・フィーチャリングから万能になんでもこなせてしまう音楽性で、非ジャズ・ファンにとってのジャズの入り口になる。彼というのはそういうアーティストだし、そういう人こそが本物の存在なんです。ある人が本作を称して、「マイケル・ジャクソンのスリラーのようだ」とも表現してもいましたが、それもとどのつまりはそういうことです。親しみやすくバランスがいいから、2枚組で今のストリーミングのご時世から考えるとちょっと長すぎる収録時間を気にせずに聴き通すことができますからね。カマシ周辺の他にも、今はサンズ・オブ・ケメットをはじめとしたロンドンのジャズのシーンなんかも盛んになってくるなど大衆的にジャズが開かれてきたような感じがしますが、そんな中、今後のカマシがどういう表現をしてくるかにも注目です。

 

 

では、ワーストを挟んで(笑)、週末にトップ10、いきます!

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 12:26
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沢田太陽の2018 年間ベスト・アルバムTop50  30-21位

どうも。

 

アワードの発表がドドッと重なってましたが、年間ベストの続き、行きましょう。今回は30位から21位。

 

 

ラインナップはこんな感じです。

 

 

 

はい。こんな感じになりましたが、早速30位から行きましょう。

 

 

30.And Nothing Hurt/Spiritualized

 

 

30位はスピリチュアライズド。

 

スピリチュアライズドといえば、もう90sの前半から、イギリスではずっとリスペクトされ続けているアーティストですよね。今やジェイソン・ピアーズのソロ・プロジェクトですけど、彼がメンバーだったスペースメン3の頃から、UKネオ・サイケデリック・ロックの代表者であり、97年に発表した「宇宙遊泳」は、あの年の年間ベストでレディオヘッドの「OKコンピューター」とザ・ヴァーヴの「アーバン・ヒムズ」と1位を争ったほどでした。当時はもう、宇宙的なサイケ・サウンドだったんですけど、この後、ゴスペルを導入しはじめてより肉感的でヒューマンな感じに進化していたんですけど、このアルバムではもう、とうとうアメリカの60年代のルーツ・ミュージックというか、フォーク、カントリー、ソウルの領域にまで突入しましたね。こうした路線は「アメリカーナ」と言って、アメリカでもトラディショナルな伝統芸になってますけど、やっぱりジェイソンの場合、これまでの蓄積から、そこに未来的な浮遊感を刻み込むことができ、「古き良きもの」を過去の時間軸に押し込めることをせずに先に進める役割を果たしています。彼の世代のイギリス、優れたアーティスト、揃ってますけど、まだまだ才能は枯れません。

 

 

29.Oil Of Every Pearl’s Un-Insides/Sophie

 

 

29位はソフィー。

 

彼女は存在は、インディ界隈で話題だったPCミュージックというレーベルの仕事で一部で話題だったんですけど、その時は聞いてません。僕の場合、インディの一部のコアでウケてるものは、「そういうの追ってたら全体が聞けなくなる」と考えるクチで「本当に良いものだったらしかるべきタイミングで大きく注目される」と思うのでそこまで待つタイプなんですが、このソフィーのアルバムがまさにそういう存在です。ソフィー、聞いて思ったのですが、もう彼女の場合はエレクトロ内のジャンルがどうこう、という小さなレベルで収まる人ではありません。エレクトロ全体の基礎値が高いですね。ちょっと懐かしいハードコアな感じが案外強いんだなと思いましたけど、アンビエントも、ハウス(しかもかなりトラディショナルな感じの)も、ヴォーカル・フィーチャリングも、どれにも対応できるしっかりした素地がありますね。これがあれば、シーンの流れがどうあれ彼女なりの対応は十分可能でしょうね。その意味でエイフェックス・ツインに通じるものを僕は感じましたけど、今後、すごく楽しみです。トップ・クラスのセレブ系のアーティストが誰か早く起用しないかなと思いますけどね。

 

 

28.Iridescence/Brockhampton

 

 

28位はブロックハンプトン。

 

このブロックハンプトンは、インディ・ファンの間では昨年から話題になっていたヒップホップ・グループでしたね。ミックステープを3つだったかな、出していて。彼らの場合は、人種も混合だし、さらに言えば中心人物がオープンリー・ゲイということもあって、非黒人の、とりわけ刺激を求めるインディのファンがつきやすかったんですよね。そしてメジャーと契約して、拠点もテキサスから本格的にカリフォルニアに移してのメジャー第1弾。期待値も高く、評判も良かったのでいきなり全米初登場1位もとりました。彼らの場合、やはりフロントのケヴィン・アブストラクトのゲイというアイデンティティゆえ、マッチョで当たり前の他のラッパーとは自ずと視点が違ってくる面白さがあるし、アンダーグラウンドでずっとたたき上げてきただけあって、近年流行のトラップやマンブル・エモ・ラップにも目もくれない、昔ながらの正統派で通してるのも潔くて見てて気持ちいいですね。雰囲気として、90s前半当時のデ・ラ・ソウルとかトライブ・コールド・クエストみたいな当時「ニュー・スクール」とか「ネクスト・スクール」とか言われてた人たちと同じ匂いを感じます。ただ、まだ決定的な「自分たちの音」というのを確立してないのでそこが注文ですね。でも、まだ伸びしろもあって楽しみです。

 

 

27.I’m All Ears/Let’s Eat Grandma

 

 

27位はレッツ・イート・グランマ。

 

このローザとジェニーの二人は、デビュー前に注目された時がまだロー・ティーンだったことで話題になったんですよね。そしてセカンド・アルバムで、それでもまだハイティーンかな、その若さではあるんですが、かなりの成長した姿を見せています。耳をひきやすかったのは、さっき紹介したソフィーとホラーズのファリス・バドワンがプロデュースした、ちょっと刺激的なエレクトロ楽曲で、僕もそれを聞いて引き込まれたものです。ただ、ちょっと時間をおいて聞き返すと、そうした曲がむしろ「いいんだけど、ちょっとネクストLordeの線を周囲が狙いすぎかな」と思い、むしろ自分たちが主導で作った生ピアノを中心とした自作曲の方がやっぱりいいなあと思ったり。彼女たち、確かにLordeが「メロドラマ」での成長と引き換えに失われそうな良い意味でのおどろおどろしいダークな雰囲気を持っていてそこはミステリアスで惹かれるんですけど、その個性を伸ばすのに「Lordeっぽい路線」というのはわかりやすくていいんだけど、でも、それだけでも惜しい。そういう、伸び盛りゆえの未完成ぶりがこのアルバムの良さだったりするのかなと思っています。次のアルバムがさらに楽しみです。

 

 

26.Swimming/Mac Miller

 

 

 

26位は、マック・ミラー。

 

彼はこのアルバムを発表した1ヶ月後の9月に弱冠26歳で他界してしまいましたが、これはもう、本当に惜しい。惜しすぎる!ここ数年でようやく白人ラッパー、かなり台頭するようになってきましたけど、その中でマック・ミラーこそが筆頭格であることをこのアルバムは十分証明できてたんですけどね。まず驚いたのが、彼がこのアルバムで、アレンジャーとしてジョン・ブライオンを起用したことですね。ブライオンって、エイミー・マンとかフィオナ・アップル、ルーファス・ウェインライトで出世して、最近のインディ映画のサントラのスコアとか作ってる人ですよ。最近だったら「レディ・バード」とかもそうでしたけど、ジョン・レノンのコード進行でストリングス作れる人です。彼が半分以上絡んでたこともあって、人種に関係なく、他のラッパーができない表現世界に入れてたんですけどね。このアルバムではJコールも参加してましたけど、彼みたいなギミックなしの、自分のラップと音楽性だけで勝負できるラッパーになりたかったんじゃないかな。それができていたら、まだ白人ラッパーで誰もできていなかった「エミネム超え」を達成する最初のラッパーになっていたのにね。まだ途上な感じを漂わせて終わっているからなおのこと残念です。本当にドラッグが恨めしいですよ。

 

 

25.Sweetner/Ariana Grande

 

 

25位はアリアナ・グランデ。

 

マック・ミラーと連番にしたのは、ええ、もちろん意図的ですよ。現在大ヒット中の「Thank U Next」に出てくるマルコムはマック・ミラーのこと。彼が亡くなった時に、「元カレが苦しんでいるのに見捨てた」とばかりにアリアナも不本意に攻撃され、誰にとっても幸せなことにならなかった。ああいうのは見ててつらいですね。ただ、そのマルコム同様、アリアナもアーティストとして着実に成長していることを示した、これは見事なアルバムです。彼女はこの2作前の「My Everything」 から「楽曲で勝負できるアイドル」で売ってるところがあったんですけど、前作までなら彼女と最も相性の良いイルヤ・サルマンザーデのキャッチーなシングル曲で引っ張る所を、今回のアルバムは前半部をプロデュースしたファレル・ウイリアムスがシングル向きでない、でも、アルバムのクオリティは決して落とさないタイプの佳曲でアルバムの流れを作り、「Breathing」「No Tears Left To Cry」といったイルヤのシングル曲のある後半に徐々に盛り上げるという手法をとった。そのおかげで、「フィラー(穴埋め曲)」がなく、アルバムのトータルとしての完成度が上がっています。こう言う作り方を覚えて、次回、「Thank U Next」を主体にしたアルバムなわけでしょ。もう今からすごく楽しみです。

 

 

24.Oxnard/Anderson .Paak

 

 

24位はアレクサンダー・パク。

 

彼は2016年のアルバム「Malibu」で一躍注目され、「ネオ・ソウル世代のR&B/ヒップホップの期待株」として、自らドラムを叩く生バンドでフェスにもかなり積極的に出演して、満を持してのこのアルバム。結果、全米11位と大きく躍進はしましたが、コアなファンにはちょっとウケの悪いアルバムであります。なんか「メロが薄れた」とか「方向性がわからない」という意見が目だったんですが、僕はこれ、すごく気に入っていて、「方向性に迷い」どころか、彼のルーツがどこにあるのかをしっかりとアピールした作品だと思うんですよね。というのも、これ、全体を通してのエンジニア、ドクター・ドレなんですけど、彼の作るドラム・サウンドの鋭角的なキレとベースラインの太さがもうカッコいいんですよ、これ!ネオ・ソウルの中にしっかりとウェッサイなGファンク精神が生きてますが、NWAの故郷、LA郊外のコンプトン近くの、タイトルにもなったオックスナード出身のパクが作りたかったのはまさにこれだったんじゃないかな。このアルバムにも参加してますけど、コンプトン育ちのケンドリック・ラマーがスタイル全く違うのにトゥパックを神のように崇めているのと同じ感触をこのアルバムからは感じます。地元がつなぐ、過去のレジェンドとのミッシング・リンク。僕がジ・インターネットやブラッド・オレンジよりこちらを評価するのは、それが見えるからです。

 

 

23.The Future And The Past/Natalie Prass

 

 

23位はナタリー・プラス。

 

彼女も数年前から注目のシンガーソングライターですね。2015年のデビュー作が出た時から期待してる人です。元がジェニー・ルイスのバックバンドのメンバーとか、裏方仕事が長かったせいなのか、ちょっと表でのアピールが地味(3年前にライブ見た時にそう感じた)だなという印象だったんですが、今回のこのアルバム、前作の、バロック・ポップっぽいイメージからガラッと変わって、かなり垢抜けたアーバンなブルー・アイド・ソウルに変身してます。彼女自身が「ジャネット・ジャクソンぽい感じ」と表現した80sの、日本流に言うならシティ・ポップの感覚を現代流に表現しています。そうかと思えば、アレンジを取っ払って生っぽいアレンジでやった曲だと、まさに元祖ブルー・アイド・ソウルのローラ・ニーロみたいなテイスト出してきたりとかね。また、ジャネットであれローラであれ、ナタリー、声がキュートな感じでハイトーンだから、すごくハマるんですよね。正直、彼女にここまでの才能があるとは思っていませんでした。ただ、今出てる世界のいろんな年間ベストでも入ってることは入ってるんですが、その最高位がAmerican Songwriterって媒体が選んだ24位と、どうも低い。「オマエだって23位じゃないか」と言われそうですが(笑)。この辺りのアピールの地味さを今後どうするかに将来かかってますね。

 

 

22.Twin Fantasy/Car Seat Headrest

 

 

22位はカー・シート・ヘッドレスト。

 

現在のUSインディのギター・バンドでは、もう最高の実力派だと言い切ってしまいましょう。天才メガネ君、ウィル・トレド率いるカーシート。彼のことは2016年に出た前作から注目しはじめてますが、「声;ベック&ジュリアン・カサブランカス、曲;ストロークス&ペイヴメント」な、もうUSインディのギター・ロックのアイデンティティを考えると最高にツボなところを、実際にそのイメージを崩さずにやりきるソングライティング能力と表現力がありますからね。僕はこのウィルが、これから数年先のこのシーンのトップに立つと睨んでいます。まだ年齢も26と若いですからね。今年新作があって評判の良かったパーケイ・コーツよりは僕は断然こっちですね。このアルバムは、ウィルがまだ学生の頃に作ったデモテープみたいな古いアルバムの、正式には再録アルバムで、それがゆえに年間ベストにカウントしてない人も少なくないんですけど、そんな頃はまだほとんどの人が知らないわけで、純粋に新作として聴いて聞き応えのある作品でしたね。ただ、前作のときも思ったんですが、スケール感があるのはいいものの、とにかく曲が長すぎる!平気で10分超えちゃうような曲を、もう少しなんとかしてくれれば(笑)、もう言うことありません。

 

 

21.Room 25/Noname

 

 

 

21位はノーネイム。

 

このノーネイムですが、彼女のことはチャンス・ザ・ラッパー人脈としてご存知の方もいるでしょう。彼女もチャンスと同じく、レーベル所属を持たないラッパーです。ただ、拠点はシカゴだったんですが、現在はLAに移してまして、これが通算で2枚目、LAでは初のアルバムとなります。彼女なんですが、言われなければラッパーと気がつかれないくらい、見かけがフツーの人です。このラッパー・ネームも「ブランド物の服を着たことがないから」という理由でつけているんですが、この「Room 25」というアルバム名も「25で初めてヴァージン失った」という、およそラッパーの一般イメージとは遠い理由によるものです。ただ、いざラップをはじめてみると、これがメチャクチャうまい!バックはサックス・メインのジャズっぽい感じなんですけど、そこに超高速の彼女のラップが畳み掛けるように乗る姿は、聴感上、過去に聞いたことがないものですね。ダーティな雰囲気が歌詞にないのと、そのジャズ・テイストゆえにこれ、ポエトリー・リーディングにも聞こえるんですが、そういう感じにヒップホップを拡張できる才能だとチャンス以上、ケンドリックにも近いものを感じさせます。ヒップホップのマネーゲームに全く興味なさそうな感じなので、今後もマイ・ペースかとは思うんですが、シーンで一線を画した存在でいて欲しいです。

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 06:23
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