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その他の4月から6月の好きなアルバムと総括

どうも。

 

では、今日は昨日の続き、4月から6月のアルバムのことについて話しましょう。

 

この3ヶ月も好きなアルバムそのものはかなり多くて、泣く泣くトップ10から外したものも多かったんですよね。

 

順不同ですが、11位から20位をイメージしたら、こんな感じでした。

 

 

Hope Downs/Rolling Blackouts Coastal Fever

Vide Noir/Lord Huron

Singulariy/Jon Hopkins

The Louder I Call, The Faster It Runs/Wye Oak

Tell Me How You Really Feel/Courtney Barnett

Isolation/Kali Uchis

God's Favorute Customer/Father John Misty

Playboy Carti/Playboy Carti

Dirty Computer/Janelle Monae

Wide Awake!/Parquet Courts

 

 

とりわけ、上の4つは一時はトップ10に入れていた作品だったので、外れたことがすごく残念な作品ばかりです。

 

特にこれは入れたかった!ローリング・ブラックアウツ・コースタル・フィーヴァー。オーストラリアの5人組のすっごくカッコいいインディ・ギターバンドなんですが、これ、3本のギターのアンサンブルがクールな、オーストラリアのバンドです。80s初頭のニュー・ウェイヴ・ギターバンドをより鋭角的にしたみたいな感じですね。

 

 

 

こういう曲が一般にウケにくくなっているのは非常に残念ですが、これ、話題になっているところではかなり熱いリアクションがあったことも事実です。

 

 

これも入れたかったなあ。ロサンゼルスのバンド、ロード・ヒューロンのアルバム。彼らはアメリカのメジャー・レーベルが抱えているバンドであることが災いしたか、インディ界隈からはやや敬遠された観もあるんですが、このアルバム、実は全米でトップ10に入ったくらいは売れてます。さらに言えば、これ、プロデュース手がけたの、デイヴ・フリッドマンなんですけどね。フレーミング・リップスの黄金期とかMGMTの名作ファースト手がけた。僕としては。「デイヴ、またいい仕事、してるじゃん!」となったアルバムだったんですけどねえ。

 

 

この曲なんて、今からでも遅くないから、アメリカのラジオでプッシュされないかなあとまで思っています。

 

 

 あと、アンビエント・エレクトロで異例のアルバム・トップ10となったジョン・ホプキンスと、USインディの雄、マージが誇る、フューチャリスティックでサイケデリックでちょっとアダルトな男女デュオ、ワイ・オークも本当に大好きなアルバムでしたねえ。

 

 

 

このワイ・オークの曲も、地味といえば地味かもしれないけど、確実に趣味はいいんだけどなあ。

 

 

それからファーザー・ジョン・ミスティとコートニー・バーネットは好きなんだけど、それぞれの前作ほど好きじゃないんですよねえ。FJMに関しては今作の方が評判はいいんだけど、やっぱり今のご時世、2年連続みたいな感じで作品は出さない方がいいですね。間隔が開かなかったことで新鮮さに欠けたか、どこの国でもセールス下回っちゃいましたからね。後、彼の曲に関しては、上長に聞こえようが、前作での大胆な大作タイプの曲の方が僕は好きです。

 

 

 カリ・ウチスもすごくいいアルバムでしたね。ソングライティング陣の豪華さでは今年一番かもしれませんがヴォーカルがもう少し強ければなあ、というのは正直ありましたね。ラッパーのプレイボーイ・カリティも「プロデューサーの方の才能はすごいんだけどなあ」というとこで下げたとこはありますね。

 

 

それから、ジャネール・モネエ、パーケイ・コーツの二つ、それからビーチ・ハウスに関しては、世間の大絶賛レヴューほどいい作品だとは正直思わなかったんですよねえ。ビーチハウスの場合は、同じ日に出たアークティックとの比較が少なからずありましたねえ。「どっちがリスク背負った作品出したと思ってるんだ!」みたいなとこもあったりして(笑)。

 

 ただ、ジャネールに関して言えば、年末の前までにもう一回検証しようかとは思っています。アルバムの後半の、スティーヴィー・ワンダー絡んでからの展開はすごく好きなので。ただ

 

 

こういう感じの展開に関して言えば、なんか去年のセイント・ヴィンセントのアルバムとかぶっちゃったというかね。なんか「プリンスの憑依」と言い、エレクトロの展開といい、クィアなりのメッセージといい。いうなれば「勝負服、着てみたはいいけど、かぶっちゃった」みたいなアルバムだったなあ、という印象でした。そうでなくとも、サウンドの幅的にも前作の方が僕は好みでしたね。

 

 

 あと、滑り込みで出たドレイクやフローレンス、ゴリラズに関して言えば、悪くはなかったです。ただ、いずれも、僕がそれぞれの最高傑作と定めるアルバムにはかなり届かなかった印象が残りましたね。同じことはビヨンセとジェイZのカーターズにも言えたかな。

 

 

 ただ今回、20位までに入ったものに関しては、年間トップ50の候補ではあります。現状、7月から9月にあんまり新作インフォが届いてないので、案外ここからたくさん入ってしまうかもしれません。それから「やっぱ、聞き返してみて意見が変わった」というのもあるかもしれません。

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 13:38
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沢田太陽の2018年4月から6月のアルバム10選

どうも。

 

 

では、僕自身も好きな企画です。3ヶ月に1度のアルバム10選、行きましょう。

 

 

今回は4月から6月の3ヶ月でのチョイス。あらかじめ言っておきますと、1週間前くらいに今回の10選、「6月末のリリースがすごいので、2週前倒しで締め切り」と言いましたが、そのリリース作が案外それほどすごい感じもしなかったので前言撤回。6月いっぱいまでのリリースで行こうかと思います。

 

では、今回の10枚です。

 

 

 

 

この10枚ですが、早速語って行きましょう。

 

Invasion Of Privacy/Cardi B

 

 

まず最初は4月の頭のリリースでしたね。カーディB。これはアメリカで初登場1位になったのを始め、世界的に大ヒットしてますね。

 

彼女に関しては「Boddak Yellow」のヒットで昨年から話題だったし、エージェントも、彼女のダンナのオフセットも所属しているミーゴスと同じことから、トラップの新しい勢力の一つと見る向きが多いでしょうね。

 

 ただ、僕の場合は、その「トラップ最新型」という要素もさることながら、そういうこと抜きでも充分通用する、フィーメール・ラッパーとしての圧倒的な実力とチャーミングなキャラクターに惹かれましたね。彼女、どんなタイプの曲でもそつなくこなすし、ライム・フローが驚くほど聞きやすいんです。ものすごくポップにわかりやすく聞かせられるんですよね。「このフロー、どこかで聞いたことあるんだよなあ」と思い出してみると、それが実はトゥパックだったりもしてね。そのことはケンドリック・ラマーのエージェント、トップドーグの社長も全く同じこと指摘してるので確かだと思います。

 

それでしっかり、同性の意識を鼓舞するラップができるわけですからね。ニッキ・ミナージュも「口の動き」という意味では旨いんだけど、聞かせる説得力みたいなところでは彼女の方が上です。音楽のトレンドが変わってもしばらく女王なんじゃないかな。その意味でこのアルバム、エポック・メイキングです。

 

 

KOD/J Cole

 

 

続いて、これもアメリカをはじめ、全世界的にヒットしましたね。Jコールのアルバムです。

 

Jコールって、「ケンドリック・ラマー、最大のライバル」と呼ばれるくらいの実力派だったりするんですが、この前の2枚のアルバムが年末ギリギリの発表で、いわゆる「年間ベスト」みたいなところで語られてきていないアーティストだったりするのでコアなヒップホップ・ファン以外にはわかりにくい存在でしたが、ようやく年の真ん中でのアルバム発表となりました。

 

 そんなタイミングで出たこのアルバム、アメリカのレヴューの内容は実はそこまで良くはありません。それはテーマにしたドラッグ問題に関してのリリックに「今ひとつ真実味がない」というのが良く見受けられた理由でしたね。ただ、僕はそこはそんなに気にしていなくて、もっぱら彼の持っている実力そのものを評価したいと思っています。

 

 何度かここでも言っていますが、彼はラップするだけでなく、トラックもほぼ全部自分で作ってるんですね。さらに言えば、これを含めここ3枚のアルバムでゲスト・ラッパー、一人もいません。全部、彼一人でのラップです。今回、クレジット上ではフィーチャリング・ラッパー、いるんですけど、それは彼自身が演じた架空に過ぎません(笑)。そこまで徹底して「ガチンコ・ヒップホップ」にこだわってる人、今、他に誰も存在しませんからね。もう、そこのとこだけで愛さずにはいられない人です。

 

 さらに言えば、ジャジー・テイストが毎度濃くなっているトラックの進化もすごくいいですよ。

 

 

Tranquility Base Hotel&Casino/Arctic Monkeys

 

 

続いては、5月頭に大騒動。このブログでも話題にしましたね。アークティック・モンキーズです。

 

このアルバム、これまでの彼らのアルバムのようなストレートなロックンロール・アルバムではなく、サイケデリックかつソウルフルなテイストにも富んだ変化球的なアルバムだったがために、彼らのファンからは強い反感を買いましたね。あと、「これはラスト・シャドウ・パペッツで収めるべき範囲内のアルバム」という意見も多く目にしました。

 

しかし僕は、それだからこそ大いに評価したアルバムです。LSP、もしくはソロで掘り下げられるようなクリエイティヴィティがあるのなら、どうしてそれをアークティックで活かしてはいけないのか。僕はそっちの方がわからないし、アークティックの発展のためにどんどん試せばいいじゃないかと思うんですよね。しかも、ストリーミングで1曲1曲が分断されて聞かれやすくなっているこの世の中に対してあえて、60s後半のコンセプト・アルバムのような、「1枚通して聞かないと意味がない」ようなアルバムを真正面から出してきた。その、一見時代にも反するような冒険を、ファンからの反感というリスクを背負いながらもあえて行ってきた。その勇気も讃えたいんですよね。それでいて楽曲構成の完成度も高いし、リリックの彼ら自身に対してのリアリティもヴィヴィッドなままですしね。

 

 もっと書きたいとこですが、12月の年間ベストの際に書くネタがなくなると困るので(笑)ここまでにしておきますが、ロック界にとってもすごく意義のある作品だと思ってます。

 

 

Daytona/Pusha T

 

 

続いては6月のカニエ・ウェスト5週連続リリースから1作。その第1弾だったプッシャTですね。

 

今回のカニエのシリーズは僕的には「3勝2敗」って感じでしたね。これとカニエとキッド・カディのKids See Ghosts、女性R&Bシンガーのテヤナ・テイラーは良かったと思うんですが、カニエ本人とNASのアルバムは正直今ひとつでしたね。なんか、この2つにいいトラックが回っていない感じがしたのと、NASの場合は主題が見えにくかったのと、カニエとのトラックの相性があんまりいい感じがしなかったんですよねえ。

 

 そんな中、プッシャTとカニエはバッチリだったと思います。プッシャTはもともとカルト支持の強い40代のラッパーで、ファレルにプロデュースされていたクリップスというラップ・デュオの時代から、ヤバめのドラッグ・ディール・ネタで有名だった人ですけど、今回もこの悪趣味極まりないジャケ写(ホイットニー・ヒューストンの晩年のドラッグ付けのドレッシング・ルーム)が象徴するように、ディーラー・ネタを軽妙なユーモアとともに展開しています。

 

 これだけだと、「英語わかんないと理解できないよ」となりがちですが、ここでのカニエのトラックの冴え、見事ですよ。新しさはないんですけど、得意技のオールド・ソウル下敷きの、決めフレーズの「ここぞ」の電撃的なはめ込み。これに関しては、どんなに言動がおかしな方向に進もうが、さすがに右に出る者がいない名人芸だなと思わされましたね。なんで、こういうトラックを自分のアルバムに取っておかなかったんだろうとさえ思いましたからね。

 

 

Prequele/Ghost

 

 

 続いては、今度はメタルですね。スウェーデンのゴーストです。

 

 ゴーストといえば、今やスリップノットに続く世界的なコスチューム系のメタルバンドとして名高いですが、このアルバムでとうとう世界的にトップ10に入るバンドになりましたね。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランス、スペイン、そして本国のスウェーデンで10位以内で初登場しましたからね。もう、立派な世界的アクトですよ。

 

 ただ、僕自身が彼らに惹かれているのは、そうしたギミックの部分ではなく、むしろ音楽性ですね。この人たち、区分こそメタルであるものの、サウンドそのものは世間が一般的に想像するようなメタルとは随分違いますからね。ルーツとなっているのはむしろ70sのアメリカン・ハードロックみたいな感じで、同じ悪魔の系譜でもブルー・オイスター・カルトみたいな、「ヘヴィというよりは、モワッとした気持ち悪さ」みたいなニュアンスが強いですからね。ヴォーカルも、オペラみたいなハイトーンで歌うわけでも、デス・メタルみたいなシャウトをするわけでもない、普通の人の歌声ですからね。

 

 今回のアルバムは、そうした「アナログ世代」なハードロックが展開された作品で、聞いててボストンとかスティクスみたいな、その昔「産業ロック」なんて揶揄された70sのアメリカン・プログレな風味があり、そこに初期のオジー・オズボーンのテイストが混ざった感じですね。さらにはエイティーズ・ロック的に突然サックスのソロなんかが入ったりもして。やってること自体なんら新しい要素がないのに、唯一無二の聞こえ方をさせている点では新鮮な驚きがあります。

 

 表向きには「法王が死んで、その後継者が・・」みたいな「はあ?」みたいなこと言ってはいますが、そのアホさ加減も含め(笑)、他の誰でもない存在感なので騙されたと思って聞いてみてほしいバンドです。

 

The Future& The Past/Natalie Prass

 

 

 続いてはこの人いきましょう。ナタリー・プラスのセカンド・アルバム。

 

 彼女は2015年にデビューし、その時のアルバムもすごく評判は良かったんですけど、今回のこの2枚目の方が俄然印象には残りますね。

 

 今回のこのアルバムで彼女は、すごく70sや80sのアーバン・ソウル・ミュージックの方に振り切っていまして、それはさしずめ、一昨年の秋に発表されたソランジュのアルバムと、60s-70sのブルー・アイド・ソウルのカルト・シンガーソングライター、ローラ・ニーロのちょうど間を行くくらいの感じですね。ぶっちゃけ、そのどちらかが好きなら確実に好きになれるアルバムだと思うし、とりわけ、それこそ今ソランジュやフランク・オーシャンにハマってR&Bに興味を持ち始めたような人ならかなりアピールすると思いますよ。

 

 ただ、残念なのは、今、これを作ったところで、これをしっかりプロモーションしてくれるメディアがアメリカ国内にないことですね。インディ・ロックでさえちゃんとかけてくれるところが減ってるのに、これはその中でR&B寄り。一方、アダルト・コンテンポラリーにしてはエッジが立ちすぎだし。本来、そういう型にはまらないものこそ優れた表現ではあるはずなんだけど・・

もどかしいとこです。

 

Lush/Snail Mail

 

 

続いてもアメリカの女性アーティスト。こちらはインディ・ロックのスネイル・メイルです。

 

このバンドは、6月に19歳になったばかりの、メリーランド州ボルチモアの女の子、リンジー・ジョーダンのバンドです。ここのところ、アメリカのインディは女の子が自らバンドをフロントで仕切るパターンが増えてきているんですけど、彼女も、「1-3月の10枚」の時に紹介したサッカー・マミー同様(こちらの主役、ソフィー・アリソンは21歳)、インディ女子新世代として今、ちょっとした話題を呼んでますね。

 

 このデビュー作なんですが、リンジーのギター・ロックへの臭覚の良さ、楽曲の構築力の高さを十分に感じ取ることのできる、見事なクオリティのロック・アルバムですね。サッカー・マミーの方は、洒落たコード進行や意外性のあるメロディに特徴があったんですけど、こちらの方はそうした技巧こそはないものの、2本のエレキギターの絡ませ方など、よりバンド・アンサンブル的な醍醐味が強い作りになっていて、職人ポップ的なサッカー・マミーとは対照的なうまさとなっていますね。

 

 スネイル・メイル、サッカー・マミーは2人ともども仲良しで、ライブも一緒にやったり、さらにはお互いのインスタグラムにLikeをつけあうほどの仲で、今のUSインディでの交友も表していたりもするんですが、これもなあ。せっかく、こうして若い世代から新しいインディ・ロックの可能性が出てきているのを誰が注目させてくれるのか。「セレブやダンス・ポップじゃ自分たちの価値観を表現してくれない」と思う女の子も決して少なくないと思うんですけど、そうしたフラストレーションに応える彼女たちみたいな存在が広い共感で迎え入れられるのは果たしていつになるか。

 

Oil Of Every Pearl's Up-Insides/Sophie

 

 

 

続いて、今度はエレクトロのアーティスト、行きましょう。ソフィーです。

 

スコットランド出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動している女性エレクトロ・アーティストのソフィーですが、数年前からプロデューサーとして活躍していて、その界隈ではよく聞く名前ではありました。僕はその当時、決して追いかけていたわけではないんですけど、そんな僕でも、満を持して発表されたこのデビュー・フル・アルバムにはおもわず唸りましたね。

 

 ソフィーがこれまでどんなキャリアを積んできたのか知らなくても、彼女がいかにエレクトロ・ミュージックそのものの基礎値が高いかはすぐにわかります。今となってはエレキギターの歪みよりも刺激的な音になっているグリッチ・ノイズの歪ませ方には攻撃的な刺激を覚える(ここがなんだかんだで大きなポイントです)し、ハウス・ミュージック調のソングライティングは完成度が高いし、シューゲイザー的な響もあるアンビエントなんてこともできる。聞いていて、90年代中頃のエイフェックス・ツイン思い出しましたね。やってることは全然違うけど、この全方向にも対応できる器用さが根底にある感じのところなんかは特に。

 

 あと、ソングライティングもうまいです。エイティーズの全盛期の頃のプリンスみたいな曲もあったりして。そういうとこも含め、今後、現在よりもはるかに大きな注目をされる人にはなるでしょうね。惜しむらくは彼女自身のパフォーマンス能力が高くないこと。彼女が優れたシンガーなりラッパーだったとしたら、それこそプリンス級のスターになる素質もあったと思う

んですけどね。今後どう成長するか。

 

 

Heaven And Earth/Kamasi Washington

 

 

 続いては、今度はジャズですね。カマシ・ワシントンです。

 

 2015年に発表されたアルバム「The Epic」以来、現代ジャズの革命児のように言われているカマシですが、このアルバムはもう方々で大絶賛されていますね。「2018年の最高傑作」などと言っている人も少なくありません。

 

 僕自身はジャズはほとんど詳しくないのですが、昨年に発表された彼のEP(と言ってもアルバムの長さ、ありましたけど)「Harmony Of Difference」も昨年の年間ベストに入れたし、本格的なアルバム(しかも2枚組超大作)となった本作も大好きです。彼の場合、何がすごいかって、とにかく、ジャズをほとんど知らない人にまでその音楽の美しさをわからせる妙な説得力があることですね。まず、とにかくメロディが美しい。複雑なリズムがすごく面白い。そして、彼のサウンドの大きなセールス・ポイントの一つでもあるゴスペル・コーラスをはじめとしたアレンジの多彩さと美しさ。そういう、いわば、音楽を好きになる際の極めて原初的な要素で人を惹きつけている感じがするんですよね。

 

 それを、基本的にトラディショナルな、アナログなジャズの演奏のスタイルを基調としてそれができているところがすごいんですよね。他のジャンルとの融合とかでもなく、デジタルのサウンドを使うとかでなしに、あくまでも昔ながらのジャズの方法論のままなのにすごく新鮮な音楽であるかのように響かせる細かい工夫というかですね。こう言う言い方すると妙かもしれませんが、2000年代にホワイト・ストライプスとかアーケイド・ファイアを聞いた時に「ロックって、テクノロジーの進化に頼らずとも、昔ながらの手法の創意工夫でこんなにもまだ新鮮な音楽を作ることができるんだ」と感動を覚えたことをジャズでやられたようなカタルシスがなんかあるんですよね。

 

これは、この先も噛み締めて聴き続けたいアルバムですね。

 

 

I'm All Ears/Let's Eat Grandma

 

 

 

 最後を飾るのはイギリスの少女デュオ、レッツ・イート・グランマです。

 

 ジェニー・ホリングワースとローザ・ウォルトンからなる2人の女の子は、2016年にデビュー・アルバムが出た際に「まだ10代半ば」ということが話題になったものでしたが、その才気はまだ10代のうちにこのアルバムでさらに化けています。

 

 このアルバム、いわば「裏Lorde」とも言える内容ですね。同じく天才少女の名をほしいままにしたLordeは昨年のアルバム「メロドラマ」で世界を代表するアーティストになりましたが、あのアルバムで、初期の良い意味でのおどろおどろしさは同時に失われもしました。それがこの2人のアルバムでは、その失われた部分こそが濃くなって、より刺激的な中毒性を帯びたような感じがしますね。

 

 全曲通じて、そこはかとない不穏な香りがする作品なのですが、その世界観を編み出しているのは紛れもなく彼女たち2人。そこを、この2つ前に紹介したソフィーや、ホラーズのファリス・バドワンという、「よりによってこの2人か!」とも言える鬼才2人が、手加減することなく危うい世界観にさらに火に油を注いでいます。それがエレクトロにおいてもギター・ロックにおいても同様に展開されています。

 

 実際、これを聞いてしまったことで、同じ日に出たドレイクやフローレンス&ザ・マシーン、ゴリラズが全て物足りなく聞こえてしまったのですが、それほどの衝撃のある作品です。話題になって欲しいんですけどね。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 14:01
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その他の1月から3月の好きなアルバムと総括

どうも。

 

では、昨日の話の続きをしましょう。

 

この時期、印象としては「ちょっと地味かな」というのもあったし、流行ってるもの自体が好きじゃなかったので、10選どうなるかなとも思ってたんですけど、上げていったら、それどころか、入れたいアルバムが20枚くらいはあったという(笑)。意外といい時期だったんですねえ。

 

 

他に入れたかったアルバムは、こういうった感じですね。

 

Little Dark Age/MGMT

Combat Sports/The Vaccines

Firepower/Judas Priest

Pop 2/Charli XCX

Boarding House Reach/Jack White

Nihilistic Glamour Shot/Cabbage

Microshift/Hookworms

Amen/Rich Brian

No One Ever Really Dies/N.E,R.D

Camila/Camila Cabello

 

これで20枚ですけど、実はまだあと数枚あったという(笑)。ジュリアン・カサブランカスのThe Voidzあたりも好きですよ。メンバーのヒゲとかマレットとか嫌ですけど(笑)。

 

 

 

一番トップ10に近かったのはコレですね。MGMT。中堅どこのアーティストが出した中ではこれがベストでしたね。なんかようやっと、ひねくれないで元から持ってる天性のポップセンスで勝負できるような覚悟ができたアルバムというかね。「やればできるじゃん!」と嬉しくなりました。これからまた浮上すると思いますよ。中堅どこでは彼らとヴァクシーンズ(良い曲書く)、後、ジャック・ホワイトのすごく変なアルバムね(笑)。ジャックは完全に咀嚼するのに時間がかかりそうだけど、聞き込めば逆転する可能性は残してます。ギターの音は文句なしにカッコ良いんですけどね、あのアルバム。

 

 

 

あとジューダス・プリーストね。これ、僕、自分でも驚くくらいに刺さったんですよ!僕は10代の頃から彼らは、「顔はテロリストみたいなのに、案外わかりやすいコンパクトな曲書くな」と思って好感は持ってて、代表アルバムはだいたい分かるんですけど、その後、「ちょっと力みすぎかなあ」と思ったのと、僕がメタル聞かなくなったので離れてたんですが、ふと聞いた先行シングルがよかったんでアルバムをストリーミングで聞いてみたら、なんかこれまで持っていた過剰さが、年取って無理がきかなくなったせいもあるのか、いい意味で取れて、ストレートなロック・アルバムになってる感じでよかったですね。「歳をとる」ことの効用がちゃんと生きた、感慨深いアルバムでしたね。今回トップ10は逃したものの、年間トップ50は前向きに考えたいと思ってます。今回の、15位くらいまでのアルバムならまだ可能性あると思うんでね。

 

 

 

あとカミーラ・カベーロね。これ、良いアルバムなんですけど、「ハヴァナ」ですごく期待したほどではなかったなあ〜。マーケットに妥協した曲が数曲あったのがマイナス対象でしたね。もっと、ハッキリと分かりやすく進化型のラテン・コンテンポラリーに徹していたら確実にトップ10に入ってたと思うんですけどねえ。

 

 ただ、彼女に将来的なポテンシャルがものすごくあることはハッキリとわかったアルバムでしたね。

 

 

 

 ・・というのが、僕のこの3ヶ月のトップ20だったりするんですが、一般的な流行りに関して言えば、「うーん・・」な時期でもありましたね。

 

 

 だって

 

 

これがバカ売れしたり

 

 

 

 

コイツが1位取ったりするんだよ!!

 

 

 なんというか、「今のキッズのトレンドが嫌い」というよりかは、「いつの時代でも起こりうるポップ・ミュージックの悪い側面が出ちゃってるよなあ」、という感じかなあ。前にも言いましたけど、「グレイテスト・ショーマン」の曲の全てを足し算で作ったようなゴッタ煮で盛ったサウンドって、80s末期の醜悪なポップを思い出すんですよね。

 

 

 あと、エクスエクスエクステンタシオンというのは、もう「フェイクニュース時代のスター」というか、彼が「天才」と信じ込んでる人が無理やりはやらせている感じがしてしょうがないんですよね。今回のアルバムも相変わらず2分前後の曲のデモテープ集みたいなものの域を出てませんでしたけどね。リリックの内容も大仰で殺伐としてるだけで、ああいうのをリアルだとは僕は思わないし。あと、彼に限らず、最近のラッパーの「V系かよ?」みたいなルックスも「いつの世も繰り返すねえ」と思ってしまいますねえ。こういう勢力がケンドリックとかチャンスが作ったポジティヴなシーンの空気、壊さなきゃいいんだけどね。

 

 

 まあ、80年代から以降って、だいたいディケイドの終わりの方って音楽良くないし、それが繰り返されてるのかなという気がしますけどね。来年あたりがそのピークかな。9のつく年、だいたい良くないし。

 

 

 でも、そういう状況にもかかわらず、好きなアルバムがポンポンとピックアップできるというのは、ストリーミングと検索の充実した世の中がなせる技かなと思います。嫌なこと忘れさせて、自分の好きなものだけを見つけさせるのに集中させるような側面がありますからね。ただ、それゆえに、「もっといい音楽、はやらせよう!」とする跳ね返りの力は弱まりもするかな、とも思いますけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 19:30
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沢田太陽の2018年1月から3月のアルバム10選

どうも。

 

 

これ、去年もやったんですけど、今年もやります。

 

これです!

 

沢田太陽の2018年1〜3月のアルバム10選

 

 

これを4〜6月、7〜9月もやって、今年の年間ベストにつなげたいと思っています。

 

 

今年も、最初の3ヶ月のトップ10、と言っても明確な順位はまだないんですけど、10枚選んでみたらこうなりました!

 

 

 

 

 

こんな感じで、面白い10枚が選べたと思っています。今回の場合、明確な順番はまだないと言いましたが、頭に思いついた順番にかなり直感的に選んでます。なので、最初の2枚くらいは実は順番があり、今回はこの分割画像でも、その思いつき順で作っていたりします。

 

 

では、その、最初に思いついたアルバムから見ていきましょう。

 

 

 

Golden Hour/Kacey Musgraves

 

 もう、まずはこれですね。というか、1位はこれしかない!それが出たばかりのケイシー・マスグレイヴスのアルバム「Golden Hour」。

 

 彼女は何年か前にグラミー賞の新人賞にノミネートされててそこでパフォーマンスもやってたので覚えてましたが、その時は「すごくガーリーな雰囲気のある子だけど、正統派なカントリー」という印象でした。ところがこのアルバムでは、基本線はカントリーらしさを残しつつも、アレンジがとにかく絶妙なんですよ!声をオートチューンっぽく加工したり、スネアが末期ビートルズみたいな余白の多いスカスカ感を出していたり、ペダル・スティールにファズをかけたり、曲によっては16ビートのディスコ調があったり。完全なる「オルタナティヴなカントリー」です。ぶっちゃけ、テイラー・スウィフトがあんなカッコ悪いラップなんてやらなくてこう言う路線で行くべきだったんですけどね。最近のテイラーに失望している僕みたいなタイプの人が引き合いに出してくることに宿命的になるような気がします。

 

 加えてこれ、アレンジだけじゃなくて、曲そのもののクオリティが抜群に高い。なんかすごく職業作曲家みたいな、絶妙なポップソング書くんですよね。最初、元ニュー・ラディカルズのグレッグ・アレクサンダーが曲書いてるのかと思ってクレジット調べたほどですもん。書いてはなかったんですけど、彼が好んで使いそうなコードの曲が2曲くらいはありましたね。2、3年前くらいにカーリー・レイ・ジェプセンのアルバムがソングライティング絶賛されてましたけど、僕から言わせてもらえば、あれよりは断然こっちの方が上ですね。「ダイヤの原石」じゃないスキルがちゃんと伴った感じがあるというか。

 

 これ、クレジットよく見たら、一緒に作ってるの、ザ・ビーズでした。彼らは200年代の中頃に出てきて注目されたアメリカ南部のインディ・ロックバンドで、60sのマニアックなガレージロックっぽいことやってアルバムが評価され、確かフジロックにも来てるはずですが、そんな彼らがこのアルバムでは全編に渡ってプロデュース。曲も7割がた彼女と一緒に書いています。そういう意味でも、知名度だけある人を色々取っ替え引っ替えして作ったんじゃなしに、確かな実力のある人たちと腰を落ち着けて作った意味でもすごく好感が持てます。

 

 今、いたるところで大絶賛を受けていて、来週、英米で共にトップ10以内で初登場もしてくると思うので是非注目しててください。最近はもう、こればっかり聞いています!

 

 

 

Songs Of Praise/Shame

 

 あと、これも大好きですね。ロンドンのバンド、シェイムのデビュー・アルバム。年明けはこればっかり聴いてた時期がありました。

 

 彼らはまだ20歳そこそこくらいのすごく若いバンドでかなりイキのいいロックンロールを聞かせてくれています。言うなれば、ジョー・ストラマーがエコー&ザ・バニーメンの曲を激しめのアレンジで歌ったような、そんな熱さとメランコリーが同居したタイプのサウンドを聴かせてくれています。曲自体もすごくよく書けていて、「One Rizla」「Tasteless」「Gold Hole」とステージ・アンセムになれるような曲が多いですね。

 

 これだけの才能がありながら、イギリスでのメディアの注目の遅れや、現在のUKロックに対しての世間全体の期待値が低くなっていることもあって大絶賛されながら全英で最高32位でした。ただ、それ以降もメディアから注目されているし、フェスのブッキングも少なくないし、おそらくはマーキュリー・プライズの頃にまた注目されると思います。

 

 これに関して、例えば「2000年代にこういうのよくいたじゃん。まだ、こういうことやってるの?」みたいなことを言う人もいるかとは思います。わからないではありません。でも、彼らがここで繰り出しているグルーヴや刹那的なスピード感、これはロックの中のk狭義のジャンルを超えたもので、いわゆる「普遍的なロックンロール」というヤツです。表面的なサウンドにこだわるあまり本質を見誤らないようにしなくちゃならないなと、彼らを聞くたびに思いますね。

 

 

 

Dream Wife/Dream Wife

 

 あと、シェイムと同じ頃にこれもよく聞きましたね。UKロックの新人では、シェイムと、このガールズ3人組のドリーム・ワイフでしたね。

 

 彼女たちもシェイム同様、アルバム・タイミングまでメディアの注目が遅れて、全英で60位とチャート的にはパッとはしなかったんですけど、このアルバムもすごく絶賛されて次に期待を残しましたね。そのあとで積極的にツアーしているのもいいです。

 

 彼女たち、なんで注目がそんなに遅れたのか謎なくらい、バンドとしての華、すごくあるんですけどねえ。ちょっと男役チックなカッコいい系のオネエさんをギターとベースに従えて、映画「クルーレス」でのアリシア・シルヴァーストーンを思わせる、ブロンド・ロングヘアの女の子がフロントというフォーメーションがまずいい。そして、すみません、この子、未だに名前の読み方がよくわかってないんですけど、アイスランド出身のヴォーカルの子の、舌ったらずな、よくわからないけどすごくクセのある耳に強烈に残る「ワッ、パ〜ッン」っていう歌い方。すごく個性あると思うんですけどね。

 

 あと、このアルバム、ガールズ・バンドによるザ・ストロークス解釈でこれの右に出るもの、ないですね。ギターのフレージングとパスパスのドラムの取り方が非常によく研究されていると思います。この辺りの感覚に関して言えば、今時の野郎のバンドよりも数段上です。

 

 

 

Twin Fantasy/Car Seat Headrest

 

続いて、アメリカのバンド、行きましょう。まず一つは、これはもう文句なしにカーシート・ヘッドレストですね。昨年はちょっと前にピッチフォークで期待された類のUSインディ・ロックバンドが軒並み大惨敗みたいな印象を残した年でしたが、そうした中でUSインディの若手に救世主的存在を求めるとするなら、このヴァージニアの鬼才、ウィル・トリード率いる彼らがベストだと思いますね。

 

 彼ら、というか、ウィルに関しては僕は前作の「Teen Of Denial」の時から非常に高く買ってましたね。サウンドそのものは、ストロークス、ペイヴメント、彼の声ゆえにベックといった、USのインディ・ロックの王道も王道を歩むタイプのバンドではあったんですが、曲に抜群のスケール感があり、それを長尺でフリー・フォームに発展させることができるところに、かなり非凡な才能を感じ、その年の僕の年間トップ10に入れさせてもらいました。

 

 今回のアルバムは、これまで短期間に大量に自主制作同然の状況で発表してきたアルバムの中から、2011年、彼がまだ10代の時に作ったアルバムのリメイクという形で発表されたものですが、その元は僕は聞いていないんですが、もう、純然たる新作として聞いてききごたえがあったし、前作で垣間見せた楽曲構築力とスケール感は前作を上回る勢いで進化していましたね。今のアメリカのインディで、ここまでギター・ロックを自在に表現、発展させることのできるバンド、ズバリないです。

 

 才能の割に一般的になかなか注目されないなと思っていたら、今回のアルバムでようやく英米で共にトップ100にランクイン。ここを機に、まだまだ成長して行って、アメリカのインディの顔にまで最終的にはなっていくバンドだと僕は信じてます。

 

 

 

Twenty Two In Blue/Sunflower Bean

 

 アメリカからもう一つ行きましょう。それがニューヨークはブルックリンの紅一点ヴォーカルのトリオ、サンフラワー・ビーンのセカンド・アルバムですね。

 

 彼らは2016年にデビューしてて、その時にも聞いていますが、まだその頃は、「10代」という話題性の方が先行している感があって、まだ曲のクオリティが追いついてないなと思ったんですが、タイトルの通り、22歳を目前に作ったこの2枚目で大きく伸びましたね。

 

 前作の頃には、彼らがどういうバンドになっていきたいかのヴィジョンみたいなものが正直見えなかったのですが、今作はわかりやすく言うならザ・スミスのような繊細なギター・サウンドに乗って、フリートウッド・マックのようなソフィスティケイトされたギター・ポップをやりたいんだな、というのがしっかり伝わりましたね。ジュリア・カミングスの透明感あふれる歌声はそれをやるのにすごく向いているし、時折ぶっきらぼうなヴォーカルと、意外とガッツのあるフレージングのギターを弾くニック・キヴレンの地味ながらも光るセンスも、まだリンジー・バッキンガムには遠く及びはしないものの将来を期待させる何かは確実にあります。

 

 この一作で、インディ界隈に他にいないタイプのバンドにうまく成長したと思います。惜しむらくは本国アメリカの現在に彼らを受け止めるマーケットがないこと。幸いイギリスで注目され始めてて、全英で39位まで上がったので、ヨーロッパを中心にファンをつけて行って欲しいですね。

 

 

Gamboot Soup/King Gizzard&The Lizard Wizard

 

続いては、キング・ギザード&リザード・ウィザード。本国オーストラリアではすでにカリスマで、英米でもまだ少数ながら熱心なファンベースを持つバンドです。

 

 この名前やジャケ写のセンスから判断して「かなりクセのありそうなマニアックなバンドそう」と思われた方、あたりです(笑)。彼ら、まだ若いとは思うんですけど、アルバムで展開される世界は60sのガレージ・サイケで、そこにジェスロ・タルを彷彿とさせるフルートが乗ってきて、プログレ的な味わいも添えています。唯一違うのは手数の多いリズミカルなドラムで、そのグルーヴ感ゆえに現代性を保持している感じですね。

 

 で、このアルバム、実は昨年の暮れに出たアルバムではあるんですが、これが彼らが昨年出した5枚のアルバムの5枚目なんですよね(笑)。これだけでかなり多作であることがわかると思うんですが、これだけ出してようやくソングライティングがほぐれてきたか、すごくメロディックでいい曲は揃ったアルバムなんですよね、これ。しかもサイケデリックな気鋭の実験精神はそのままで。今、オーストラリアといえばテーム・インパーラが国際的なフェスでもかなりビッグな存在になっていますが、この過去と現代を交錯させる感覚や、ミニマルなグルーヴと繊細なメロディを組み合わせる妙味とか、いったいどこで学んで体得しているんでしょうね。

 

 去年の年間ベストの後に出た作品なので今年の対象作としてこれを選んでいますけれど、年内には次のアルバムが出て、そちらと入れ替えることになるんじゃないかと思っています。

 

 

 

Black Panther/Original Soundtrack

 

 今年最初の3ヶ月で最大の話題の映画となると、誰に聞いてもそれは「ブラック・パンサー」だと思うんですけど、優秀なのは映画だけでなく、このサントラも同様でしたね。

 

 映画の方も、今のアメリカの黒人映画界の若手の精鋭たちのオールスター・チームで臨んだ意気込みが感じられてそこも人気の理由の一つになっていると思っているのですが、このサントラも、結局全曲で何らかに関与したケンドリック・ラマーを中心として、今のR&B/ヒップホップの選りすぐりの精鋭たちが一同に会した、「今の黒人の若いジェネレーションの優れた音楽を聴いてくれ!」と言わんばかりのパッケージ感覚がこれまた素晴らしいです。ウィーケンド、SZA、カリード、フューチャー、スウェイ・リー、トラヴィス・スコット、ヴィンス・ステイプルズ、ジョージャ・スミスに加え、アフリカの架空の国ワカンダを舞台にした映画らしく、南アフリカのR&B/ヒップホップのアーティストを数多く参加させ、黒人たちんハートがアメリカとアフリカで離れていながらもしっかりつながっていることをアピールするかのような連帯アピールもよかったですね。

 

 それからサントラらしく、劇中での映像イメージがちゃんとサウンドに反映されていて、アフリカの伝統的なリズムと掛け声、「影の技術大国」ワカンダを象徴するようなエレクトロ・ビート。これらにもすごく説得力がありましたね。

 

 この、「今のブラック・カルチャーの最高の旬どころ」を初心者にもわかりやすくアピールしたことこそがこの映画の最大の魅力でもあります。ただ、この3ヶ月はそれが強すぎたか、他のR&B・ヒップホップの存在感が勢い小さくなった気もします。

 

 

 

Clean/Soccer Mommy

 

この3ヶ月で全く予期しなかった思わぬ収穫といえば、このサッカー・マミーですね。シンガーソングライター、まだ学生なのかな、ソフィー・アリソンによるプロジェクトです。

 

 僕は彼女のことは、このアルバムのレヴューが出るまで知らなかったのですが、他のところで賛否が割れてるところにピッチフォークが絶讃していたのでどんなものかと思って聞いてみたら、これがあたりでしたね。僕にとって、今年あのメディアと初めて波長があったなと思った瞬間でもありました。

 

 彼女、とにかく歌が下手でパフォーマンス自体はかなりヘロヘロなんですが、とにかく、曲の完成度と構成のセンスが抜群です!おそらくは本人もクセで無意識のうちにたまたま抑えてしまっているシャレたギターのコードで思わぬ名曲を書いている。そんな趣ですね。彼女自身の演奏でどこまで掴むかは現状の実力上、まだ難しいかなとは思うのですが、これ例えば、ソングライターとして外部に提供でもすればかなりの注目を集められそうな気がしています。

 

 

 チャートなどには入っていませんが、方々で「今年のベストの1枚」としてこれを選んでいる人が多いので、彼女の天性の才能が理解されるのは案外に近いのかもしれません。

 

 

 

Victory Lap/Nipsey Hussle

 

 チャート上では国際的に猛威を振るっていたR&B/ヒップホップでしたが、ただ、そこまで内容が良かったのか、となると、この3ヶ月は正直なところ弱かったですね。その中で何か1枚あげようと思ったら、このロサンゼルスのラッパー、ニプシー・ハッスルのアルバムになりましたね。

 

 このアルバム、何がいいかというと、今時猫も杓子も誰でもやるようになっているトラップやマンブル・ラップに陥ることなく、「現代版Gファンク」ともいうべき90sのウェスト・コースト・ラップをエレクトロのビートの鮮度を上げ、そこにオーガニックな感じも加えて進化させた趣は良いですね。あと、ラッパーとしてのライムの歯切れがこの人、すごくいいんですね。流行りのサウンドやラップ・スタイルに惑わされることなく、確固とした自身への実力の自信を感じさせるアルバムでしたね。

 

 参加メンツもケンドリックからシーロー、さらにはパフ・ダディと、豊富でバラエティに富んだものとなっていますね。ニプシー自身、すでに30歳を超えたベテランなので、ガチな実力勝負にこだわるのがよくわかりますね。

 

 今のトラップ勢でも、良い曲はたくさんあるとは思うのですが、波に飲まれない芯の強さみたいなところには共感しますけどね。

 

 

 

Tearing At The Seams/Nathaniel Rateliff&The Night Sweats

 

 最後の1枚、何にしようか迷いましたが、ナサニエル・レイトリフのアルバムで。

 

 今回、入れたいアルバム、もっとあったんですよ。詳しくは明日書きますが、10枚に対して20枚近くのアルバムを候補として考えていたほどなんですね。

 

 その中では、これがその中のどれとも違う魅力があるので、選んでみました。タイプとしては、ここ最近のクリス・ステイプルトンとかスタージル・シンプソンみたいな、「カントリーには属しているけど、クラシック・ロックやインディ・ロック界とのコラボも歓迎」みたいなアーティストに近い立ち位置ではあるんですが、ナサニエルの方はもっと60sと70sのサザン・ソウルにこだわっている向きがあります。その証拠に、彼が現在所属しているレーベルは70sのサザン・ソウルの名門レーベル、スタックスですからね。権利関係はよくわかりませんが、名義を復活した記念すべきレーベルの代表的アーティストとしてアピールしているとこですね。

 

 現在、アメリカのラジオ局では、この中から「You Worry Me」という曲がよくオンエアされていて、実は僕もそのタイミングでナサニエルのことは発見しています。この曲が、キングス・オブ・レオンとデイヴ・マシューズを足して2で割ったみたいでカッコよく、それで「アルバムまで聞いてみたいな」と思った矢先に出たのがこれだったんですよね。アメリカではもう少しでトップ10入りの11位のヒットとなっています。

 

 最近は本当に、新人でも自分より年上、というケースまであったりするのですが、本当に音楽をプレーする世代が多様化し、多少歳を食っていても「今からでも遅くない」とばかりにいろんな才能がウェエルカムされていますね。ナサニエルも40手前でのブレイクとなっています。

author:沢田太陽, category:2018年間ベスト, 13:17
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